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飲食店を開業しようとする時には、まず「開業に必要な資金」を理解する必要があります。開業に必要な様々な資金をすべて自己資金で賄えるのであれば、資金の準備は必要ありません。ですが、そうもいかないのが現実・・・開業資金を融資で準備するという人は少なくありません。
本記事では、開業の資金調達の種類や方法をご紹介します。
参考記事:コロナ禍これからの飲食店開業|資金調達の方法と考え方[人気記事]
参考記事:自己資産だけでは閉店の危機・・・!飲食店開業に必要なお金事情目次
飲食店の開業資金はどうやって工面する?
飲食店を開業するにあたっては「不動産の取得や賃貸にかかる費用」「設備資金」「数か月分の運転資金」が必要です。
開業資金を大きく分けると「不動産の取得や賃貸にかかる費用」「設備資金」の初期費と、毎月発生する運転資金の2種類となります。
場所や規模、提供する料理の種類によって初期費用は大きく異なります。
もちろん内装費用を調整したり、居抜き物件を利用することで節約することはできますが、それでも初期費用は必要です。
小さな飲食店でも開業する時に必要な資金は、合計でおよそ1000万円程度とされています。
初期費用のすべてが自己資金というのが最もシンプルな方法ではありますが、飲食店を開業にあたっては事業者向けの融資制度を利用する人がほとんどです。
融資を受けるためには審査が必要ですので、それらの審査には開業する場所や開業者の年齢、周囲との関係といった様々な要素が融資の額など資金調達そのものに影響を与えます。
そのため、自分の状況に最も適した方法を選択することは、飲食店成功の第一歩といえるでしょう。
参考記事:飲食店の開業資金はいくら必要?相場や調達方法について解説
飲食店開業時に資金調達する方法
飲食店開業の資金調達には
①日本政策金融公庫の融資制度を利用する
②地方銀行・信用金庫の融資制度を利用する
③クラウドファンディング
④親族関係からの融資
という方法があります。
まず、日本政策金融公庫には、「新創業融資制度」という新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない人が無利息・無担保で利用できる制度、
そして、認定経営革新等支援機関との協力関係のもとで飲食店融資を実施する「中小企業経営力強化資金」があります。
新創業融資制度は、新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金として利用可能で3000万円までの融資を受けられます。
中小企業経営力強化資金は利率の面で有利であり、無担保無保証での融資が受けられるという点、そして、税理士のフォローや面談に専門家が同席できるというメリットがあります。
そして、地方銀行やメガバンクの融資制度の利用も検討できます。銀行は融資だけでなく創業支援も行っておりセミナーの受講も可能です。
他にも、インターネットを介して不特定多数の人からの投資を募るクラウドファンディングや家族や親戚からの融資という方法もあります。
この4つの方法は必ずどれかひとつを選ばなくてはならないということはありません。複数の方法を用いて開業に必要な資金を調達することも可能です。
参考記事:飲食店は資金ゼロでも開業できる?少ない資金で開業する方法を解説
日本政策金融公庫の融資制度を活用した資金調達
日本政策金融公庫とは?
