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法人化・法人成りの成功法則!個人事業主が知るべき5つのメリットと戦略とは?

法人化・法人成りの成功法則!個人事業主が知るべき5つのメリットと戦略とは?

個人事業主としてビジネスを展開している方にとって、法人化はひとつのステップとして検討する価値があります。法人化することで、ビジネスの信頼性が向上し、節税効果や資金調達の幅が広がるなど、多くのメリットが得られます。

しかし、法人化には準備と戦略が必要です。本記事では、法人化を成功させるために知っておくべき5つのメリットと具体的な戦略について詳しく解説します。法人化を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

法人化とは?

法人化とは、個人事業主である個人(自然人)が新たに法人を設立し、当該法人に従来の事業を承継させる手続を指し、法人成りともいいます。この場合、当初の個人事業主とは法律上別人格である法人格が誕生し、自然人と同じように権利義務の主体となります。その結果、個人の資産と法人の資産が分離されることにより個人のリスクが軽減され、また責任範囲が原則有限責任になるなど、事業をより安定的に運営することが可能ないくつかのメリットを享受することができます。

また、法人化により取引先や金融機関からの信頼を得やすくなるというメリットもあります。法人化は、事業の成長や規模の拡大を目指す個人事業主にとって、重要なステップとなるでしょう。

法人化を検討する際には、法人の種類や設立手続、運営にかかるコストなどを十分に理解することが重要です。法人には株式会社や合同会社、NPO法人など様々な形態がありますが、選択する法人の種類によって、設立手続や運営方法が異なります。そのため、自分の事業に最適な法人形態を選ぶことが大切です。

経済産業省|経済産業

個人事業主と法人の違いを比較


比較項目個人事業主法人
税制面・所得税(累進課税:5%〜45%)
・事業所得として計算
・青色申告で65万円または55万円の控除あり
・赤字は3年間繰越可能
・法人税(23.2%の基本税率、中小法人は15%〜)
・役員報酬は経費計上可能
・赤字は10年間繰越可能
・節税対策の選択肢が豊富
社会的信用・個人名義での契約
・規模の大きい取引先の開拓が難しい場合も
・融資の審査が厳しい傾向
・法人名義での契約
・取引先からの信頼性が高い
・融資を受けやすい
・取引先の幅が広がる
責任範囲・無限責任(個人資産まで責任が及ぶ)
・事業失敗時のリスクが大きい
・有限責任(出資額の範囲内)
・個人資産は守られる
事務負担・手続が比較的簡単
・青色申告は複式簿記が必要
・開業届のみで開始可能
・設立手続が複雑
・法定書類の作成義務あり
・株主総会・取締役会などの開催
・決算公告の義務
資金調達・基本的に自己資金や個人向け融資
・出資を受けることが難しい
・株式発行による資金調達が可能
・法人向け融資を受けやすい
・投資家からの出資も受けやすい
保険制度・国民健康保険
・国民年金
・保険料は全額自己負担
・社会保険(健康保険・厚生年金、介護保険)
・労働保険(雇用保険・労災保険)
※社会保険料は会社と個人で折半
※雇用保険は、事業の種類により割合は異なるが労使で負担
経費計上・生計費との区別が必要
・家事按分の必要性
・事業に関する費用は広く経費計上可能
・役員報酬や役員賞与も経費計上可能

法人化で得られる5つのメリットと具体的な効果

法人化することで個人事業主から一歩進んだ経営が可能になります。具体的なメリットとしては、まず「節税効果」が挙げられます。例えば、年間所得が900万円を超える場合、法人税率の方が所得税率より低くなり、年間利益1,200万円で法人化後に約150万円の節税に成功したケースがあります。

次に「社会的信用力の向上」です。法人化したことで大手企業との継続的な取引が増え、3年で売上が2倍に成長した成功例があります。また、「資金調達の容易さ」も重要で、ある飲食店経営者が事業拡大に向け法人化。2号店目の出店のための資金繰りが容易になりました。

「リスクの分散」も見逃せません。法人化することで会社と個人の資産を明確に分離することが可能です。これにより個人資産が守られ、安心して事業運営に専念できます。

最後に「福利厚生の充実」です。ある企業は法人化後に社会保険の導入や退職金制度を整備し、優秀な人材の確保と定着率向上に成功。特に厚生年金に加入できることで従業員の将来設計をサポートし、人材採用面での競争力を高めました。

