本記事では、飲食店の開業に必要な具体的な資金について解説します。また、0円開業の可能性や少額自己資金による開業のリスクについても取り上げているため、これから開業する方は参考にしてください。
飲食店開業の初期投資に必要な額は?
飲食店を開業する場合、初期投資として必要な金額の目安は1,000万円となります。これは、東京都内で開業する場合の目安です。ただし、店舗の立地や広さ、コンセプトなどの経営計画が変わると、初期投資額も変わるため、あくまでも目安としてください。
なお、1,000万円が必要だからといって、すべてを自己資金でカバーしなければならないわけではなく、金融機関による融資を利用するケースが一般的です。
金融機関による融資額は、一般的に600〜900万円程度です。そのため、1,000万円を開業資金とするのであれば、自己資金として100〜400万円程度を用意すればいいということになります。
ただし融資額は、融資を希望する人に飲食店の勤務経験があるかどうか、店舗の立地はどこか、事業計画はしっかりと作り込まれているかといった点を踏まえて決定するため、600万円を下回る可能性はあります。
さらに、1,000万円が調達できれば、必ず開業がうまくいくというわけではありません。物件や備品の具体的なコストを算出し、開業後の利益目標とどのタイミングで達成するかといったことを決め、初期費用となる1,000万円の使い方を考えることが大切です。想定していなかったコストが発生すると、開業後の計画が破綻する恐れがあるため、抜け漏れのないように注意しなければなりません。
そのほかにも、初期投資の内訳を把握することも非常に重要です。内訳を把握することで、何にどのくらいの金額が必要なのか、削減できる箇所はあるのかといったことが理解できるため、投資額を抑えられる可能性があります。初期投資の主な内訳としては、「設備資金」「不動産資金」「運転資金」の
3つが挙げられます。それぞれの概要は以下の通りです。
・物件取得費:前家賃、保証金、礼金、仲介手数料などにかかる資金
・店舗投資:内装、厨房で使用する機器、食器類、各種消耗品などにかかる資金
・運転資金:自己資金のこと
引き続き3つの内訳について解説します。
物件取得費
物件取得費とは、物件の取得に伴い発生する保証金や礼金、仲介手数料などのことです。一般的に物件取得費は、家賃の10倍を目安として考えておきましょう。家賃30万円の物件であれば、物件取得に300万円程度かかるイメージです。
保証金は、物件によって3〜10ヶ月と異なるため注意が必要です。また、当然ながら立地の条件が良ければ良いほど保証金は高くなります。なお、保証金は物件を解約する際に8割ほどの金額が返却されるケースが一般的です。
店舗投資
物件を契約した後は、店舗を作るための資金を用意しなければなりません。具体的には、内外装費のほか厨房で使用する機器や食器、備品などの準備費用などが該当します。
店舗投資にかかるコストは、1坪あたり50〜80万程度を目安としてください。30坪の店舗であれば1,500〜2,400万円程度です。
どのような内装にするか、どういったメニューを提供するかによって投資コストは異なりますが、場合によっては開業資金全体の半分以上を占めるケースもあります。
運転資金
運転資金は、仕入れの際に使用する現金のことです。仕入れの支払いに現金が必要となるケースがあるため、手元にある現金を運転資金として用意しておかなければなりません。運転資金は家賃の10倍程度が目安です。
開業直後は思ったように売り上げが伸びないケースが多いため、売上を運転資金に当てるといった考えは大きなリスクを伴います。そのため、売上が少なくても仕入れ対応ができるように運転資金を用意しておきましょう。
自己資金0円開業は可能か?
「自己資金0円でも開業できる」といった謳い文句を耳にすることもありますが、0円開業はほとんど特殊なものだと考えてください。飲食店の開業を目指す場合、どんなに少なくても300万円以上の自己資金が必要です。
自己資金0円開業ができるケースは、飲食店のオーナーや出資者がいる場合であり、そのような人たちがいない場合はほぼ不可能です。強力なバックアップを得ていない場合、0円開業もしくはそれに近い金額での開業は軌道に乗せることが非常に難しく、長続きしない可能性が高くなります。
都内に自己資金180万円で開業したというケースもありますが、都心ではなく郊外での開業であり、開業後しばらくは売り上げが伸びず苦しい時間を過ごしていました。このような点からも0円開業は基本的に不可能であると考え、最低でも自己資金300万円は確保できるようにしておきましょう。
少額自己資金で苦しむ訳
低資金で開業すると、初期の投資で資金のほとんどを使い切ってしまい、その後のキャッシュフローが厳しい状況になる恐れがあります。最悪の場合、廃業に追い込まれるケースもあるでしょう。
これから開業しようとしている人の中には、「開業後は忙しくなるぞ!」と考えている人もいるかもしれません。しかし、実際には開業後は客足が安定しないケースが多く、収入も予想を下回る可能性があります。
一方で、収入が少ないとしても、食料の仕入れや店舗の家賃、融資の返済などは毎月発生します。そのため、自己資金を初期投資の段階で使い切ってしまうと、お店が軌道に乗る前に資金がショートし支払いができず廃業に追い込まれかねません。
自己資金は、飲食店の開業にかかる資金だけでなく、開業後数ヶ月の自身の生活資金や各種支払にかかるコストも含んだものです。この点を踏まえると、少額自己資金では開業時点で資金がほとんど底をついてしまい、開業後の支払いに対応できなくなります。開業後の不安定な時期を乗り越えるためにも、自己資金は多めに用意しておくことが大切です。
以下の記事では金融機関による融資審査について解説しています。自己資金と合わせて開業には融資による資金調達が欠かせないためこちらも合わせてご覧ください。
開業資金の融資審査は厳しい?落ちる理由や通るためのポイントについて解説
飲食店開業に必要な資金と資格
開業にあたっては、物件の取得や内外装工事、備品の購入などの準備が必要であり、それに伴いコストも発生します。また、開業資金の把握や融資を受ける際に必要となる事業計画所の作成、資金調達の手続きなども必要です。
さらに、開業時には以下の資格を取得していなければなりません。
・食品衛生責任者:都道府県の食品衛生協会が行う講習を受講する
・防火管理者:日本防火・防災協会が行う講習を受講する
開業までにやることは多いため、抜け漏れのないように注意してください。
以下の記事では、飲食店の中でもカフェの開業について必要な資金や資格について詳しく解説しています。カフェの開業を検討している方はこちらもご覧ください。
カフェを経営するための資金はいくら?必要な資格や申請についても解説
まとめ
飲食店の開業資金は1,000万円が目安となります。1,000万円のうち、一般的には金融機関による融資で600〜900万円はカバーできるため、自己資金を100〜400万円程度用意しておきましょう。
少額自己資金で開業しているケースも見られますが、これらは出資者がいる特殊なケースだと考えてください。開業時だけでなく、開業後も家賃の支払いや食料の調達、融資の返済などさまざまな支払いが発生するため、自己資金はできるだけ多く用意しておくことをおすすめします。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
