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[資金]日本政策金融公庫の活用
創業融資でのチェックポイント
資金の「貸す側」の目線=収支計画の現実性
前章の「開業融資の定番!日本政策金融公庫の『新創業融資制度』」では、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」をはじめとした様々な融資制度のご紹介と、融資までの手順について説明しました。前章では「借りる側」の目線で融資を受ける方法を述べてきましたが、この章では「貸す側」の視点に立って、どうすれば融資が通りやすくなるのか考えてみましょう。そうすれば、融資を受けられる可能性が自ずと高まっていくはずです。
<「貸す側」の視点に立てば、“融資が通る開業者像”が見えてくる!>
●開業したい理由は明確か?
あなたがなぜお店を開業しようと思ったのか、なぜその業種で開業しようと思うのか、なぜお金を借りてまで「いま」事業を始める必要があるのか、こういった質問に対する明確な答えはお持ちでしょうか? あなたが「貸す側」の立場なら、“なんとなく”といった生半可な気持ちの人に大切なお金は貸せませんよね。融資の担当官は、事業計画書や面接を通して事業の将来性を見ると同時に、あなたがどれほどの熱意を注いでいるかも見ています。もし、あなたが会社を辞めて、経験のない飲食業に飛び込もうというのなら、その決断をするまでに至った経緯やきっかけをしっかりアピールすべきです。同じく、同業態で働いていたのに独立をしたいという方は、自分のお店を持ちたい動機や前職との差別化をどうやって図るのかなど具体的な案を示してください。そして、融資を受けてまで「いま」開業すべき理由や必要性もしっかりと伝えましょう。
熱意を伝えるのは面接の場でもいいですが、融資申し込みの際に提出する「創業計画書」とともに文書を提出すると良いでしょう。分量はA4サイズ1枚程度で構いません。もし、開業の理由の一つに“社会貢献”がある場合はその旨も伝えましょう。国の金融機関である日本政策金融公庫の場合は、新しい産業や雇用の創出を伴う事業を積極的に推進しているのでプラスに働く可能性が高まります。
●しっかりとした事業計画を立てているか? 推進する力はあるのか?
「創業計画書」の中で最も重視されるのが、「事業の見通し」の項目です。「事業の見通し」には、創業当初から事業が軌道に乗るまでの売上高や売上原価、その他経費などの月平均を記入する項目があります。同業種で働いたことのある方や、事業経験がある方はある程度の数値の予測を付けることはそう困難なことではないかもしれません。しかし、未経験で事業を始める場合は、売上やかかる経費の予測は難しい作業になるでしょう。その場合は、同業他社の数値をリサーチし、あなたのお店の場合はどのような数値になるのか徹底的にシミュレーションしましょう。『売上規模や経費、投資額を算出する』の章ではシミュレーション方法にも詳しく触れていますのでぜひ活用してください。
開業時にかかる初期投資額などは、仕入れ業者にあらかじめ見積りを取るなどしてアバウトな数字を記入するのは避けてください。特に開業時は「内装」「設備・什器」など大きな金額なものもかかりますので、最初から目算と実績がずれてしまう事態は避けたいところですね。
融資の担当官は、お金を貸すのが仕事ではなく、貸したお金で事業が成功しお金がきちんと返ってくるのを見極めるのが仕事です。あやふやな事業計画では融資をするに値する事業と見なされないでしょう。より説得力のある「創業計画書」にするためには、「創業計画書」のシートを埋めるだけでなく、売上計画の中に来客数や客単価などを設定したり、融資の設備資金・運転資金などをこと細かに明記するなどして正確性を高めてください。原価と経費、税金を差し引いたあとの利益が、月々の返済額をしっかりと上回るような内容にならなければいけません。すでに事業経験があり、融資を返済したことがある方はその経験も伝えましょう。
●あなたは信頼に足る人物か?
融資の担当官は、事業の内容はもとよりあなたの人間性や信頼能力もチェックしています。特にお金にだらしのない方には融資などできません。開業コンサルタントによれば、過去に自己破産、債務整理を経験している方は借金を完済してから5年以上経過していないと融資は非常に厳しいのが現状です。また、税金や光熱費、住宅の家賃などの支払いが滞っている場合も問題です。面談時には、過去半年間の家賃の支払いの領収書も必要になりますから、支払い忘れているものがないか必ずチェックしましょう。同じく、預金通帳も過去半年分の明細を提出する必要がありますが、自己資金があるように見せるために一時的に預金を増やすのもNGです。親族や友人の了承を得て借りたお金がある場合は、贈与契約書を用意するなどして賃借の証拠を残しましょう。
また、社会経験に乏しい方への融資も難しいのが実情です。異業種の経験しかない場合は、これまでの勤務経験や培ってきた能力などを伝えて、事業を成功に導く力があることを担当官にもイメージさせることが重要です。
●融資希望額は適切か?
