オフィスビルが立ち並ぶビジネス街や、大型のショッピングモールなどで人気のキッチンカー。今では全国から人気のキッチンカーを集めたフェスや、キッチンカーと出店場所をマッチングさせるサービスなども登場し、キッチンカーを取り巻く環境が様変わりしています。
キッチンカーは初期費用が安く、開業しやすいと人気の業態ですが、開業にあたり資格取得や許可の申請が必要不可欠です。この記事では、キッチンカーの開業に必要な許可や資格の取得方法、開業までの流れについて解説します。
目次
- キッチンカー(フードトラック)での移動販売が流行っている理由
- キッチンカーでの開業資金は250~300万円
- キッチンカーでの開業のメリット
- キッチンカー開業に必要な資格や許可
- キッチンカー開業の4ステップ
- キッチンカーの購入方法
- 差がつくポイント!キッチンカーに必要な設備とは
- キッチンカーの開業費用
- キッチンカー開業時における注意点
- キッチンカー開業のための資金の調達方法
- キッチンカー開業の際に役立つ補助金・助成金
- キッチンカー開業の際におすすめの保険とは?
- キッチンカーの集客にはやっぱりこれ!おすすめのアイテム
- キッチンカーの集客に活用すべきSNSとは
- キッチンカーの強みを活かして開業を成功させよう!
キッチンカー(フードトラック)での移動販売が流行っている理由
キッチンカーが流行しているのは、初期費用が安く開業しやすかったり、気軽に個性的な料理を楽しめたりという理由だけではありません。新型コロナウイルスの感染拡大からはじまったライフスタイルの変化や、働き方の多様化なども背景にあると考えられます。
キッチンカーの流行はライフスタイルの変化にある
キッチンカー業界が活況を呈している主な理由は、ライフスタイルの変化が挙げられます。
コロナ禍では“三密の回避”で多人数での飲食が避けられるようになり、お弁当需要が増したことが近年のキッチンカー人気の理由のひとつです。その潮流は現在も続いており、キッチンカーでの飲食が日本人の生活に根付いてきたといえます。
ほかにもキッチンカーが流行している要因として、次のような点が挙げられます。
【個人の副業や独立】
昨今、企業において副業が認められるケースが増えています。
通常は、就業規則の中で明確に「副業は禁止」と記載され、副業をおこなうことは就業規則違反となってしまいます。ただ、働き方改革の一環として日本国の方針として副業を推奨されたことに伴い、それに追随して副業を許可する企業が増えました。
キッチンカーの場合、キッチンカーさえ確保すれば休日を利用したりなど気軽に副業できるとあり、人気を博しています。副業としてだけでなく、飲食店で働く中で独立してキッチンカーを利用して働きたいという人も増加しています。
独立する場合、ビジネスとして売上や利益を追求するのではなく、ライフスタイルに合わせて取り組むケースが多いです。
【飲食店のキッチンカー導入】
個人が独立してキッチンカーで事業を始めるだけでなく、既存の飲食店がキッチンカーを導入するケースも増えています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で始めた店のほか、販路を増やす手段、新業態・新メニューのトライアルとして導入するケースもあります。また、固定店舗と比較して初期費用が安く、移動できるメリットを活かして、イベントなどの参加を見据えてキッチンカーを導入しているお店も。ランニングコストが安いのも、飲食店がキッチンカーを始める理由になっているようです。
【他業界企業の新規参入】
飲食店だけでなく、他業界企業もキッチンカー導入に動き出しています。代表的な業種としてはホテルや飲食チェーンです。
ホテルの場合、ホテルの目の前にキッチンカーを設置して、ホテルで提供しているメニューをテイクアウトできるサービスを提供しているケースがあります。これにより、ホテルの雰囲気をよりおしゃれに演出できたり、ホテルのイメージをアップさせる効果があります。
また、別の場所でキッチンカーにより出店する場合、ホテルのイメージをそのままで新たな客層の開拓も期待されています。
