焼き鳥屋は大きな店舗を用意しなくても営業を行えることから、飲食店の中でも比較的開業しやすいと耳にしたことがあるかもしれません。
噂の通り、焼き鳥屋が開業しやすい業種だとしても、開業に向けてメニューの開発や資金調達など、さまざまな準備を行わなければなりません。
「焼き鳥が好物」「焼き鳥屋の雰囲気が好き」などの理由で、自分でも焼き鳥屋を開業したいという夢を持つ方は、開業までにすべきことを知った上でスムーズに開業準備を進めましょう。
この記事では、焼き鳥屋を開業するメリット・デメリットや、焼き鳥屋をオープンするために必要な開業資金、焼き鳥屋を開業する前に行うべき準備などについて、わかりやすく説明します。
目次
焼き鳥屋は比較的開業しやすい業種と言える
飲食店には、カフェ・居酒屋・バー・寿司屋などさまざまな形態がありますが、それぞれの飲食店を開業する難易度は、用意しなければならない設備の量や店舗の規模などによって異なります。
焼き鳥屋で用意が必要な設備はそこまで多くなく、店舗の規模が小さくても営業を行えることから考えると、焼き鳥屋は比較的開業しやすい業種と言えるでしょう。
現在は、全国におよそ15,000店舗ほどの焼き鳥屋があります。参考までにほかの業種の店舗数は、焼肉屋が約19,000店舗、うどん屋が約17,000店舗、ラーメン屋が約24,000店舗となっています。
焼き鳥屋を開業する3つのメリット
開業しやすい傾向にある焼き鳥屋は、開業を目指すにあたって以下に挙げるようなメリットもあります。
・ コストを抑えやすい
・ 高い利益率が見込める
・ メニューがシンプルで特別な資格も必要ない
それぞれのメリットについて、詳細を説明します。
●コストを抑えやすい
焼き鳥の一般的な材料は鶏肉なので、仕入れのコストを抑えやすいです。鶏肉は牛肉や豚肉などよりも安価で仕入れやすい上に、時期による価格の変動もほとんどありません。
お店の内装は開業を目指す方のこだわりが反映されやすい部分ですが、小規模な店舗や質素な内装で構わないのであれば、物件取得費や家賃といったコストを抑えることもできます。
●高い利益率が見込める
焼き鳥屋ではメインで取り扱う焼き鳥と一緒に、ビールやハイボールといったアルコールの注文も入りやすいですが、アルコールは飲食店において利益率が高い商品です。
そのため、客単価自体がそこまで高くならなくても高い利益率が見込めるところが、焼き鳥屋の大きな強みでもあります。
●メニューがシンプルで特別な資格も必要ない
焼き鳥屋のメニューはほかの飲食店に比べると比較的シンプルなことが多いので、スタッフに調理工程を覚えさせるための教育に、膨大な手間や時間を割かなくてもよい傾向があります。
また、焼き鳥を焼くために何か特別な資格が必要なわけでもありません。
開業前に時間をかけて資格を取得する必要もないので、多くの方にとって開業を目指しやすい業種と言えるでしょう。
焼き鳥屋を開業する2つのデメリット
開業しやすい業種を探している方にとって焼き鳥屋は魅力的ですが、焼き鳥屋の開業にはデメリットも存在します。
ここでは、焼き鳥屋を開業する際の2つのデメリットについて説明します。
●競合が多い
開業しやすいことが焼き鳥屋のメリットではありますが、それは同時にライバルの多さにも繋がる要因です。
同業者の中で個性や特徴を上手く押し出すことができなければ、継続して営業することは難しくなるでしょう。
「同業者」のくくりを同じ焼き鳥屋だけではなく、「鶏をメインに扱う料理店」や「仕事帰りに一杯飲むために立ち寄る店」などまで広げて考えれば、競争はより厳しいものになります。
●売上が立地に左右されやすい
焼き鳥屋は、「仕事帰りにちょっと一杯」という形で利用されるケースが多いため、ビジネス街や駅・繁華街の近くでは売上が伸びやすい傾向があります。
その一方、そういった目的での流入が見込みにくい人通りが少ない場所は、客足が伸びにくいです。
これは焼き鳥屋に限らず飲食店全般に言えることではありますが、売上が立地に左右されることには十分注意しておく必要があります。
焼き鳥屋をオープンするために必要な開業資金
焼き鳥屋をオープンするために必要な開業資金の内訳として、主に以下のものが挙げられます。
・ 物件取得費
・ 内外装費
・ 設備導入・備品購入費
・ 広告宣伝費
・ 運転資金
物件取得費は立地や店舗の大きさにもよりますが、おおむね300万円~500万円程度を見ておくとよいでしょう。
