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[物件]立地調査・物件選び
物件選びで知っておきたい「基準値」
家賃は固定費。売上規模にあった家賃で物件を探そう
飲食店を経営するにあたって、特に大きな経費となるものが3つあります。そのうちのひとつが「家賃」です。どんなに良い物件が見つかったとしても、売上規模と見合わない物件を選んでしまうと大きなリスクを背負うことにも繋がります。この章では、物件を選ぶ決め手となる「家賃の基準値」についてお話ししていきます。
<家賃と売上の適正比率は7~10%>
開業コンサルタントによると、飲食店における「家賃の基準値」は、売上目標の7~10%の金額にとどめることが理想です。坪数が少なく、客単価の低い小さな店舗は7%、坪数が多く、客単価も高い大きな店舗は10%までが適正な家賃比率といわれています。もし、その数値をオーバーしてしまうと他の経費を圧迫してしまい、赤字になる可能性が出てしまいます。家賃は変動することのない固定費ですから、契約する段階でいくらまで捻出できるのかしっかりと計算しておいたほうがよいでしょう。
<家賃の基準値を知るために、売上目標を計算しよう>
「家賃の基準値」は売上目標の7~10%以内と述べましたが、適正な賃料を知るためにまずは売上目標金額を出さねばなりません。売上目標金額の計算方法は、『売上規模や経費、投資額を算出する』で触れた通り、1坪あたりの月間売上金額の「坪売上高」で導いてみましょう。ここでは、月間売上(坪月商)の基準は15万円~20万円といわれています。
そのため、20坪の飲食店であれば
20坪×月間坪売上15~20万円 = 300~400万円
が一ヶ月の売上目標金額となります。適正賃料=売上目標金額×7~10%ですので、ここでは仮に売上目標金額を350万円とすると、
350万円×7~10%=24.5~35万円
が適正賃料となります。つまり、この基準値におさまる家賃の物件が選ぶべき物件といえるでしょう。
<出店したいエリアの賃料相場を知ろう>
売上目標金額から、家賃に割ける適正賃料を計算することができましたが、出店したいエリアの賃料相場と見合わない可能性も考えなければいけません。先ほどの計算でいくと、家賃比率を7%とした場合、1坪あたりの賃料は12,250円になります。しかし、集客力のある駅周辺で、1階を希望するとなると予算を超えてしまう可能性があるのです。ここで、一般財団法人・日本不動産研究所が発表している2016年時点の主要エリアの賃料相場を見てみましょう。●北海道・札幌駅、大通周辺
全フロア:(上期)¥10,200/(下期)¥11,400
1階 :(上期)¥14,300/(下期)¥13,000
1階以外:(上期)¥9,900/(下期)¥10,700
●仙台駅周辺
全フロア:(上期)¥15,600/(下期)¥14,700
1階 :(上期)¥22,100/(下期)¥22,700
1階以外:(上期)¥13,200/(下期)¥12,500
●東京・渋谷エリア
全フロア:(上期)¥23,800/(下期)¥24,400
1階 :(上期)¥31,800/(下期)¥35,200
1階以外:(上期)¥22,600/(下期)¥22,600
●東京・銀座エリア
全フロア:(上期)¥27,900/(下期)¥30,100
1階 :(上期)¥50,200/(下期)¥50,900
1階以外:(上期)¥26,900/(下期)¥28,600
●名古屋・栄エリア
全フロア:(上期)¥14,200/(下期)¥14,000v 1階 :(上期)¥18,800/(下期)¥20,300
1階以外:(上期)¥13,700/(下期)¥13,500●大阪・心斎橋エリア
全フロア:(上期)¥15,300/(下期)¥15,700
1階 :(上期)¥27,100/(下期)¥28,100
1階以外:(上期)¥11,900/(下期)¥11,700
●福岡・天神エリア
全フロア:(上期)¥13,400/(下期)¥13,200
1階 :(上期)¥17,900/(下期)¥19,300
1階以外:(上期)¥12,500/(下期)¥12,000
出典:一般財団法人・日本不動産研究所『店舗賃料トレンド2017春』より引用ご覧の通り、人で賑わう主要駅の周辺や、開発が進む地方都市での賃料は高く、適正賃料を遥かに超える予算が必要となる場合があります。そういったエリアで開店したい場合は、売上目標金額と家賃の予算を高い水準で設定する必要があるでしょう。しかし、上記に挙げたエリアは極端な例です。ある程度の繁華街や商店街、ロードサイド店などの賃料相場はぐっと下がりますので、1坪12,250円の予算でも十分に物件を探すことができます。インターネットで希望エリアの詳細な賃料相場を調べることもできるので、希望したエリアと適正賃料のバランスが合っているかを確認してみるとよいでしょう。
FLRコストとは
冒頭で、「飲食店を経営するにあたって、特に大きな経費となるものが3つあります」と述べましたが、それが飲食三大経費と呼ばれる「FLRコスト」です。
FLRコストとは、
・F=Food(フード):食材費
・L=Labor(レイバー):人件費
・R=Rent(レント):家賃
の頭文字を取った略称です。この3つのコストを適正比率におさえられるかどうかが、店舗経営において利益が出るカギとなります。それでは、FLRコストがどんな支出を指すのか、具体的に見ていきましょう。
<FLRコストの中身>
●F=食材費