節税効果の一例

法人化による節税効果の例としては、適切な役員報酬の設定が挙げられます。所得を法人内に残す利益と役員報酬に分けることで、法人税と所得税のバランスを最適化できます。例えば年間利益1,500万円の場合、役員報酬を960万円に設定し、残りを法人内の利益として15%の税率を適用すれば、個人事業主時と比較して約100万円の節税が可能です。

さらに、家賃や通信費などの経費計上についてのメリットも考えられます。例えば、自宅の一部を事務所として法人に賃貸し、適正家賃を法人の経費に計上しながら個人の不動産所得として申告する方法で、トータルの税負担を軽減できるケースもあります。

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従業員採用・定着率を向上させるコツ

法人化により社会保険加入が可能になることで、採用活動での優位性が高まります。特に厚生年金は国民年金より将来受給額が大きく、求職者にとって魅力的な条件となります。法人ならではの福利厚生制度を整備することも効果的です。

法人化後、確定拠出年金制度や財形貯蓄制度を導入し、応募者数が1.5倍に増加した企業があります。これに加え、役員報酬とは別に賞与支給の仕組みを設計し、業績連動型のインセンティブ制度を構築したことで、従業員のモチベーション向上と定着率アップを実現しています。

また、会社名義での社宅制度や借上げ社宅制度の導入も可能になり、この制度を活用して地方から優秀な人材確保に成功したケースも。法人としての信用力を活かした研修制度の充実や資格取得支援も、長期的な人材育成と定着に寄与しています。

法人化の手続と準備の流れ

法人化の手続は大きく「法人設立前」と「会社設立登記」の2段階に分かれます。まず会社の基本事項(会社形態、商号、事業目的、資本金額など)を決定し、必要書類を準備して法務局に申請する流れとなります。スムーズな法人化のためには、以下の事項を計画的に進めることが重要です。

法人設立前の7つの準備手順

設立前の準備を7つに分けると、以下のようになります。

1.会社形態と基本計画の決定
2.商号(会社名)の決定と調査
3.事業目的の明確化
4.本店所在地と役員構成の決定
5.資本金の決定と調達
6.定款の作成と認証
7.資本金払込と口座開設

1.会社形態と基本計画の決定
企業形態として「株式会社」か「合同会社」のどちらを選ぶかを判断し、会社の運営方針や計画を明確に設定します。それぞれの形態には特徴とメリット・デメリットがあるため、事業の性質に合わせた選択が必要です。

2.商号(会社名)の決定と調査
会社名(商号)を決め、法務局で事前に類似商号がないか調査を行います。他社との競合や混同を避けるため、唯一性のある名前を選定することが重要です。

ときおり、同一の所在場所における同一の商号でなければ登記が可能であると紹介されることがあります。そのこと自体は誤りではありませんが、「不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある商号を使用してはならない」という会社法上の定めがあることにも注意を払う必要があります。したがって、念のためではありますがこの調査は怠るべきではありません。

3.事業目的の明確化
現在の事業内容だけでなく、将来的にどのような展開を予定するかも考慮し、それを含めた事業目的を設定します。法務局での登記時には具体的な文言が必要になるため慎重に検討します。

法律上、許可等が必要な事業を開始する予定がある場合には、当該許可をする権限のある行政庁により、事業目的の文言について指示がある場合があります。あらかじめ、行政の窓口で確認をすることがスムーズに事業を開始するコツとなります。

4.本店所在地と役員構成の決定
登記上の会社の所在地を決定し、会社を運営するための取締役や代表取締役などの役員を選任します。役員の任期も検討する必要があります。

5.資本金の決定と調達
事業規模に応じた資本金の額を決定し、実際にその資金を準備します。資本金は会社設立後の信用にも関わるため、慎重に検討しましょう。融資を申し込む予定がある場合には、その融資の条件も確認するとともに、許可等を必要とする事業については、会社法以外の関係法令により資本金(若しくは純資産)の要件が存在する場合があるので要注意です。