キッチンカーでの開業資金は250~300万円
キッチンカーの開業資金の相場は250〜300万円と言われています。内訳は以下の通りです。
●キッチンカーの購入費・レンタル費
●調理器具の購入費
●容器や販促品にかかる費用
キッチンカーの購入費・レンタル費
キッチンカーを用意する方法は、主に以下の4つの方法があります。
【新車のキッチンカーを購入する】
250~600万円
【中古のキッチンカーを購入する】
100~500万円
【キッチンカーをレンタルする】
5万円/日、15万円/週、30万円未満/月
【自分の車を自力で改造する】
約50万円
キッチンカーの入手方法については以下の『キッチンカーの購入方法』で説明していますので、そちらも参考にしてみてください。
調理器具の購入費
キッチンカーに必要な調理器具は主にグリドルと言われる業務用の鉄板です。新品であれば7~10万円、中古であれば5万円以下で購入できます。
ポテトやからあげ、ドーナツなどを調理するフライヤーは、卓上型か据え置き型かによって価格は異なります。新品で用意する場合、小型の卓上型は20万円以下で購入可能です。フライヤーをメインで利用するキッチンカーであれば、中型~大型のもので30万円~50万円ほどかかります。
キッチンカーで何を販売するかによって、適切な調理器具を選ぶことが重要です。
容器や販促品にかかる費用
飲食物を提供する際のお皿やカップなどの容器も用意しなければなりません。焼きそばやたこ焼きを入れる透明なプラスチックの容器は、100個で600円ほど。400mlのプラスチックコップは50個で1000円ほどとなります。
また、看板やのぼりなどの販促物も、宣伝効果が高まるため用意するようにしましょう。立て看板の相場はサイズにもよりますが1万円から3万円ほど。のぼりは1000円台から制作してもらうことができ、ポールと台のセットを含めても3000円程度で準備することが可能です。
キッチンカーでの開業のメリット
キッチンカーにはキッチンカー開業ならではのメリットがあります。主なメリットは次の3つです。
初期費用が安い
キッチンカーの初期費用の相場は約250~300万円です。これは、店舗型の飲食店の初期費用の相場約1000万円と比べると、およそ1/4の費用です。初期費用が抑えられる分、開業のハードルが低く、始めやすいのが最大のメリットです。
固定費を抑えられる
キッチンカーの固定費の相場は年間約30~80万円といわれています。これは、駐車場代と年間の車両保険料を合算した金額です。このほか、人件費や光熱費、イベント出店費などがかかりますが、店舗経営よりも固定費を安く抑えられる傾向にあります。
販売地域を自由に決められる
キッチンカーによる移動販売は、販売場所を自由に変えられるのが強みです。店舗型のようにお客さまが来るのを待つだけでなく、オフィス街やイベント会場など人が多い場所に自ら出向いて販売できるので、効率のよい集客が期待できます。
キッチンカー開業に必要な資格や許可
キッチンカー開業には、必要な資格や許可があります。主なものは次の5つです。
関連記事飲食店を開業するには?必要な準備の4ステップをわかりやすく解説
食品衛生責任者
食品衛生責任者とは、食品の製造や販売を行う場合に必要な資格のことです。自治体により規定が若干異なりますが、小さな個人店舗や大規模チェーンであっても、飲食の営業を行う場合は最低でも1店舗に一人は食品衛生責任者を配置しなければなりません。
当然、キッチンカーによる営業であっても、食品の製造と販売を行うため食品衛生責任者を設置する必要があります。
食品衛生責任者の資格を取得する場合、各自治体において以下の食品衛生責任者養成講習を受講しなければなりません。
●衛生法規(約2時間)
●公衆衛生学(約1時間)
●食品衛生学(約3時間)
受講費用は自己負担しなければならず、概ね10,000円程度かかります。講習受講後は、出店したいエリアの保健所に申請することで資格取得可能です。
なお、以下の資格を持つ人の場合は、講習が免除となり窓口に申請するだけで資格取得できます。
●栄養士
