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2020年4月、新型コロナウイルスによる自粛の影響によって、多くの飲食店が通常通りの営業が困難となった。
自粛要請の段階で休業に踏み切ったお店もあるが、多くは、国の緊急事態宣言とほぼ同時に休業、ないしは営業時間の短縮、店内飲食を取りやめテイクアウトやデリバリーのみの営業など、お店の経営を大きく揺るがす方針変更をやむなく実施していたことだろう。
このような状況下で、2020年、飲食店を開業しようと準備していた新オーナーたちは、どのようにしていくべきなのか?
また、直近で開業予定は無かったにせよ、2020年前半のタイミングで準備を開始しようとしていた方や、いつかは飲食業で独立・起業と考えている未来のオーナーにいたるまで、すべての新飲食店オーナーに向けて「飲食店開業のこれから」をお届けする。
お店のトータルサポートサイト『canaeru』では、飲食店のオーナーや現場の店長、飲食業界の会社社長、店舗物件専門の不動産会社、内装工事業者、起業の融資担当者、コンサルタントに至るまで、3年以上に渡って平均週1回は取材をしてきた。
また、canaeruの開業サポートプランナーの中には、飲食店のオーナーとして約10年に渡って繁盛店を経営していた実績のプランナーもいる。
特に「飲食店の開業」というピンポイトな視点で蓄積された情報は、飲食店の経営や販促だけに留まらず、「これから開業」という新オーナー向けた特別な情報になるであろうと考えている。目次
飲食業界の未来…緊急事態宣言が解除されたあとの飲食はどうなる?
緊急事態宣言が解除された。
いろいろなメディアで語られているが、この「解除されたあとの経済」については「まだ誰も分からない」という状態だ。
飲食業界は、自粛要請、緊急事態宣言によって、ホテルや交通なども含めた観光業とともに大きな痛手を負っている。
現状、すでに飲食店を経営しているオーナーたちは、先にも記述した通り、休業、営業時間の短縮、店内飲食の中止、テイクアウトやデリバリーサービスの開始などを実施したお店が多いが、緊急事態宣言が解除されたからと言って、一気に元の状況に戻るとは考えづらい。
繁盛店オーナーであったcanaeru開業サポートのプランナーはこう話す。――
「自分が飲食店を経営していた時でも、今のような状況になったことは無かった。
東日本大震災、リーマンショックによる不況…と、社会経済に飲み込まれる形で経営が不安定になることはあったが、それでも、なんとなく出口が見えていた。
『そこまで持ちこたえれば…』という気持ちで、資金繰りや売上増の施策などを都度実施していた。
現状の『先が見えない』という中で、これから飲食店を開業するのは、困難な船出になる可能性が高いと言わざるを得ない。
お客様の財布の紐が固い…というレベルの問題ではなく、飲食店を利用するお客様自体が少ないわけだから想定していた売上に到達する可能性は極めて低い。
現在(2020年4月)も、開業準備をする人の相談やコンサルティングをしているが、私はオープン日を慎重に考えるように勧めている。
いつ、どのように状況が変わるか分からない中でオープンするのは、新米オーナーにとってスキルや経験値などの点でなかなか乗り切るのが難しいと思う。
すでに物件を契約、オープン日のターゲットがあるのであれば、不動産屋などにフリーレントの交渉をして家賃発生の先延ばしをするなど、無理にオープンせずに後ろ倒しできるかどうかなどを画策してみることも場合によっては必要だ。」
どんな事業でも、経済が不安定な中では売上が読みづらいのが実状だろう。
まずは、オープン日を冷静に判断すべきだろう。テイクアウトやデリバリーの需要はこれを機に加速した。とみる
自粛要請によって急激に注目度が高まった「テイクアウト」「デリバリー」。
「お店で飲食」以外の販路として、自粛要請を機に一般に浸透したと言えるだろう。
もともとテイクアウトやデリバリーは、2019年10月に施行された軽減税率制度によって消費者に拡大すると見られていた。
店内で飲食すれば消費税率は10%、テイクアウトやデリバリー、つまり自宅での飲食は消費税8%の据え置きのことだ(一部、除外対象あり)。
今回の自粛要請でテイクアウトやデリバリーを利用する消費者は一気に加速、緊急事態宣言が解除され自粛が無くなっても活用する消費者は多いはずだ。
これから新規にお店を開業するならば、テイクアウトやデリバリーを検討・導入しないのは商売の機会損失と言っていいだろう。
特にテイクアウトは、テイクアウト用のメニューを個別に開発しなくても通常の店内飲食メニューを持ち帰る、持ち帰り用に販売できるようにすればよいため、昨今ではそんなに難しいことではない。
これは、テイクアウトや弁当用の容器が発達し、ラーメンのような時間制限のあるメニューでも、美味しく食べられる時間がもつようになったり、保温機能なども上がっているなど進化している事実があるからだ。
容器はある程度のコストはかかるものの、例えば、お店全体の売上目標に対してテイクアウトを重要な販路だと計画すれば、店内飲食の席数を減らす → 物件の坪数を減らすなどで、もともと想定していた家賃分をテイクアウトの費用に回すなど、事業計画を見直すことで想定していた商売の規模を維持することもできる。
また、これから資金調達、物件探しをしようとしている新オーナーであれば、自分でやりたい飲食事業をキッチンカーやゴーストレストラン(※)など、新たな業態で検討してみるのも手だろう。※ゴーストレストラン
ニューヨークで生まれ流行している実店舗をもたない飲食店のこと。
間借りのキッチンなどで調理をし、販売は主にデリバリーを利用する。
店舗物件を持たないことで固定費を削減、何より、開業までにかかる時間が圧倒的に早い。「物件の余剰」を期待してはいけない
飲食業、外食産業が大きな打撃を受けていることは、ニュースなどで日々配信されている。
