「仕事を辞めたい」「でも、40代という年齢を考えると、新しい環境に飛び込む勇気がない」「今さら無駄」とあきらめてはいませんか? 確かに年齢が上がるほど、仕事を辞めることのリスクも上がるのは事実です。それによって生じるデメリットも、20代や30代に比べて大きいかもしれません。
しかし、仕事を辞めて新しい道を進むメリットと天秤にかけたとき、40代は本当にデメリットの方が大きい年代でしょうか? 65歳定年とするならば25~16年と、40代でも残された時間は決して短くありません。社会人人生を悔いなく過ごすため、本記事では「仕事を辞めたい」という想いが頭に浮かんだときに考えるべきこと、取るべき行動についてご紹介していきます。
目次
40代で仕事を辞めたいと考えている人は約30%?
厚生労働省の統計(令和2年雇用動向調査結果の概況)によると、40代での離職率は40~44歳で男性6.5%、女性11.8%(パートタイム含)、45~49歳で男性6.6%、女性11.5%(同)となっています。
一見低いように思えますが、日本労働調査組合が2021年4月に発表したアンケートによると、仕事を辞めたい、もしくは転職を検討している会社員の割合は35.8%! 2021年の転職者数は290万人のため、実際に転職した会社員数の、なんと6.9倍に上ることが判明しました。
この数値を当てはめると、少なく見積もっても40代の30%程度は「会社を辞めたい」と考えているようです。
出典 令和2年雇用動向調査結果の概況
40代が仕事を辞めたいと感じる4つの理由
40代はライフステージの変化も多い年代。それに伴い、これまで感じていなかった問題が持ち上がって、不満へと繋がることもあります。では、40代が仕事を辞めたいと感じる具体的な理由は何なのでしょうか? 前述した厚生労働省のデータから探っていきます。
給与面での不満
40代男性の「仕事を辞めたい」理由の1位は、「給料等収入が少なかった」という給与面での不満です。特に既婚男性の場合、40代ともなれば住宅ローンや子供の教育費、さらに親の介護などで、負担しなければならない費用がグッと重くなるケースが多いでしょう。
同時に仕事の責任も重くなるので、それに伴う昇格・昇給も期待して当然です。しかし、思うように給与が上がらず、費用負担ばかりが大きくなっていれば、それは十分な退職理由になるでしょう。
人間関係における不満
40~44歳女性の離職理由第1位、45~49歳男女の第2位が「職場の人間関係が好ましくなかった」というもの。パワハラやセクハラが横行している場合は会社に留まる理由はなく、そういった時代に逆行した職場に「人材が残らない」という実績を積み上げていくことは、大きな視点で見て社会全体のメリットにもなります。
また、同僚間でのイジメは当然のことながら、空気がギスギスしている、自分には合わないといった理由でも、メンタルに影響を与えるようであれば大問題。人間関係が悪いがゆえに能力を発揮できない、上司の理解がないために力を発揮しても正当に評価されない等の悪影響がある場合は逃げるが勝ちです。
労働条件への不満
45~49歳女性の離職理由第1位、40~44歳女性の第2位が「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」こと。40代になると体力が落ち、長時間残業等、若いときと同じような働き方ができなくなるケースは多々見受けられます。また、子供の成長や親の高齢化に伴い、より家族に時間を割かなければならないパターンも出てくるでしょう。
反対に、それまで契約社員やパートなどの雇用形態だったのが、老後の安定など将来を見据えて正社員になりたいというのが、離職の動機になることも考えられます。
仕事の内容や会社の将来性に対する不満
上記のほか、離職理由で上位に挙がっていたのが「仕事の内容に興味を持てなかった」「会社の将来が不安だった」というものです。60~65歳で定年と考えると、まさしく40代は折り返し地点。会社員人生の後半戦を、本当にこの会社で過ごしていいのか?と改めて考えるのは当然でしょう。
10年、20年と勤めてはみたものの、このまま同じ仕事を続けても人生の充実感を得られそうにないだとか、もしくは入社当時からの景気変動により会社の安定性が揺らぎ始めていれば、退職・転職が視野に入ってくるのは自然なことです。
40代で仕事を辞めるときに考えること
とはいえ「会社を辞めたい、辞めよう」と思って、すぐに行動に移してしまうことはおすすめできません。40代は失敗すると取り返しがつかないこともある世代。いざ辞めたあとに後悔しないために、まずは以下の3点を熟考しましょう。
家族や友人への説明・報告はどうするか?
