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【小阪裕司コラム】第234回:顧客に届いていたものは何か

【小阪裕司コラム】第234回:顧客に届いていたものは何か

全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

2年半ぶりのお客さんを繋げていたもの

 前回、前々回と、顧客とのコミュニケーションとニューズレター(以下、NL)に関する事例をお伝えした。このような営みは今日の顧客にとってどういう意味を持つのか。今回もう一つ別の事例をお伝えしたい。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のあるエステサロンからのご報告だ。
 「とても嬉しいことがあった」との書き出しから始まるその報告には、ある顧客とのやり取りが書かれていた。その顧客は2年半ぶり、2回目の来店だった。前回来店の際、退店時に「職場が近いのでまた来ます」と言った彼女。好感触だったが、それきり来なくなり2年半も空いてしまった。しかし今回来店時の会話から、それは第2子を妊娠・出産したためだと判明した。来なくなったのにはわけがあったのだ。
 そして店主が驚いたのは、彼女がビールのプレゼントを持って来たことだ。なぜビールなのか。それは、昨年の同店9周年の際、顧客に毎月送っているNLに店主がこう書いたからだ。「お祝いにビール1缶を持って来てくれませんか?」。彼女はそれを覚えており、「お酒お好きですよね」とビールを手渡してくれ、とても感激したと店主は言う。また、ビールが入った袋に貼られていた付箋にはこの言葉があった。「おてがみたくさんありがとうございました」。“おてがみ”とは毎月送っていたNLのことである。

商売は人と人との営み

 同様の事例は、実践会には数多い。それもNLに限らず、例えば請求書に同封している一筆箋でも同じことは起こる。相手が法人客でもだ。実践会員のある会社が納入先への請求書や納品書に一筆箋を同封し、そこに数行「暖かくなってきたので、水分補給や暑さ対策して、くれぐれもご自愛ください」など、季節の挨拶文を書いて入れるようにしたところ、直近の納品時に先方の統括部門長からこう言われたという。「いつもお手紙ありがとうございます。楽しく読ませてもらってます」。何のことかと一瞬言葉に詰まっていると、「いつも納品書や請求書に入っているお手紙です。あれ、ホッコリしますね」。
 それは一筆箋のことだったのだが、この例でも、顧客が「お手紙」と呼んでいることに注目してほしい。そして、NLや一筆箋の形式を問わず、それらを通じて顧客は何を感じているか、その気持ちがどんな関係を育むかを想像してほしい。それは商売を温かなものにし、お互いの関係を強固なものにし、商売にプラスをもたらさないだろうか?
 つくづく思う。商売は人と人との営みなのである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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