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飲食店のDXとは?取り組むメリットや事例、注目される理由を解説

飲食店のDXとは?取り組むメリットや事例、注目される理由を解説

昨今ビジネスの世界では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれています。それは飲食業界でも例外ではありません。コロナショックが後押ししたテイクアウトやデリバリーの拡大もあり、DX推進施策を模索する店舗も増えてきました。

しかし、DXとはインターネット注文を支えるだけの施策ではありません。既存業務をデジタル技術の導入によって効率化させ、新たな価値を生み出していくのがDXです。

本記事では、DXとは何なのか、飲食店におけるDXの必要性について解説していきます。いくつかの事例をひも解きながら、DX化のヒントを探っていきましょう。

飲食店におけるDXとは?

多くの企業、業種・業態と同様、DXは飲食業界にとっても未来を切り拓く大きな武器となりえます。それはもしかしたら、飲食店のあり方そのものを変える可能性すら秘めているかもしれません。飲食店業務のDXを考える前に、まずはDXとはなんなのかを理解しておきましょう。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

経済産業省によると、DXとは「デジタル化により社会や生活の形・スタイルが変わること」を辞書的な意味として掲げています。
参考 ミラサポ

わかりやすく解説すると「データとデジタル技術を活用し、顧客や社会のニーズにあわせてビジネスや業務そのものをより良いものに変革させていきましょう」ということです。しかし、DXの大きな目的は「DXを導入してほかの会社よりも儲かる仕組みをつくること」でもあります。

飲食業界でいえば、POSレジの導入などでレジ業務のデジタル化を推進すると、人員削減・業務の効率化ができるだけでなく、売上実績をデータで収集することで顧客のニーズの把握や業務改善、新商品開発などに繋がります。

こうした取り組みによって、新たな価値創造を目指すのがDXの根幹です。しかし、飲食業界では一部業務のデジタル化に着手している企業・店舗はあれど、さらに高度なDXに成功した事例はあまり聞こえてきません。その原因はどこにあるのでしょうか。

飲食店とDXとの相性

飲食店とは、本来「人と人とのふれあい」で成り立つ業態です。飲食店は、リアル店舗での「飲食」や「人とのふれあいによるサービス」という、デジタルによって置き換えることのできないモノが商品の中心です。インターネットをはじめとするデジタル技術との相性は、あまり良くないように思えても仕方ありません。

しかし、コロナ禍を経た今、飲食店の在り方は少しずつ変わってきています。飲食業界の人手不足が危機的状況のなか、デジタル化により業務効率が向上することで、人材教育や商品開発など有人業務への注力が可能となり、サービスクオリティの向上、ひいては顧客満足度向上にもつながるはずです。

ますます激しくなる飲食業界の荒波を乗り越えていくためにも、DXによる未来の可能性を模索していくことは、今後の飲食店経営者が取るべき道なのではないでしょうか。

飲食店におけるDXの可能性

飲食店でDXを推進したいと考えた場合、人手不足の解消や集客力の向上に使われることが多くなっています。しかし、DXの可能性はそれだけにとどまりません。

●会計業務と在庫管理を一元化するPOSレジアプリの導入
●モバイルオーダーシステム
●配膳ロボット
●予約システムのオンライン化
●AIによる電話の自動応対
●営業時間外のAIチャットボットによる問い合わせ対応
●会員カードの電子化
●LINEを利用した予約システム
 
このほかにも、数多くのDX施策が考えられます。特に、慢性的な飲食業界の人手不足を解消するにはDXの推進をおすすめします。飲食業界における人材確保は、デジタルツールの導入こそが効果的な成果をもたらす領域なのです。

たとえば、採用活動に注目すると、ZOOMなどの会議システムを利用したオンライン面接を行う店舗も増えてきました。また、応募者がスマートフォンで撮影した動画を投稿できる応募フォームの設置など、インターネットを最大限活用した人材獲得方法を模索する店舗もあります。

このことは、単なる採用活動のデジタル化というだけでなく、新たな価値をもたらしました。オンライン面接や動画による応募が現代の若者のライフスタイルとマッチした結果、以前より応募者の数が増えたという現象が起こっているのです。

それが、より優秀なスタッフの確保、ひいては店の戦力増強や売上アップへとつながり、大きな価値を生み出しています。こうしたデジタル活用で、新たな価値を生み出すことこそがDXです。こうした事例は、飲食店がDXを推進するひとつの理想的な可能性を示していると言えます。

