開業には「売上計画」や「収支計画」を含む、具体的な「開業計画」が必要です。初めに事業計画書を作ることで、より店舗イメージが具体的になり、開業までのスケジュールもスムーズに進みやすくなります。
4つの資金に関する計画
資金に関する項目は「投資計画」、「売上計画」、「損益計画」、「返済計画」と大きく分けて4つに分類されます。
「投資計画」
開業の経験のない人にとって、資金が一体いくらかかるのかは予想がつかないかもしれません。しかし、計画段階での計上漏れは資金不足や支出のズレなどの問題を引き起こします。
一般的に、飲食店の開業に必要な投資金額は1坪あたり100万円前後と言われています。しかし、この金額は業態や物件状態によって変わるので予算はオーバーするものと考えましょう。
投資計画はなるべく多く見積もるようにし、計画の段階で確定総額の10%程度を「予備費」として計上しておけば、事業の安全性も高まるでしょう。
「売上計画」
店舗を経営の重要な計画のひとつに、売上げ計画があります。店舗の維持費や工事費用などは支出に関する計画であり、それらすべてをまかなうために、その店でいくらの収入を生むことができるのかということまでしっかりと計算を行っておく必要があります。
例えば、ひとりのお客さんに提供する商品がいくらなのかを算出すると、ひとりのお客さんが来ることでどのぐらいの利益を生むことができるのかということが分かります。それに加え、どの時間帯に来る人をターゲットにするのか、また、曜日や天気などによってもお客さんの入りは違ってくるので、このような項目をできるだけ細かく計算しておくと、より確実な売り上げ計画を立てる事ができます。
「損益計画」
損益計画を立てる際は、まず原則として利益をあげるように計画を立てる必要があります。そしてその利益は、経常利益10%以上を目指すように考えてください。
そして店舗を運営する上でどんな費用が必要なのか、ランニングコストを確認していきます。
経費項目として、【変動費】、【固定費】があります。
変動費とは、売り上げの変動により費用が変わる項目のことを指します。(原価、人件費、水道光熱費、販売促進費など)
トータルで売上金額の60~70%を目安とします。
固定費とは、売り上げが変動しても一定の額を払う必要がある費用のことを指します。(家賃、減価償却費、支払利息、リース料、本部費、固定契約料など)
トータルで売上金額の15~25%にします。
初めに計画をしっかりと立てておけば、多少売り上げが伸び悩んでもすぐに赤字になることは少なくなります。
少しずつでも常に利益を上げられることが健全な営業に繋がり、それが、お客様によりよいサービスを届けられることにも繋がっていきます。
「返済計画」
返済計画とは借り入れた金額を何年で返済していくのか。また、毎年の返済額や金利、そして返済年数(何年で借入金を完済できるか)の計画を立てることを指します。
飲食店で陥りやすい例として、黒字倒産という事があります。
黒字倒産とは、利益が出ているにもかかわらず、借入金の返済ができずに倒産すること。これは、税務上は借入金の返済は税引き後利益からしかできないということが理由になっています。
返済計画の計算式は「月々の元本返済額<税引き後利益+減価償却費」となります。大切なのは前項で試算した経常利益+減価償却費が返済額より大きいかどうか。損益計算書の利益額ではなく、最終的に手元に残る資金が最も大切です。
事業計画書は一度作成しても、何度も見直し練り直しましょう。現実的で無理のないものを作る事が重要なポイントです。
融資を受けることによるメリット
開業に向けた計画を立てているものの、なかなかお金が貯まらず、やっと貯まったと思った時には、開業予定の場所に近くに競合店ができてしまいチャンスを逃してしまったということもあり得ます。そのため、開業を速やかに進めていくには、自己資金だけでなく融資を受けることが必要不可欠と言えます。融資を受けることにはどのようなメリットがあるのでしょうか?融資を受けることによるメリットについて見ていきましょう。
経営にある程度のゆとりが出る
資金に余裕がない状況で、毎日経営を行っていると、日々のやりくりが苦しくなってしまい、経営に集中できなくなってしまう可能性があります。結果的に、目先の利益に意識が集中し、どのように展開していくかといった長期展望を抱けなくなる可能性があるので注意が必要です。融資を受けることができた場合は、経営にゆとりが生まれます。そうなると、利益を生むために無理に薄利多売の商売を行わずに済むため、効率良く店舗の経営を行うことができるようになるだけでなく、長期的な経営戦略に基づいて会社経営を行うことができるでしょう。
仕入れや設備投資を進めることで事業展開が早くなる
トレンドに合わせた事業を展開していく場合は、競合が参入してくる前にいかに早く展開できるかが重要なカギを握っていると言えます。もし、事業資金が貯まるまで事業を始めることができなかった場合には、競合の出店によってチャンスを逃してしまう可能性もあるでしょう。しかし、融資によって仕入れや設備投資を速やかに進めることができた場合には、他の競合の出店前に地域を独占できるだけでなく、利益を生み出せる土台ができた状態でスタートを切ることができます。多店舗経営を視野に入れている場合は、事業展開を早めることが期待できるなど、効率よく事業展開を進めることができるでしょう。
融資を受けることによるデメリット
自己資金のみで開業する場合には、チャンスを逃してしまう可能性がありましたが、融資を受けることができれば、経営にゆとりが出る、事業展開も早くできるというメリットがありました。融資を受けることにはどのようなデメリットがあるのでしょうか?融資を受けることによるデメリットについて見ていきましょう。
資金用途が限定される
融資を受けられても、その融資を自由に使うことができるわけではありません。資金用途は、日常的に必要な商品仕入れや経費支払いなどの運転資金と事業に必要不可欠な本社や工場、備品などの設備資金に限られています。もし、融資を受ける際に金融機関との間で決定した使用用途と異なる用途として融資を使用した場合は、資金使途違反として即時全額返済を求められるケースもあるので注意しましょう。
利息の支払いが生じる
融資を受けるということは利息の支払いが発生します。住宅ローンのように高額を借りるケースは少ないと言えますが、融資額が大きくなった場合には、たとえ数%の利息でも返済総額が大きくなってしまうので注意が必要です。特に開業した当初は売り上げが不安定であるため、それらを考慮した上で融資を受ける必要があると言えるでしょう。
無駄な支払いが生じやすくなる
融資を受けるということは、一時的に所持金が増えたような感覚に襲われます。そのため、万が一の事態に備えて手元に資金を残しておこうという気持ちが薄れてしまいがちです。例えば、自己資金の場合には買わないようなものでも、融資であれば購入してしまうなど、融資を受けたことで大きな失敗を招く可能性があります。融資はスムーズな開業に必須と言えますが、一方で、デメリットも多いため、融資を受ける際は最低限の融資額にするなど、リスク管理を徹底することが重要と言えるでしょう。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
