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市場規模が年々拡大し、より身近な存在となりつつあるクラウドファンディング。コロナ禍によって業績が悪化した飲食店がクラウドファンディングで多くの支援を集めるなど、飲食業界においても新たな資金調達手法として注目されています。
単なる資金調達だけでなく、飲食店にとって複数のメリットがあるクラウドファンディングについて、導入の手順や成功させるためのポイントを交えて詳しく解説します。
目次
クラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の人から支援を募る資金調達方法です。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、日本では2011年の東日本大震災を機に広まったといわれています。
プロジェクトの活動や目的に共感した個人や法人が支援者となり、クラウドファンディングサイトを通じて「資金支援」という形で応援してくれます。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングは、寄付型・購入型・金融型の3つに分類できます。
■寄付型
支援者が寄付として資金提供する形式です。環境保全活動、被災者支援活動、福祉・慈善事業など、主に社会貢献を目的とする非営利プロジェクトで利用されます。寄付金という扱いのため、原則として支援者へのリターン(お礼)は不要です。
■購入型
支援者が資金を提供し、そのリターンとして商品やサービスを提供する形式です。日本ではこの購入型が主流で、募った資金をもとに開発した商品・サービスをリターンとして提供するほか、支援者だけの特別な権利を提供する場合もあります。
飲食店がクラウドファンディングを始める場合、リターンを自店のサービス提供で行えることから、購入型が向いています。
■金融型
支援者が金銭や株式などでリターンを受け取る、起業家への投資に特化した形式で、さらに以下の3つに分類できます。
融資型:調達した資金を企業に融資し、利益の一部を支援者に還元する形式
株式型:支援と引き換えに、自社の株式を分配する形式
ファンド型:プロジェクトで得た利益の一部を支援者に分配する形式
飲食店におけるクラウドファンディングのメリット
■誰でも資金調達が可能
クラウドファンディングなら、銀行からの融資を受けるのが難しい個人や小規模な飲食店でも資金調達が可能です。融資と違って返済の必要もなく、支援のリターンとして商品や食事券を贈ればOK。プロジェクトの立ち上げから支援金の決済に至るまでオンラインで完結できるため、他の資金調達方法と比べて敷居が低いといえます。
■ファン作りにつながる
クラウドファンディングを行うこと自体が自店のPRになり、支援者が自店の常連客になってくれる可能性が高まります。飲食店を新たに開業する場合、オープン前からファンができるということは、飲食店を経営する上で大きなメリットとなります。
■テストマーケティングに向いている
クラウドファンディングは、新業態店舗のオープン、新事業・サービスの開始を検討している既存の飲食店にも向いています。
新しい商品やサービスを発売する際には、試験販売・サンプリングとその反応を分析する「テストマーケティング」が重要とされています。クラウドファンディングを通じて支援者の反応を見ることで、今から始めようとする新事業・サービスに需要や商機があるかを確認することが可能です。
飲食店におけるクラウドファンディングのデメリット
■時間と手間を要する
プロジェクトの平均募集期間は40日程度ですが、事前準備から実際に資金を得るまでの期間となると2〜3ヶ月程度を見込んでおく必要があります。そのため、短期間で資金調達をしたい場合には適していません。
また、プロジェクトの立ち上げ、周囲への支援要請、プロジェクトの進捗報告、終了後のお礼報告、リターン発送などやるべき作業が多く、手間も人員も要します。
■100%成功するとは限らない
どんなに事前準備や努力を行ったとしても、100%成功するとは言い切れません。目標金額に到達しなかった場合、プロジェクトは頓挫し、労力と時間が無駄になるリスクがあることを頭に入れておきましょう。
クラウドファンディングの基本手順
1. プロジェクトの目的・目標設定
まずはプロジェクトの目的・目標を設定します。それらが曖昧なプロジェクトは支援を得られにくく、そもそもクラウドファンディングサイトでの登録審査が通らない場合も。特に「All or Nothing方式」の場合、目標金額の設定はとても重要です。
「All or Nothing方式」とは、目標金額を達成した場合のみ支援金を受け取れる募集方式のこと。目標金額に到達しなかった場合、支援はキャンセル・全額返金され、リターンも発生しません。
もう1種類の「All In方式」では、目標金額を達成できなくても集まった支援金を受け取れます。しかしリターンの履行義務が発生し、支援金額に関わらずプロジェクトを実行しなければなりません。
2. 利用するサイト・方式を選ぶ
国内にはさまざまなクラウドファンディングサイトが存在しますが、得意とする分野や手数料などが異なります。複数のサイトを比較し、自身のプロジェクトにあったサービスを選択します。具体的な選び方・比較については、次の項目で解説します。また、前述した「All or Nothing方式」と「All In方式」のどちらの募集方式を選ぶのかも十分に吟味しましょう。
3. プロジェクトの登録・開始
プロジェクト内容をサイトに登録し、審査を受けます。審査に通過するとプロジェクトページがサイトに公開され、支援の呼びかけが開始されます。
