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私たちの日々の食生活に欠かせない冷凍食品。今では当たり前のように口にしていますが、長い歴史の中で冷凍食品の品質や冷凍技術が驚くべき進化を遂げていることをご存知でしょうか?
冷凍技術の進化は家庭用の冷凍食品の品質、味の向上につながるだけでなく、飲食店にとっても多くのメリットやチャンスを秘めています。
この記事では、昨今の冷凍食品事情や冷凍技術についてご紹介するとともに、個人経営の飲食店でも取り入れられる活用方法、冷凍販売の始め方についても解説します。
目次
冷凍食品の需要は右肩上がり
冷凍食品の需要は年々増加を続けています。家庭用冷凍食品では、2020年の国内生産量が 77万1,265 トン(対前年比111.4%)、工場出荷額が 3,749 億円(対前年比118.5%)。この数字は一般社団法人 日本冷凍食品協会の公表データによるもので、生産量・出荷額ともに、調査開始以来最も高い値となっています。
以前は、冷凍食品をスーパーやコンビニで購入することが主流でしたが、その状況も次第に変化。2016年に日本へ初上陸したフランスの冷凍食品専門店 「Picard(ピカール)」を筆頭に、冷凍食品を専門に扱う小売店や通販サイトが増加しています。
最近では、無人販売の冷凍餃子専門店や全国各地の冷凍パンを集めたセレクトショップが登場し、話題となりました。また、コロナ禍をきっかけに、冷凍食品に目をつける飲食店も増加。メニューを冷凍して店頭で販売したり、ネット通販を始めたりする動きが見られます。
冷凍の仕組みと課題
こうした冷凍食品の人気と需要拡大を支えているのが、近年著しい進化を続ける「冷凍技術」です。その冷凍技術の進化について解説する前に、まずは従来の冷凍の仕組みと課題から見ていきましょう。
そもそも食品の冷凍は、食品の細胞中に含まれている水を凍らせることを意味します。
一般的な冷凍方法として挙げられるのは「エアーブラスト方式(空気凍結)」。大半の家庭用冷蔵庫の冷凍室にはこの方式が使われており、食品の表面に直接冷風を当てることで、食品中の水分を凍らせます。
しかし、エアーブラスト方式では冷凍時に細胞破壊が起こりやすく、品質や味の劣化を招くことが課題となっています。
食品の細胞内にある水分は、冷凍されることで氷の結晶に変化します。その際、エアーブラスト方式のように冷凍に時間を要する方法だと、水分の膨張の度合いが大きくなり、氷の結晶のサイズも大きく成長。大きくなった氷の結晶は食品の細胞膜を突き破り、細胞破壊が起こります。
さらに、その細胞破壊が起こった状態で解凍すると、突き破られた穴から食品の水分と旨みが流れ出てしまいます。その結果、味覚成分や栄養素が失われ、食感も悪くなってしまうのです。冷凍技術の進化が止まらない!