特に子供がおり、自身が家計における大黒柱となっている既婚者の場合は、離職によりダイレクトに影響を与えることになります。そのため事前に退職の意向を家族に話し、理解を得ておくことは、今後の平穏な家庭運営のためにも欠かせません。独身者の場合でも、将来を案じる両親からの反対は十分に考えられます。
つまり既婚・未婚いずれにせよ、退職理由とその後のビジョンを丁寧に説明することは必須。そのため、早めに同級生や学生時代の先輩・後輩、元同僚などに報告・相談し、経験者からの体験談を聞いておくのも一計です。
辞めた後に生活をしていけるか
今の仕事を辞めたとして、生活を成り立たせていけるのか?というのは、既婚・未婚、家族と同居・独居を問わず考えなければいけないことです。生活費のほかにも、40代ともなれば住宅ローンや子供の養育・教育費など、小さくない額の出費が予想されます。
再就職などで収入が復活するまで、どのくらいの出費が予想されるのかを把握し、それを補うだけの貯蓄や配偶者の収入などはあるのか? 冷静に検討・計算しましょう。
退職後にしたいことは何か
今の会社を辞めた後、具体的に何をしたいのか?を明確にしておかなければ、退職後の時間を無為に費やすことになりかねません。
- ・辞めた後に再び働くのか、休養するのか?
- ・働くとしたら転職か、自身での起業・開業か?
- ・まったく新しい業種・職種にチャレンジしたいのか、もしくは従来と同じ業種・職種で勤め先だけを変えたいのか?
自分が今の仕事を辞めたい理由と照らし合わせ、人生をより良い方向に導くためには、どの道を進むのがベストなのかを、辞める前に見極めておきましょう。
40代で仕事を辞めた後の選択肢
会社を辞めた後も働き、収入を得たいと考えた場合、どんな選択肢があるのでしょうか? 大きく分けて「転職」と「起業・開業」の2つになります。
転職する
転職のメリットは、現在と変わらない職務内容・労働時間で、今以上の好待遇・好環境を得られる可能性があることです。特に同業他社への転職を希望する場合は、知人からの紹介で思わぬ高ポジションに就ける場合もあるかもしれません。退職の意志が固まったら、許される範囲で周囲に根回しをしておくのもよいでしょう。
そのようなあてがなく一から転職活動を始める、もしくは、まったくの異業種への転職を希望する場合、やはり20~30代に比べて求人の数が少ないのは事実です。その中でもできるだけ満足のいく転職を果たすために、次のポイントに留意して職探しをしましょう。
- ・業種や職種を絞りすぎず、幅広い視点で探す
- ・求人情報をこまめに確認し、積極的に応募する
- ・転職サービスを活用し、アドバイスを受けて自身の視野を広げる
- ・自身の市場価値を見極める
では「自身の市場価値」とは、具体的にどういったものでしょうか? 40代ともなれば「やる気」や「熱意」だけでは採用に至れません。往々にして、
- ・キャリアの豊富さ、そこから派生する提案力や解決能力の高さ
- ・マネジメント能力など、中間管理職としてのスキル
- ・(特に同業を希望するのであれば)専門性の高さ
といったものが求められます。逆に、これらのスキルが十分にあれば、今までとは異なる業種・職種であっても意外な形で活かせるかもしれません。結果、待遇とやりがい両面において満足のいく転職になりうるのです。
また、転職先が現在より好条件でなかったとしても、離職理由によってはメンタルの安定を図るのが最優先な場合もあります。自身の「辞めたい理由」と照らし合わせてキチンと優先順位を定めれば、必ず後悔のない転職を果たせるはずです。
起業・開業する
退職後の道として、転職のほかにもう一つ挙げられるのが、自身で起業・開業することです。自身に十分なスキル、もしくはクライアントを得られるだけの人脈があるのなら、
- ・個人事業主(フリーランス)として起業
- ・フランチャイズ経営者
- ・法人(会社)設立
といった選択肢を取ることも可能でしょう。
特に、
- ・プログラマー、グラフィックデザイナーなどのIT系
- ・イラストレーター、カメラマン、ライター、翻訳家などのスキル特化型
- ・経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナー、心理カウンセラー、セラピスト、塾講師などコンサルタント/カウンセラー系
といった職種は設備投資の度合いも小さく、比較的容易にフリーランスへと転向することができます。
参考記事 個人事業主として起業する方法を徹底解説!法人との違いや手続きの仕方も説明
また、店舗運営や接客におけるスキルや興味がある場合は、チェーン展開をしている企業にフランチャイズ加盟する手もあるでしょう。最初から本部のサポートを得られるため、軌道に乗りやすいのは大きなメリットです。
逆に、本部からの指示やルールも多く、完全に自分の好きなように運営することができないというデメリットは、もちろん理解しておかなければなりません。
参考記事 フランチャイズのメリット・デメリットを事前にチェックしておこう!