日本政策金融公庫の正式名称は「株式会社日本政策金融公庫」です。財務省所管の特殊会社で日本に5つある政府系金融機関として2008年10月1日に設立されました。
前身機関の国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫の業務を引き継いでおり、中小企業や農林水産事業者の資金調達だけでなく、国民一般の資金調達支援などを業務としています。
民間の銀行ではなく、行政改革の中の政策金融改革の制作の一部として運営されている銀行です。
日本政策金融公庫には、日本政策金融公庫の飲食店開業資金融資という制度があり飲食店を開業する際の資金調達にも利用できます。
日本政策金融公庫の特徴
日本政策金融公庫の特徴は以下の通りです。
・株式会社日本政策金融公庫法という法律がある
・国が株式の100%を常時保有している
・日本政策金融公庫の前進は特殊法人
・民間の銀行にはない役割がある
日本政策金融公庫は株式会社日本政策金融公庫法という法律に基づいて運営されています。財務省所管の特殊会社で政府系金融機関のひとつです。
政府系金融機関ではありますが、株式会社という形をとっているのは「株式会社のガバナンスの仕組みを活用して、透明性の高い効率的な事業運営を行うため」です。
引用:よくある質問|日本政策金融公庫公式サイト
そして、日本政策金融公庫は上記の法律の規定によって株の100%を国が保有しており、民間の金融機関の支援が行き届かない部分を補完する役割を担っている銀行です。つまり、日本という国が運営している銀行といえばわかりやすいかも知れません。こうした民間の銀行との違いがあることから、以前は国金と呼ばれていた時代もありました。
民間の銀行では担うことができない需要に答えるのが日本政策金融公庫の役割であり、民間の金融機関との大きな違いといえます。
日本政策金融公庫には様々な融資制度があります。
一例として事業 融資制度の一例
国民生活事業
新創業融資制度・・・新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方
新規開業資金(中小企業経営力強化関連)・・・新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
中小企業事業 新企業育成貸付・・・新事業育成資金、女性、若者、再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
企業活力強化貸付・・・企業活力強化資金
そのほか、環境・エネルギー対策貸付やセーフティネット、企業再生貸付、災害復旧貸付、東日本大震災復興特別貸付など
農林水産事業
農業・・・スーパーL資金林業
林業・・・基盤整備資金(造林資金)
漁業・・・漁業経営改善支援資金(経営改善)
等
こうした多様な融資制度も日本政策金融公庫の特徴です。
貸付けの条件は制度ごとに異なっており、公式ホームページからも内容を確認できます。
日本政策金融公庫から融資審査を受ける時のポイント
日本政策金融公庫から融資を受けるときには、審査があります。融資の審査と言われるだけで緊張してしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、審査を受ける時にはいくつかのポイントがありますので確認しましょう。
そのポイントとは以下の通り。
・自己資金の割合
・経験
・過去の支払い状況
・事業計画の実効性
まず、飲食店を開業する際の必要資金のうち「自己資金の割合がどの程度あるか」です。日本政策金融公庫では開業資金総額の1/10が必要とされていますが、実際には1/3程度は自己資金を用意しておくのが理想とされています。
また、自己資金は計画的に積み立ててきたかどうかも重視されます。自己資金ゼロの状況からすぐに開業するのは難しいといえるでしょう。
次に、経験です。
飲食店での勤務経験がどのくらいあるのかも重要なポイントとなります。もちろん、今までは会社員で独立したいという場合でも審査を受けることはできますが、飲食店関係の経験があるほうが審査において有利です。
最後に、過去の支払い状況ですが、これは「税金の滞納がないか」「信用情報機関に事故情報が登録されていないか」ということです。
日本政策金融公庫は政府系金融機関ですので、税金の滞納はマイナスとなります。また、政府系金融機関ではありますが、金融機関ですから信用情報機関の事故情報もチェックされます。クレジットカードやローンの滞納があったり、過去の債務整理からまだ時間が経っていない場合などは審査を通過するのが難しいと言わざるを得ません。
お金にルーズな人にお金を貸したくないというのは、個人でも銀行でも同様です。
