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飲食店を開業したいけれど、リスクは小さいほうがいい。このように考える人にとって、屋台での開業は最初のステップとして最適です。屋台で成功すれば、店舗を持った際にこれまでに培ったノウハウを活かせます。
本記事では、屋台開業したいけれどどうすればいいのかわからない方のために、屋台の開業費用や必要な設備、おすすめの立地、開業までの流れなどを詳しく解説します。
関連記事 移動販売とは?種類やキッチンカーで開業するポイント、失敗例から学ぶ成功のコツなど目次
屋台って簡単に出せるの?
お祭りやイベントの会場で屋台の形で出店することを考えている人は多いはず。
簡単に出せそう…と安易に考えがちですが、もちろん屋台を出すには許可が必要で、さまざまな制限もあります。まずは、今日明日で出店できるものではないと心得ましょう。
冒頭にも記載しましたが、「屋台で飲食店を開業する」というニーズは一定数あります。屋台での開業はビジネスのリスクが低いことは以前から変わりないですが、コロナ禍の自粛の影響でテイクアウト販売が一気に拡大したことを受け、屋台開業の認知は高まりを見せました。
ちなみに、屋台で開業し、ビジネスの先が見えてきたら固定の店舗を持つ…というビジネス戦略は間違っていません。
『北の家族』『ひもの屋』などを展開する株式会社subLimeの前社長、花光雅丸氏は、飲食業界でのキャリアを屋台からスタートしました。
屋台とは言えビジネスですから経営の知識や戦略は必要ですが、ビジネスが小さい分「お試し」感があっても成り立つのです。露店と屋台は何が違う?
露店と屋台は雰囲気こそ似ているものの、定義が異なります。露店とは、お祭りやイベントなどで路上や神社の境内などに商品を並べて販売するお店のことです。フリーマーケットも露店に該当し、飲食物のほか、古着や雑貨など幅広い商品を扱っています。
対して屋台とは、移動できる簡易的な建物のお店を指します。昨今では、その建物の中で調理し、できあがった料理を提供するお店を屋台と呼ぶことが一般的です。屋台の開業費用について
屋台を開業するには、店舗となる建物や調理のための設備を揃えるために、それなりの費用が発生します。しかし、実店舗を構えたり、キッチンカーでの販売に比べると、大幅に開業費用を抑えることが可能です。
店舗で開業する場合は、物件取得や内装工事、厨房設備などに約1,000万円の費用が必要といわれており、キッチンカーでの商売も車両の改造費だけで300万円以上かかってきます。
一方、屋台の多くは100万円程度で設備が揃うため、他の方法に比べ大幅に開業費用を抑えられます。屋台を開業する方法はFCと個人開業の2つ
屋台の開業には、FC(フランチャイズ)に加盟する方法と個人で始める方法があります。それぞれのメリットとデメリットを考慮し、自身に合った方法を選択しましょう。
FC(フランチャイズ)のメリットとデメリット
FC加盟のメリットは、開業に際し本部の支援が受けられることです。これまでチェーンで培ったノウハウを教えてもらえるため、失敗のリスクを軽減できます。また、FCのネームバリューによって、開業直後から集客が見込めます。
デメリットは、好き勝手に店舗運営できない自由度の低さとロイヤリティの支払いです。個人開業のメリットとデメリット
個人開業のメリットは、自由にお店を運営できる点です。また、ロイヤリティを支払う必要がないため、利益率が高くなります。
デメリットは、開業支援が受けられないことです。経営に関する知識は自身で身につける必要があります。集客も開業直後は苦労する可能性が高いでしょう。
屋台開業に必要な設備とは?
屋台開業に必要な設備は提供する料理によって変わりますが、基本的に必要な設備は以下の通りです
設備 具体的な内容
調理設備 ガスコンロ、電磁調理器、調理器具、作業台(営業許可取得に必要な設備を含む)
保管設備 冷蔵庫、冷凍庫、保冷バッグ
衛生設備 手洗い用シンク、消毒液、ゴミ箱
屋根やテント 日差しや雨からお店を保護するためのもの
什器備品 カウンター、テーブル、イス、メニューボード
会計用の設備 POSレジ、会計用タブレット、カード決済端末、現金保管用の金庫
販促用の設備や備品 のぼり、看板、チラシ、ショップカード
移動手段(遠方へ移動する場合) 車両、トレーラー
関連記事 移動販売に必要な設備はこちら屋台開業に適した立地とは?
