会社に勤めている人であれば一度は考える脱サラ開業。サラリーマンを辞めて開業をしたい、でも何から始めたらいいのか分からないという人は少なくありません。今回は、サラリーマンを辞めて開業したい人へ開業に対する心構えと成功させるためのコツを紹介します。
脱サラして開業をする前に考えるべきこと
目的や動機を明確にする
脱サラ開業をする際には、目的や動機を明確にする必要があります。何のために安定した職を辞めて開業するのか、開業して何を実現したいのかという基盤となる方向性をしっかりと考えておきましょう。脱サラしてまで開業する理由が浮かばない場合は「脱サラ」をもう一度考え直してみてもよいでしょう。
開業はあくまでも目的達成のための”手段”と考える
目的がないまま開業の準備を進めてしまうと「脱サラ開業」が目的になってしまい、開業後の経営に対するモチベーションの維持が難しくなってきます。準備段階で目的や動機をハッキリさせておきましょう。
脱サラ開業のメリット・デメリット
自分の事業を持てる
脱サラすれば自分が本当にやりたいことをビジネスにできるため、目標を設定しやすく目標達成までのモチベーションも維持できるでしょう。また、上司や同僚との人間関係に悩むことがなくなるということもメリットのひとつです。
収入が上がる可能性も
サラリーマンの場合、会社全体の業績が給与となることが多いので、働いた分だけ給与に反映されることはほとんどありません。しかし、開業すれば利益を出した分だけ収入を上げることも可能になるのです。
働く時間と場所を選べる
会社に通う必要がなくなり、働きたい場所もある程度は希望が叶う場所となるため、サラリーマンだった頃よりも通勤に対するストレスを減らすことができます。時間に対する縛りもサラリーマン時代に比べると、誰かに決められたスケジュールではないため比較的自由に決める事ができます。
すべて自己責任
脱サラ開業で念頭に置くべきことは、サラリーマンとは違い守ってくれるものがないということ。会社員では上司や同僚へ判断を促したりフォローを受けたりできますが、脱サラして開業となるとすべて自分で解決していかなければなりません。
収入が安定しない
開業した場合、安定した収入ではなくなります。開業してしばらくは目標売上よりも低い売上となることは覚悟しておかなければなりません。開業する業種によっては天候や季節など、状況によって売上に差が生まれてしまう場合もあります。
そのため、カードやローンが組みにくいのでサラリーマン時代に行っておくことをおすすめします。
ノウハウがない
例えお店の開業にこぎつけたとしても、経験不足から経営方法や売上分析を怠り、そのため早期にお店を閉店せざるを得なくなってしまったということも少なくありません。開業にはその業種、扱うサービス、お金の知識が必要不可欠です。特に、お金に関しては、どの業種でも共通して必要になってくる知識なので、しっかり身に付けておきましょう。
開業までに身に付けておきたいお金に関する5つの知識
開業する業種やサービスなどに共通して必要となってくるお金に関する知識は以下の5つです。
①財務会計
賃借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書からできています。資産保有状況や期間ごとの経営成績、お金の流れを示しており、これらを正しく作ることが、融資を受け続けるなどの資金を集める際に必要不可欠となってきます。
②管理会計
管理会計は自店の会計に活かすために利用する会計業務です。利益が見込める時期を把握するための「損益分岐点分析」や固定費の回収に貢献する「限界利益」を検討する際に役立てられます。
③税金
開業するにあたっては、税金の知識も必要です。税金について把握することで、支払いの漏れも防ぐことができます。また、節税や融資額にも役立てることができますので、事前に税金の勉強をしておくことをおすすめします。
④マーケティング
商品やサービスを提供する際の価格設定を決める要素としてマーケティングは必要です。
⑤補助金、助成金
返済不要の資金調達制度です。返済不要ですが公募時期が決まっているため、早めに調べておくことが大切です。現在はコロナウィルス感染拡大の影響に伴う補助給付金や助成金情報が全国で提示されています。開業される地域でどのような制度があるのか調べてみましょう。
脱サラしてから開業するまでに必ず通る、重要な4つのポイント
脱サラ開業に対する目的や動機が明確になったら、どういうポイントに気を付けて開業準備をすればいいのか考えてみましょう。開業までに誰しもが必ず通る道だけど絶対に妥協してはいけない、重要なポイントを紹介します。
①必要な手続きを行う