さらに、提出した事業計画の実効性や面談での印象も審査に大きく影響します。審査の面談は十分な準備をして臨みましょう。
参考記事:飲食店の開業に必要なこととは?開業までの準備を紹介創業計画書記入時のポイント
日本政策金融公庫に飲食店開業資金の融資を申請するときには、まず「創業計画書」を作成しなければなりません。
創業計画書とは、今から始める新しいビジネスの内容や概略、方向性や計画をまとめたものです。
具体的には
・創業に至る動機
・経歴
・提供するサービスの内容
・雇用の有無
・現在の借り入れの状況
・必要資金
・事業の見通し
を記載します。
まず、創業に至った動機は「どうして飲食店を開業しようと考えたのか」です。「なんとなく思いついた」とか「今の仕事が嫌だった」という弱い動機より、「美味しい物を食べて貰いたい」「食を通して伝えたいことがある」というような、志や熱意を感じられるような動機を記載するのが望ましいでしょう。
次に、経営者の経歴ですが、これは開業しようとしている飲食店と経営者の経験がリンクしているかがポイントになります。
続いて、提供するサービスを記載します。飲食店であれば、どんな料理を提供するのかやセールスポイント、他の飲食店との差別化がこの項目に該当します。セールスポイントは、ぼんやりとしたものではなく明確で具体的な方が望ましいでしょう。
例えば「新鮮な食材を使用したスイーツ」と書くより「経営者が開拓した独自のルートで仕入れた地元の牧場のバターと卵を使用したケーキ」と書いた方が具体的です。
次に、開業した場合に従業員を雇用するのかは雇用創出という条件を満たすかどうかに直結しますので、従業員やアルバイトを雇う予定であれば記載してください。そして、契約者の今の借り入れの状況も必要です。信用情報機関の閲覧に同意を求められるため、正直に記入しましょう。
必要資金に関する項目は、創業計画書のとても重要な部分です。必要な資金の内訳と資金調達の方法や計画の内容は、融資の判断に大きく影響します。この必要資金の後に続くのが、事業の見通しです。
事業の見通しは創業した直後からビジネスが軌道に乗った後の利益についての項目です。もちろん、見通しですから現実になると決まったわけではありませんが、理想や妄想、希望ではなく客観的な視点と根拠が必要です。
地方銀行・信用金庫の制度融資・都道府県の制度融資における資金調達
地方銀行・信用金庫の制度融資
日本政策金融公庫からの融資とは別に、地方銀行や信用金庫の融資制度を利用することができます。
設備資金は日本政策金融公庫から受ける融資と自己資金でまかない、運転資金を地方銀行や信用金庫の制度融資でカバーするという方法もあります。
各銀行には、保証付融資やプロパー融資といった金融商品があります。
保証付貸付けとは、信用保証協会の保証を受けて銀行が事業資金を融資するというものです。もし、債務者が返済不能に陥った場合には、信用保証機関が代わりに支払いをします。このタイプの融資には融資の上限が設けられていますし、保証料の支払いが必要になります。
そして、プロパー融資は信用保証協会の保証を受けない融資です。融資の限度額が設けられていないものもありますが、保証協会の後ろ盾がありませんので、審査がとても厳しくかなりの信用がなければ融資が難しいとされています。
開業資金の場合は、信用保証協会の保証がある融資が多いのが現状です。まずは保証協会月の融資で開業し、その後、信用を作り上げてプロパー融資を受けるというケースもあります。
都道府県の制度融資
制度融資とは、中小企業や個人事業主向けに作られた制度のことです。地方自治体、民間金融機関、信用保証協会が連携して提供している制度となります。
都道府県の制度融資の場合、自治体の指定を受けている銀行や信用金庫が窓口となっており保証料や利息の一部を自治体が補助しているというものが多くなっています。
自治体が運営しているため、制度設計が全国一律ではないため手続きが複雑に感じられることもあるほか、審査に時間がかかるというデメリットもあります。
ですが、政治融資は金利が低く、経営や運営に関するアドバイスをしてくれる経営支援が付属しているケースもあります。開業すると孤独になってしまいやすい個人経営者にとってとても心強い制度でもあります。
ネット銀行やクラウドファンディングを活用した資金調達
ネット銀行
ネット銀行とは、インターネットを介した取引をメインにしている銀行のことです。窓口がある銀行よりATMの利用手数料が安かったり、振込手数料が安かったりといったメリットがあることから利用者が増えている新しい形の銀行です。
代表的なネット銀行として、楽天銀行や、ソニー銀行、auじぶん銀行、住信SBIネット銀行、オリックス銀行などがあります。
