しっかりと売上を残せる飲食店にすることが、経営者として最も大切なことです。そのようなお店にするためには、売上だけでなく、経費についても考えなくてはなりません。この経費を考えるうえで重要なのが「FLコスト」です。このFLコストから導き出されるFL比率が、ある一定の数字を超えてしまうと、破綻にすらつながります。飲食店を経営するにおてい非常に重要なFLコストをしっかりと覚えておきましょう。
FLコスト・FL比率 とは?
経費を考えるうえで重要なのが「FLコスト」と呼ばれるもの。FLコストのFは「フード(材料費)」、Lは「レイバー(人件費)」です。そして、売上高に対してどれだけ材料費と人件費が占めているのかを表した数値がFL比率になります。業態によってFL比率は変化しますが、飲食店は55~60%程度が一般的であると言われ、この数値が50%以下なら、食材費、人件費に無駄がなく、しっかりと利益が上げられていると判断できます。
数値が60%を超えてしまうと、無駄なコストが発生している可能性があり、材料費、人件費の見直しが必要です。
FL比率の目安
飲食店のFL比率は55~60%が一般的であると上記で説明しましたが、FL比率ごとによる状況について細かく見ていくと以下のようになります。
<FL比率50%以下>
食材費と人件費の比率が高い水準でコントロールできており、まったく問題のないお店と言っていいでしょう。
<FL比率50~55%>
食材費と人件費の比率が高い水準でコントロールできています。良いお店の基準になるライン。
<FL比率55~60%>
状況は悪くありませんが、改善の余地はありそうです。
<FL比率60~65%>
人件費のほか、食材費のコントロールがうまくいってない可能性があります。早急な見直しが必要です。
<FL比率65%以上>
経営が破綻する可能性があります。一刻も早い見直しが必要でしょう。
業種別FL比率の水準
飲食店と一口に言っても、喫茶店やうどん屋さんなど種類は様々です。業種別のFL比率のおおまかな水準は以下の通りです。
<中華料理屋さん>
F(材料費):31% L(人件費):28% FL比率:59%
<喫茶店>
F(材料費):34% L(人件費):26% FL比率:60%
<蕎麦・うどん屋さん>
F(材料費):31% L(人件費):29% FL比率:60%
<イタリアン・フレンチ>
F(材料費):32% L(人件費):28% FL比率:60%
<日本料理屋さん>
F(材料費):35% L(人件費):27% FL比率:62%
<お寿司屋さん>
F(材料費):42% L(人件費):24% FL比率:66%
喫茶店とイタリアン・フレンチ、蕎麦・うどん屋さんは同じFL比率でも、FとLの比率はそれぞれ異なっています。蕎麦・うどん屋さんやイタリアン・フレンチよりも、喫茶店の方が手軽に始められそうな印象ですが、意外と取り扱う食材の種類が多く、使う材料が限られている蕎麦・うどん屋さんやイタリアン・フレンチよりもF比率が高くなります。お寿司屋さんは調理を担当の人数が少ないことでL比率が最も低いものの、新鮮なネタを扱う分、材料費が高くなります。業種によってそれぞれ課題となる項目が異なるので、それぞれの違いをあらかじめ把握しておくことも重要と言えるでしょう。
材料費を見直しの考え方とは?
