居酒屋は大手チェーンの大規模戦略で拡大を見せた時代の変化に直面していると言われています。その要因には酒税法改正やEコマースの浸透による外食離れやアルコール消費の多様化が見られるようです。その一方で食材に特化もしくは低料金高回転率を目指す居酒屋などが目立つ傾向も。居酒屋を開業するにあたり、繁盛するための対策についてお伝えしていきます。
居酒屋を開業するにあたり、準備しておきたい5つの項目を軸に構成します。以下で、それぞれの詳しい内容について解説していきます。
居酒屋のメニューや値段帯、座席の配置、店の規模など、コンセプトを固めましょう。その際、周囲の競合の調査、客層など立地条件の特徴などから絞り込むのも得策といえます。
自己資金、親や知り合いからの資金調達、金融機関の融資などをすべて計上に入れ、綿密な計画を立てましょう。居酒屋店舗を賃貸する場合は、家賃、保証金、礼金などが発生することも念頭に入れ、総資金の洗い出しを行います。
提供するメニューによっては、厨房器具や設備投資も変わる可能性があります。ひいては調達資金にも影響しますので、新品購入、中古、もしくはリースでのランニングコストなども加味して準備を進めていきましょう。
飲食店を経営する場合に必須となる許可書、保健所や消防署への届け出等の準備に取り掛かります。資格には、提供する特化メニューに関連する免許なども必要であれば取得の予定を立てておきましょう。(例:フグ免許等)
居酒屋の収容数、コンセプト、形態や周辺競合施設などを考慮した立地条件を選びましょう。
物件を確保するための賃貸契約書類準備や厨房機器などのリース契約、買い取りの際の造作譲渡などの取り決めも確認しておきます。
飲食店開業の最初に知っておきたい基礎知識は、
こちらの記事でも紹介しています。
居酒屋開業に向けた一般的なスケジュールをまとめました。居酒屋の準備からオープンまでの一例としてご覧ください。
居酒屋開業までのスケジュール例
時期 | 項目 |
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12ヶ月~10ヶ月前 |
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9ヶ月~7ヶ月前 |
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6ヶ月~4ヶ月前 |
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3ヶ月~1ヶ月前 |
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当日 |
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開業する居酒屋の規模や提供する料理に応じてスケジュールは前後しますが、ここでは一般的なスケジュールを参考に、居酒屋開業までスケジュールをご紹介致します。
隣接の主要駅や周辺商業施設などのトラフィックを利用してオープンのチラシなどを配布するところもあるようです。オープン初日限りのキャンペーンなどのイベントを開催するのも得策と言えるでしょう。
飲食店開業に向けた準備の流れに関して、さらに詳しくはこちらの記事でイラスト付きで紹介しています。
開業1か月前に確認しておきたいことは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
居酒屋を開業するために必要となる資金は、主に4つに分類できます。以下で、内容についてさらに詳しく解説していきます。
店舗を賃貸する場合の初期費用に含まれる金額に、保証金があります。立地場所によって変わりますが、一般的に賃貸料の6ヶ月分から12ヶ月分程度かかるようです。他には、敷金・礼金として約2か月分の家賃、仲介手数料として家賃1ヶ月分と初月の家賃の物件取得費用が必要となるようです。
内装費の平均は地域や立地条件などによって幅がありますが、相場の一例として水道工事約60万円、電気工事80万~120万円程度、ガス約30~40万円、空調設備が約80~120万円といった金額がかかるようです。一般例ですが、建具などにこだわる和風内装は、洋風建築よりコストがかかるとも言われています。厨房器具や備品は初期費用の約20%までに抑えられると理想でしょう。
6割以上の飲食店の事業が軌道にのるまで約6ヶ月掛かると言われます。経営が軌道に乗るまでの予備資金として、半年分の赤字補填資金が必要になってきます。運転資金の主な内訳として、家賃、人件費、水道光熱費、材料費などを確保できるよう対策を講じておきましょう。
店舗立地の決定のための調査費用や、スタッフの研修費も開業資金として予備費に計上しておくと良いです。他にも、広告のための印刷代金や新聞広告などの掲載やマーケティングに必要な費用もその他のコストとして加味しておくことをおすすめします。
居酒屋開業の資金に関して、
お金の区分などはこちらの記事で紹介しています。
居酒屋開業の資金計画に関して、
詳しくはこちらの記事で紹介しています。
居酒屋開業にあたり、資金調達の主な4種類の方法をご紹介します。以下で、詳しい内容やメリットについても解説していきます。
