この記事では、飲食店を開業したい、独立して起業したいといった人に向けて開業に必要な準備について解説しています。物件選びのポイント、コンセプト設計の重要性などについて解説しているため参考にしてください。
1人でも開業できるのか?
メリット
1人で開業するメリットは、人件費を抑えられる点です。1人で小さい店舗を経営するとなると、人件費以外にも、家賃や光熱費、食材費といった各種ランニングコストも抑えられるため、少ない資金での開業が可能となります。
デメリット
1人で開業すると、店舗の運営は全て自分自身で行わなければならないため、料理の提供や接客に時間がかかってしまいます。また、自分が病気にかかる、怪我をすると営業がストップしてしまう点にも注意しなければなりません。
開業に必要なこと
物件選び
コンセプト設計
物件選びにあたっては、コンセプト設計が欠かせません。コンセプトが定まっていればその後の物件選びはもちろん安定した経営につなげることもできます。
コンセプトとは、飲食店のテーマ、つまりどのような飲食店を目指すのか決めることです。コンセプトが一貫していれば、お店の方針がブレる心配もないため、お客様に対してどのような飲食店なのかはっきりとアピールできます。
また、明確なコンセプトはお客さまが自店に抱くイメージをはっきりとさせてくれ、「あのお店に行けばあのサービスが受けられる」といったことを把握できるため、再来店にもつながりやすくなります。実際に、経営が安定しているお店は、規模に関係なく明確なコンセプトが定められているケースがほとんどです。
一方で、コンセプトが定まっていないと、物件選びで迷ってしまう恐れがあるほか、メニューや内装、使用する食器などに統一感がなくなり、お店の魅力や強みが曖昧になってしまうため、アピールしにくくなります。
コンセプトを決める際は、お店の名前から立地、内装、メニュー、価格など、お店を構成するあらゆる要素を含めて検討することが重要です。例えば、お客さまにお店のイメージを伝えやすい名前はなんなのか、コンセプトを感じられるような内装、食器はどのようなものか、といったことまで考えることが理想的です。
なお、コンセプト設計は5W1Hを活用することで、スムーズに行えます。
5W1Hとは、飲食店をはじめとしたビジネス全般で使用されるコミュニケーションのフレームワークのことです。
When:いつ、Where:どこで、Who:誰に、What:何を、Why:なぜ、How:どのように、という英語の5つのWと1つのHから構成されており、それぞれの要素に回答することで自店のコンセプトを設計することができます。
具体的には、以下のような形で回答していきます。
・いつ:ランチタイムに
・どこで:都心のテラス席のあるお店で
・誰に:OLやビジネスマンに
・何を:国産の食材を使用した料理を
・なぜ:健康志向の人のニーズに答えるために
・どのように:店内だけでなくテイクアウトもできるように
このような5W1Hを設定したら、そこからさらに深掘りして詳細を詰めていくこととなります。
資金調達前に物件探しをしておく
物件探しは、資金調達の前に行っておく必要があります。これは、事業計画書に物件情報を記載する必要があるためです。
お金がなければ物件を借りられないというイメージから、資金調達を行ってから物件探しをするという流れを考えている人もいるかもしれません。しかし、飲食店を開業する場合、自己資金ではなく金融機関などからの融資を受けて開業するケースが一般的です。
一方で、融資をする側からしてみると、どのような規模でどの程度の家賃がかかるのかわからない状態では、融資のしようがありません。そのため、先に物件を契約しておくことは必要不可欠だといえます。
ただし、資金調達前の段階での物件契約となるため、自己資金でカバーしなければなりません。自己資金が少ない場合は、手付金を一旦支払わずに仮押さえができないか物件の所有者と交渉するなどしてください。
施工業者に同行してもらう
物件選びの際に内見する場合、施工業者に同行してもらうことが大切です。これは、自分たちの希望通りの内装工事ができるかどうかを確認してもらうためです。
いい物件だと思って契約したものの、内装工事を行う段階で間取りや設備の関係により希望する席数を確保できないといったことになるケースはよくあります。希望通りの内装工事ができないと、コンセプトも崩れてしまい、店舗運営にも大きな影響を及ぼしかねません。
このような事態を避けるためにも、物件選びの際は、施工業者に同行してもらい、内見の段階で内装工事の可否について確認しておくことが重要です。内装工事ができることがわかれば、安心して契約手続きに進めます。
なお、内見の時点で内装工事の可否について判断できるようにするためには、物件探しの前の段階でコンセプトを明確にしておく必要があります。
資金調達
用意しておきたい開業資金
開業資金としては、1,000万円を目安としておきましょう。
1,000万円が目安となる理由は、開業当初は来客数が伸びない可能性があることを想定して、一定期間の運営資金を準備しておく必要があるためです。
「0円でも開業できる!」「少額資金での開業」といった言葉を耳にすることもあるかもしれませんが、このようなケースは資金を援助してくれる人がいるなどかなり特殊なケースだと考えてください。
なお、金融機関から受けられる融資額は一般的に600〜900万円程度とされています。申請者に飲食店での勤務経験があるかどうか、事業計画は入念に作り込まれているかといった点を踏まえて融資金額が決まるため、実際にはこれよりも少なくなる可能性もあります。融資額との兼ね合いを踏まえると、自己資金は100〜400万円程度は用意しておきましょう。
関連記事 飲食店の起業に必要な資金の融資先は?資金調達方法やポイントを解説
もし、開業資金が1,000万円に届かない場合は、居抜き物件を利用する、備品はリサイクル品を利用するなどして費用を節約する必要があります。また、公的機関や自治体などの補助金の利用も検討してください。
以下の記事では補助金について詳しく解説しているため、こちらもご覧ください。
飲食店が利用できるコロナ対応の助成金・補助金・融資まとめ!自治体ごとの支援も紹介
関連記事 居酒屋開業に必要な資金の目安は?資金調達の方法や成功するためのポイントも解説!