●調理師
●製菓衛生師
●食鳥処理衛生管理者
●船舶料理士
●食品衛生管理者等の有資格者
●その他医師
●薬剤師
営業許可(自動車営業)
キッチンカーでの移動販売で必要な営業許可(自動車営業)は取り扱うメニューによって異なります。車内で調理をして販売をする場合、基本的に必要なのは「飲食店営業」の許可です。
スイーツなどを販売する場合は「菓子製造業」、ドリンクなどを販売する場合は「喫茶店営業」の許可が必要です。
もし、ランチメニューと菓子を同時に販売する際には「飲食店営業」と「菓子製造業」、それぞれの許可を取得しなければなりません。
ただし、保健所によってはどちらか1つの許可しか取得できないなどの制限を設けている場合がありますので、出店先の保健所の規則を事前に確かめておきましょう。
一方、車内で調理をせず、販売のみを行う場合は、取り扱う料理や食材に応じて「食料品等販売業」「食肉販売業」「乳類販売業」「魚介類販売業」の営業許可を取得する必要があります。
保健所での手続きに関しては、以下の記事を参考にしてください。
関連記事意外な盲点あり…飲食店開業における保健所での手続き、何をすればよい?
特殊用途自動車用の8ナンバー登録
キッチンカーは特殊用途自動車である8ナンバー登録が絶対必要というわけではありません。普通貨物車ナンバーや小型貨物車ナンバーでも登録は可能です。ただし、普通貨物車や小型貨物車で登録をしていると、車検の際に車内の設備を一度全て取り外さなければいけなくなります。8ナンバーであればキッチンカーの設備を外さず車検を受けられるので、長い目で見て8ナンバーを取得するほうが得策です。
販売場所の使用許可
キッチンカーでの営業許可が下りたからといって、どこでも好き勝手に移動販売をしていいというわけではありません。営業を行う際は、営業場所の使用許可が必要なことがほとんどです。
使用許可の申請先は販売場所を管理する会社です。ショッピングモールの敷地ならショッピングモールの運営会社、大学のキャンパスなら大学が申請先になります。
また、道路を使って路上販売を行う際は、その場所を管轄する警察署にて「道路使用許可」の申請を行います。無断で販売をすると、駐車違反で反則金が発生するので気をつけてください。
運転免許
キッチンカーを運転するための特別な免許はなく、車種によっては普通免許だけで運転可能です。ただし、免許を取得した時期によって普通免許で運転できる車両の総重量が変化する点には注意が必要です。
具体的には、道路交通法の改正に伴って中型車の運転区分が追加された2007年以降と、準中型車が追加された2017年以降に免許取得された人は、運転できる車両総重量が異なります。
2007年6月2日以降に普通免許を取得した方は、以下の条件を確認してください。
●2007年6月1日までに取得した場合:車両総重量:8t未満
●2007年6月2日~2017年3月11日までに取得した場合:車両総重量:5t未満
●2017年3月12日以降に取得した場合:車両総重量:3.5t未満
キッチンカーの車両総重量の計算式は、以下の通りです。
<車両総重量 = 車両重量 + (乗車定員×55kg) + 最大積載量>
また、最大積載量の計算式は以下となります。
<車両総重量 - ( 車両重量 + 乗車定員 × 55kg ) = 最大積載量>
以上より、一般的なキッチンカーのサイズとなる2tトラックを運転するためには、準中型免許が必要です。
牽引タイプのキッチンカーの場合、750kg以下の車両を牽引する場合は普通免許で対応できます。車両総重量750kgを超える車を牽引する場合は牽引免許が必要となるため、注意してください。
キッチンカー開業の4ステップ
キッチンカーでの移動販売を始めるには、次の流れで手続きを行う必要がります。
ステップ1:キッチンカーの購入/レンタル
移動販売に使用するキッチンカー、フードトラックを購入、またはレンタルします。すでにキッチンカーとして売り出されている車を購入・レンタルする場合もあれば、軽トラックなどを購入し、キッチンカーへ改造する場合もあります。車両を改造してキッチンカーにする場合、車体の高さや幅、長さに上限があるので注意が必要です。
