企業や店舗の開業を検討しているのであれば、実際に開業する前にどのような準備が必要になるのか、きちんと把握しておく必要があります。
開業前に行うべきことは多岐にわたり、それらの中には優先して行っておくべきことも存在するので、時系列に沿って準備を進めるのが望ましいでしょう。
そこでおすすめなのが、開業前に行うことを「開業準備リスト」としてまとめて把握しておくことです。
この記事では、開業前にすべきことがわかる「開業準備リスト」の一例を示すとともに、開業時に提出する書類や開業準備と並行してやることなどについて説明します。
参考記事:開業とは?起業・独立との違いは?必要な準備についてもわかりやすく解説
参考記事:個人事業主として起業するには?具体的な手順や手続きを解説
参考記事:開業するにはどうすればいい?個人事業主に必要な手続きと流れを解説
目次
- 個人事業主になる前に「必ずやることリスト」
- ①家族・知人に報告
- ②資格の取得や許認可の確認
- ③健康保険・国民年金の切り替え
- ④開業書類の提出
- 個人事業主になるタイミングで「やっておいたほうがよいこと」
- ●屋号を決める
- ●事業計画書の作成
- ●開業準備に必要な資金調達
- ●確定申告の準備をしておく
- ●補助金・助成金の申請準備
- ●商工会議所や商工会への加入
- 個人事業主が開業時に「準備するものリスト」
- ●印鑑
- ●名刺
- ●マイナンバーカード
- ●仕事用のメールアドレス
- ●事業用口座・クレジットカード
- ●クラウド会計ソフト
- ●プリンター
- ●Webサイト
- ●SNSアカウント
- 個人事業主として開業準備時に行うことは多岐にわたる
個人事業主になる前に「必ずやることリスト」
どのような事業で開業するにしても、この章で紹介する4つの項目は個人事業主が「やらなければいけないこと」に該当します。以下の「必ずやることリスト」に沿って開業の準備を進めれば、スムーズな事業開始に繋がります。順番に解説していくので、このリストを参考に開業の準備を進めてみてください。
- ①家族・知人に報告
- ②資格の取得や許認可の確認
- ③健康保険・国民年金の切り替え
- ④開業書類の提出
それぞれ詳しく解説していきます。
①家族・知人に報告
開業を決めたら、まずは家族や知人に報告することから始めるのがおすすめです。
企業や店舗を開業するにあたって、家族や知人に協力や援助を依頼するケースもあると思います。あらかじめ開業について周囲に報告しておけば、相手も事態を把握できるため、いざというときの協力を取り付けやすくなるでしょう。
また、今勤めている会社を辞めることになる場合もあると思いますが、退職するにあたっては後任者へ引き継ぎを行わなければなりません。
上司やチームメンバーにはなるべく早めに報告して、引き継ぎの時間を確保するよう心がけましょう。
②資格の取得や許認可の確認
開業を検討している業種によっては、開業前に資格の取得や許認可の申請が必要となるケースがあります。
開業する業種および、必要になる資格や許認可の具体例をいくつか挙げると、以下の通りです。
・ 飲食業:食品衛生責任者、防火管理者、食品営業許可申請など
・ 美容院:美容師免許、美容所開設届など
・ マッサージ店:あん摩マッサージ指圧師、施術所開設届など
資格の中には取得するまでに時間がかかるものや、申請してからすぐに認められるわけではない許認可もあるので、どちらも余裕のあるうちに取得・申請するよう心がけましょう。
③健康保険・国民年金の切り替え
個人事業主になる場合は国民健康保険に加入するか、もしくは勤めていた会社の健康保険を任意継続する必要があります。
国民健康保険に加入するケースが多いものの、扶養家族がいる場合などは任意継続のほうがお得なこともあるため、自分の置かれている状況を考慮してどちらかを選択しましょう。なお、任意継続には最長2年という期間があることには注意してください。
保険だけでなく年金も、厚生年金保険から国民年金へと切り替わります。本人確認書類や年金手帳などの必要書類を持参して、市役所や出張所などで手続きを行いましょう。
④開業書類の提出
個人事業主として開業するためには、さまざまな書類を提出しなくてはなりません。開業時に提出する主な書類は以下のとおりです。
開業書類名 | 提出要否 |
---|---|
個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 必須 |
青色申告承認申請書 | 青色申告を行う場合のみ |