飲食店におけるDX活用事例

ここでは、飲食店がDXを活用することで、どのようなメリットが得られたのか、実際の事例ごとに紹介します。DXを検討する際の参考にしてください。

接客力の向上

DXで業務を効率化したことによって、接客の質が向上したケースはいくつもあります。奈良に店舗を構えるスペイン料理店では、タブレットPOSレジを導入し、顧客管理機能を活用。新規の来店客とリピーターの顧客を簡単に見分けられるようになったことで、リピーターのお客様には過去の注文履歴を参照しながら的確な対応ができるようになりました。

また、POSデータを活用した売上分析を従業員全体に共有することで、根拠に基づいたメニューのおすすめが各自で可能に。以前よりお客様との距離を縮められ、より多くのお客様のリピーター化に成功しました。

出典 接客を強化したことで、より多くのお客様に何度も足を運んでいただけるようになりました

売上を見える化したことで従業員のモチベーションがUP

全国展開もしている九州料理店でもタブレットPOSレジを導入。売上目標や目標達成までの数値を見える化したことによって、どのように接客すれば売上が伸びるか、従業員が自ら考えるようになったといいます。

タブレットPOSレジは各店舗の集計や売上分析が瞬時にわかるため、経営判断にも貢献。分析を基に実施したハッピーアワーの強化やランチ営業などのさまざまな取り組みが功を奏しているようです。

出典 接客を大切にしたいからこそDXサービスで店舗の効率化を図りました

データ分析をもとに新メニューを考案

売上や顧客管理のデータ分析は、新メニュー開発にも役立てられます。お寿司を提供する神戸の飲食店では、POSレジを活用したABC分析を行うことで、顧客の新たなニーズが見えてきました。

同店では系列店と比べてアナゴの注文が多いことがわかり、データをもとにアナゴのサンドイッチを考案。すると、SNSを中心に高い評価を受け、看板メニューとしてお店のメニューに並ぶことになりました。

DXのメリットのひとつである分析機能を活用することで、お客様の細かいニーズがグラフなどを用いて視覚で読み取れるようになります。そこから見えるお店の強みを活かした新メニューを取り入れることで、売上の向上に成功したケースと言えるでしょう。

出典 分析をもとに考案した新メニューの“アナゴ”のサンドイッチがSNSなどで高評価をいただきました

スタッフ教育のDX事例

ここでは、スタッフ教育に焦点を当て、DXを推進している店舗事例を紹介します。

コミュニケーションが活発化し従業員の定着率がアップ

レストランやフードコートを高速道路のサービスエリアを中心に運営するある会社では、複数店舗への情報伝達とシフト管理を目的として、店舗マネジメントツールを導入しました。スタッフのシフト提出から店長のシフト作成、管理部門での勤怠管理までを一貫して行えるツールで、オペレーション業務の効率化に成功。それ以外にも従業員間で画像や動画を投稿できる機能もあり、コミュニケーションや情報伝達が円滑になりました。

一見すると無味乾燥になりがちなデジタルによる評価システムですが、従業員間で気軽にコミュニケーションを取れるようにしたことで、新人スタッフも溶け込みやすい雰囲気が生まれ、従業員の定着率がアップ
しています。

人材育成を効率化

和食系レストランを中心に全国で300店舗以上を展開するある企業では、サービスレベルを向上させ、顧客との信頼関係を深められるよう、動画マニュアルとSNSを連携させるシステムを導入。スタッフマニュアルをすべて動画で制作し、さらに自動字幕・翻訳機能を活用することで、同社に大勢いる外国人スタッフにもわかりやすく説明ができるようにしました。

また、同システムを利用して定期的に行っている店長会議などをオンラインに変更したことで、交通費や移動に伴う人件費を大幅に削減。それだけでなく、会議の模様を録画してシステム上に動画で公開し、各スタッフが自由にコメントすることが可能に。これまでのトップダウン型マニュアル教育だけでなく、現場からのよいアイデアを吸い上げるボトムアップ型教育も行うことができる
など、思わぬ副産物が組織全体の底上げにつながっています。

「投げ銭制度」導入で従業員のモチベーションがアップ

ある居酒屋チェーンでは、専用アプリを使って来店客が従業員に「投げ銭」できる制度を2021年にスタートさせました。いわば、日本では馴染みの薄い「チップ制度」をアプリで行えるようにしたのです。

このアプリをダウンロードした客は、来店時に貰えるポイントや自身で購入したポイントを、気に入ったスタッフに「投げ銭」として投票することができます。そして、従業員側はポイントに応じた金額を、給与とは別に受け取ることができます。その結果、従業員のモチベーションと接客力の向上だけでなく、顧客とのより深い接点が生まれる
など、大きな成果をもたらしました。

同社ではさらにこのアプリを商品化し、同業他社へ販売する新たなビジネスモデルを展開するなど、まさにお手本のようなDX戦略を行なっています。

飲食店でDXが必要な理由

DXの推進により業務の効率化を図ることができ、顧客満足度の向上やコスト削減などのメリットが期待できます。外食市場の変化や人手不足への対応が喫緊の課題となる中、飲食店にとってなぜDXが必要なのか、3つの観点から見ていきましょう。