ステップ2:メニューの開発
キッチンカー開業において、早期の段階でメニューの開発に取り掛かる必要があります。その理由は、メニューによって売上が大きく変動するためです。売上が大きい傾向にある食べ物を提供すれば、その分だけ売り上げを伸ばせるチャンスがあります。
また、販売しやすい商品であることも重要であり、仮に売れやすいメニューであっても提供時間がかかると回転率が落ちてしまう恐れがあり、売上に影響するリスクがあります。食材や扱う料理によって難易度や費用が変化する点にも注意が必要であり、その点でも早期なメニュー開発は重要です。
さらに、商品によっては特別な営業許可が必要になることもあり、どのようなメニューを提供するのかは早期に決定してください。
ステップ3:資格、許可の取得
営業に必要な資格や許可を取得します。まずは食品衛生責任者養成講習会を受講して食品衛生責任者の資格を取得します。そのうえで、出店予定先の保健所にて営業許可の申請を行いましょう。
必要書類に不備がなければ、キッチンカーを持ち込み、保健所職員による確認検査が行われます。保健所の要件を満たしていれば、晴れて営業許可証が交付されます。
ステップ4:販売
保健所からの営業許可が下りたら実際に営業を開始します。販売するメニューを決め、仕入れを行い、実際に調理・販売を行います。オフィス街やイベント会場など人が多い場所を狙って販売場所は決めるとよいでしょう。
キッチンカーの購入方法
キッチンカーを用意するには、以下の4つの方法があります。
新車のキッチンカーを専門業者に制作してもらう
専門の業者に依頼して、新しくキッチンカーを制作してもらう方法です。新車キッチンカーは、理想のデザインを手に入れられる、中古車よりも長く使えるといったメリットがあります。調理に適した内装や、集客力のある外装など、好みや機能性をとことん突き詰めることができます。
中古のキッチンカーを購入する
中古のキッチンカーを購入し、そのまま使う、または一部を変更して使うという方法です。中古車は、新車を購入するよりも費用を抑えられるというメリットがあります。ただし、購入してから不備に気付き、修理をするのに思わぬ出費が発生してしまう場合も。あまりに安い中古車には注意が必要です。
キッチンカーをレンタルする
まだ購入には踏み出せない、とりあえず始めてみたいという人には、レンタルもおすすめです。面倒な手続きがなく初期費用もかからないため、精神的な不安も少ないでしょう。ただし、月額費用としては割高になってしまうため、長期的に使う場合は注意が必要です。
自分で車をキッチンカーに改造する
自分で購入した軽トラックやバンを、キッチンカーに改造するという方法もあります。自作する場合は時間と手間がかかりますが、費用を安く抑えながら自分仕様に作れます。保健所の許可が取れるように、あらかじめ要件を確認しておきましょう。知識や技術に自信がない場合は、業者に依頼して改造するのがおすすめです。
差がつくポイント!キッチンカーに必要な設備とは
保健所に営業許可を申請する際には、保健所が求める設備がキッチンカーに整っている必要があります。必要な設備は取得する営業許可の種類によって異なりますが、車内で調理を行う飲食、菓子、喫茶営業許可において必要な設備は同じで、以下のものになります。
●流水式またはアルコール式の手洗い設備
●2槽以上の洗浄施設
●給湯設備
●給水量200L以上の給水タンク
●給水タンクの容量以上の排水設備
●冷蔵庫
●密閉できる合成樹脂の食品保管設備
●密閉できる合成樹脂の食器器具保管設備
●蓋付きゴミ箱
キッチンカーの開業費用
キッチンカーを開業するには、キッチンカーの購入・レンタルを含めてだいたい250~300万円の費用が必要です。キッチンカーの入手のほかに必要な開業費用の内訳は以下の通りです。
調理器具を準備するのにかかる費用
食べ物を販売する場合は、調理器具の費用もかかります。たとえば、焼きそばやお好み焼きの場合は鉄板7~10万円、ケバブを販売する場合は専用マシーン7~8万円程度必要です。ただし、調理器具はモノによってピンキリです。クオリティの高い物や業務用マシーンを購入する場合は、30万円かかることもあります。
