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「いつか自分のお店を出したい」という思いから飲食店の独立開業を考える人は少なくありません。ですが、実際に飲食店を開業するには十分な準備が必要です。
さらに現実として、開業後に飲食店を満足に経営していくことは決して簡単ではありません。
今回は、飲食店の独立開業をするために必要な準備や能力、そして、成功のポイントを解説します。
目次
- 飲食店を独立して開業するのは簡単ではない
- 飲食店を独立して開業するために必要な能力・資質
- 資金調達能力
- 経営能力
- 接客能力
- マネジメント能力
- 調理能力
- メニュー開発能力
- 飲食店を独立して開業するメリット
- 飲食店を独立して開業するデメリット
- 飲食店を独立して開業するために必要な費用と内訳
- 飲食店の独立開業で資金を調達する方法
- 飲食店の独立開業に必要な期間と準備の流れ
- コンセプトの決定
- 損益シミュレーションシートの作成
- 未経験から飲食店を独立開業する際に検討すべき制度とは?
- 直営店舗譲渡方式
- フランチャイズ経営
- 一部業務委託方式
- 飲食店の独立開業で失敗しないためのポイント
- 資金計画
- 資金を抑える
- ターゲットの明確化
- コンセプトの差別化
- 出店エリアの調査
- 開業後のプランの明確化
- まとめ
飲食店を独立して開業するのは簡単ではない
飲食店は、廃業率が高い業種です。開業して2年で約5割が、そして、3年で約7割以上の店舗が廃業に追い込まれるとも言われています。
厚生労働省が公開している飲食店営業施設数の推移によりますと、現在国内には700,000軒以上の飲食店が存在しています。しかしこの総数は毎年減少傾向にあり、2021年の昨対比率は-5.6%でした。
総数の中には新規開業店舗ももちろん含まれているため、開業数を廃業数が上回っていることになります。
このことから、飲食店を独立開業する際には開業後の経営についても十分に理解を進めておく必要があるといえるでしょう。
飲食店経営を長く続けるためのポイントについては、下記の記事でも詳細に説明しています。
関連記事 「飲食店で独立」の損得を考える。儲けた分だけ自分の給料はウソ?
飲食店を独立して開業するために必要な能力・資質
飲食店を独立開業するために、以下6つのスキルは持っておいたほうがよいでしょう。
・資金調達能力
・経営能力
・接客能力
・マネジメント能力
・調理能力
・メニュー開発能力
それぞれのスキルについて、以下で詳しく説明します。
資金調達能力
飲食店を開業するために、まず必要なのは資金です。飲食店の独立開業には約1,000万円程度の資金が必要と言われています。すべて自己資金でまかなうのは難しいため、資金調達能力は必要不可欠です。
資金調達は、日本政策金融公庫や銀行から受けられる融資制度を活用するケースが大半です。
こうした金融機関から融資を受けるためには審査が必要で、そのための準備には十分な時間をかけたほうがよいでしょう。審査の際には事業計画書の提出や面談があり、「自分が開業したい飲食店のコンセプトやターゲット」はもちろん、開業のために具体的に何にどれくらいお金が必要なのかや運転資金の計画をまとめておかなければなりません。
融資が受けられないと実現したいお店の方向性を大きく変えなければならなくなってしまうため、慎重に準備を行いましょう。
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経営能力
飲食店を開業した後、成功させる鍵は「経営能力」にあります。経営能力がなければ、せっかく開業したお店が廃業に追い込まれる事態になってしまいます。
開業する飲食店のコンセプトが決まったら、周辺店舗や立地を参考にしてメインターゲットを設定し、ターゲットに合わせた手段で集客をすること。さらに、集客の目標や売り上げ目標、融資の返済など毎月の資金計画を立てて実行する能力が経営能力です。
飲食店の場合は、法律や税金の知識だけでなく旬なトレンドを取り入れるマーケティング能力や、メニュー構成のセンスなども求められます。
接客能力
飲食店は、ただ美味しい料理やドリンクを提供すれば人気店になれるわけではありません。お客様がいかに快適に、満足な食事ができるかという面にも重きをおいたほうがよいでしょう。
お客様が心地よく過ごすためには接客もまた欠かすことができない要素の一つです。
お客様満足度の向上は、提供している料理やドリンクに付加価値を与える効果があります。