外食市場の成長に対応するため

外食市場は近年、人々の生活スタイルの変化や価値観の多様化により成長を続けています。DXを活用することで、顧客のニーズを的確に把握し、効率的な運営とサービスの向上を図ることができます。例えば、AIを用いた需要予測による適切な在庫管理と人員配置や、デジタルマーケティングの活用によるターゲット層への的確なアプローチを可能にし、売上げ向上も見込めるでしょう。

非接触による接客を実現するため

新型コロナウイルス感染症の流行により、感染予防の観点から非接触型の接客ニーズが高まりました。従来の対面での注文受付や会計では、お客様とスタッフの接触は避けられませんでしたが、オンライン注文や決済システム、QRコード注文を導入することで、接触を最小限に抑えることができます。非接触型の接客ニーズが高まったことも、飲食店のDXを後押しする格好となっています。

人手不足を解消するため

飲食業界では慢性的な人手不足に直面しています。DXの活用により、業務の自動化やシステム化を進めることで、人的リソースを有効活用できます。例えば、AIやロボティクスを使った調理補助や配膳、レジ業務の自動化などにより、人件費の削減と効率化が期待できます。また、人事・労務管理システムの導入により、スタッフのシフト管理や給与計算などの業務負荷の軽減も可能です。

飲食店がDXを取り入れる際のポイント

ここまでDXを進めるメリットや理由を解説してきましたが、実際に飲食店がDXを取り入れる際、注意すべきポイントががあります。

投資対効果を考える

DXには一定の初期投資が必要となります。そのため、導入するシステムや機器が、本当に業務効率化やコスト削減につながるのかを事前に検討する必要があります。DXに要する費用と、DX導入後の効果を比較・分析し、投資対効果を十分に見極める必要があります。無理のない計画的な投資を心がけましょう。

デジタル化をゴールにしない

DXの本質は、単にデジタル化を進めることではありません。あくまでも、お客様への提供価値を高め、業務効率化を図ることがゴールです。デジタルツールの導入自体が目的化してしまうと、かえって非効率が生じる可能性があります。デジタルシフトの先にある本当の目標を見失わないことが重要です。

DXの仕組みを構築する

デジタルツールの導入は一過性のものではなく、継続的に運用していくための仕組み作りが不可欠です。DXを円滑に進めるには、社内にDXを推進するリーダーや専任チームを設置し、従業員への教育体制を整備する必要があります。また、データの一元管理やセキュリティ対策、システムの定期的な見直しなどを含む、包括的なDX戦略を策定することがポイントとなります。

DXを活用し、お店の価値を高めよう!

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術の活用により従来の業務プロセスを変革し、新たな価値を生み出すことを指します。飲食店におけるDXの代表的な施策としては、オンライン注文システムやキャッシュレス決済の導入、配膳ロボットの設置などが挙げられます。

しかし、飲食店がDXを推進する目的は、単なる人手不足解消や売上向上にとどまるものではありません。DXによる業務効率化を通じて、スタッフがお客様へ温かな接客に専念できる環境を整備することこそ、DXの最大の狙いなのです。デジタル化で人的リソースを適切に再配分することにより、飲食店本来の「人と人とのふれあい」を大切にしながら、質の高いサービスを提供できるようになるのです。

DXへの取り組みを検討する際は、初期投資に見合う効果が得られるかを慎重に検討する必要があります。また、デジタル化自体が目的化してしまわないよう注意を払いましょう。DXは単なるツールであり、本来の目標は「お客様への新たな価値提供」にあることを忘れてはなりません。こうした点に留意しながら、飲食店ならではのDX戦略を策定することが肝心です。

DXについてわからないことがあれば、『canaeru(カナエル)』にご相談ください。canaeruは飲食店をはじめとする、小売店や美容室などの開業や経営を無料でサポートする支援サービスです。

canaeruを運営元である株式会社USENは、税務、金融および企業財務に関する専門的知識や支援にかかる実務経験が一定レベル以上ある支援機関として、国から経営革新等支援機関(認定支援機関)と認定されています。

USENでは店舗DXを強く推進しているため、ご不明点や悩み事があれば、お気軽にお問い合わせください。

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この記事の執筆

 _株式会社USEN canaeru編集部

 

株式会社USEN canaeru編集部

飲食店をはじめ、小売店や美容室などの開業を支援する『canaeru』の運営を行う。店舗開業や経営に役立つ情報を日々提供し、開業者と経営者に向けた無料セミナーの企画・運営も担当。

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