6.定款の作成と認証
会社の基本規則を記載した「定款」を作成し、公証役場で公証人の認証を受けます。ただし、合同会社の場合は不要です。

7.資本金払込と口座開設
発起人名義で銀行口座を開設し、決定した資本金をその口座に払い込みます。この手続は資本金額が確認できる必要があるため、設立過程の重要なステップです。

会社設立登記の進め方

会社設立登記の進め方は、主に以下のようになります。

1.必要書類の準備
2.登録免許税の支払いと申請
3.登記完了の確認
4.関係機関への届出
5.事業開始の準備

1.必要書類の準備
登記申請に必要な書類を作成し、会社の印鑑(代表印・銀行印)を用意します。

2. 登録免許税の支払いと申請
会社の所在地を管轄する法務局で、申請書類を提出し、登録免許税を支払います。税額は資本金額に応じて異なります。なお、申請をした日(申請書類を提出した日)が会社の設立日となります。これは、後日登記事項証明書でも確認できます。大安の日など、縁起の良い日を選びたい方も多いと思います。よく検討して決定しましょう。

3. 登記完了の確認
法務局で審査を経て、登記が完了します。登記の完了までの日数は、一週間程度で済むこともありますが、混み具合などによりその都度変動します。申請時に、窓口で完了予定日を忘れずに確認しておきましょう。窓口に掲示されていることもあります。

4. 関係機関への届出
税務署や都道府県税事務所、市区町村役場に法人設立届等を提出。また、社会保険や労働保険の手続も行います。

5. 事業開始の準備
銀行口座を会社名義で正式に開設し、事業の開始に向けて必要な準備を進めます。必要に応じて設立を公表します。

これらの手順を行うことで、会社設立が完了し、法人としての活動を開始する準備が整います。しかし、設立登記申請に必要な書類は多岐にわたるため、注意が必要です。
登記申請書
定款
資本金の払込証明書
発起人の同意書(株式会社の場合)
役員の就任承諾書
設立時の代表取締役選定書(株式会社の場合)
印鑑届書
登記すべき事項を記録した書面(電子定款を利用しない場合)
監査役の就任承諾書(必要な場合)
登録免許税の納付を証明する書類 など

必要な書類は会社形態(株式会社・合同会社など)によって異なる場合がありますので、事前に管轄する法務局に確認してください。

法人化に必要な費用の内訳は?

法人化を検討する際には、その過程で発生する費用について把握しておくことが重要です。法人化には初期費用と運営費用の2種類の費用が存在します。初期費用は会社設立時に必要な経費であり、運営費用は法人として活動を続けるために継続的に発生する費用です。これらの費用を事前に理解し、計画的に資金を準備することで、法人化のプロセスをスムーズに進めることができます。以下では、それぞれの費用について詳しく解説します。

設立時に必要な初期費用


定款認証費用
約4~6万円(電子定款認証の場合)
公証人手数料:3~5万円
収入印紙代:4万円(電子定款の場合は不要)
謄本代:数千円
登記費用
約15万円〜25万円
登録免許税:資本金の0.7%(最低15万円〜)
司法書士報酬:約5万円〜10万円(依頼する場合)
印鑑作成費
約1万円〜3万円
会社実印:5千円〜1万円
銀行印: 5千円〜1万円
角印:5千円〜1万円
その他の初期費用
約1万円
登記簿謄本取得費:約1千円
印鑑証明書取得費:約500円
定款のコピー代:数百円
銀行口座開設手数料:無料〜数千円

これらの費用は会社の規模や業種によって異なるため、自身の事業に必要な項目をリストアップし、具体的な金額を見積もることが大切です。法人化の初期費用は、事業のスタートを支える重要な投資ですので、無理のない範囲で資金を準備しましょう。

毎月発生する運営費用


税理士費用
月額2万円〜10万円
記帳代行:1万円〜5万円
決算申告:年間10万円〜30万円(月額に換算すると約1万円〜2.5万円)
社会保険料
月額5万円〜15万円
健康保険・厚生年金:給与の約15〜20%
労働保険:給与の約1〜2%
固定費
※運営状況により大きく異なります。
支払家賃、通信費、水道光熱費、役員報酬、租税公課など
会計ソフト・クラウド費用
月額5千円〜2万円
会計ソフト利用料:月額数千円〜1万円
クラウドストレージ:月額数百円〜数千円

