飲食店を開業するにあたって取り揃えておきたい厨房機器は4点です。お冷の提供は飲食店で必ずといっても過言でないため、1日あたり客席数に1.5を乗算した値の氷を生成できる製氷機。限られた厨房スペースを有効活用できる冷蔵設備と作業台としての機能を兼ねたコールドテーブル。コンロとオーブンが同時に使える業務用ガスレンジ。保健所によって規定された内径寸法を満たす2槽のシンク。飲食店開業で必要な4つの厨房機器と特徴を解説します。
飲食店によって取り揃えるべき厨房機器は多少差が出てきますが、どんなお店でも共通して需要がある機器はいくつか存在します。また、飲食店を営業するためには営業許可証を取得する必要があります。そのためには、保健所が定める施設基準を満たした環境と設備を用意しなくてはいけません。
実際にお店をオープンした後は経営に忙しく、機器を新たに選定して調達するためのまとまった時間が少なくなってしまうため、提供する料理を把握して必要になる機器を先読みして調達するべきです。今回は、飲食店を開業するにあたって取り揃えておきたい4つの厨房機器とそれぞれの特徴を解説します。
1.製氷機は客席数×1.5倍の製氷能力が目安
お冷やドリンクに氷を入れて提供するために必要な製氷機。製氷能力の目安は、お店の客席数×1.5倍の数値が一般的です。一日あたりの製氷能力は製品によって異なり、低いものでは10kg前後、高いものだと100kgを超えるタイプもあります。
例えば客席数が16の場合は目安となる製氷能力が24kgとなりますが、カフェやバーといったドリンクメニューを多く取り扱うお店の場合、夏季の氷使用量増加で不足するかもしれません。そのため余裕を持って数値を上乗せし、30kgほどの製氷能力がある製氷機が好ましいといえるでしょう。
2.コールドテーブルは限られた厨房スペースを有効活用できる
席数が多い大型の飲食店であると、厨房に各食品を最適な環境で保管するための冷凍室や冷蔵室が設けられているケースもあります。しかし店内の厨房スペースが限られているため大型の冷蔵設備を設けることが難しいという場合、作業台としての機能も兼ねている業務用のコールドテーブルが適しています。
コールドテーブルは背が低い横長タイプの冷蔵設備であり、上面が食品の調理や仕込みを行う際の作業台として使える業務用の冷凍冷蔵庫です。扉を正面に捉えて横並列に2つあるいは3つのブロックが存在し、それぞれの部屋が冷蔵室または冷凍室として割り振られています。
コールドテーブルの全高は700mm以上900mm未満のものが多いですが、なかには600mmほどの低いタイプも販売されているためバリエーションは豊富です。ただし上面の作業台を使うときは前屈姿勢になることが多いため、使用者の身長に合っていないと作業効率が悪くなってしまうかもしれません。
温度調節などを行う駆動部のユニットは左右どちらか一律ではなく製品によって備えられている向きが異なるため、電源までの導線や各厨房機器の配置やレイアウトを加味して選びましょう。
・魚介類や乳類などを販売する場合は施設基準に則った冷蔵設備を設ける
魚介類や乳類といった食品を取り扱い、お客さんに販売する飲食店は保健局が定めた施設基準に則った冷蔵設備を設けなくてはいけません。[注1]
生食用の魚介類を販売するのであれば温度が5℃以下、冷凍された魚介類を取り扱う場合は−15℃以下に設定できる冷蔵設備が必要です。また常温保存が可能な製品を除き牛乳やチーズといった乳類は常時10℃以下、冷凍肉は−15℃で保管しましょう。
3.業務用ガスレンジ(ガスオーブン)は熱調理の時間が短縮できる
オーブントースターとオーブンレンジ双方の使い方ができるコンベクションオーブンに加え、ガステーブルが一元化された熱調理機器が業務用のガスレンジ(ガスオーブン)です。手動でガス栓を空けて点火する外管式、つまみを操作して点火する内管式があり安全装置が備えられた製品も一部存在します。
上部に設けられたコンロと下部に備えられたオーブンを同時に使うことができるため、高い火力が求められる本格的な焼き料理やトーストといったメニューの熱調理における時間短縮が見込めます。
コンベクションオーブンを用いれば、油を使わずに揚げ物を作ることも可能であり、内部のヒーターから発せられた熱をファンで巡らせるので食材を均一に焼けます。製品によってはトースターとレンジをそれぞれ購入して設置するよりもスペースがかさばらないため、調理場の面積が狭いお店で重宝する厨房機器です。
塵埃がたまらない形状の換気扇フードを設置する
換気扇は飲食店に限らず一般住宅でもキッチンルームに必ず備えられている設備であり、これを覆っている什器が換気扇フードです。換気扇の多くは高所に設置されている仕様からフードに塵埃がたまりやすいため、ひさしなどの突出部がない形状のものを設置しましょう。
飲食店を開業するにあたって保健所から営業許可を取得しなければいけませんが、塵埃がたまりやすい形状の換気扇フードであると許可がおりないこともあります。一般住宅やテナントなどに設けられているキッチンの換気扇フードはひさしがある仕様の製品もあるため、該当する場合は替えましょう。
天井から床にかけて直線状の箱型換気扇フードであれば塵埃がたまりにくいため許可がおりる可能性は高いです。ただし換気扇フードと天井の結合部に隙間があると塵埃がたまりやすいと判断されてしまうこともあるため、保健所の検査に注意して設置しましょう。
洗浄設備は【幅45cm×奥行36cm×深さ18cm】のシンクが2槽必要
飲食店を営業するためには幅45cm×奥行36cm×深さ18cmのシンクが2槽必要であると、保健所の施設基準で示されています。[注1]
そのため規定の内径寸法を満たした2槽タイプのシンクを用意すれば保健所の施設基準をクリアしていることになります。ただし自動の洗浄設備がある場合はシンクが1槽でも認められるため、食洗機などがある場合に限り2槽タイプのシンクを用意する必要はありません。
主にラーメンなど油を多用する料理を提供する飲食店の場合、冬場は油が冷えて固まりやすく調理機器や食器にこびりつくことがあります。そのため取り扱う料理の種類よっては温水で勢いよく洗う食洗機が効果的であり、シンクも1槽で済むため一石二鳥といえるでしょう。
実際にお店の経営が始まると、後から必要性に気づき買い足したいと感じる厨房機器があるかもしれません。後から買い足す手間を省くために先読みすることも重要ですが、一方で調達したにも関わらず結果的にあまり必要ではなかったと判明することもあります。
お店のコンセプトによって必要な厨房機器は異なり、業務用となると家庭用に比べていささか高価なものが多いです。しかしコストを抑えようとして必要な機器の調達を渋ってしまうと、保健所の施設基準に反してオープンが遅れてしまう可能性や買い直しといったリスクがあります。
まずは自分のお店が提供するメニューの調理方法や環境を把握し、本稿で記載した厨房機器を参考にしながら「これは必要」と感じるものを取り揃えましょう。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