また、接客のクオリティは拡散力も強く、リピーターや口コミによる集客に直結します。つまり、接客能力の有無が飲食店の成功に大きく影響するともいえます。
マネジメント能力
スタッフを雇ってお店のコンセプトにあった人材に育てていくことも経営者に求められるスキルです。
開業時には一気に雇用することが多いため、新しく入ったスタッフを育てる方針・期間をあらかじめ決めておく必要があるでしょう。また、スタッフが長続きするためにもコミュニケーションを重んじて常にコンディションを把握しておくことも大切です。
決して一人では経営できないのが飲食店。スタッフや取引先をいい意味で巻き込みながら経営していくことも飲食店経営の成功に欠かせない要素です。
調理能力
飲食店開業において、美味しい料理を効率よく調理する能力は必須ともいえます。それに加えて、調理のオペレーションやレシピをスタッフに伝授することも大切です。
お店の全メニューを調理スタッフ全員が同じクオリティで提供できるようになるまでは、オーナー自身が常に厨房に立っていなくてはなりません。無理なくお店を続けていくためにも、厨房をスタッフに任せられる体制にしておく必要があるでしょう。
メニュー開発能力
経営者には、調理能力と合わせてメニュー開発能力も必要です。魅力的なメニューは飲食店の集客に直接的に影響します。
満足度が高いメニューを開発すること、そして、季節やトレンドに合わせて新しいメニューを取り入れる能力は飲食店の成功になくてはならないものです。
自分でメニューを開発するのはもちろん、周辺で同じ業態の競合店舗に足を運んで研究したり、美味しい食材を手に入れるために努力ができるかもポイントです。
飲食店を独立して開業するメリット
飲食店の独立開業のメリットは
・オリジナリティの出しやすさ
・将来の成長・増店
・接客の楽しさ
などがあげられます。
飲食店を独立開業する場合、自分のお店ですからコンセプトもターゲットもメニューもすべて自分で決められます。ですので「オリジナリティー」を存分に発揮できます。
飲食店を開業することは決して簡単ではありませんが、自分の個性を活かしたサービスを提供できるのは独立開業した飲食店の醍醐味でもあります。
また、将来的には複数店舗を出店したり、フランチャイズで店舗を増やすこともできるかもしれません。
そして、お客様の声を直接聞くことができるため接客の楽しさもあります。料理の感想もすぐに生の声を聞けますので、そのままサービスに反映させることができます。自分の作った料理を褒めて貰えたり、何度もリピートして貰えると仕事のやりがいを感じられるでしょう。
飲食店を独立して開業するデメリット
飲食店の独立開業にはメリットもありますが、デメリットもあります。
まず、廃業に追い込まれる飲食店の数は決して少なくありません。帝国データバンクが発表した2021年度の飲食店の廃業件数は569件でした。そして、2020年度は780件の飲食店が倒産に追い込まれています。
加えて、倒産件数に含まれない自らお店を畳んだ飲食店は2021年だけで494件に上ります。
もちろん、様々な社会的要因が絡んでいることは言うまでもありませんが、苦労して飲食店を独立開業しても、3年以内の廃業率は70%、5年で80%以上と難易度が高いことが解ります。
そして、飲食店を独立開業するためには資金が必要です。大半のケースでは融資を受けて開業する場合がほとんどですので、開業後はどのくらいのスパンで初期投資を回収するか資金繰りの計画を立てておくことをおすすめします。
利益を確保しつつ、返済をしていくのは決して簡単なことではありません。また、廃業した場合でも借金は残りますので、大きなリスクを伴います。
飲食店を独立して開業するために必要な費用と内訳
冒頭でも述べましたが、飲食店を独立開業するために必要な費用は約1,000万円と言われています。内訳は下記のようになることが多いです。
・物件取得費 ・・・ 450万円
・内外装工事費・・・ 220万円
・厨房設備・什器費 ・・・100万円
・テーブルなど ・・・80万円
・運転資金 ・・・150万円
合計 1,000万円
物件取得費は、店舗の家賃や保証金、不動産会社の仲介手数料など物件取得の初期費用のことです。飲食店の場合は保証金が高く設定されるケースが多いため、ある程度予算を確保する必要があります。
そして、賃貸借契約を結んだ後に、店舗の壁紙や床といった内装や看板や壁の色などの外装を整えるためにも費用がかかります。
さらに、厨房設備や水道など保健所の許可を取るために必要な設備を整え、必要に応じて什器も用意しなければなりません。こういった設備は中古で揃えることもできますので、設備投資はコストを抑えつつ物件取得費や内外装工事費に予算を割くという方法もあります。