そうした課題の解決に必要なのは「氷の結晶の成長を抑え、食品の細胞を守ること」「短時間で均一に凍らせること」です。冷凍技術は年々進化を遂げ、以下のような急速冷凍の技術が登場しています。
■CAS冷凍
CASとはCells Alive Systemの略で、食品中の水分を「過冷却」の状態にして一気に凍らせる技術です。
過冷却とは、水が0℃以下になっても凍結しない状態のこと。冷凍装置内に磁場を発生させて水分子を細かく振動させながら冷やし、過冷却状態になったタイミングで小さな衝撃を与え、一気に全体を凍らせます。冷凍時にできるのは微細な氷の粒のため、細胞膜の破壊を防ぎ、表面から中心部まで均等に凍らせることが可能です。
業務用の冷凍食品や生鮮食品の冷凍技術として普及しつつあり、冷凍には不向きとされていたウニや白子などの海産物にも重宝されています。
また、細胞を壊さず冷凍できることから、移植用細胞や臓器の長期保存といった食品以外の分野にも応用できる技術として注目を浴びています。
■プロトン凍結
磁石、電磁波、冷風の3つの力を組み合わせて、食品を瞬時に凍らせるハイブリッドな技術です。
冷風で冷却すると同時に、磁石と電磁波が氷の結晶一つずつに働きかけ、結晶が大きくならないようにサイズをコントロールします。
肉や魚などの生鮮食品のほか、デパ地下のお惣菜や和食のお弁当などにもこの技術が使われています。
フランス料理も、寿司も冷凍可能
近年ではフランス料理を冷凍し、通販サイトで販売するサービスも登場。急速冷凍技術によって、飲食店で調理した料理をそのまま冷凍することが容易になり、自宅で高級フレンチを楽しむ体験が可能となりました。
また、絶対に無理だと言われていたお寿司も冷凍が可能に。白米や酢飯は通常、冷凍することで水分が失われ、蝋のように固くてボロボロな状態になる「白蝋(はくろう)化」が起こることがしばしばあります。
しかし、その課題を急速冷凍技術が解決。握り寿司の状態で冷凍を行っても品質・味を保てるようになりました。解凍をしてもシャリはふんわりとやわらかく、ネタもドリップ(水気)が出ないというのは驚きです。
飲食店で冷凍技術を導入するメリットは?
個人経営の飲食店でも、そうした最新の冷凍技術を用いた冷凍食品を取り入れることで、多くのメリットが得られます。
急速冷凍機を導入し、仕入れた食材を急速冷凍して保存しておくことで、鮮度を保ったまま賞味期限を延ばすことが可能に。食品ロスの削減につながります。厨房で調理した料理をそのまま冷凍できるため、スープやデザートなどを冷凍しておくことで厨房内の作業の効率化も図れます。
また、鮮度が高くておいしい料理がいつでも楽しめるなど、消費者にとってのプラス面も。
急速冷凍機を購入する余裕がない場合でも、急速冷凍された食材や料理を仕入れることで、メリットを享受できます。
冷凍食品の販売を始めるには?
■特別な許可は必要?
飲食店営業許可は、店内での飲食提供に対する許可に限られています。そのため、飲食店の厨房で作った料理を販売するには、その商品に応じた製造業や販売業の許認可が必要です。
例えば、オードブルを冷凍販売するなら「そうざい製造業」、ラーメンセットなら「めん類製造業」「食肉製品製造業」「調味料等製造業」など。食肉や鮮魚介類が含まれる場合には「食肉販売業」「魚介類販売業」が必要になります。
また、冷凍食品の販売のために「食品の冷凍又は冷蔵業」の営業許可も必要です。保健所に十分確認を取り、手続きを行いましょう。■食品表示の記載も必須
ネット通販を始める場合、原材料名や添加物、保存方法など食品表示法に基づいた項目を包装容器に記載する必要があります。表示が必須となる項目は以下の通りです。
・名称
・原材料名
・食品添加物
・内容量
・賞味期限又は消費期限
・保存方法
・製造所所在地
・販売者名等
・栄養成分表示
その他にも、アレルギー表示や原料原産地など、一定の要件に該当する場合には追加表記が必要となります。許認可と同じく、十分に確認・理解をした上で準備を進めるようにしましょう。
第三者に委託する選択肢も
急速冷凍機への投資が難しい、許認可を受けるための諸手続きにまで手が回らないという場合には、
冷凍販売の代行サービスを利用する手もあります。
厨房で調理した料理や商品をそのまま代行会社に引き渡し、急速冷凍機で冷凍・保管の上、発送作業まで行ってくれる場合も。少量であっても依頼できたり、どんな料理・商品が冷凍販売に向いているかを相談できたりと、個人経営の飲食店でも導入可能です。
飲食店の売上アップにつなげる新たな施策として、食品ロスを減らす取り組みとして、ぜひ冷凍食品の活用・販売を検討してみてはいかがでしょうか。
ライター:上田はるか(フリーライター)
大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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