そのほかの費用に関しては、内外装費は100万円~150万円程度、設備導入・備品購入費は50万円~100万円程度、広告宣伝費は50万円~100万円程度、運転資金は300万円程度が平均的な金額です。
全体的なイメージとしては800万円~1,100万円程度あれば、焼き鳥屋をオープンできると考えられます。
なお、フランチャイズに加盟する場合は別途フランチャイズ関連の費用も必要なので、そちらも合算して考えてください。
参考記事:飲食店の開業に必要な資金はいくら?開業に必要な資金や資格
焼き鳥屋を開業する前に必要な準備
焼き鳥屋を始めようと思ってすぐに始められるわけではなく、開業に向けてさまざまな準備が必要です。
・ コンセプトやターゲットを決定
・ 店舗の取得
・ 資金調達
・ 従業員の採用と教育
・ 資格の取得と関係各所への届け出
・ 店舗の準備と仕入れ先の決定
・ 店舗オープンの宣伝
それぞれについて、内容をわかりやすく説明します。
●コンセプトやターゲットを決定
「焼き鳥屋」と一口に言っても、店舗ごとにコンセプトはさまざまです。
価格設定を低めに抑えて気軽に足を運べるお店にするのか、ブランド鶏にこだわった高級感あるお店にするのかによって、仕入れの方向性なども大きく変わります。
店舗出店を予定している近隣の市場調査を行い、受け入れられやすいコンセプトにすることが重要です。
●店舗の取得
店舗を取得したとしてもすぐに開業できるわけではなく、オープンに向けて工事が必要になります。内外装にこだわりがあるのであれば、より時間や手間を要する工程だと言えるでしょう。
また、希望している条件に近い物件がすぐ見つかるとは限りません。
焼き鳥屋の開業を意識したのであれば、しかるべきタイミングでオープンできるように、なるべく早めから物件探しを行うよう心がけましょう。
●資金調達
開業に必要な資金を自己資金だけでまかなえない場合は、何らかの方法で資金調達を行う必要があります。
自己資金を調達するためには、金融機関から融資を受ける方法や補助金・助成金を活用する方法が一般的です。
金融機関からの融資は、一般の金融機関からの融資と日本政策金融公庫からの融資の2つに大きく分けられ、開業時には後者を利用するのが有利と言えます。
一般の金融機関の場合、売上などの実績がなければ融資が難しいことも多いですが、日本政策金融公庫は中小企業や個人事業主の支援を主な目的として設立されている金融機関なので、新規事業立ち上げ時などにも積極的に融資を行ってくれます。
申し込みを行って審査に通ることで、いずれの場合でも比較的低金利で資金を調達できますが、融資である以上必ず返済しなければならないため、きちんと返済計画を立てることが重要です。
また、補助金・助成金は国や地方自治体で設けられている制度であり、融資ではないので返済の必要がありません。
それぞれの補助金や助成金で設けられている条件をクリアしなければ申請できませんが、条件を満たしている場合には積極的に活用したい方法です。
開業に必要な費用をきちんと把握していなければ適切な資金調達は行えないため、開業に必要な費用を算出した上でどの資金調達方法を活用するか検討しておきましょう。
●従業員の採用と教育
焼き鳥屋は一人でオープンすることも可能ですが、人を雇う必要があるのであれば採用活動を行い、きちんと働ける状態でオープンできるように教育しておく必要があります。
これまで人に対して教育を行う立場に立ったことがなければ、この点には若干苦労するかもしれません。
フランチャイズに加入した上で開業する場合は、一からマニュアルづくりをする必要がないため、その分の手間が省けます。
●資格の取得と関係各所への届け出
焼き鳥屋を開業するためには「食品衛生責任者」の取得が必要ですが、場合によっては「防火管理者」の取得も必要となるケースもあります。
食品衛生責任者は、焼き鳥屋に限らず飲食店を開業するために必須となる資格です。
各都道府県の食品衛生協会が開催する「食品衛生責任者養成講習会」を受講することで取得でき、受講料は都道府県によって若干異なるものの、おおむね1万円程度となっています。
なお、栄養士や調理師などの資格を有している方は、食品衛生責任者養成講習会の受講が免除されることを把握しておきましょう。
防火管理者は、収容人数が30名以上の飲食店を開業する場合に必要となる資格で、日本防火・防災協会開催の講習を受講することで取得できます。
