飲食店の始め方

飲食店開業マニュアル

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[準備]人員(従業員)

人時売上高の目安とは?飲食店における人員数の決め方と計算方法

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おさらい:FL比率の基準値

 『物件選びで知っておきたい「基準値」』でも触れた「FL比率」。飲食店には三大経費と呼ばれる「FLRコスト」というものがあり、Fは食材費(Food)、Lは人件費(Labor)、Rは家賃(Rent)です。そのうちのFコストとLコストを足して算出した比率こそ「FL比率」です。FL比率は、あなたのお店が儲かっているかどうかを判断する一つの指標になります。FL比率も原価率と同じく目安にすべき基準値があるので、改めてFL比率をおさらいしていきましょう。

 まず、FL比率を算出するためにはFLコストを出さなければなりません。

FLコスト=F(材料費)+L(人件費)

そして、FL比率の算出方法は

FL比率=<F(材料費)+L(人件費)>÷売上高

になります。FL比率の基準値は、一般的に60%が望ましいとされています。50%以下であれば、高い水準でFLコストをコントロールしている優良店です。かなり効率の良い店舗と言えるでしょう。50~55%は、平均よりもコストをおさえることができており、まず目指すべき理想の数値となります。60%をキープすることが及第点ですが、60%を超えてくると赤字になる可能性が高くなります。FL比率の60%のうち、Fコストの割合は30%前後、Lコストの割合は25%前後が目安となります。F比率=原価率の基準値は、業種・業態によって変動します。詳しくは前章の『食材やドリンク、その他必要物の仕入れ方法』で解説していますので参考にしてください。

<なぜFL比率を意識する必要があるのか?>
●儲かっているかどうかのボーダーラインになる
 FL比率は、どれだけ利益が出るかのボーダーラインになるのです。もし、FL比率が70%を超えてしまうと、そこにLコスト(家賃)も計上したあとの利益はわずかしか残りません。そのわずかな利益も借入金の返済や減価償却、光熱費などで引かれてしまい、手元に残る利益はゼロ……となってしまっては大変です。店舗経営においてはFL比率をキープすることが何よりも重要なのです。もしFL比率が基準値よりもオーバーする月が続いた場合は、早々にFLコストの内訳を確認し、経営改善を図りましょう。

●売上目標を決める目安になる
 FL比率の基準値が60%とお話しました。その比率を活用し、売上目標金額を決めることもできます。

売上目標金額=FLコスト÷FL比率60%×100

 例えばFコスト(材料費)が100万円、Lコスト(人件費)が90万円かかったとします。FL比率60%を目指すとすると、達成すべき売上目標金額は316万円になります。もし、FL比率50%の優良店を目指す場合は380万円の売上が必要になります。一ヶ月の営業日を26日とすると、1日の売上目標はFL比率60%なら12.1万円、50%なら14.61万円が必要になります。もちろん、平日と土日では来客人数や単価も変わってくると思いますが、目指すべき金額を立てることで日々の営業努力に繋がってきます。
参考記事飲食店のFL比率(FLコスト)とは?計算方法や数値の目安を解説

人時売上高とは

 従業員を雇ううえで注視したいのが「人時売上高」です。「人時売上高」とは、1人の従業員が1時間にいくら売上を上げることができたのかを算出した数字です。人事売上高をコントロールすることで、適正なスタッフ人数を割り出すことができます。

<人時売上高の計算式>
 前提として、店長や正規雇用者、アルバイトなどそれぞれ給与や時給は異なると思いますが、人時売上高を算出するには全従業員の労働時間を一括りにして計算します。計算方法は以下の通りです。

人時売上高=店舗の月間売上高÷店舗の月間総労働時間

 もし、月間の売上高が300万円あり、月間の総労働時間が800時間の場合は、人時売上高は3,750円になります。つまり、1人あたり1時間に3,750円の売上を上げていることになります。

<人時売上高の基準値>
 人事売上高の理想的な値段は、5,000円程度と言われています。一般的には、3,000円~4,000円程度の人事売上高が平均値となりますが、5,000円を超えていれば優良店となります。人時売上高は、高ければ高いほどいいというわけではありません。人時売上高が高いということは、少ない人数で売り上げを上げているということです。優秀なスタッフ揃いで、人数が少なくてもお店の営業に支障をきたさなければ素晴らしいことですが、スタッフが少ないことでお客様に迷惑を掛けてしまっている可能性もあるのです。スタッフが少ないせいでなかなか注文を取りにこない、料理がこない、会計を待たされる……などお客様の不満に繋がらないよう、人事売上高5,000円を目安にシフトを組むようにしましょう。