消耗品や販促にかかる費用
キッチンカーで食べ物を販売する場合、トレーやスプーン、コップなどの使い捨て容器が必要です。また、チラシや看板、広告費などの販促にもお金がかかります。使用する容器や販促方法によって費用は異なりますが、たとえば透明カップ100個400円、看板3,000~2万円程度の費用が必要でしょう。
保健所の許可取得にかかる費用
食品を調理して販売する店舗に対しては、どのような販売方法であっても保健所の許可が必要です。キッチンカーも例外ではなく、保健所の許可を得てお客様が見やすい位置に掲示する義務があります。
保健所の許可を取得するためには、食品衛生法の条例を満たし、食品衛生責任者1名を配置しなければなりません。かつ複数の自治体で出店する場合は、各自治体で保健所の許可を得る必要があります。
1ヶ所に固定して保健所の許可を得る場合、申請費用として10,000円程度かかります。さらに食品衛生責任者の資格において講習費用10,000円ほどかかり、もし許可を得るためにキッチンカーの業者や行政書士のサポートを受ける場合、別途費用がかかります。
月に必要な運転資金
キッチンカーで営業を続けるためには、初期費用のほか、以下の費用がかかります。
●キッチンカーの維持費
駐車場代(月2~6万円)、保険料(年間4~7万円)、車検代(2年で4~7万円)
●消耗品や販促費用
使い捨て容器(100個400円)、チラシなど(2~3万円)
●出店料
平日2,500円~、土日祝日1万円~
営業を続けるためには、キッチンカーや食材以外にもさまざまな費用がかかります。無理なく続けられるように、必要な物を入念にチェックしておきましょう。
キッチンカー開業時における注意点
キッチンカーで移動販売を始めるにあたって注意しなければいけないことがいくつかあります。主な注意点は次の5つです。
扱える食材が異なる
食品衛生上の関係で、キッチンカーで扱える食品は限定的です。車内の設備によって扱える食品や種類が異なるうえ、販売を予定しているメニューに合わせて営業許可を取得しなければいけません。また、いかなる場合であっても生ものを扱うのはNGです。
別途仕込み場所が必要な場合もある
自治体によっては、キッチンカー以外で仕込み場所を別途確保する必要があります。既製品を盛り付けるだけの場合は不要ですが、切る・混ぜるなどの下準備が発生する場合は仕込み場所が必要なことが多いです。仕込み場所が必要かは出店予定先の保健所に事前に確認しておきましょう。仕込み場所が必要な場合は、キッチンカーとは別に仕込み場所の営業許可も取得しなければいけないので注意が必要です。
衛生管理を徹底する
キッチンカーは通常の飲食店に比べ、設備が乏しく、場所も狭いです。加えて、屋外に近い状態での調理になるため、季節によっては菌が繁殖しやすい傾向にあります。そのため、食材の取り扱いは慎重に行うことが求められます。もし食中毒などを出してしまえば、営業停止命令を受けるだけではなく、損害賠償請求をされる可能性もあります。手洗いや設備の除菌はこまめに行うようにしましょう。
営業許可は出店する都道府県や地域ごとに申請が必要
食品衛生責任者の資格は全国共通ですが、一方、保健所の営業許可は出店先の都道府県や地域ごとに必要です。そのため、販売地域を変える場合は、新たに出店予定先の保健所にて営業許可の申請を忘れずにしておきましょう。
営業許可の有効期限は5年
保健所の営業許可の有効期限は5年です。有効期限を越えて営業を続ける場合は、有効期限満了日の約1ヶ月前に更新手続きを行う必要があります。もし更新手続きをせずに有効期限を越えて営業すると、食品衛生法違反になり、2年以下の懲役、または200万円以下の罰金が課せられる可能性があります。さらに、営業停止命令を受け、2年間営業許可の取得ができなくなる場合もあります。
キッチンカー開業のための資金の調達方法
キッチンカーを開業するには、まとまった資金が必要です。以下で説明するものの中から、自分に合った調達方法を探してみましょう。
自己資金