個人交渉と信頼を基に資金調達でき、返済がフレキシブルにできることがメリットと言えます。金融からの資金調達の際、血縁や家族の融資は、個人資産として申告できるケースもあるため有利です。自己資産に合算することで融資額が増加できる可能性もあります。
「中小企業経営力強化資金」制度は、無担保、保証人なしで融資が受けることができます。 利率が「新創業融資制度」より約1%低い特典などを活用して資金調達が可能です。認定経営革新等支援機関の専門家が代行でき、オーナーの時間削減ができるメリットも魅力的と言えます。
営業許可書が発行されることを条件に融資が実行されるケースが多いのが、金融機関の融資です。ただし、融資のための中小企業診断士の面談や書類準備が多くなりがちですので早めに準備にかかりましょう。また審査結果が2か月程度かかると言われていますが、創業セミナーなどのサポートがあり、時間があれば特典が多い融資です。
キャリアアップ助成金や創業補助金を利用するのも得策です。ただし、補助金・助成金の制度は、飲食店独立開業から1年後の融資になることが多いようで、運転資金として検討の余地があります。また融資条件に縛りもあるため情報入手と研究をしっかり行いましょう。
資金調達・融資に関して、さらに詳しくはこちらの記事で紹介しています。
「食品衛生責任者」は各自治体が実施する講習を受けて取得する資格です。受講料は地方によって差がありますが、およそ8千円から1万円ほどです。この資格は、飲食店の営業許可を保健所から受けるための必須事項となります。全国どこでも取得ができ、事業主でなく従業員が取得しても構わないという条件の資格です。
「防火管理者」は、店舗の収容人数が、従業員も含めて30人を超える場合に必要な資格となります。管轄の消防署が実施する講習を受講して獲得します。場所によって差がありますが、3千円から5千円程度の手数料がかかります。また、防火管理者はオーナーもしくは店長が取得しておくべき資格となっています。
居酒屋の開業で持っていると便利な資格に関してはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。
居酒屋を営業する際に、届け出によって提出する機関が変わります。以下で届け出期間別の申請書類を解説します。
「食品営業許可申請」は、食品を提供する全店舗の申請が必要です。店舗内装完了の10日前までに申請が義務付けられています。申請受領後、保健所から検査員が派遣され、店舗の検査が行われます。
「防火管理者選任届」は、従業員を含む30人以上収容の店舗は申請が必要です。「防火対象設備使用開始届」は、新しい建物使用の場合に提出を求められます。「火気使用設備届」は、厨房設備、ボイラーなどの設置前に申請を済ませておきます。
「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」は、深夜以降にお酒の販売をする申請書です。営業開始の10日前までに提出を済ませておきます。「風俗営業許可申請」は、接客行為がある店舗に必要となる届出です。
「個人事業の開廃業等届出書」とは、個人事業主が税金関連の処理のために必要となる書類です。開業1ヶ月以内に申請を済ませておきましょう。
「労災保険加入手続き」は、従業員を雇用する場合に必要となります。雇用日の翌日から10日以内の申請を期限としています。
「雇用保険加入手続き」は、従業員を雇用する場合に必要な届け出です。従業員雇用日の翌日から10日以内に提出を求められる申請書です。
「社会保険手続き」は、法人は強制加入が求められます。個人は任意ですので、申請条件などに合わせて、できるだけ速やかに申請を済ませておきましょう。
気になる開業届提出に関してはこちらの記事でメリット・デメリットを詳しくご紹介しています。
居酒屋経営の成功には、次に挙げる5つがポイントとなると考えられます。以下で、さらに詳しい内容について解説していきます。
居酒屋の成功率の4割を立地が決めるとよく言われます。好立地条件の例として、公共交通機関からアクセスがよい、商圏範囲に位置する、住宅地が近い、1階店舗などが挙げられます。店舗探しの際は、あらかじめ集客力のある立地を調査するとよいでしょう。
周辺の競合居酒屋とは重複しないメニューを特化させてマンネリ化を回避してみましょう。フランチャイズ化なら、近隣で初めての出店など話題性にも効果的な店舗作りとなります。同時に、客のニーズにあった接客のためのスタッフ教育などに注力すると競合との差別化を図ることができるでしょう。
お店の特化商品を開発してみましょう。コンセプトで統一化されたお店作りは、居酒屋のブランド作りが容易になります。ここでしか食べられない、飲むことができないドリンクメニューなどを提供することで、客単価のアップにもつながります。
食材と他分野のコラボレーションによる新分野の改革を思考してみましょう。近年多くのビジネスで導入されているデジタル商品や、便利な支払いの手段としても使えるウォレットを起用することも話題性と魅力につながります。人気アプリなどテクノロジー融合の居酒屋作りは、最新のビジネス戦略です。