法人格を持った会社の設立は全業種・職種で可能です。しかし、会社の登記から資本金の準備、事務所の賃貸契約、設備投資等、必要な事柄が多岐にわたるため、そのハードルはなかなかに高いのが事実。設立したあとも黒字化させ、安定的な事業運営を続けるには、専門分野のスキルのみならず経理の知識やマネジメント力等、幅広い視野と能力が必要なため、入念な準備と覚悟が必要になります。
しかし、そのぶん自由な運営が可能で、成功した場合のリターンも大きく、充実感や達成感は他の比になりません。
参考記事 脱サラでの開業初心者は必見!開業に向けた心構えと成功のコツ
40代で仕事を辞める際にやっておきたいポイント
いざ、今の仕事を辞めようと決めたなら、退職前に以下の4つは忘れずにやっておきましょう。
①有給休暇の消化
有給休暇の取得は法律で定められた正当な権利です。勤続年数が6年6か月を過ぎると時効2年の有給休暇が年次20日付与されるため、40代での退職となると相当日数が残っていることも考えられるでしょう。退職日からその分を逆算して最終出勤日を決定し、残りの有給休暇を確実に消化してください。
ただし、退職日までに有余がなく、仕事の引き継ぎが間に合いそうにない場合は、残存有給休暇を小分けに消化する方法も。ケースバイケースで無理のないスケジュールを心掛けてください。
②失業手当受給期間の延長申請
会社を辞めて失業保険を申請すると、求職活動を行うことを前提として、通常3か月後から失業手当の支給が始まります。ただし、介護や妊娠・出産、怪我・病気などで退職後すぐに働けない事情がある場合は、退職日の翌日から4年以内に限り受給期間の延長ができます。
働けない間の支給はありませんが、受給の権利を留保できるのは大きなメリットなので、該当する場合はハローワークの窓口、もしくは郵送で申請書を入手しましょう。
③退職後の生活費を貯金する
退職後は次の仕事が見つかるまで、もしくは失業手当が支給されるまで収入が途絶えるため、その間の生活費をあらかじめ確保しておくことが必須です。失業手当も離職時給与の50~80%程度で、月額上限は40~44歳:約21万円、45~49歳:約23万円ですから、支給が始まっても退職前の生活水準を維持するには足りない場合が多いでしょう。
起業・開業を考えている場合は、さらに収入が復活するまでの期間が長くなる傾向も。時間をかけて納得のいく転職活動や起業・開業準備を果たすために、余裕をもった金額を用意しておくことが重要です。
④補助金・助成金の申請
再び会社員になるのではなく、起業・開業をする場合は、各種の補助金や助成金を活用しましょう。創業補助金や再就職手当など、国や自治体が主導する返済不要の給付金について確認し、申請することで、起業・開業資金における自己負担を減らすことができます。
その他、日本政策金融公庫の創業融資といった融資や借入を創業資金に充てることもできます。起業・開業にあたって必要な資金や調達方法については、以下の記事をご参照ください。
参考記事 開業・起業に必要な資金はいくら?資金調達方法や使える助成金・補助金・融資制度を紹介
まとめ|40代こそ残りの社会人生活の充足を図ろう
経験豊富な40代なら、会社を辞めた後に再び被雇用者となるのではなく、自ら起業・開業することで新たな道を切り拓き、社会人としてステップアップを果たす可能性も十二分にあります。
「会社員の経験しかないので、開業・起業に不安がある、具体的な手順がわからない」という方には、canaeruで無料の開業相談や無料セミナーを受けることをおすすめします。
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この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
