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コロナ禍これからの飲食店開業|資金調達の方法と考え方

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2020年5月、新型コロナウイルス感染症に起因する緊急事態宣言が解除され、飲食店なども通常通りの営業に戻りつつある。
しかし、すでにご存知の通り、自粛要請前と全く同じ状態で営業している店は少ない。
自粛期間中に一気に拡大した「テイクアウト」「デリバリー」といった販売方法をそのまま継続している店は多く、換気のために入口ドアや窓の開放、アルコール消毒液の設置、はたまた飲食店でマスクを販売しているケースなどもある。

canaeru編集部では、4月に公開した
コロナ明けの飲食店開業・経営に未来はあるか?…専門家が解説
に続く、「これから飲食店を開業」しようとしている新オーナーに向けた第二弾として、主に「開業の資金」にフューチャーして新たな取材を実施した。
特に、現在(2020年5月)canaeru開業サポートが手掛けている開業のための資金調達は、金融機関の現在の融資状況を計れる内容だ。
これから飲食店を開業しようとしている新オーナーは、是非一読していただきたい。

関連記事 飲食店の起業に必要な資金の融資先は?資金調達方法やポイントを解説

開業の資金は、いままで通りに融資してもらえるのか?

最近、canaeru開業サポートのプランナーがフォローし、金融機関に融資を申し込んだ新オーナーに対して、金融機関から事業計画のブラッシュアップを求められた案件があった。
この新オーナーの事業計画は、ここ数年に渡って週1件開業させていた百戦錬磨のプランナーがフォロー、過去、融資を獲得してきた事業計画とフォーマットは同じであった。
求められたブラッシュアップは、具体的に「テイクアウト販路」の検討だった。
提示した事業計画にもよるだろうが、このような具体的な商売方法の追加を指摘するケースは過去にはそうそう無かった。
金融機関側も、今までと同じビジネスモデルでは難しいと考えているのだろう。
この先がどうなるのかは当然金融機関も分からないが、緊急事態宣言下での自粛で一気に消費者に拡大した「テイクアウト」や「デリバリー」といった商売方法を事業計画に盛り込むのは、もはや必須になったと言えるだろう。
また少し余談にはなるが、美容室、理容室、ネイルやエステといった美容サロンなども開業のための融資が厳しくなっているという話しもある。
いずれも自粛要請の業態ではなかったが、売上は多くのお店で落ち込んでいる。
状況が厳しい業界への融資は難しい…このような金融機関のスタンスも知り、新オーナーとして求められるこれからの事業計画は、本当に一筋縄でいかないことを肝に銘じて取り組んでほしい。

開業の資金は、いままで通りに融資してもらえるのか?

満席で商売するのが前提の「飲食店売上方程式」は崩壊状態にある

飲食店の売上を試算する時のスタンダートとして「客単価 × 席数 × 回転率」という方程式がある。
現在(2020年6月)自粛要請が解除されたとは言え、引き続き飲食店ではソーシャルディスタンスを守っているお店が多い。
1席ずつ間引いていけば単純計算で席数は半分。
仮に回転率が試算通りだったとしても、売上は半分になってしまう。
ソーシャルディスタンスは新型コロナウイルスのワクチンができるまで続くと考えられており、1年とか2年、このソーシャルディスタンスを確保する状況が続くことも低い可能性ではない。
想定していた席数、そしてその席数を賄う坪数の物件をこの状況下で予定すれば上記の方程式に当てはまらなくなる。売上は半分なのに、固定費である店舗物件の家賃は半分にはならず、事業計画の全体が破たんする。少なくとも今年、2020年に開業をするならば店内飲食以外の売上が必要だ。
例えば、想定していた席数と回転率を見直し、売上目標の50%以上をテイクアウトやデリバリーなどの販路で確保していく計画がそれに当たる。現在まで長く開業の準備をしてきた新オーナーにはつらい決断かもしれないが、売上が目標に届かなければ経営は成り立たない。勇気を持ってビジネスプランを立て直そう。