客層に合わせたデジタルマーケティングにも積極的に取り組んでいきましょう。Facebook、Instagram, Twitterなどで居酒屋のキャンペーン企画や告知など、他店とのサービス差別化が図れます。同時に人気メニューを強調したり、新しいメニュー開発をしたりするなど、リピーターを確保するための戦略も有効的でしょう。
新規開業の飲食店のおよそ50%が1年以内に廃業に追い込まれているというデータもあるくらい、飲食業の経営は簡単ではありません。戦略的に運営することで、日銭収入に頼らない経営方針を確立したいものです。また、運転資金は、一般的に最低6ヶ月分確保が理想といわれ、補填対策も円滑な運営のカギと言えるでしょう。
その他飲食店の「成功の秘訣」はこちらの記事でも紹介しています。
居酒屋の開業資金のなかでも物件確保や内装は、全体の50%以上を占めると言われています。居酒屋成功のための物件選択は、注意したい点が次の5つあります。下記で、その理由と詳しい内容について解説していきます。
前店舗が居酒屋や飲食店の場合、居抜き物件は設備などを再利用でき、コスト削減になります。居抜き物件は内装からオープンまでが短期間で済みます。スケルトン物件は、コンセプト通りのスタイルに内装することが容易という利点があります。一方で、賃貸契約後に内装に着手するスケルトンは、経費も時間もかかるという反面もあります。
前店舗が同じ飲食業で廃業に追い込まれたのなら、立地条件に問題があるかもしれません。気に入ったロケーションなら、閉店の理由から解消できる条件やコンディションを検討し、改善策、もしくは別件を検討してみましょう。
賃貸契約の際に、物件の築年数を確認しておくことをおすすめします。古い物件では後々、修理を余儀なくされる場合もあります。また、衛生面対策への別途費用などを考慮して、物件の築年数も検討すると良いです。
売り上げとは関係なく固定費として出費する家賃は、可能であれば10%以下に抑えたいところです。初期費用の保証金なども、立地条件を加味して適切かなどの確認もしてみましょう。また、規模的に最低売り上げを見込める席数が確保できるかなども検討が必要です。
厨房やインターネット・電話回線など特定のサービスを受けられるエリアかどうかなど、導線のスムーズさは客の回転数にも影響してきます。また客が入りやすい入口、トイレの場所、使いやすさなどは十分かという認識で店舗を選択しましょう。ビジネス向上のために、通りからの目立ち方、店舗周辺の道路の整備などは適切かといったポイントもチェックしてみましょう。
物件選びに関して詳しくはこちらの記事でも紹介しています。
最後に、居酒屋開業で繁盛する店作りをするための参考データを基に、数字で見る経営収支について理解を深めておきましょう。canaeru独自調査で得た参考データをご紹介します。あくまで参考データのため、地域や店舗規模によっても数字が異なる可能性があります。1つの基準値として参考にしてみてください。
開業資金には一般的に、物件取得、内装費用、設備費用、人件費、水道光熱費、備品などが含まれます。繁盛店の平均的開業資金は、地域にもよりますが、約1,500万円から2,100万円が相場と言われています。あくまで参考データであるため、開業資金の投入は店舗面積や店舗物件のタイプによっても上下します。
月商とは、売り上げを含めたすべての総収支を示します。月商は、(客単価(目標)× 席数 × 回転率(目標))× 営業日数 = 月商という計算式で求められます。独自調査によると、一般的な繁盛店では約400万円から700万円の月商が見込めると考えられます。
客単価は、ひとりの客が平均して一回に支払う金額のことを指します。全体の総売り上げを総客数で割って客単価を計算することができます。独自調査から、一般的な繁盛店の客単価は、約1,600円から5,000円と考えられそうです。
回転数とは、1席が1日に何回転したかという割合を表しています。総客数÷席数で求めることができ、数字が大きいほど客の回転がよいという基準となります。お酒を楽しみ長居しがちな居酒屋では、平均的に3回転できる店は繁盛店として認識されるようです。
席数は、一回に座れる客の収容数を表しています。居酒屋などの飲食店では、テーブルなどの4人掛け以上の席も多いため満席状態はまれと言われています。居酒屋は1坪あたり1.5席を平均として、席数を確定することが一般的なようです。
1席が1日にどのくらいを売り上げているかという平均値を示す値です。この数字が高いほど、客1人の単価も高いと考えられています。1日の平均を見るため、曜日や月間で繁盛日や時期を知るデータとして有効に活用することができる数字です。
居酒屋業態は、これまでに繁盛してきたスタイルではマンネリ化しているという状況があるようです。新しい食文化の開拓や、特化食材など先鋭化したコンセプトが求められているとも言えるでしょう。そういう意味では、提供するメニューやコンセプトに沿ったフレキシブルなサービスも求められるかもしれません。スマホ世代に浸透するSNSマーケティング対策も加えながら、戦略的な経営をしていきましょう!
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