日本政策金融金庫の融資制度は、いずれも融資限度額は数千万と高額です。しかし、その金額はあなたが借りられる金額の上限という意味ではありません。基本的に、融資は自己資金に見合った金額の範囲内で決定します。ある程度、まとまった自己資金がなければ融資の金額も少額になることを念頭に置いてください。逆に、十分な自己資金があっても融資希望額が相場より高い場合も問題です。例えば、800万の自己資金があったとして、融資希望額を2,400万と申請するとなると、なぜそれほどの多額な資金が必要なのか妥当性が疑われます。融資希望額は自己資金と総経費に見合った金額で、かつ金利を含めて返済できる額で設定しましょう。楽観的な予測より、多少のトラブルを想定した「余裕のある」計画を
何事においても目標を立てるときは上向きな目標を立てがちですが、ビジネスにおいてはより堅実な目標に留めておくのがベターです。毎月の売上高が右肩上がりで成長していくのが理想ですが、良いときもあれば悪いときもあるというのが定説でしょう。年間を通してみれば、年末年始や夏季休暇などを挟む月は営業日数が少なく、そもそも売上が伸びないと予測できる時期もあるはずです。そうしたネガティブな要素も含めて、より確実性のある緻密な事業計画に仕上げていくことが大切です。また、居抜き物件の店舗で前テナントからの設備を使用する場合、故障するリスクなども考えておくべきです。社会保険に加入するならば法定福利費が発生しますし、火災や食中毒などのトラブルに備えて損害保険料なども考慮しておかねばなりません。経営者が突然の病気やケガに遭ってもカバーできる施策や、生命保険への加入も検討するべきです。そうした諸経費も事業計画に含めていったほうがよいでしょう。また、ネックとなるのが税金です。所得税、個人事業税、償却資産税なども差し引いた上で、借入金を返済できるか試算しておくことが重要です。“なんとかなるだろう”と考えるのではなく、多少のトラブルを想定した「余裕のある」内容で、隙のない事業計画を立てていきましょう。
審査は何度もできない。事前のブラッシュアップが重要
ここまでの説明で、懸念すべきことの多さにたじろいでしまった方もいるかもしれません。ありとあらゆることを想定しながら事業計画を立てるのは非常に骨が折れることであり、時には頭を抱えることもあるかもしれません。ですが、なぜここまで気を配る必要があるかといえば、審査は何度もできないからです。融資の申し込み回数や期間に制限が設けられているわけではないですが、計画や資料に不備・不足があるまま提出しては「開業への真剣さが伺えない」と捉われてしまうかもしれませんし、心証も悪くなります。また、融資申込みから借り入れ開始まで約1ヶ月はかかりますから、審査が滞ったり、落ちてしまったとすると開業スケジュールにも支障をきたします。そういった事態に陥らないよう、提出資料や申込み内容については事前のブラッシュアップが重要になります。『canaeru』の「個別相談窓口」では、日本政策金融公庫をはじめとした元融資担当者が直接あなたにアドバイスをします。審査に入る前に、申込み内容は妥当かどうか、提出資料に間違いはないかをチェックするとともに、不安に思っていることがあれば事前にご相談ください。プロのサポートを活用し、万全の準備で審査に臨みましょう!
必要な補足資料はしっかり添える
日本政策金融公庫のWEBサイトで、申込みに必要な書類のリストが記載されていますが、これまでの説明通りそれだけでは不十分かもしれません。できれば提出したい「補足資料」もあります。
・開業の動機がわかる資料
・「事業の見通し」を裏付ける、売上シミュレーションや資金用途に関する資料
・親族や友人からお金を借りて自己資金とした場合、贈与契約書などの資料
・年間の事業スケジュールや、諸経費の見積り
・提供予定のメニュー表
・そのほか、事業計画の補足資料などさらに、店舗のサービス内容や事業内容が一般的にわかりづらい場合は、ビジネスの流れがわかるような資料も添えておくとよいでしょう。全て揃えなければいけないというわけではありませんが、自分だけで順調経営をイメージできていても、融資だけは「貸す側」の相手にそれが共有できないといけないのが難しいところです。補足資料によってそれが補えるのであれば、そこには努力する価値もあるでしょう。
融資の担当官と相談を重ねていくうちに、追加資料なども要求されるかもしれません。その際は、きちんと用意して資料を向上していきましょう。融資の担当官は、あなたが提出した書類と資料をもとに審査すると同時に、決裁権限者に融資を掛け合うのです。より有利な交渉となるようしっかり応じていきましょう。まとめ 「創業融資でのチェックポイント」
- ・「貸す側」の視点に立てば、“融資が通る開業者像”が見えてくる!
- ・審査を通過するには“熱意”と“計画の妥当性”が必要
- ・トラブルに備えた「余裕のある」内容で、隙のない事業計画を立てる
- ・プロの力を借りて、提出資料をブラッシュアップしよう
- ・事業計画を裏付ける補足資料をしっかり添付しよう
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