営業場所の自由度が高い屋台にとって、立地選びは重要です。たくさんのお客様に来てもらうためには、以下のようなエリアを選ぶようにしましょう。
人通りが多いエリア
屋台に限らず、飲食店は人通りの多い場所が集客に有利です。繁華街やビジネス街、観光地などへの出店チャンスがあれば挑戦してみましょう。特に、観光地ではラーメンやたこ焼きが外国人観光客に人気を博しているため、高い収益が期待できます。
競合のいるエリア
人気のある場所には、高い確率で競合となるお店があります。競合は避けた方が良いという考えもありますが、チャンスと捉えることもできます。競合の存在は、顧客がいる証拠です。他店と差別化を図ることで十分に勝ち目はあります。
イベント会場
イベント会場には多くの人が集まります。来場者の中には、会場内での飲食を目的にしている方が多いため、行列ができるほど繁盛することもありえます。イベント会場への出店には高い費用が発生することもありますが、問題なく元が取れるでしょう。
駅の近く
仕事帰りのビジネスパーソンをターゲットにするなら、駅の近くが有利です。酒類などのドリンク需要が高いため、客単価が上がります。また、電車で通勤する方にとって、駅に近い店は、終電間際まで楽しめるといった魅力があります。
駐車スペースのある場所
歩行者に加え、車で買いにくる顧客をターゲットにする場合は、駐車スペースが必要です。商品を買いにくる顧客が路上駐車してしまうと、近隣の住民に迷惑がかかり、その場所では営業ができなくなることもあるため注意しましょう。
屋台開業の流れ5ステップ
屋台を開業するには、次の5つのステップを踏みます。
1. 食品衛生責任者の資格をとる
2. 保健所に事業内容を相談する
3. 必要な設備を揃える
4. 営業許可を申請する
5. 保健所の立ち入り検査を受ける
まずは講習を受け、食品衛生責任者の資格を取得します。次に、出店予定地所轄の保健所へ事業内容を伝え、営業許可に必要な条件を聞き、その内容に沿って設備を整えます。
設備が揃ったら、事業内容を相談した保健所へ営業許可の申請を行いましょう。保健所職員による立ち入り検査をクリアすれば営業許可書が発行され、営業ができる状態になります。
屋台営業に必要な手続き
まずは基本的な手続きについて、その流れを頭に入れておきましょう。
営業許可はすぐには下りないので、日程には余裕をもって準備を始めてください。管轄の保健所に相談
最初に注意したいのは、営業許可を得るためにクリアしなければならない基準が、各保健所によって違うということ。また、ある地域で一度許可を取得しても、別の地域で出店するには、さらにその地域を管轄する保健所で営業許可を取らなければなりません。
まずは出店したい地域を管轄している保健所を調べ、相談することから始めましょう。インターネットで厚生労働省の「保健所管轄区案内」を検索すれば、一覧になっています。
保健所に行く際は、屋台の図面などがあると、具体的な相談ができるので便利です。
また、後ほど詳しく触れますが、販売したいメニューによって取得する許可の種類が変わってきますので、あらかじめ決めて行くようにしましょう。書類提出
事前の相談で計画に問題がないようであれば、次に営業許可の申請にかかります。
屋台が完成する10日前を目安に保健所へ申請しますが、申請には予約が必要なところもありますので確認しておきましょう。
当日必要なものは、営業許可申請書、設備の概要や配置図、そして印鑑と許可手数料。食品衛生責任者証、もしくはそれに準じる資格証明書も持参します。
手数料は印紙で支払うことになりますが、金額は地域によってまちまち。13,000~14,000円程度のところが多いようです。
申請書の用紙は事前に入手できますが、もし初めての申請で心配なようなら、保健所で書き方を教えてもらいながら作成するというのも手。間違いがなくて安心ですし、二度手間にならずに済みます。施設検査
申請が終わって一段落といったところですが、営業許可を得るには、さらに屋台を設置し、備品も含めて保健所に「施設検査」をしてもらう必要があります。
申請をしたら担当者と検査日をすり合わせておきましょう。図面では問題がないように思われたものも、検査時に基準を満たしてない部分が見つかる可能性もあります。
その場合は、改善を施して再検査を受けることになります。検査で問題がない場合も、許可書の交付までは数日かかりますので、日程には余裕をもって行いましょう。
なお、営業許可証の有効期間は 5年。6年目になったら更新をお忘れなく。屋台で販売できる商品とは?