青色専従者給与に関する届出書 | 配属者や親族に対して支払う給与を経費計上する場合に提出 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 従業員を雇って給与の支払いを行う際に、源泉徴収した所得税を毎月の支払いから年2回まとめての支払いへと変更するための特例を適用したい場合に提出(従業員が10名未満の条件あり) |
給与支払事務所開設届出書 | 従業員を雇用して給与を支払う場合に提出 |
適格請求書(インボイス)発行事業者の登録申請書 | 適格請求書発行事業者に登録する場合に提出 |
従業員を雇わない個人事業主でも「開業届」だけは提出が必須です。「青色申告承認申請書」は任意提出ですが、多くの個人事業主は税制上の恩恵を受けるために開業届とあわせて提出しています。また、従業員を雇う場合や家族に給与を支払いたい場合など、状況に応じて提出する書類も存在します。
提出が必要な書類を精査して、事前に準備しておきましょう。
【各書類のフォーマットはこちら】
個人事業の開業・廃業等届出書
所得税の青色申告承認申請書
青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
適格請求書(インボイス)発行事業者の登録申請書
参考記事:開業届の書き方を解説|もう悩まない!入手から記載のポイント、見本をご紹介
個人事業主になるタイミングで「やっておいたほうがよいこと」
ここからは、必須ではないものの、事業によってはなるべく事前に「やっておいたほうがよいこと」を紹介していきます。
- ●屋号を決める
- ●事業計画書の作成
- ●開業準備に必要な資金調達
- ●確定申告の準備をしておく
- ●補助金・助成金の申請準備
- ●商工会議所や商工会への加入
それぞれの項目について「なぜ実施しておくとよいか」も含め、順番に解説していきます。
●屋号を決める
屋号とは、個人事業主やフリーランスが事業を行う際に使う名称です。個人事業主は本名でも活動できるため、屋号が必須ではありません。しかし、屋号を持っておくと、顧客からの信用度を上げたり、屋号でのブランディングがしやすくなったりします。屋号やペンネームで活動していきたい場合は、事前に決めておくとよいでしょう。
屋号は、開業届の「屋号」欄に記入して提出すれば手続きが完了します。屋号を変更する際は、確定申告のタイミングで申告書に記入するだけなので、あまり悩まずに決めても問題ないでしょう。
開業届に屋号を記載すると「屋号付きの銀行口座」を開設できるので、事業用の入金口座を持ちたい方は屋号をつけておきましょう。
●事業計画書の作成
開業後の事業展望や資金計画を明確にするために、なるべく早い時点で事業計画書の作成を行いましょう。
事業計画書をしっかり作ることで、開業に向けて何が足りていないか、何をしなければならないかなどがはっきりするため、今後の道筋を立てやすくなります。
また、事業計画書は金融機関から融資を受ける際にも必要となる書類です。
事業計画書のクオリティ次第で、金融機関から融資を受ける際の金利や、そもそもの融資可否に影響が出ることもあるため、必要に応じて税理士などの専門家からアドバイスを受けることも検討しましょう。
●開業準備に必要な資金調達
開業に必要な資金には「開業資金」と「運転資金」がありますが、それらを自己資金だけでまかなうことが難しい場合には、資金調達を行わなくてはなりません。
資金調達の方法としては金融機関からの融資が一般的ですが、補助金や助成金、クラウドファンディングなどを利用する方法も考えられます。
金融機関からの融資に関しては、一般の金融機関からの融資と日本政策金融公庫からの融資の2つに大きく分けられ、開業時には後者を利用する方法がおすすめです。
一般の金融機関の場合、売上などの実績がなければ融資が難しいケースも多いですが、日本政策金融公庫は中小企業や個人事業主の支援を主な目的として設立されている金融機関なので、実績がなくても積極的に融資を行ってくれます。
いずれの場合でも比較的低金利で資金を調達できますが、融資である以上必ず返済しなければならないため、返済計画をきちんと立てることを念頭に置いておきましょう。
補助金や助成金による資金の調達は、融資ではないので返済する必要がないことが大きなメリットです。各々に設けられた条件をクリアしなければ利用できませんが、条件を満たしている場合には積極的に活用したい制度だと言えるでしょう。
クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の方々から出資による資金調達を行える方法で、こちらも融資ではないため調達した資金に関する返済義務はありません。
ただし、出資者に魅力を感じてもらえる事業でなければ資金を集めることは難しいので、始める予定の事業内容を客観的に判断した上で、利用すべきかどうかを検討する必要があります。また、利用に際して決済手数料やシステム手数料の支払いが必要となることは覚えておきましょう。
それぞれの資金調達方法のメリット・デメリットを踏まえた上で、どのような方法で資金調達を行うかを判断してください。
●確定申告の準備をしておく
確定申告とは、1年間の所得に対する「所得税」を算出して税務署に申告し、納税する手続きを指します。
個人事業主になって初めての確定申告では、不慣れな会計処理を期限ギリギリにまとめて行うのは得策ではありません。確定申告の準備は、なるべく早めに実施しておくのがおすすめです。事業を営んでいると、毎月の売上はもちろん、業務に必要な経費が発生します。経費の管理を怠っていると、どのような使い方をしたかわかりにくくなり、確認する手間が発生します。
このような事態を避けるために、以下の準備を行っておきましょう。
- 税金の知識、会計の知識を学ぶ
- 会計ソフトの使い方を学ぶ
- 請求書や領収書の発行方法を学ぶ
確定申告に関する詳細は以下の記事でも解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
参考記事:事業に必要な支払いは経費!開業前に確定申告を制する!
●補助金・助成金の申請準備
開業後に補助金、助成金の利用を考えている方は、申請の準備もしておきましょう。
独立したての事業者が利用できる補助金・助成金の代表的なものは「ものづくり補助金」や東京都が実施する「創業助成事業」などが挙げられます。ほかにもさまざまな制度が実施されているので、自分の事業と合致するものがあるかチェックしておくとよいでしょう。
ただし、補助金や助成金の申請には「日本に拠点を持っている」「円滑に事業を進めていける」などの制約もあるため、自分の事業が条件をクリアしているかを考えなくてはなりません。
補助金・助成金については以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はぜひご一読ください。
参考記事:本当に返済不要?独立支援金として利用できるの補助金 助成金 制度とは?
●商工会議所や商工会への加入
個人事業主になるタイミングで、商工会議所や商工会への加入も検討しておくのがおすすめです。商工会議所や商工会は、個人事業主や中小企業を対象とした経営支援団体。経営・融資に関する相談会や講習会・セミナーを実施して、事業者を支援してくれます。
必ず加入する必要はありませんが、独立したての個人事業主にとって心強い味方になる場面も多いでしょう。商工会議所や商工会は地域ごとに存在するため、加入したい方は自分が事業を営んでいる市区町村を対象にして調べてみましょう。
個人事業主が開業時に「準備するものリスト」
ここからは、開業後の事務作業や営業活動を円滑に進めるための「準備するものリスト」を紹介します。
- ●印鑑
- ●名刺
- ●マイナンバーカード
- ●仕事用のメールアドレス
- ●事業用口座・クレジットカード
- ●クラウド会計ソフト
- ●プリンター
- ●Webサイト
- ●SNSアカウント
開業後はなるべく業務に専念して、効率良く利益を生み出さなければなりません。「事前に準備しておけばよかった」と後悔しないためにも、必要なものは先に準備しておきましょう。
●印鑑
印鑑は、会社としての取引を行う上で非常に重要なものなので、必ず準備しておく必要があります。
実印・角印・銀行印という3種類の印鑑を作るのが一般的です。
●名刺
名刺は、個人事業主としての取引の幅を広げるために重要な役割を果たします。
名刺のデザインは自由ですが、個性的でわかりやすい名刺にすることで、取引先の方にも覚えてもらいやすくなるでしょう。
最近は名刺にQRコードを印刷して、ホームページにすぐに飛べるようにしているケースも多いです。デザイン等にとくにこだわりがない場合は、テンプレートを使って作成する方法もあります。
●マイナンバーカード
マイナンバーカードをお持ちでない方は、開業のタイミングで作成しておくのがおすすめです。マイナンバーカードがあれば「e-Tax」を用いて確定申告ができます。e-Taxとは、オンライン上でさまざまな税金に関する手続きができるシステムです。e-Taxを使うとわざわざ税務署に出向く必要がなくなり、自宅で確定申告書を提出できます。