退職後、各種手続きを行います。自営業の人はすべて自分で手続きをしなければなりません。特に忘れてはいけない3つの手続きがあります。
・国民健康保険への加入…健康保険から国民健康保険へ加入の手続きを行います。国民健康保険には健康保険のような扶養者というものはありませんので、家族がいれば全員が被保険者にならなければなりません。また、国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されますので、収入が低くなったとしても保険料が高額な場合がありますので注意が必要です。
届け出の期限は下記をご確認ください。
健康保険喪失の届け出:退職日の翌日~5日以内
国民健康保険加入の届け出:退職日の翌日~14日以内
・国民年金への加入…厚生年金から国民年金へ加入の手続きを行います。サラリーマンと異なり自分自身で全額納付します。配偶者がいる場合は扶養家族も手続きが必要となりますので忘れないようにしましょう。自営業の場合、国民年金のみとなってしまいますので将来の年金額の低下を想定しなければなりません。
届け出の期限は下記をご確認ください。
国民年金加入の届け出:退職日の翌日~14日以内
・雇用保険の手続き…雇用保険は、労働者の失業を防止し、再就職を促進するための制度です。失業したときにもらえる基本手当を始め、教育・育児・介護などの給付金もあります。退職して独立した場合、失業手当はもらえませんが「求職活動中に創業の準備・検討をする場合」は失業手当の対象となります。その他、手当を受けられる条件等を確認して有効的に利用しましょう。
②物件を探す
物件は後から変えることができないため、後悔しない選び方をしましょう。開業する人のほとんどが、物件探しで苦戦しています。周辺地域の情報や物件の広さなどを整理し、夢を実現するために必要な条件を考えてみましょう。
③事業計画を立てる
事業計画書とは、開業者の夢を実現するための具体的な行動を示すもの。事業計画書の使い道は大きく分けて2つあり、1つ目は資金調達、2つ目は人材確保や多くの取引先のパイプを広げるためです。
冒頭にあった「脱サラで開業をする前に考えるべきこと」でもお話したように、「何のために開業をするのか」のほか、「どうやって利益を上げるのか」など具体的なことを記載しなければいけません。
また、コロナ禍以前とコロナ禍での事業計画書の書き方は異なっていますので、調べたり専門の事業者(コンサルタントなど)に確認したりすることをおすすめします。
④資金を集める
自己資金だけで開業ができる場合、資金を集める必要はありませんが開業希望者の多くは開業、運転資金を自己資金で賄えず、融資を頼ることになります。開業だけでなく、運転資金のことも考え、余裕のある資金調達をしておく必要があるでしょう。
失敗リスクを減らす開業方法
上記をしっかり考えた!それでもやっぱり失敗のリスクを避けたい…という人は、2つの方法で段階を踏むのも良いかもしれません。
①フランチャイズビジネス
フランチャイズビジネスとは、加盟する会社の名前やサービス、商品を使用して経営する方法です。
フランチャイズ独立開業は0円~1,000万円単位に合わせて、企業を選ぶことができます。高い金額を払って失敗しないために丁寧な資料、親身になって相談に乗ってくれる企業を探すようにしましょう。
②まずは副業から
脱サラのリスクを下げたいのであれば、副業から始めることも手段のひとつ。会社員のうちに副業として行い、利益がどれくらい出せるのかを試すことで失敗のリスクを下げることができます。副業で月に数万円~10万円以上の利益が取れない場合や数カ月副業をやってみて利益が伸びない場合は、脱サラの計画を考え直す必要があるかもしれません。
脱サラの心構えと成功するために必要なこと
脱サラすることで成功する人もいれば、会社員時代よりも厳しい生活に陥る人もいます。ひとつだけ言えることは後悔しない選択をすることが大切です。
脱サラ開業するときは、ネガティブな感情や勢いで行うのではなく何をしたくて会社員を辞めるのか、開業する理由を明確すると良いでしょう。開業してすぐに経営が軌道に乗るとは限らないため、運転資金や生活費を蓄えておく必要があります。自分だけが得するような目的を優先するよりも、ターゲット層のニーズに合う事業を行うことが脱サラ開業には大切です。
一度はサラリーマンの経験があるからこそ、開業した際に活かせる場面が多くあると思います。現在、会社員として働いている人は、会社員にしかできない経験や学びをたくさん行っておきましょう。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。