開業融資は、より差別化されたビジネスを要求する

テイクアウトやデリバリーといった販売方法の導入とは別に、これからの開業融資に必要なものは「差別化」だ。
金融機関の創業融資は元々「差別化されたビジネスであって、それが売上をもたらす」というスキームが必要なのだが、今後はそれがさらに強固な要件になるだろうとcanaeruの開業プランナーたちは見ている。
平凡な店舗では融資の審査が通る可能性が低くなっている。
「内装が凝っていて落ち着く空間」「炭火焼の焼き鳥」などは決して差別化されているとは言えず、その程度では平凡な飲食店と判断されても仕方ないだろう。
「人々が時間とお金をかけて食事をしに行く空間としてふさわしく、提供されるメニューやサービスがその店だけのオリジナルである」ことがポイントになってくるのだ。
例えば、マグロ解体ショーというイベントがある。
お店でマグロの解体をアトラクションとして提供し、マグロのメニューを提供する。
これは来店しなければなかなか体験・体感できないイベントだ。
また、高級ワインの試飲。
1本何十万円もするようなワインや珍しいワインなどを試飲できる。
実際に店内飲食する場合は、自費を出せばグラスで提供される。
いずれも大手の飲食店で実施している集客策だが、個人飲食店でもミニマムな企画にすればこのようなイベントは可能だ。
ここまで差別化できなくても、「郷土郷里と内装が合うようにコーディネートした、本当に旅行気分になれるお店。オフィス街でサラリーマン需要だけではなく女性客も見込める空間。」「商圏内では〇〇地鶏を使っている店はなく、入手困難な〇〇地鶏を産直で仕入れ炭火で焼く焼き鳥。」とすれば、差別化が成立する。
決して構築できないことではないが簡単ではなく、ただしお店が繁盛するには絶対に必要であることが理解できるだろう。
開業準備の間にお気に入りのお店やベンチマークしているお店を視察に行くなどして、自分のお店の差別化を考えよう。

クラウドファンディングや投資など、金融機関以外からの資金調達は今後どうなるか?

金融機関からの融資以外を考えている人もいるだろう。
個人で飲食店を開業する場合は、日本政策金融公庫や民間の金融機関から融資してもらうケースが多いが、最近ではクラウドファンディングや投資などで開業するケースも増えている。
この資金調達はどうだろうか?
クラウドファンディングは「夢を応援する」側面があるため、この状況下でも資金の集まりが渋くなる可能性は、金融機関の開業融資に比べて低いだろう。
しかし、あくまで金融機関の融資に比べて低い、というだけだ。
もともとクラウドファンディングには「成功率」という指標があるくらい、成功するのが難しい。
もしもクラウドファンディングを検討しているのならば、このような市況を考えるのではなく成功率を上げる策を学ぶべきだろう。
また、投資についてはかなり渋くなる予想が立てられる。
緊急事態宣言解除後、日経平均株価は上昇しているもビジネスへの投資は話しが別で、資金の拠出は渋い。
コロナショックの前に投資を申し出てくれていたのが法人のケースであれば、取り消しされることも覚悟した方がいい。
一般の金融機関の融資が難しい状況だから他に活路を見出すというのもなかなか困難であることを認識しておいた方がいい。

「今、開業」ならば、「下っていく」出店を考えるのも手

ここまで、現状では飲食店の開業が難しいということ包み隠さず書いてきたが、それでも「今開業したい」という新オーナーは居るだろう。
すでに長く開業準備をしてきた、開業する予定で前職を退職したなど、理由がありどうしても「今、開業」に拘るならば、「下っていく」開業の検討をお勧めしたい。
前述の通り、飲食店を経営する場合の最大のコストは家賃だ。
家賃を抑えることができれば、その分、売上が低くてもビジネスは成り立つ。
しかし、家賃を抑えるということは、立地がよくなくなるということでもある。
首都圏などはこの傾向が如実であり、駅から離れれば離れるほど家賃は安くなるが、人通りは少なくなっていく。
このスパイラルから逃れるために、一気に「下って」開業するという策をcanaeru開業プランナーから提案してもらった。
東京から首都圏なども飛び越した地方にUターンなどして開業するのはもちろん、例えば山手線沿線や東京23区内の主要な繁華街をターゲットとせず、立川・八王子方面や川崎・横浜方面、千葉方面、埼玉方面などにちょっと「下る」だけで、家賃と立地のスパイラルから逃れることができる。

「今、開業」ならば、「下っていく」出店を考えるのも手

みんなが開業しないから「今がチャンス」ということは無い

canaeru開業サポートに入ってくる相談の中に、「新型コロナの影響で『今、開業』と思っている人が少ないから、逆に今が開業のチャンスなのではないか?」という話しがある。
この話しは、実はよく検討する必要がある。
開業の準備~お店オープンの期間をこなしている人は、新型コロナによる市況の影響で少ない。
しかし、いざお店をオープンしたらあなたのお店の競合は「すでに営業している店」だ。
すでに営業している飲食店は当然のことながら充分すぎるほどあり、その飲食店の多くが自粛要請の影響を受け苦しんでいる。
すでに営業している店は先輩であり、そこへビギナーとして参入していくわけだから経営手腕が高くなければ太刀打ちできないだろう。
飲食店なども含め、新たなビジネスを立ち上げるタイミングは経済が安定しているのが鉄則だ。
どうしても「今」であれば、前述した開業場所の考え方や経済が安定するまでの長期戦を理解した上で、今までの飲食店開業の教科書にない新たなビジネスモデルを立ち上げる必要があるだろう。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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