関連記事 飲食店の開業資金はいくら必要?相場や調達方法について解説
資格取得・届け出申請
食品衛生責任者
食品衛生責任者は、従業員のうち必ず1名以上が取得しておかなければならない資格です。一般的には、店舗の衛生管理担当者や従業員に対する衛生管理指導を行う人が取得します。
資格は、食品衛生に関する知識を学ぶ講習を受講することで取得可能です。講習は都道府県が実施しており、各地域の保健所で受講できます。受講費用は地域によって異なるため、一概には言えませんが、一般的には1万円程度かかります。
防火管理者
防火管理者とは、店舗の火災による被害を防ぐために必要な対策を立案し、防火管理に関連する業務を行う人のことです。店舗の収容人数が30人以上である場合は、防火管理者を配置しなければなりません。
防火管理者となるには、各地域の消防署で実施されている講習を受講する必要があります。なお、店舗の大きさによって講習期間が1日もしくは2日と異なります。受講費用は地域によって差がありますが、一般的には3,000〜5,000円程度です。
関連記事 飲食店を起業!必要な手続きや書類をまとめて解説
必要な届出
開業にあたっては、管轄する機関へ各種届出が必要となります。主な届出の種類と届出先、対照業態、届出期限は以下の通りです。
届出の種類 | 届け出先・対象業態・期限 |
---|---|
食品営業許可申請 | ・保健所に届け出る ・全店舗が対象 ・店舗が完成する10日ほど前までに届け出る |
防火管理者選任届 | ・消防署に届け出る ・収容人数が30人を超える店舗が対象 ・営業開始までに届け出る |
火を使用する設備等の設置届 | ・消防署に届け出る ・火を使用する設備を設置する店舗が対象 ・設備設置前までに届け出る |
飲食店を開業後、成功させるコツ
飲食店を成功させるためには、コンセプト設計を入念に作り込むことが重要です。
コンセプトはお店の土台となるものであり、その後の物件選びや内装、使用する食器、採用する従業員などあらゆる場面での判断基準となります。事業計画書はコンセプトをもとにして作成するため、適当に作ることは避けなければなりません。5W1Hを使ってお店の方向を明確にし、そこから具体的なターゲットやメニュー内容などに落とし込むようにしましょう。
いくらコンセプトを入念に作り込んだとしても、お店の情報がお客さまに届いていなければ集客にはつながらないため、集客施策も必要不可欠です。集客施策にはチラシのようにアナログな方法もありますが、近年ではTwitterやInstagramといったSNSを活用するケースもよく見られます。また、Webサイトを作成し、メニューや料理の写真を乗せておくことも有効でしょう。
そのほかにも、お店が小さい場合、気づいてもらえない可能性があるため、わかりやすい立看板を設置することも効果的です。
飲食店を成功させるためには、お客さまに喜んでもらえるような料理を提供することが大切ですが、それと同じくらい経営者の経営能力も重要です。経営能力とは、飲食店の集客目標や融資の返済計画、収益目標などを定め、目標の実現に向けて事業を運営していく能力のことです。法律や会計、税務、衛生管理などについて理解が必要不可欠であり、これらの知識がないとトラブルにもつながりかねません。また、経営者として業者とのやりとりを行うケースも多く、コミュニケーションスキルも経営者には必要です。
以下の記事では、経営者が抱えやすい悩みと相談相手を選ぶ時のポイントについて解説しています。
経営の悩みは誰に相談すればよい?適する相手の見つけ方など徹底解説!
まとめ
開業までのフローチャートとしては、コンセプトを明確にし、それに基づいて事業計画書を作成します。その後、物件探し、融資、内装工事へと進みます。開業資金は1,000万円が目安となり、融資金額は600〜900万円程度が一般的であるため、最低でも100〜400万円程度の自己資金が必要となる点には注意してください。開業直後は、客足が伸びない可能性も十分にあるため、資金には余裕を持たせておくことが大切です。
関連記事 飲食店を独立して開業をするための準備 必要な能力や費用・成功のポイントを解説
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この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