自己資金とは、自分が得た収入を元手となっている資金のことを指します。自己資金の場合、過去に得た給与や賞与から、生活費などを除いて貯蓄した資金が該当します。
キッチンカーにかかる費用を、すべて自己資金で準備する方法があります。たとえば、今まで積み立てた貯金や定年退職時の退職金、賞与などがあった場合に準備資金とできます。他にも、仲間から出資を募ったり家族や知人、友人に借りたりするなどで資金調達が可能です。
銀行からの融資
銀行では、開業資金に関する融資を行っている場合が多いです。他にも融資を受けられる方法がありますが、銀行の場合は比較的低い金利で融資を受けやすいメリットがあります。
開業資金に関する融資を受けるためには、事業計画書を作成してどのような計画で事業を展開するのかを提示しなければなりません。銀行側を納得させられる計画でない場合、融資を受けることは難しいでしょう。
関連記事事業計画書とはどんなもの?書き方や作成する目的を解説
日本政策金融公庫
財務省所管の特殊会社であり、政策金融機関のひとつでもある日本政策金融公庫でも、融資を受けられます。日本政策金融公庫では、創業時点での審査が銀行よりも通りやすい傾向にあります。
また、金利面で見ても銀行よりも低めとなっており、キッチンカーの開業時は日本政策金融公庫を選択する場合が多いです。ただし、銀行同様に事業計画書の提出が必要になるため準備が必要です。
リース契約
リースとは、リース会社から機械や設備を長期間賃貸することを意味します。リースでキッチンカーを借りる場合、ローンの分割支払いと違ってキッチンカーが自分の所有物ではなくリース会社のものとなります。
契約期間中は、キッチンカーを借りた状態で利用でき、月々のリース料を支払う必要があります。新車で購入した方がトータル金額では安くなる可能性がありますが、リース料金は経費として計上可能です。
また、リース期間終了後にはリース会社から事前に設定された残価を支払えば、買い取りも可能となります。ただし、契約期間が3年以上などと長期な場合が多く、仮に途中で契約を打ち切ると違約金が発生するため注意が必要です。
キッチンカーローンの利用
ローン会社では、様々なシーンに応じたローン商品が用意されている場合があります。中でも、キッチンカーに限定したローンもあり、気軽に資金調達できることで人気です。
キッチンカーローンは、通常の自動車ローンと違って車両部分だけでなくキッチンボックスや換気扇、照明、給排水設備などもローンの対象とできます。
よって、キッチンカー開業に必要となる資金をほぼ賄えるのが特徴です。
クラウドファンディングなどの出資
資金調達の方法として、最近注目されているのがクラウドファンディングです。クラウドファンディングとは、インターネットを介して不特定多数の人から資金を集める仕組みのことです。
キッチンカーだけでなく、様々な業種や個人単位でもクラウドファンディングで資金調達して、事業を起こすケースが増えています。
また、多くのクラウドファンディングサービスがあり、気軽に出資を募りやすいのがメリットです。クラウドファンディングの場合、融資と異なり返済が不要な点がメリットとなりますが、リターンという形で還元する必要があります。
クラウドファンディングについては、以下記事で詳しく解説しています。
関連記事ファン作りにも有効!飲食店がクラウドファンディングを始めるメリットや手順を解説
ローンの借り入れ
古くから存在する資金の調達方法として、ローンがあります。ローンは、特定の目的にのみ利用できる借入の仕組みであり、一般的なものとして住宅ローンや自動車ローンなどが有名です。
キッチンカーの開業においても、キッチンカーの製作費を分割できるローン会社と提携しているケースがあります。キッチンカーのローンは、概ね3年から5年のものが一般的であり、36分割から60分割で返済可能です。
キッチンカー開業の際に役立つ補助金・助成金
キッチンカー開業に役立つ補助金や助成金として、以下のようなものが挙げられます。
【創業助成金(東京)】