確定申告の時期は税務署が混雑するため、事前にマイナンバーカードを用意して電子申告できる準備をしておくとよいでしょう。
注意点として、ICチップが入っていない「個人番号通知書」は確定申告に利用できません。電子申告をしたい場合は、ICチップ入りの「マイナンバーカード」が必要になります。
参考ページ:e-Taxの概要・利用全般
●仕事用のメールアドレス
事業を営み始めると、業務連絡や請求書の送付など、メールを使う機会が増えてくるでしょう。業務連絡に「Slack」や「ChatWork」などのチャットツールを使う企業も増えていますが、まだまだメールが主体のやり取りは多いものです。
プライベートのメールと仕事のメールが混在してしまうと、重要な連絡を見逃してしまう可能性が高まります。近年は個人事業主が増えている背景もあり、「Gmail」や「Yahoo!メール」のような簡単にメールアドレスを取得できるフリーメールでも悪い印象を与えにくくなっているので、事前に準備しておきましょう。
●事業用口座・クレジットカード
個人事業主として開業すると、個人で利用するお金とは別に、事業関係でのお金の出入りが生じるようになります。
個人のお金の動きと事業のお金の動きを混同しないためにも、事業用の口座を作っておきましょう。
また、事業用の支払いをクレジットカードに集約することでお金の管理が楽になるため、クレジットカードを作成するのもおすすめです。
事業用ではない個人のクレジットカードに関しては、信用力などの観点から会社をやめる前に発行しておいたほうがよいと言えます。
●クラウド会計ソフト
クラウド会計ソフトは、オンラインで日々の帳簿付けができるサービスです。会計知識が乏しくても、日々の帳簿付けを手軽に行える点がクラウド型会計ソフトを使う最大のメリットです。クラウド型だと、税制改正があっても自動的にバージョンアップされるため、いつでも最新の状態で会計業務ができるメリットもあります。
初年度の会計業務を疎かにした結果、確定申告前に困る個人事業主が多いので、早めに導入して日々の帳簿付けを習慣化しておくのがおすすめです。
●プリンター
プリンターは必須ではありませんが、用意しておくと便利なアイテムの一つです。オンラインのやり取りが主流になっているとはいえ、開業手続きに関する書類や領収書の発行など、印刷が必要になる場面もあるためです。
ただし、コンビニの「ネットプリントサービス」を利用すれば、プリンターを所有していなくても印刷は手軽に行えます。印刷料金は割高になりますが、頻度が低い場合はネットプリントサービスを利用してもよいでしょう。印刷を必要とする場面が多い方は、印刷コストを削減するために早い段階でプリンターの導入を検討してみてください。
●Webサイト
Webサイトも、個人事業主としての取引の幅を広げるために重要な役割を持っています。
名刺は直接会った人にしか渡すことができませんが、ホームページはより多くの人にリーチすることが可能です。
自作することも可能ですが、ホームページは対外的な「顔」の役割も担うので、デザインや技術に自信がない場合は費用を支払って外注することも検討しましょう。
●SNSアカウント
宣伝力を強化したい方は、早めに事業用のSNSアカウントを作成しておくのがおすすめです。SNSは現代社会の情報収集・情報発信において必須のツール。個人事業主であってもビジネスで十分活用できます。
SNSのフォロワー数は一朝一夕に増えるものではないので、開業初期から継続的に運用する必要があります。先を見据えた広報活動を行いたい方は、早めにアカウントを作成しておきましょう。
参考記事:SNSで商品を販売する時代へ。ソーシャルコマースの魅力とは?
個人事業主として開業準備時に行うことは多岐にわたる
個人事業主として開業を目指す場合、事業計画書の作成や店舗・事務所の取得、開業準備に必要な資金調達など、行わなければならないことは多岐にわたります。
また、それらと並行して健康保険や国民年金の切り替えや、名刺・印鑑の準備も行わなくてはなりません。
これらすべてを抜け漏れなく行うのは大変ですが、開業準備を支援してくれるサービスを活用することで、効果的なサポートも期待できます。
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この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
