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【小阪裕司コラム】第126回:彼女が人生の最後に出合えたもの

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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

生海苔の佃煮がつないだお客さんとの縁

 今回は、あるメーカーでのエピソードをご紹介しよう。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、海苔の養殖と加工、最終商品の製造・販売を行っている会社での出来事だ。
 同社で製造・販売している商品の中に生海苔の佃煮がある。中でも最高級に位置づけられている商品は代金もそれなりのものだが大変好評でファンも多い。そのファンの中にこういう方がいる。
 介護施設に入っている高齢のお母さんを持つ娘さん。お母さんは食が細く、1日5回に分けてお粥を食べていたが、以前は、それでもどんどん弱っていっていた。そんなとき同社の佃煮を知り、お粥と一緒に食べるようになったところ、大変食が進むようになり、1年後には顔色も赤みが差し、白髪一色だった頭髪も黒みが戻ってきた。その後は毎食欠かせず、カタログ販売期間の端境期で買えない期間があるのは困ることから、百貨店に問い合わせ、直接生産者である彼らにつないでもらったというお客さんだ。その後、何度も注文するのも面倒でまとめ買いできないかとの相談もあり、対応すると、50 本100 本とまとめ買いし、「本当にいいものだから、知り合いにも差し上げている」とおっしゃる方である。
 そうして何年か経ったある日、その方から手書きの丁寧なお手紙が届いた。そこにはこう記されていた。「突然ですが、私の母が永眠いたしました。生前○○(同社名)さんの生のりが大好きで、1日5回のお粥のともに食べさせていただいておりました。人生の最後においしい生のりに出合えて、どんなにか幸せな食事ができたことでしょう。感謝申し上げます。ありがとうございました」。これを読み感銘を受けた店主らはすぐに、おばあちゃんが大好きだった生海苔佃煮をご仏前に供えていただけるよう、お悔やみと感謝の手紙と共に送り、その後もお付き合いは続いているとのことだ。

仕事で誰かの役に立ち、誰かの人生を幸せにする

 店主は言う。「これは、たぶん初めて、僕たちがやっている仕事がこんなにも誰かの役に立ち、誰かの人生を幸せにできるんだな、と心から実感できた出来事でした」「誰かの役に立っている、誰かの幸せに貢献しているとリアルに実感できるからこそ、生産者として誇りを持て、仕事を楽しく思えるのではないかな、と本当に感じます」。
 私たちワクワク系では「魂のごちそう」という言葉をよく使う。それを味わえる瞬間にあるもの。それがともすればビジネス社会で忘れられがちな、真の「仕事の意味」なのである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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