公益財団法人東京都中小企業振興公社による、都内開業率の向上を図ることを目的とした助成事業です。対象者は都内で創業を予定されている方または創業後5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件を満たす方。助成限度額は、上限額400万円/下限額100万円となっています。
参考 https://wakajo-shotengai.com/concept/
【地方創生起業支援事業】
地域の課題解決に貢献する新しい事業に取り組もうとしている方を対象に、都道府県が行っている支援策です。起業地の都道府県内に居住していること、または居住する予定のある方で、東京圏以外の道府県または東京圏内の条件不利地域において社会的事業の起業を行う方を対象としています。補助額は最大200万円です。
参考 https://www.chisou.go.jp/sousei/kigyou_shienkin.html
【ものづくり補助金】
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資などを支援するものです。補助金額の上限は、従業員の人数によって変動し、従業員が5人以下の場合は最大で750万円、100人以上の場合は8000万円となります。
ただし、ものづくり補助金は開業前の方は申請できません。経営中の飲食店や企業が新たな販路開拓でキッチンカーを導入する際に利用できる補助金です。
参考 https://portal.monodukuri-hojo.jp/
新業態としてキッチンカーを導入する際に利用できる補助金・助成金には、「小規模事業者持続化補助金」や「事業再構築補助金」など他にも様々な支援制度があるため、活用できるものがないか確認しておくとよいでしょう。
キッチンカー開業の際におすすめの保険とは?
キッチンカーを開業するにあたり、順調に進めば問題ないものの各種トラブルがつきものです。仮に、自責で大きな事故などを起こした場合、賠償金なども発生する可能性もあるため各種保険に加入するのがおすすめです。特に、次の保険に加入することをおすすめします。
PL保険
PL保険とは「生産物賠償責任保険」のことを指し、製造業者等が製造または販売した製品等が原因となって、他人に怪我などを負わせた際に、事業者が法律上の損害賠償責任を負担する場合の損害について補償を受けられる保険です。広く製造業で用いられる保険のイメージがありますが、キッチンカーを運営する際にも適用可能です。
例えば、提供したメニューを食べたお客様が食中毒にかかった場合や、コーヒーを提供する際にこぼしてしまい火傷を負わせるなどのケースでPL保険が適用できます。
なお、営業エリアによってはPL保険の加入が必須の場合があります。
自動車保険
キッチンカーの場合、カスタマイズした車両となるため、多くの場合で8ナンバーとして登録されますが、場合によっては小型貨物自動車である4ナンバーや普通貨物自動車である1ナンバーで登録でき、一般の保険会社に加入できます。8ナンバーの場合は、一般の保険とは違い特別な保険に加入しなければなりません。
キッチンカーが加入する自動車保険の場合、保険料は一般的に年間10万円から15万円と高額です。ただ、事故を起こした際の賠償額などを考えれば、加入しておくべき保険の1つです。
ドライバー保険
ドライバー保険とは、 記名被保険者が他人の自動車を借りて運転中に発生した事故に対して、補償する自動車保険のことです。記名被保険者とは、保険証券などの記名被保険者欄に記載された、補償の対象となる人を指します。
たとえば、レンタルでキッチンカーを借りて営業する場合に適用できる保険であり、加入は任意です。もしキッチンカーの運転に少しでも心配がある場合、ドライバーズ保険に加入しておくことをおすすめします。
施設賠償責任保険
施設賠償責任保険とは、保険証券に記載されている建物の欠陥や、建物における保険証券記載の業務遂行に起因する偶然な事故が発生し、他人に怪我を負わせたり他人の財物を壊したりした場合に適用される保険です。
施設賠償責任保険では、法律上の損害賠償責任を負担することにより被る損害を補償してもらえる保険であり、以下が対象となります。