ネット銀行の事業資金融資は、ビジネスローンと呼ばれることも多いのですが、主な特徴として以下の3つが挙げられます。
・審査のスピードが早い
・低金利
・24時間インターネットで取引ができる
また、窓口業務の時間に制約を受けないため24時間いつでも利用でき、融資の申し込みもインターネットで完結するものがほとんどです。
流れとしては、必要書類を集めた上でインターネットで申込んだ後、メールまたは電話で審査結果が伝えられます。その後、連帯保証の手続き(必要な場合)を行えばお金が振り込まれます。
制度融資や政策金融公庫の融資の場合は、対面での書類の提出などが必要ですが、ネット銀行は非対面で事業資金融資の申し込みができるというのもメリットです。
事業資金融資を受ける場合の必要書類は主に以下の通りです。
・納税証明
・住民税決定通知書
・所得証明書
・確定申告書
・住民票など
非対面がいいという方や、審査のスピード感を重視したいという方に向いているといえるでしょう。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、群衆と資金を合わせた造語です。クラウドファンディングでは、不特定多数の人に対して自分の「目標や理想」を訴えることで、資金の援助をしてもらうという資金調達方法のことです。
インターネットで行われるクラウドファンディングは、不特定多数の人に応援して貰うというもので、ビジネスの目的や理想が明確で多くの人から支持される場合に有効な資金調達の方法です。
クラウドファンディングには、サービスを購入してもらう購入型と寄付金を募る寄付型、そして、投資をしてもらう投資型、そして、サービスでお返しをするサービス型があります。
飲食店の場合は、開業前にクラウドファンディングを募って資金を調達し、開店後にお返しをするサービス型を取り入れている事例が多くみられます。オープン前のプロモーション効果にも有効な手法のひとつです。
なお、クラウドファンディングは「目標金額」を設定して自分の目標や理想に必要な資金を募るという形ですが、当然、すべてのクラウドファンディングが成功するわけではありません。目標金額に達しないこともありますので、いかにして人の心をつかんで魅力あるビジネスモデルや理想を打ち立てることができるかがポイントになります。
つまり、これまで紹介してきた融資とは全く違う角度からのアプローチが必要となります。クラウドファンディングで得た資金は、融資ではないため返済の必要がありません。その反面、投資をしてくれるひとりひとりが個々の判断で「応援したいと思えるか」という審査が行われるともいえるでしょう。
クラウドファンディングのシステムは原則として無料で利用できます。飲食店特化型のクラウドファンディングサービスもありますので、飲食店を開業する場合には活用しやすいでしょう。
親族関係からの資金調達
飲食店を独立開業するときの資金調達でよく利用されるのが、家族や親戚などにお願いをして開業資金を借りるという方法です。
このような融資は、個人的な人間関係の上に成り立つものですので、銀行などの事業資金融資のような書類や審査がなく「応援したい」という思いでお金を用意してくれるというケースもよくあります。また、親族関係からの資金調達は、信用情報機関への登録もありませんし、返済に関しても銀行などの金融機関より融通が利くというメリットもあります。
また、金融機関からの融資を前段階として、親族関係からの資金調達をしておくと有利に審査を進められる可能性もあります。
親族関係からの資金調達をする場合は
・返済義務があるのか
・利子はどうするのか
・返済期間
などを書面にしておくといいでしょう。
親族関係ではあるものの大きなお金が絡む話となりますので、約束事はいつでも確認できるよう書面に残しておくのが理想的です。親族関係から融資を受けて、万が一、トラブルになった場合には、自分だけでなく親や兄弟などを巻き込んでしまう可能性もありますので注意してください。
家族や親戚にお金に余裕がある人がいるという場合は、まずは相談をしてみるというのも悪くない方法です。融資を受けるための準備は計画的に
飲食店の開業資金は、約1000万円程度と高額のため、融資を受けて開業するというケースが大半です。
そして、満足に資金調達を行うには計画性も必要です。
融資で調達する金額や自分の個人資産の状況を客観的に判断して、適切な方法で資金調達を行いましょう。
参考記事:起業に必要な資金はいくら?資金の目安と調達方法を解説
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