店舗の延べ面積によって取得すべき資格が甲種と乙種に分けられており、それぞれ講習の時間や費用が異なるため、取得が必要な種別の講習を受けるようにしてください。
どちらの資格も取得するだけでは意味がなく、食品衛生責任者は管轄の保健所、防火管理者は管轄の消防本部あるいは消防署に届け出を行わなければなりません。
●店舗の準備と仕入れ先の決定
店舗となる物件が決まり工事が終わった後は、オープン日に間に合うように備品を購入し、営業に使う備品の配置なども行う必要があります。
たとえば、アルコール用のグラスをしまう場所や、メニューを設置する場所、調理器具を保管する場所などを検討しなくてはなりません。
また、料理に用いる材料の仕入れ先も、なるべく早めに決めておいたほうがよいでしょう。
●店舗オープンの宣伝
オープン時期が近づいてきたら、実際にオープンする前に近隣の方に知ってもらえるように宣伝を行いましょう。
宣伝方法としては、チラシ・タウン誌への広告出稿・SNSの利用などが考えられます。チラシは高齢者層の方が目にすることが多く、SNSは若年層が目にする傾向にあるため、店舗のターゲット層に合わせた方法で宣伝を行ってください。
宣伝方法によって必要な費用は異なるので、資金と相談しながら宣伝方法を決めることをおすすめします。
軽トラや屋台で焼き鳥屋を開業するには?
焼き鳥屋は実際に店舗を構えるのではなく、軽トラをキッチンカーに改造したり屋台を利用したりする形でも開業できます。
軽トラや屋台を利用して焼き鳥屋を開業する際の方法や必要資金、注意点について説明します。
●開業方法
軽トラや屋台で焼き鳥屋を開業するためには、物件を取得する代わりに軽トラや屋台を購入する必要があります。
それ以外に必要な準備や手続きに関しては、店舗で焼き鳥屋を開業する場合とおおむね変わりませんが、取得する資格に関しては食品衛生責任者のみで営業できるため、防火管理者は必要ありません。
また、出店地を管轄する保健所に営業許可を申請する必要があることや、焼き鳥を調理できるように車両を改造した場合は、その旨を申請して登録しなくてはならない点は覚えておきましょう。
●開業資金
開業資金に関しては、物件取得費用や内外装費が必要ない代わりに、車両の購入費用や改造費用などがかかります。
設備導入・備品購入費や広告宣伝費、運転資金などには大きな違いはありませんが、店舗を購入したり家賃を支払ったりする必要がない分、店舗を取得して営業する場合よりも開業資金は安くなる傾向にあります。
また、車両を用意しなくてよいことから、テントで出店する屋台形式のほうが費用を抑えやすいと言えるでしょう。
軽トラや屋台で焼き鳥屋を開業する際の資金の目安としては、20万円~500万円程度を想定しておくとよいでしょう。
●注意点
軽トラや屋台は自由に移動できるため、人通りの多いところで営業できるところは大きなメリットですが、営業を行う場所に応じて事前に営業許可を取得しておかなければなりません。
また、軽トラや屋台の中で仕込みを行うことはできないため、仕込みを行うための場所をどこかに確保しておく必要があります。
なお、仕込み場所に関しても許可申請が必要となるため注意してください。
必要な手続きや段取りを踏まえて焼き鳥屋の開業を目指そう
焼き鳥屋は飲食店の中でも比較的開業しやすく、コストを抑えながら高い利益率が見込みやすい業種です。
開業資金として800万円~1,100万円ほど必要となるので、自己資金だけで調達するのが難しそうな場合は、金融機関からの融資や補助金・助成金などを利用しましょう。
ただし、金融機関からの融資はともかく国や自治体の補助金・助成金などについては、そもそも存在を知らなければ利用するのが難しいのが実情です。
そこで焼き鳥屋の開業準備を支援してくれるサービスを利用すれば、開業にあたって活用できる制度についても教えてもらえるため、最適な形で資金調達に臨めるでしょう。
飲食店の開業支援を行う「canaeru(カナエル)」では無料で開業相談を受け付けているので、開業に向けての悩みや疑問を払拭でき、資金調達方法についてのセミナーなどに参加することも可能です。
焼き鳥屋を開業するにあたって不安がある方は、ぜひ「canaeru(カナエル)」を利用してみてください。
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この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