提供するメニューやドリンクの材料費のことです。食材の廃棄ロスが多いとF比率が上昇し、経営を圧迫してしまいます。しかし、食材を無駄なく使い、効率よく仕入れることができればFコストは安定し、売上確保に繋がるでしょう。よく「コストパフォーマンス」という言葉を耳にしますが、お客様はできるだけリーズナブルな値段で、原価の高いメニューを楽しみたいという期待を持っています。Fコストを抑えたいからといって安い食材を仕入れるのではなく、質の良い材料で、上手に複数の料理に転用しながら、おいしいメニューを提供することが繁盛店へと成長していくのです。
●L=人件費
人件費はアルバイトへの給与だけでなく、法定福利費、福利厚生費、賞与、役員報酬などのコストを指します。もちろん、経営者本人の給与もLコストに含まれています。アルバイトのシフトをうまく組めなかったり、適切な人員配置を行えなかったときはLコストが増加します。高水準の接客サービスやホスピタリティを求める店舗もまた、人材教育に費用と労力をかける必要があるため、コストバランスの配分に注意する必要があります。
●R=家賃
家賃の中には、共益費も含まれることを忘れてはなりません。物件によっては、空調費やゴミ排出費、駐車場費などもかかる場合があります。これらも毎月の家賃として計上する必要があります。また、物件を契約する際には、敷金や礼金、更新料など様々な金額が加算されます。家賃以外の費用については、のちほど説明します。
<FLRコスト比率の基準値とは>
先の項目で、R=家賃の比率は7~10%が望ましいと述べました。残る、F=食材費とL=人件費の割合はというと、FLコスト=売上目標金額×60%が理想の基準値です。業態によって差はありますが、そのうちFコストは25~35%が目安といわれています。
これに、Rコストを加えるとFLPコスト=売上金額×70%となります。つまり、材料費・人件費・家賃の三大コストを売上金額の70%におさめるのが経営を黒字化できる基準値となります。自宅に店舗を開業するなどしてRコストをおさえた場合は、その分黒字が見込めます。Fコストに余剰を回し、こだわりの食材を仕入れるのも良いでしょう。FLRコストが70%を上回らないよう、どこにお金をかけ、どこを節約するかが経営者としての腕の見せどころかもしれません。
契約時の注意点(家賃以外の費用)
家賃にかけるべき基準値を理解したところで、実際に物件を契約する上で注意したいポイントがあります。それは、物件の契約形態や引き渡し条件、敷金・礼金・更新料など家賃以外にかかる費用についてです。
<契約形態を確認しよう>
店舗物件を賃貸契約する場合、契約形態は2種類あります。
① 普通建物賃貸借契約
あらかじめ1~2年などと契約期間が定められており、解約を申し出なければ自動的に更新されます。一般的な賃貸借契約はこの契約形態です。
② 定期建物賃貸借契約
10年、もしくは15年などとある程度の長期間の契約が定められた形態です。原則、期間が満了すると賃貸借契約は終了し、途中解約が可能か、再度契約しこのまま店舗を続けられるかは条件によって様々です。定期建物賃貸借契約は、契約書とは別に書面の取り交わしが必要となるため、契約時には顧問弁護士などの第三者も挟みながら内容をしっかりと理解・納得してから契約に臨むべば万全です。
<入居時と退去時の注意点>
物件を契約する前に交渉したいのが、家賃の発生タイミングです。契約を開始した時点か、それとも工事を開始した時点かで、店舗開業前の初期費用が変わってきます。できれば契約締結前に家賃の発生タイミングを交渉し、少しでも遅らせることがベストです。また、その際に退去時の条件も忘れずに確認しましょう。契約を解除した際の原状回復をどこまで求められるかで、負担が大きく違います。特に居抜き物件は、どこまで借主の負担で原状回復しなければならないのか、よく確認する必要があります。貸主の指定業者で原状回復を行わなければならない場合は、工事費用が割高になることも。他にも、借主が工事した内装などをオーナーに売却する権利があるのか、保証金の返還時期はいつ頃なのかもあらかじめ確認しておくと、もし経営がうまくいかなかった場合も慌てずに済むでしょう。
<家賃以外の費用>
毎月の家賃、共益費以外にも、現実的な負担金額があります。
① 保証金/敷金
保証金は、一般的な不動産賃貸の敷金と同じく、家賃を滞納した場合や、物件に損害を与えた場合の担保となります。そのほかに、建設予定の物件を借りる場合、貸主が建物を建設するための資金を借主から借りるという性質もあるため、物件によっては多額の保証金を求められるケースもあります。保証金は、契約解除時にしか戻ってこないため、しっかりと予算を確保しておく必要があります。また、保証金の返還時期も退去時にすぐに戻ってくることもあれば、数年経ってから返還されるという場合もあるので、借主に不利益な条件がないか、不当な特約が盛り込まれていないか、あらかじめ契約内容をしっかり確認してください。
② 更新料
期間満了時に契約を更新する際に必要な費用です。一般的な不動産賃貸と同じく、更新料は家賃の一ヶ月分という内容から、保証金から更新料を補填するなど、物件によって条件は様々です。更新時にいくら必要なのかを前もって把握し、実質的な家賃はいくらになるのか総合的に考える必要があります。まとめ 「物件選びで知っておきたい「基準値」」
- ・家賃は売上目標金額の10%までにおさえる
- ・出店エリアの賃料相場を知り、物件探しの基準にしよう
- ・飲食三大経費の「FLRコスト」の比率を守る
- ・物件契約時には契約形態、入居時・退去時の条件、その他費用をしっかりと確認する
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