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厚生労働省の中央最低賃金審議会は7月28日、2023年度の最低賃金の引き上げを正式決定しました。全国の平均時給は1,002円となり、初の1,000円台の大台に。東京都など都市部では41円アップで、こちらも過去最大の引き上げ額となりました。
参照:厚生労働省 賃金 (賃金引上げ、労働生産性向上)
目次
初めて全国の平均時給が1000円台を突破
最低賃金の基準が日給から時間給に変わった2002年度から、時給額は年度ごとに改定されてきました。当初の全国平均は663円でしたが、2022年度には961円にまで上昇。
2022度の改定時も、引き上げ額は31円と当時の過去最大を記録しましたが、今回はそれを凌ぐ39~41円と、労働者にとっては明るいトピックではあるものの、経営者としては少なからず悩みの種となることは間違いないでしょう。
この引き上げの背景にあるのは、2017年3月に政府が決定した『働き方改革実行計画』です。「最低賃金を年率3%を目途に引き上げて、全国平均が1,000円になることを目指す」という方針のもと、コロナ禍における雇用状況の悪化により引き上げ額が全国平均でわずか1円だった2020年度を除けば、毎回25円以上の引き上げがなされてきました。
そもそも最低賃金とは?
厚生労働省のホームページには、最低賃金について「使用者が労働者に支払わなければならない、賃金の最低額を定めた制度」と記されています。
この制度が最低賃金法であり、すべての雇用主は最低賃金を上回る金額を労働者に支払わなければなりません。
最低賃金は毎年見直しが行われ、その年の10月より新しい最低賃金が順次適用されていきます。今回の引き上げも10月から実施される見込みです。
最低賃金の種類
最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類が存在します。雇用主はこのどちらか高い方を支払わなければなりません。
地域別最低賃金は都道府県ごとに定められているもので、今回の改定により、最も高い東京都では1,113円に、沖縄県など14県が該当する最低基準も892~893円に引き上げられます。
これにより、全国平均1,002円という大台突破が実現しました。
一方、特定(産業別)最低賃金は、地域別最低賃金よりも高い水準で最低賃金を定めることが必要と認められた産業に対して設定されています。
令和5年3月末現在、各都道府県労働局及び全国において設定されている特定最低賃金の件数は226件、適用使用者数及び適用労働者数は、使用者数約9万人、労働者数約291万人となっています。
都道府県別引き上げ目安額
目安額は、昨年度までは各都道府県の経済状況に応じて、引き上げ幅を4つの区分に設定していました。
しかし、最低賃金が最も高い東京都と、最も低い沖縄県や青森県などでは200円以上の差があることから、地域格差の是正を目指し、今回の引き上げでは区分を減らしてAランク41円、Bランク40円、Cランク39円と設定。
東京都をはじめとする関東1都3県と愛知県、大阪府の6都府県がAランク、北海道や京都府、福岡県など28道府県がBランク、そのほか沖縄県など13県がCランクに分けられています。(※下表参照)ランク 引き上げ目安 都道府県 A 41円 埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 B 40円 北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、
福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、
奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡C 39円 青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、
宮崎、鹿児島、沖縄
最低賃金の計算方法
最低賃金は時間額で決められているため、日給や月給の場合は時間給に換算する必要があります。(ただし、一部の特定(産業別)最低賃金は日額と時間額の両方で定められています)
時間給の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
日給の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
※ただし日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合は、
日給≧最低賃金額(日額)
月給の場合
月給÷1カ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
飲食店経営者が取るべき対策は?