4. プロジェクトの活動・進捗報告
公開後は、こまめにページを更新し、支援者にプロジェクトの活動・進捗報告を行います。お礼のメッセージとともに「現在●人の方に支援いただいています」「目標達成まで残り▲円となりました!」などの途中経過を知らせることで、支援者が再度出資してくれる可能性もあります。
5. プロジェクト終了・支援者へのリターン発送
プロジェクトの公開期間終了後、まずは目標達成の有無に関わらず、プロジェクトの支援者や関係者にお礼の連絡を入れましょう。「All or Nothing方式」で目標金額に達した場合と「All In方式」の場合には、集まった支援金から手数料を差し引いた金額が入金されます。同時に支援者へのリターン発送を行います。
クラウドファンディングサイトの比較
クラウドファンディングサイトを選ぶ際は、サイトの規模感(資金調達額実績や支援者数)、手数料、得意とする分野などを比較するとよいでしょう。特に手数料の割合が高いと、手元に残る支援金が少なくなるため注意が必要です。
■CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
累計プロジェクト数は6.3万件以上、支援者数は720万人超え、支援総額は570億円超えという、日本最大級の規模を誇るクラウドファンディングサイトです。取り扱うテーマ・ジャンルが幅広く、個人やクリエイター、企業、NPO、大学、地方自治体など、さまざまなプロジェクト起案者が参加しています。
「All or Nothing方式」と「All In方式」の両方に対応しており、手数料は17%(手数料12%+決済手数料5%)です。
■Makuake(マクアケ)
株式会社サイバーエージェントのグループ企業が運営する、飲食店とものづくりに強みを持つクラウドファンディングサイトです。知名度が高くPR力があるため、マクアケで一度プロジェクトを立ち上げるだけで大きな宣伝効果が期待できるといわれることも。
「All or Nothing方式」と「All In方式」の両方に対応しており、手数料は20%(手数料15%+決済手数料5%)です。
■Readyfor(レディーフォー)
2011年のリリースから国内の業界を牽引してきた、日本初のクラウドファンディングサイトです。社会貢献型のプロジェクトに強く、NPO 法人や地方自治体も活用しています。
「All or Nothing方式」のみの完全成功報酬型で、手数料は12%(手数料7%+決済手数料5%)と業界最安水準です。
■makestory(メイクストーリー)
飲食店に特化したクラウドファンディングサイトで、専門コンサルタントがページ制作やリターン設計、公開後のPRなど、全ての作業を請け負ってくれるのが特徴です。大手クラウドファンディングサイトと比べて規模感は劣るものの、飲食店への支援をしたい人が集まりやすい利点もあります。手数料は、支援額の20%です。
クラウドファンディングを成功させるためのポイント
■告知活動をしっかり行う
クラウドファンディングはオンラインで完結できるサービスですが、プロジェクトをただ公開しただけでは支援者は集まりません。成功するプロジェクトの大半は、支援額の1/3程度をプロジェクトの起案者自らの力で集めているといわれるほど、告知活動は目標達成に欠かせない要素です。
SNSやDMなどで事前告知を行い、プロジェクト開始時点から親族や友人からの支援を集めておくことで、良いスタートダッシュを切ることが可能になります。人間の心理として、まだ誰も支援していないプロジェクトよりも、既に複数の支援者がいるプロジェクトの方が参画しやすいものです。
■リターン内容を吟味する
いかに魅力的なリターンを設定できるかが、クラウドファンディングの成否を分ける鍵となります。リターンの原価とクラウドファンディングサイトに払う手数料を考慮した上で、支援者を惹きつけるリターン内容を考えましょう。
飲食店の場合、「店舗で利用できるリターン」と「自宅にお届けするリターン」の両方を用意することで、全国から支援を集めやすくなります。
▼店舗で利用できるリターンの例
・食事券や割引券(ドリンク1杯無料券、○円分の割引券など)
・会員権(1年間○%OFF、定額飲み放題・食べ放題特典など)
・プレオープン招待券
・店舗を貸切にできる権利
店舗に足を運んでもらうことで支援者と直接つながりを持つことができ、ファンやリピーター獲得の可能性も高まります。また、会員権やプレオープンの招待券といった「特別感」は、支援のきっかけにつながりやすいものです。
▼自宅にお届けするリターンの例
・自慢の看板料理を真空パックにして冷蔵・冷凍配送
・オリジナルグッズ(店舗のロゴ入りマグカップやお皿など)
・秘伝のレシピを支援者限定で伝授する
料理の加工やグッズ制作など、多少の手間は発生しますが、直接店舗に足を運べない支援者にも特別感のあるリターンを届けることは可能です。
クラウドファンディングを上手く活用し、店舗経営のヒントに
ファン作りやテストマーケティングにも有効なクラウドファンディングは、飲食店にとって非常に相性の良い資金調達手法です。さらに、プロジェクト期間中の支援者の反応や、リターンを通じたコミュニケーションは以後の店舗経営のヒントにもなり得ます。長期目線でもメリットのあるクラウドファンディングを上手く活用し、売上や店舗の拡大、事業の成長につなげてはいかがでしょうか。
ライター:上田はるか(フリーライター)
大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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