上記以外に、取得した物件の状態によっては、電気工事や空調設備の資金が別にかかることも想定されます。また、スタッフの制服などを用意する場合はさらに予算が必要になります。
関連記事 飲食店の開業資金はいくら必要?相場や調達方法について解説
飲食店の独立開業で資金を調達する方法
飲食店を開業するための資金調達の方法としては
・日本政策金融公庫から融資を受ける
・銀行から融資を受ける
・ビジネスローンを活用する
・補助金や助成金を活用する
といった方法があります。
ただし、すべての必要資金を融資でまかなおうとするのではなく、ある程度自己資金を用意しておきましょう。
自己資金の割合は最低でも必要とする資金の10%を確保しておくとよいと言われていますが、必要資金の1/2から1/3程度の自己資金を用意できると融資を受ける際の審査が有利になります。
資金ゼロで融資を受けて飲食店を独立開業する・・・というのは現実的ではありません。最低限の自己資金は用意してから開業準備に取り組むようにしましょう。
開業資金の詳細については下記の記事でも紹介しています。
関連記事 開業資金として必要な金額は?お金のトラブルを防ぐために調達方法を知ろう!飲食店の独立開業に必要な期間と準備の流れ
実際のところ、独立開業したいと思いついた時からどのくらいの期間で開業できるのでしょうか。必要な時間と準備期間、そして、準備の流れを確認しましょう。
コンセプトの決定
開業するときにはまず、「どんなお店にするのか」というコンセプトを決めます。
時期としては開業予定日の12ヵ月前には決めておくことをおすすめします。
その際には、ターゲットを具体的に思い浮かべながらどんなメニューを提供するとよいかを考えましょう。
例えば「女性向けのおしゃれなカフェ」だけだとコンセプトとしては抽象的です。「20代の女性が好むナチュラルテイストのカフェにして、メニューはタルトと紅茶を提供する。さらに紅茶は種類をたくさん用意して産地にもこだわって仕入れをする」と具体的に考えることが大切です。
損益シミュレーションシートの作成
コンセプトが決まったら、次に損益シミュレーションシートを作成します。お店を経営していく上でかかる原価率や人件費、光熱費といった支出や利益を想定で算出します。
例えば、一日何組くらいの集客を目指すのか、客単価はどのくらいに設定するのかなど考えながら売上の見込みを立てていきます。なお、食品を取り扱う以上、ロスが出てしまうことは避けられないことも認識しておきましょう。
シミュレーションですから、すべてがこの通りになるというわけではありませんが、コンセプトが決まった時点で損益を計算して、初期投資の返済計画をたてておくといいでしょう。
未経験から飲食店を独立開業する際に検討すべき制度とは?
独立開業を考える方の中には、脱サラなど異業種から志す方もいるでしょう。ここからは、未経験から飲食店を独立開業したい!という場合に活用できる制度を解説します。
直営店舗譲渡方式
直営店舗譲渡方式とは、すでに営業している店舗を経営譲渡してもらうという形で独立開業するという方法です。すでに店舗があり、営業実績があるため1から顧客を獲得する必要がなくリスクは限定的になものとなり、いわゆる「のれん分け」がこれにあたります。
この方法であれば、初心者でも独立開業しやすく開業当初から利益を伸ばすことが可能です。
ただし、自分のお店なのに経営方針や仕入、営業時間、メニュー設定で自由度が下がってしまうというデメリットもあります。そして、お店によっては勤続年数や一定期間の修行が必要になるケースもあります。
フランチャイズ経営
フランチャイズ経営方式は、外食チェーン企業とフランチャイズ契約を結び、店舗を出店するという方法です。
本部で研修制度が充実していたり、オペレーションがマニュアル化されていることが多いため初心者でも有名店のネームバリューとノウハウを持って新規出店できるのがメリットです。
一方で、売上金額の数パーセントを本部にロイヤリティーとして支払う契約が多いことや、本部のキャンペーンや営業方針に合わせる必要があるため自由度が高くないといったデメリットもあります。
一部業務委託方式
一部業務委託方式とは、店舗そのものは本部の保有のままで店舗運営のみを委託して行うという方法です。完全な独立開業というわけではなく業務委託ではありますが、店舗は本部のものですので自己資金が少なくても独立開業ができます。
