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新型コロナウイルスに翻弄された2020年。飲食業界への余波はことのほか大きく、売上も激減、倒産に追い込まれるケースが目立ちました。
倒産件数を紐解くと影響の大きい業態、少ない業態があることがみえてきます。その一方で、コロナ禍を追い風に業績を伸ばしている業態も。業態の違いによるコロナの影響についても深堀していきます。
参考記事:飲食店が倒産する理由とは?業態別の数値や防止策を解説
目次
過去最多!780件の飲食店が2020年に倒産
帝国データバンクが2021年1月に発表した「飲食店の倒産動向調査(2020年)」によると、2020年における飲食店事業者の倒産は780件発生し、過去最多の水準となったことがわかりました。ちなみに2019年の倒産件数は732件で、件数の増加は2年連続となっています。
※データは、飲食事業を主業とする事業者(法人・個人事業者)で、法的整理かつ負債1,000万円以上を対象
負債規模別は「5,000万円未満」が620件(構成比79.5%)で最多
同調査の負債規模別をみると、「5,000万円未満」が620件で最も多く、小規模事業者の倒産が8割近くを占めています。「5,000万円~1億円未満」が86件、「1億円以上~5億円未満」が61件、「5億円以上~10億円未満」が9件、「10億円以上~50億円未満」が4件。負債額が50億円以上の倒産は2013年以降8年連続で発生していない、ということです。
倒産件数が最多の業態は「居酒屋」
業態別の倒産件数は「酒場・ビヤホール」が189件(構成比 24.2%)で最も多く、次いで、「中華・東洋料理店」(105件、構成比13.5%)、「西洋料理店」(100件、同 2.8%)、「日本料理店」(79件、同10.1%)が続きます。
居酒屋が影響を受けやすい理由
新しくオープンした店の約3割強が1年以内に閉店、5年で約8割が消えていくといわれる飲食業界。コロナ前から続く人手不足や原材料の高騰などで厳しい状況に立たされている店は少なくありませんでした。
そこに予期せぬ新型コロナウイルスが直撃。飲食店はさらに大きなダメージを受けることになってしまいました。
なかでも居酒屋は倒産件数の多さからわかる通り、苦戦を強いられています。追い打ちをかけたのはコロナによる環境の変化。
新型コロナウイルスによってリモートワークに転換する企業が続出し、帰宅途中に飲んで帰るといった機会も少なくなり、歓送迎会や忘年会・新年会など年末年始の会食も激減。
さらには営業時間短縮の要請で、一番の煽りを受けてしまったのが居酒屋のような業態です。特に稼ぎ時の忘年会シーズンを第3波といわれる感染増加が直撃したことは大きな痛手となってしまいました。度重なる緊急事態宣言に翻弄された結果は否めません。
「焼肉店」の倒産件数は過去10年で最少
依然として厳しい状況が続く飲食業界ですが、そんな中でも焼肉店が健闘しています。
東京商工リサーチによると、2020年の焼肉店の倒産件数は全国で14件で、前年比は33.3%減、過去10年間でみると最少を記録したということです。
また、一般社団法人日本フードサービス協会の統計によると、2020年11月の焼肉店の売上高は前年同月比9.4%増と2カ月連続でプラスだったことがわかっています。
倒産した焼肉店14件のうち、すべてが個人企業を含む資本金1,000万円未満、従業員10人未満の小・零細規模だったということです。
原因別では、10件(構成比71.4%)が販売不振で、焼肉店の新型コロナ関連倒産は3件(同21.4%)判明。最初の緊急事態宣言の発令時に、外出自粛などで売上高が大きく落ち込み、事業継続が難しくなり倒産したケースが目立ったとも東京商工リサーチは伝えています。
焼肉店がコロナ禍でも好調な理由
コロナ禍でひとり勝ちといわれる業態の焼肉店。それを象徴しているのが居酒屋大手のワタミの業態転換かもしれません。2020年10月に「居酒屋 和民」など自社の居酒屋約120店を「焼肉の和民」に切り替えていくと発表。
以後、売上も順調に伸びているということです。ちなみに「焼肉の和民」は特急レーンや配膳ロボットを採用してスタッフとの接触を減らし、店内換気を強化することで、感染症対策を高めていることも大きな特徴になっています。
そもそも、なぜ焼肉という業態が好調なのでしょうか。焼肉店といえば、最近は換気の良い店が増えています。
においや煙を充満させないよう、強力な換気システムを兼ね備えているということですが、三密回避が求められるコロナ禍ではそのような環境が安心感につながったといわれています。
無煙ロースター最大手のシンポによれば、焼肉店に設置した無煙ロースターは、焼肉の煙と一緒に店内の空気を店外に排気し、約3分半で客席全体の空気を入れ替えることができるそうです。また、昨今のブームであった “ひとり焼肉”も三密を回避できるとあって、焼肉店の好調を後押しする要因につながったようです。
これから開業を考えるなら綿密な計画を
新型コロナによって私たちの生活は大きく変化しました。たとえばテレワークによって自宅にいる時間が増加したことで、これまで当たり前のようにあった大人数の会食や飲み会も今後は減っていくかもしれません。
それに繁華街やオフィス街といった人通りの多いエリアでは、開いているだけで客が入ってくるという店は少なくありませんでした。
しかし、コロナ禍において、これまでと同じような店舗経営セオリーが通用するとは考えづらいのも事実。だからといって、ネガティブになる必要はありません。今後、開業を考えているのであれば発想の転換がカギとなるからです。
経済活動がコロナ前に比べて7割程度の需要しかない「7割経済」といわれる今、コストは極力抑えたいところ。そこでDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入を検討するのはひとつの手段です。電子マネーやQRコード等のキャッシュレス決済システム、モバイルオーダーシステムなどをIT化させることで、業務負担の削減や効率化といったメリットが得られることができます。
また、店内飲食だけに頼るのではなく、あらかじめデリバリーやテイクアウトを視野に入れたり、ランチ営業だけでなく朝食営業、メニュー展開などに注力するのもよいでしょう。
夜に飲む機会が減ったのであれば、昼飲みで新しい価値を提供するのもありかもしれません。
大切なのは店にとって唯一無二の強みとは何なのか。
開業するのであれば、しっかりとした戦略を立て、店づくりをしていくべきなのです。
飲食業界、特に居酒屋が苦戦を強いられていますが、居酒屋を開業するなということではありません。これまでの常識を打ち破り、逆転の発想で新しい形の居酒屋を生み出すことができれば、そこに勝機はあるからです。
外食とは、非日常を味わえ、エンタテイメントやコミュニケーションの場になっている文化でもあります。決してなくなることはないでしょう。ただし、生活様式が一変したアフターコロナにおいては、この時代にフィットする飲食店のあり方について考えていくことが大切なのです。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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