最低賃金の引き上げにより人件費が膨らみ、経営者としては頭の痛い話ですが、悩んでばかりもいられません。これを機に業務の改善を図り、さらなる発展を促しましょう。
従業員のスキル向上
最低賃金引き上げ以前に、飲食店業界では人手不足も深刻な問題のひとつ。ここに人件費高騰も重なれば、経営自体が容易ではありません。そこで、人材リソースを見直し、従業員のスキルアップを目指すことをおすすめします。
従業員一人一人が仕事を効率化させることができれば、人手を最低限にとどめることが期待できます。
また、賃上げは従業員のやる気を底上げするチャンスでもあります。従業員のモチベーションを上手くマネジメントすることも、優れた経営者として必要な能力なのです。
設備投資やコストの見直し
人件費増大が避けられない分、それ以外のコストを見直すことは重要です。現状で設備やライフラインにどれぐらいの費用がかかっているのか、改めて確認しておきましょう。
手早く対処できるところは、光熱費や水道代、通信費の節約です。光熱費や通信費は必要に応じてプランや契約会社を変えるなど、できる限り無駄なコストがかからないようにしましょう。
また、古い設備は性能が低下し、想像以上にランニングコストがかさんでいることが考えられます。設備を交換するだけでも水道光熱費を抑えることが可能です。
例えば、電球をLED電球に変えるだけでも電気代の節約になりますし、新しいコンロに変えることでガス代を節約することもできます。
古いエアコンや冷蔵庫・冷凍庫も電源効率が悪化している可能性が高いため、新品を買い揃えるか、物によってはリースやレンタルを利用することも検討しましょう。
補助金・助成金などの支援制度の活用
雇用主、特に中小企業の不安を取り除くべく、政府はさまざまな補助金や助成金、支援制度を打ち出しています。
例えば「業務改善助成金」は従業員の賃金引き上げや支払い、設備投資や人材育成などの要件を満たした事業者を対象にしたもので、助成額は最大600万円。
他にも、景気の変動や経済上の理由で事業を縮小する事業者が従業員の雇用を継続するための「雇用調整助成金」、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進する取り組みに支払われる「キャリアアップ助成金」、労働環境の向上等を図る事業者等を助成する「人材確保等支援助成金」などがあるので、積極的に活用しましょう。
また、各都道府県に開設されている「働き方改革推進支援センター」では、補助金・助成金の活用を含めた経営相談や専門家のアドバイスを、すべての事業者が無料で受けることができます。
働き方改革や労務管理等のセミナーも開催されているので、最寄りのセンターを確認することをお勧めします。
関連記事:助成金・補助金って本当に返さなくていいの?飲食店助成金の基本と活用方法を知る
DXも検討
最近では店舗DX(デジタルトランスフォーメーション)も増えてきています。DXとは、大きく業務のデジタル化を指す言葉で、デジタル技術を用いて業務フローの改善や新たなビジネスモデルの創出が期待できます。
その中で店舗DXとは、店舗のさまざまなデジタル化をサポートすることで、より多くのヒューマンバリューを生み出し、店舗の繁栄を後押しすることです。
デジタル化により業務効率が向上することで、人材教育や商品開発など有人業務への注力が可能となり、サービスクオリティの向上につながるはずです。上述した人手不足解消の一助にもなるでしょう。
関連記事:【飲食店のDX】デジタルを取り入れたスタッフ教育でモチベーションを変える
USENでは、店舗DXを推進しています。
「お店に夢中になる時間を、もっと。」というスローガンのもと、店舗経営に必要なレジや様々なオーダーシステム、決済システムをご用意。
さらに、店内BGMや店舗向けWi-Fiなども含め、ワンストップでの対応が可能なため、ぜひご検討ください。
USEN お店の未来を創造する
今こそ業務を見直し、改善へ
デメリットばかりが目につきやすい最低賃金引き上げですが、人件費の増大に向き合わざるを得ない今こそ業務の効率化を果たすチャンスです。
現状の業務が正しく機能しているのか、改善できるところはないか、一度固定観念をリセットして新たな一歩を踏み出しましょう。
「コロナ禍を終えたのに人手不足は解消されない」と、多くの飲食店経営者が頭を抱えています。従業員のスキルアップや店舗DXといった施策を深く検討してみる良い機会です。
仮に、この機に求人に力を入れたいと考えるならば、早めに行動に移しましょう。最低賃金の引き上げに伴い、求職者の仕事探しが活発化するとみられる一方、人材獲得競争も激化が見込まれています。
より優秀な人材を確保するためにも、福利厚生の充実やライフワークバランスを考え、未経験でも働きやすいような教育環境を整えて採用活動に至るとよいでしょう。
いずれにせよ、今回の大幅な最低賃金の引き上げにより、何らかのアクションが必要だと考える方は多いはず。
ここで重要なのは、目先の事ばかりを考えるのではなく、長期的視野に立った戦略を練ることです。今一度、経営者として仕事の在り方を見つめ直してはいかがでしょうか。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
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