法人化後には、毎月の運営費用が発生します。法人としての活動を安定して続けるためには、これらの運営費用をしっかりと管理し、収支のバランス及びその資金繰りを安定させることが重要です。法人化を成功させるためには、初期費用だけでなく、毎月の運営費用についても十分に理解しておきましょう。

法人化成功のポイント

法人化を成功させるには、適切なタイミングと準備が不可欠です。年商1000万円を超え、今後の事業拡大が見込める段階での法人化が理想的です。

また、専門家との連携も重要です。税理士、司法書士、行政書士その他の専門家に相談しながら進めることで、適切な会社形態や資本金額の設定が可能になります。専門家と連携し、業界特性に合った事業計画と資金計画(この場合、認定経営革新等支援機関に相談することも推奨されます。)を立てることで、法人化後のキャッシュフローを安定させることができます。

個人事業主時代に培った取引関係は法人化後も強みとなります。取引関係を途切れさせないよう、法人化前に主要取引先への説明と契約変更手続は丁寧に行いましょう。

失敗事例から学ぶ対策方法

法人化に失敗するケースの一つに、資金計画の不備があります。法人化には登録免許税や司法書士への報酬など、初期費用がかかります。これらを見落として資金不足に陥ることは避けたいところです。事前に詳細な資金計画を立て、必要な資金を確保しておくことが重要です。また、法人化後の運営費用も考慮に入れる必要があります。

もう一つの失敗事例として、法人化の目的が曖昧であることが挙げられます。法人化は節税や信用力の向上など様々なメリットがありますが、それを具体的に活用するための戦略がなければ、効果を十分に享受できません。明確なビジョンを持ち、それに基づいた経営計画を策定することで、法人化の成功率を高めることが可能です。これらの対策を講じることで、法人化の失敗を未然に防ぎましょう。

よくある質問

法人化をする際の手続にどれくらいの時間がかかる?

通常、法人設立の手続は数週間から1ヶ月程度で完了しますが、事前の準備や書類の不備があると時間が延びることがあります。スムーズに進めるためには、事前に必要な書類を揃え、専門家に相談することをおすすめします。

許可等が必要な事業を営む場合には、当該許可等の法人への引継ぎや譲渡の可否、法人としての新たな許可申請の要否などが重要です。これらは業種ごとに様々な法的仕組みになっています。事前に確認することで、スムーズな法人化が可能となります。

法人化による税金の負担について

法人化すると、法人税や消費税の申告が必要になるため、税務の知識が求められます。しかし、法人化によって節税の幅が広がるケースもありますので、税理士と相談し、最適な税務戦略を立てることが重要です。

法人化後の社会保険の取り扱いについて

法人になると、社会保険の加入が義務となりますが、これにより従業員の福利厚生が向上し、採用活動においても有利に働くことがあります。法人化を検討する際には、これらの点を総合的に考慮し、メリットとデメリットをしっかりと理解することが成功の鍵です。

まとめ

法人化・法人成りは、個人事業主にとって大きな転機となります。法人化することで、節税効果や信用力の向上、事業の拡大など、さまざまなメリットを享受することができる可能性があります。しかし、成功するためには、事前の準備や手続が重要です。法人化の手続や必要な費用をしっかりと理解し、適切な戦略を立てることが求められます。

また、法人化後の運営においては、従業員の採用や定着率の向上、毎月の運営費用の管理など、継続的な経営管理が必要です。成功させるためには、ポイントをしっかりと押さえ、計画的に進めることが大切です。法人化がもたらすメリットを最大限に活用し、ビジネスの成長を目指しましょう。

この記事の監修

特定行政書士 認定経営革新等支援機関_石井 一也

特定行政書士 認定経営革新等支援機関

石井 一也

特定行政書士(行政書士法に基づく不服申立てを業務とすることができる行政書士)として、法人設立・運営、営業許可及び取引基本契約等の企業法務、相続をはじめとする民事法務を専門としている。
認定経営革新等支援機関としても活動し、企業法務の知見に加え事業・財務の分析をもとに経営改善、管理会計の導入支援、補助金の申請等、お客様の夢を達成するためのサポートに取り組んでいる。

事務所概要 | 行政書士 石井法務事務所

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