材料費は経費の中でも大きな割合を占め、メニュー数が多いほど食材の種類、数も増加。そうなれば必然的に食材を無駄にしてしまう可能性があります。まずは、食材を無駄にしていなかを確認しましょう。無駄があれば、仕入れの数を調整する、メニューを少なくするなどの対処が必要です。
材料費は仕入れ値の変動などでも変わってきます。定期的なチェックを怠らないようにしましょう。
フードシェアリングを活用する
仕入れの数を調整すると言っても、完全予約制の店舗でない限りは、お客さんの来店数を完全に予想できるわけではありません。そのため、仕入れを減らしたことで、お客さんを断る必要が出てきてしまうと効率の良い経営とは言えません。そこで最近注目を集めているのがフードシェアリングです。フードシェアリングとは、商品の入れ替えや賞味期限が近付いている商品を廃棄したいと思っている飲食店と、安く商品を手に入れたい周辺のユーザーを結びつけるサービスです。フードシェアリングを活用することで、ユーザーに安く提供することで廃棄を防ぐことができるほか、F比率の改善にも期待できるでしょう。
売り切り方式にする
在庫を持たず、売り切ったらその日の営業は終了。これであれば大量に在庫を残してしまうという心配はほとんどなくなります。ただ、同時に利益の部分においては、チャンスを逃すことになる恐れもあります。
保存方法の見直し
例えば余った食材を真空パックすることにより、通常よりも保存期間を長くさせることができます。
場合によっては調理済みのものも真空パック保存。注文が入ったら湯煎や加熱料理で提供すれば時短にもつながるでしょう。
メニュー数を減らす
メニュー数がたくさんあれば、その分仕入れの種類も多くなります。その反対に、メニュー数を絞れば仕入れの種類も減り、また、同じ食材なので、使う頻度も増していきます。滅多に出ない材料を保存しておいて、ダメにしてしまう…。そんな機会も減ることでしょう。
スタッフ構成の方法
人件比率は20%ほどに抑えられると優秀とされており、30%を超えてしまうと、コントロールができていない状況であるとされています。従業員の労働時間やシフトを常に調整しながら、お店にとって無駄のないシフトを考えるのがオーナーの役目です。
ただし、人件費を意識しすぎるあまり、人手不足になり、その結果サービス低下に繋がる…などにならないよう注意しましょう。サービスが悪ければ、お客様が離れてしまうリスクもあり、そうなれば元も子もありません。店舗にあった適正なスタッフ構成を見つけ出しましょう。
利益を追い求め過ぎた結果・・・
利益を追い求め過ぎると、料理やサービスの質の悪化を招き、お客様離れに繋がる。そして最悪の場合、閉店へ…ということもあります。まずは、お客様へのサービスを第一に考え、そこの質は落とさない。食材費、シフト管理など、お店の無駄をなくすことで、経費削減ができるかを考えていきましょう。
FL比率で売上目標の目安の立て方
FL比率は従来利益率を求めるものであるため、無駄なコストが発生していないかどうかを判断するために使用されます。しかし、FL比率を活用することによって、飲食店に必要な売上目標を算出することも可能です。具体的な数字を用いて売上目標を求めてみましょう。
売上目標の算出事例
例えば、F(材料費)が100万円、L(人件費)が50万円の店舗があったとします。店舗がFL比率50%の条件を満たすには、毎月の売上はいくら必要になるでしょうか?FLコストの合計が150万円をFL比率の50%で割れば、1ヶ月の売上目標を算出することができます。この店舗の条件では、1ヶ月の目標売上が300万円となります。1ヶ月の営業日が25日である場合には、「300万円÷25日=12万円」という結果となり、1日の売上目標は12万円です。1日の売上目標である12万円を達成できる経営体制が整っているかどうかを判断し、整っていない場合はFL比率を見直すことが重要です。的確な経営改革を立てていくことが安定した店舗経営につながると言えるでしょう。
R(家賃)も計算式に含めて考える
飲食店の経営を行う際に発生するコストは、F(材料費)、L(人件費)だけではありません。店舗を借りる場合は、R「レント(家賃)」もコストとして発生することになるため、より正確に無駄なコストが発生していないかどうかを知るには、Rも含めた「FLRコスト」や「FLR比率」を考慮することが重要です。事業を始めるにあたって、FLコストだけで事業計画を立てていると、金融機関から「Rは考慮している?」と家賃が利益をどれだけ圧迫しているかという状況を判断できているか指摘される可能性があります。逆に事業計画を立てる際に「FLRコスト」や「FLR比率」を考慮していれば、どの程度の家賃の物件まで借りることができるのかを判断することも可能です。FL比率は50%が一般的な目安ですが、FLR比率は70%を超えないようにするのが一般的な目安です。店舗を決める際は、FLR比率が70%を超えない範囲で店舗を決めていけば、利益を確保しながら飲食店を経営することができるでしょう。
コロナ禍をFL比率見直しのチャンスに変える
新型コロナウイルスの影響で、飲食店は厳しい経営を迫れているところが多いことでしょう。しかし、逆にその状況をチャンスに変え、この機会に、FLコストを見直してみるのも良いかもしれません。
単純に食材ロスが出ないようにコントロールする、人件費を見直すなど、目先の数パーセントを下げるに留まるだけかもしれませんが、コロナ騒動を乗り切った際には、この見直しがきっとプラスに転じるはずです。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