<人時売上高を参考に、適切なシフト作成を>
 先述した『売上目標を決める目安になる』で紹介した計算式をもとに1日の売上目標金額を出し、人時売上高で割ると1日の目標総労働時間を出すことができます。

1日の目標総労働時間=1日の売上目標金額÷5,000円(目標人時売上高)

 例えば、1日の売上目標金額が15万円として、その売上を5,000円の人時売上高で達成するためには30時間以内の総労働時間に収めることが必要になります。つまり、その日働いている人たちの労働時間の合計が30時間になるようシフトを組めば達成可能ということです。シフトを作成するときは、労働時間の合計が目標総労働時間になるように、混雑時間帯はスタッフの人数を厚く、それ以外は少ない人数で営業するよう意識すれば、理想的なシフトスケジュールを組むことができます。とはいえ、5,000円の目標人時売上高を達成するために、スタッフひとりひとりの負担がキャパオーバーしてしまうのも問題ですので、現場の様子を見ながら作成するようにしてください。

顧客満足を下げないように営業をしっかりイメージ

 先ほどから警鐘を鳴らしていますが、人件費のコストダウンや目標人時売上高にこだわるあまり、顧客満足度が下がってしまったら客足は遠のいてしまいます。人件費のコントロールと人員のコントロールはとても難しい問題なのです。客単価の高い、いわゆる高級店では顧客満足もハイレベルな水準を求められます。行き届いたサービスを実現するためにはまず、スタッフの人数を十分に配置していることが前提となるでしょう。

 それでも人件費をおさえたいという場合は、下記の3つの施策を実行してみましょう。

① 来客人数・混雑時間帯を予測して最適なシフトを組む
② スタッフ一人一人の能力を伸ばす
③ 誰でも作業ができるよう、マニュアルを作成する

① 来客人数・混雑時間帯を予測して最適なシフトを組む
 お店の営業を続けていくうちに様々なノウハウが溜まっていきますが、混雑する時間帯や時期なども把握できるようになります。何時から何時までがラッシュタイムで、客入りが少ないアイドルタイムはいつなのか、毎月の繁忙期はいつ頃なのかを読み取れるようになると、最適なシフトを組めるようになるでしょう。また、店舗の近くでイベントが開催されるときは客足の増加が期待できるので、スタッフを揃えておくとチャンスロスを回避できます。そのほか、突然お店が暇になってしまった場合は、アルバイトやパートにシフトよりも早く上がってもらうよう指示をしましょう。その日の状況を見てフレキシブルに対応することで、人件費を抑えることができます。

② スタッフ一人一人の能力を伸ばす
 少ない人数でもオペレーションできるよう、スタッフ一人一人の能力を伸ばすことも大切です。一人あたりの生産性が上がり、滞りなく営業することができれば、スタッフの人数が少なくとも顧客満足は維持できます。スタッフの能力を伸ばすためには、店主や先輩従業員からの教育が必要です。教育の成果を出すには時間と根気が必要ですが、新規スタッフを教育する土壌ができれば将来的に必ず良い結果が出るでしょう。

③ 誰でも作業ができるよう、マニュアルを作成する
 個人経営や家族経営でない限り、スタッフを雇ってお店を切り盛りする必要があります。例え、オーナーや店主がいなくてもお店が回るようにするには、誰がやっても作業ができるという環境が必要です。その環境を作るためには、②のような地道な教育が必要ですが、手順を記したマニュアルがあればより正確に作業を教えることができます。マニュアルは、大きくわけて2種類あります。いつ・どこで・誰が・何をするかを示した「オペレーションマニュアル」と、具体的な作業手順を示した「作業マニュアル」です。誰がやっても同じ作業ができるよう、マニュアルは早い段階で用意するようにしましょう。

まとめ 「飲食店における人員数の決め方」
  • ・FL比率の基準値は60%。超えないように注意しよう
  • ・FL比率を活用して売上目標金額を算出することもできる
  • ・スタッフ1人あたりの売上高を示した「人時売上高」も重要
  • ・人時売上高は多くても少なくても問題だが、5,000円前後をキープできれば優良店
  • ・人件費や人時売上高にこだわるあまり、顧客満足度を下げないようにしよう

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