飲食店未経験でもノウハウがなくても新規出店ができるというメリットがありますが、フランチャイズ経営と違って本部から「業務委託費」として報酬を受け取る形式になるため正しく認識しておく必要があります。フランチャイズ経営は、売上金の一部をロイヤリティとして支払いますが、業務委託の場合は売上金額にかかわらず固定の報酬を受け取るため、似ているようで仕組みが異なります。
どれだけ頑張って売上を伸ばしても受け取れる金額は変わらないので、大きく稼ぐのには向いていないといえるでしょう。
飲食店の独立開業で失敗しないためのポイント
飲食店の独立開業で失敗しないためのポイント
飲食店の独立開業で失敗しないためのポイントは「資金の計画」「資金を抑える」「ターゲットの明確化」「コンセプトの差別化」「出店エリアの調査」「開業後のプランの明確化」です。
どのポイントもとても重要なものですので、ひとつずつ解説していきます。
資金計画
開業後に長く安定した経営を続けるためにも、資金計画はしっかりと練りましょう。
資金計画でおさえておきたいのは下記の3点です。
・資金調達方法
・開業後の資金繰り
・初期投資の回収
資金調達で融資を受ける際には事業計画書の作成や面談があり、事業内容だけでなく資金繰りの計画性も問われます。
そのため、開業資金にいくら必要なのか、開業した後の運転資金や融資を受けたお金の返済計画など綿密なシミュレーションをしてどのように資金を用意するのかしっかりと時間をかけて考えておきましょう。
資金を抑える
開業する際の初期費用は、その後の資金繰りを見据えてできるだけ抑えたいところです。
例えば居抜きの物件を利用して初期費用を抑えたり、厨房設備は中古の物を取り入れるといった工夫で初期費用を抑えることができます。
ですが、外装・内装や設備などお客様に見える部分をあまり安く済ませると雰囲気に影響を及ぼすこともあるためお店を客観的に見ながらバランスを調整するとよいでしょう。
関連記事 飲食店は資金ゼロでも開業できる?少ない資金で開業する方法を解説
ターゲットの明確化
飲食店を成功させるためには、そのお店のターゲットを明確にします。
ターゲットはメニューや価格、店舗の内装や音楽などの重要な要素を決めるときにとても大切なポイントになります。ターゲットに合わせたメニューやサービスを展開し、好まれるような内装でお店の雰囲気を作ります。
性別や年齢層を細かく設定することで、同行する人や利用シーンを具体的にイメージ出来るようになります。リピート客を増やすためにも、ターゲットは明確にしましょう。
コンセプトの差別化
飲食店のコンセプトの決定はとても大切です。
コンセプトがしっかりしていなければ、統一感が薄れて印象に残りにくいお店になってしまいます。
まず自分が作りたいコンセプトであること、そして、場所やお客様のニーズに合っているのかも重要です。
競合店舗との差別化を図り、印象に残る店舗をつくるためにもしっかりとコンセプトを設定しましょう。
出店エリアの調査
開業のための資金やコンセプトが重要だとお話ししてきましたが、その資金やコンセプトにも関係してくるのが出店エリアの調査です。
どんな人が多いのか、人通りはどのくらいなのか・・・年齢層や時間帯などを調査して出店エリアに合ったコンセプトを設定する必要があります。そして、当然ですが、駅からの距離やバス停の有無、交通量の多い道路からの見えやすさも調達の必要があります。
そして、開業資金で最も予算を必要とする物件取得の費用の相場もエリアによって異なるので事前に調査しておきたいポイントです。
開業後のプランの明確化
独立開業した後は、継続して店舗を運営していくためのプランが必要です。
開業には多大な体力やエネルギーを要しますが、開業はあくまで飲食店経営のスタート地点です。そこからどうやって健全な経営状態にしていくのか、どんなサービスで顧客の心をつかむのかというプランを明確化しておくことはとても大切です。
まとめ
飲食店を独立して開業するためには様々な能力と準備が必要です。
開業資金を調達する能力や調理、メニュー開発、人を育てるマネジメント能力などが必要です。
また、開業前にはコンセプトの決定やターゲットの明確化、開業後のプランの構築なども必要です。
飲食店を独立して開業するメリットもデメリットも理解した上で、しっかりとした計画を立てる入念な準備をすることが飲食経営を成功させる鍵となります。
関連記事 飲食店の開業に必要なこととは?開業までの準備を紹介
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
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