●小売店
●料理飲食店
●事務所
●マンション賃貸/管理業
なお、キッチンカーにも適用できる保険であり、たとえば設置した看板が落ちてお客様に怪我をさせてしまう場合や、フライヤーの油をこぼして出店先の道路を汚してしまうなどの場合で補償を受けることが可能です。
キッチンカーの集客にはやっぱりこれ!おすすめのアイテム
キッチンカーでは、如何にお客様にインパクトを残せる集客ができるかが鍵です。主に、集客時におすすめしたいアイテムとして、以下があります。
●タペストリー
●のぼり
●黒板
●看板
タペストリーは、主にキッチンカーの販売面や側面で使用することが多いアイテムです。なお、運転席などの側面に設置すれば車内を目隠しできます。
のぼりは、キッチンカー周辺に設置してどのようなお店なのかを知らせることが可能なアイテムです。インパクトに残るフレーズを使用すれば、お客様の目に留まり来店してもらえるきっかけとなります。
黒板はメニューやおすすめ商品をアピールする際に役立ち、看板は店舗名をアピールする際に最適です。
キッチンカーの集客に活用すべきSNSとは
以前からの集客方法に加えて、最近では如何にSNSを駆使して効率よく集客できるかが重要です。ここでは、キッチンカーの集客に活用すべきSNSを解説します。
実際にSNSを使用する際のコツは、以下記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
関連記事SNSフォロワー数10K超え!バズってるお店のSNS使い方のコツ
比較的ボリュームを持たせて、しっかりとお店の良さをアピールできるSNSとして、Facebookがおすすめです。Facebookではレストラン予約機能があり、TableCheckの飲食店予約システムを導入している飲食店であればFacebookページに「席を予約する」ボタンを設置可能です。
いいね!機能によって情報が拡散される可能性があり、またコメント機能があるためお客様とのコミュニケーションを図れる点も評価できます。さらに、Facebookのグループ機能を使用すれば多くの方と同時に交流を図れます。
X(旧Twitter)
X(旧Twitter)は、Facebook以上に情報を拡散させやすいSNSとして有名です。定期的につぶやくことが可能なbot機能によって、手間をかけずに定期的に情報を提供できます。また、ダイレクトメッセージ機能があるため、メッセージ上で商品の予約を受け付けたりできます。
Xの投稿文では、全角で140文字、半角で280文字の文字制限がありますが、その制限が逆にフレーズを吟味することに繋がり、訴求力を高められる点も魅力的です。
他にも、つぶやいた場所を追加できる機能があり、今どこで営業しているのかを知らせることができます。
Instagramは、FacebookやTwitterとは異なり、文字ではなく写真をベースとして投稿できるSNSです。若者に特に絶大な人気を誇っており、特に若者をターゲットとしたキッチンカーの場合に必須のSNSです。新作メニューを開発した際に、コメントを添えて写真を投稿すれば注目度が俄然増します。
また、イベント会場に出店する際には、イベント写真を投稿するだけでも集客効果を見込める場合があります。さらに、動画をアップすると臨場感が高まるため、積極的に取り入れましょう。
キッチンカーの強みを活かして開業を成功させよう!
食品衛生責任者の資格と営業許可があれば、キッチンカーでの移動販売はすぐに始められます。複数の地域で自由に販売できる強みを生かせれば、大きな集客・売上が期待できます。ただし、キッチンカーは販売先を変えるたびに出店先の都道府県や地域の保健所の許可が必要になるため注意しましょう。
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この記事の監修
株式会社USEN canaeru編集部
飲食店をはじめ、小売店や美容室などの開業を支援する『canaeru』の運営を行う。店舗開業や経営に役立つ情報を日々提供し、開業者と経営者に向けた無料セミナーの企画・運営も担当。