そうなると、当然、「潰れる」店が増え → 店舗物件の「余剰」が出るではないか?…と考える人が出てくる。
飲食店の居抜き物件は「とにかく見つからない」という声が多いのだ。
canaeruの開業サポートに来る相談も「物件が見つからない」というものが多くをしめ、それが何年も続いていた。
そこで、この状況をみれば「物件が出るからチャンス!」と考える人が多くなるのは当然だろう。
しかし、canaeruからはあえて「焦らない」ことを強く推奨したい。
その理由は、「物件が見つからない」という状態は「世の中全体の物件が足りない」のではなく「貴方が探している条件の物件が無い」という問題だからだ。
開業の準備をはじめたばかりの新オーナーは、契約したい物件の条件が「身の丈に合っていない」傾向にある。
自己資金が少ない場合は融資額が多くなることはなく、1,000万にも満たない資金では東京の一等地で広大な坪数の物件を契約することはほぼ不可能だ。
しかし、準備をはじめたばかりの頃は「夢」が先行しているため、「夢」のような物件を探しているものなのだ。
準備を進めていくうちに、調達できる資金や実際のオペレーション、経営の規模などの計画がより鮮明になっていき、それとともに物件の条件は広義になっていく。
コロナショックによって閉店、事業撤退をする飲食店が増え「空き店舗物件」の数が増えたとしても、探している方の条件が広義にならない限り、当初の希望通りの物件を探し当てられる可能性が上がることはないだろう。
それなのに「チャンス」と焦って無理して開業すれば、そのまま「身の丈に合っていない」経営を迫られることになる。
そして、自粛が解除されたと言っても現状では飲食業が苦しい状況に変わりはない。
業界自体が困難な状況で、ビギナーが簡単に経営できるほど甘くはないことを肝に銘じよう。定番化するサービスも…キャッシュレス決済の必要性
テイクアウトやデリバリーの需要増に伴って同時に拡大しているとみるべきはキャッシュレス決済だ。
特に、デリバリーは「ネットで注文、ネットで決済」が主流。
テイクアウト販売でもネットで注文して待ち時間なく商品を受け取るという手法もあり、この場合でもネット決済が可能だ。
今後、現金のみのビジネスでは、販売機会の損失が大きくなるだろう。
新型コロナウイルスの拡大によって、「現金の受け渡し」自体を見直すお店も多く、特に食べ物を扱う飲食店では、不特定多数が触れる「現金」は衛生上問題があるという側面も出てきている。
キャッシュレス決済の促進においても消費増税とともに消費者還元事業が実施され、消費者側も導入する人が拡大している中であったが、キャッシュレス決済についても混乱が終わって縮小するという見方は無いと言っていい。
「うちは現金客ばかりだから…」という飲食店オーナーの話しもよく聞くが、それは、そのお店にキャッシュレス決済の方法がない、または宣伝していないからだ。
キャッシュレス決済を、開業、お店オープンと同時に導入した飲食店のオーナーに聞くと、「給料日前に売上が落ち込むということがない」「売上が安定するので、キャッシュレス決済の手数料以上の効果がある」という話しをよく聞く。
また、キャッシュレス決済導入の恩恵を受けやすいビジネス手法として、飲食のサブスクリプションも発展してきている。
サブスクリプションとは、商品ごとにお金を支払うのではなく、一定期間の利用権として料金を支払う、いわゆる定期券型の販売方法だ。
商売をする側から見れば、キャシュフローがよくなり客単価も上がるビジネス方式だが、高額となるサブスクリプションを確実に販売するには、やはりキャッシュレス決済があった方が売れやすいと言えるだろう。
個人事業の飲食店で、ネット決済のあるテイクアウトやデリバリー、サブスクリプション方式は実施しづらいと考える新オーナーもいるが、飲食業のソリューションは進化し続けており、個人事業の飲食店が参画できるサービスも多い。
自分の商売するエリアのソリューションが無くても、例えばサブスクリプション方式ならばお店独自の方法で実施することも可能であり、いずれも検討しない手はない、と言っていいだろう。消費者は、より飲食の目的をはっきりさせるだろう
これから飲食店を開業しようとする新オーナーに向けて、これからの飲食業界、新たな消費者のニーズと当たり前になるであろうサービスについて見てきた。
今後は、拡大すると思われたサービスが現状維持に留まるかもしれないし、誰も気付けなかった画期的なサービスが登場する可能性もあり、現状ではまだ先は見えていない。
その中で最後に記しておきたいのは、消費者は「飲食する」という行為の目的をよりはっきりさせるであろう、ということだ。
新オーナーを目指す方々も、飲食の消費者の1人。
緊急事態宣言による自粛要請の中で、食事に対する変化があったのではないだろうか?
新型コロナウイルスによる自粛要請は、すべての消費者が、食事に対する変化を持ったきっかけでもある。
3密を避けるために、大勢の食事ができずオンラインで飲み会を開催する人たち。
気の合う仲間が集まって会食する目的。
リモートワークによって毎日自宅で仕事をし、その中で1人ランチをしていく日々。
自炊をしなかった一人暮らしの若い男性が飽きないランチのために自炊を始める目的――
飲食はただ生きるために食べることではなく、目的と用途によって、いろいろな場面が登場する。
新オーナーを目指すみなさんのお店は、どのようなターゲットにどのような飲食機会を提供していきたいのか――まだ厳しい状況が続くだろうが、変化する消費者のニーズを改めて捉える機会と考え、今後の可能性を模索することも必要なのはないだろうか。この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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