許可証が交付されるための条件でもありますが、屋台では販売できるメニューに制限が設けられています。
屋台の場合は、設備上、食品や手を十分に洗ったり、食品の温度を適切に保ったりすることが難しくなるため、食品衛生上の問題が起きやすくなるからです。
たとえば、なま物は食中毒になりやすいためNG。かき氷、ところてん、清涼飲料水、酒類は例外ですが、メニューは基本的に提供する直前に加熱処理をしなければなりません。
詳細は取得する許可の種類によって異なります。飲食店営業の場合
たこ焼き、焼き鳥、串焼き、焼きとうもろこしといった、主に加熱処理をしたメニューを販売する場合には、「飲食店営業許可」を取得します。その場で豆を挽いて提供するコーヒーも適用となる場合があるので、事前に確認しておきましょう。
なお、カップに注ぐだけのジュースや、容器に盛るだけのアイスクリームといったメニューなら、本来は「喫茶店営業許可」があればいいのですが、屋台での販売では取得できない保健所もあります。
扱えるメニューがより多い飲食店営業許可を取っておいた方が、後々応用が利きますのでおすすめです。
関連記事 たこ焼き屋開業に必要な資金とは?年収や失敗を避けるための注意点を解説菓子製造業の場合
今流行のかき氷やクレープ、たい焼きなど、主にスイーツ系のメニューを販売する場合には、「菓子製造業営業許可」を取得します。保健所によっては「飲食店営業許可」と「菓子製造業営業許可」のどちらかしか取得できないことがあります。
スイーツに挽きたての豆で入れたコーヒーを付けたい、お好み焼きとかき氷の和風セットを売りたいといった希望は、本来二つの営業許可が必要なので、申請が通らないことがあります。
販売できるメニューの数にも制限があり、なかには1種類しか認めないという保健所もあります。このあたりの条件も、保健所に相談してみましょう。屋台での仕込みはNG
メニューのほかにも、屋台では調理をする上での制限があります。
例えば、材料を細かく切ったりするなどの仕込み作業は、衛生上の問題があるためできません。事前に飲食店営業許可を取った場所の調理場で行い、持ち込むことになります。
また、設備の関係で、調理の際に多量の水を使うメニューも禁止です。
こうしたさまざまな条件から、人気のカレーも保健所によっては許可が下りないことがあります。
「最近、ビジネス街でよく見かけるキッチンカーでは売られているのに?」と思うかもしれませんが、同じ屋外の販売でも、キッチンカーの営業許可は設備条件が厳しくなっています。
同様のメニューが屋台で扱えるとは限らないので注意しましょう。屋台を出すためのルールとは?
営業許可は「設備条件がカギ」なのですが、具体的にどのような出店ルールがあるのでしょうか。
三方を囲む
どの保健所でも必ず条件に入っているのが「三方を囲む」テントの設置。
お祭りやイベント会場では不特定多数の人が出入りするので、食品に異物を混入された、調理器具を触られて火傷をさせてしまった、といった事故が起こる可能性が高くなります。
それらを防ぐため、第三者を中に入れないようにするのが目的です。洗浄設備を設置する
衛生管理上、洗浄をするための設備も必須です。
屋台なら、水栓コック付きのポリタンクに水を入れ、洗った水をバケツにためる方法が一般的。手と調理器具を別々の設備で洗えればベストですが、詳細は保健所の指示をあおいでください。
備品として、手洗い用の石鹸と手指消毒液も用意をお忘れなく。冷凍庫・冷蔵庫の設置
食材の鮮度を保つ設備としては、やはり冷凍庫や冷蔵庫があると安心。特に気温が高い時期は食中毒が怖いので、設置をおすすめします。
ただ、屋外では電源の確保が難しく、運ぶのが重いという難点も。屋台のメニューであれば、クーラーボックスや発泡スチロールの箱に氷や保冷剤を詰める方法でも許可が下りることがあります。蓋つきの保管庫
異物混入の防止や衛生管理のため、食材や調理器具を保管するときには、蓋つきの容器を使用します。専用の容器のほか、調理器具であれプラスチックの衣装ケースなどを代用するのも手です。
消火器の設置
イベント時に露店から発生した火災が原因で死亡事故が起きていることをふまえ、消防署へ屋台(露店)の開設届を出すように求める自治体が増えています。
複数の屋台が出る場合、届け出はイベント主催者が行いますが、いずれにしても各屋台の消火器設置が許諾の条件となってきます。
保健所からは設置が義務づけられているものではありませんが、用意するようにしましょう。ゴミ箱の設置
ゴミ箱も衛生上の対策としては必需品。特にサイズの規定はないので、販売するメニューや使用する容器を考えて設置しましょう。
まとめ
屋台の開業方法を見てきました。結構いろいろと決まりがある…という印象なのではないでしょうか。
例えば、屋台空間での仕込みができないとなれば、別の「仕込む場所」が必要となり、それが自宅などで賄えない場合はその場所を確保する必要など、いろいろ課題も出てきます。
ですが、ビジネスのリスクが少ないというのは大きなメリットです。テイクアウトやデリバリー販売との相性もよく、開業への追い風があるともいえます。
飲食店の開業を考えていた人は、「屋台」という選択肢もぜひ視野に入れてみてください。
関連記事 【焼き鳥屋】の開業方法はこちら≫「焼き鳥屋を開業するには?開業資金や準備、繁盛するための対策とは?」
無料会員登録この記事の監修
ライター・飲食店経営
大杉元則
調理師学校卒業後、大手老舗ホテルの西洋料理部門に勤務。フレンチレストランやベーカリー、給食会社を経て2010年、無農薬野菜にこだわったイタリアンを開業。現在は店舗のオーナーシェフを務めながら飲食関連を中心としたライターとして活動中。
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