サラリーマンをしながら開業することで、独立する際の足がかりにできたり、 青色申告特別控除を利用できたりと、さまざまなメリットがあります。今回の記事では、サラリーマンが会社勤めをしながら個人事業主として開業するメリット・デメリットを中心に解説。確定申告の詳細やポイントもあわせて紹介します。
目次
- 個人事業主とは?
- サラリーマンが個人事業主として開業するメリット
- 1. 独立する際の足がかりにできる
- 2. 必要経費を計上して節約につなげられる
- 3. 青色申告特別控除を利用できる
- 4. 赤字の繰り越しが可能になる
- 5. 利益が少ないうちは税負担が抑えられる
- 6. 副業の所得と本業の所得を損益通算できる
- 個人事業主として開業するデメリット
- 1. 失業手当を受け取れない
- 2. 青色申告は手間がかかる
- 3. 利益が多いと税負担が重くなる
- サラリーマンの開業は会社にばれる?
- 確定申告が必要な場合とは
- サラリーマンが開業する場合、確定申告は青色申告がおすすめ!
- 社会保険や税金のポイント
- サラリーマンが開業する場合は確定申告や税金に関する注意点を押さえておきましょう
個人事業主とは?
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を行っている人のことを指します。税務署に「開業届」を出すことで、個人事業主になれます。
最近増えている「フリーランス」も、個人事業主が会社に属さず仕事を請け負う「働き方」を表す言葉です。大手クラウドソーシングサイトのランサーズによる「現在のフリーランス人口・経済規模」の調査からも、個人事業主が増えていることがわかります。
企業の副業解禁の潮流もあり、今後もサラリーマンをしながら個人事業主として開業する人の増加が予想されるでしょう。
参考資料 ランサーズ「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」
関連記事 サラリーマンにおすすめの副業10選!タイプ別の副業を一覧でご紹介
サラリーマンが個人事業主として開業するメリット
サラリーマンが個人事業主として開業するメリットは、以下の6つです。
1.独立する際の足がかりにできる
2.必要経費を計上して節約につなげられる
3.青色申告特別控除を利用できる
4.赤字の繰り越しが可能になる
5.利益が少ないうちは税負担を抑えられる
6.副業の所得と本業の所得を損益通算できる
それぞれの項目について確認し、個人事業主として開業するメリットを把握しましょう。
1. 独立する際の足がかりにできる
個人事業主として開業すると、資金繰りや確定申告などを自分で行う必要が出てきます。独立や起業の際の練習になるので、将来的に会社を辞めて自分でビジネスを始めたいと思っている方におすすめです。
個人事業主として企業から仕事を請け負ったり、商品を作ったり、サービスを提供することは、新規事業を考える際の勉強になります。副業から少しずつステップアップしていきたい方は、サラリーマンをしながら開業して適性を確認しながら進めていきましょう。
2. 必要経費を計上して節約につなげられる
個人事業主になると、収入を申告するために確定申告を行う必要があります。確定申告は収入だけではなく、事業で使った経費も計上できるので、所得税や住民税の負担を軽減するなどの節税効果が期待できます。
必要経費として計上できるものの例として、以下の項目が挙げられます。
・パソコン
・文房具
・会議で利用したカフェの料金
・自宅の家賃、光熱費の一部
・仕事で使っている有料ツール
・自宅で使用するインターネット料金
3. 青色申告特別控除を利用できる
個人事業主として開業する際、申請をしておくことで青色申告特別控除を受けられます。最大65万円の特別控除が利用できるので、節税につながります。
令和2年分の確定申告からルールが変わり、最大65万円の特別控除を受ける場合は以下のどちらかの方法を利用する必要があります。
1.e-Tax による申告(電子申告)
2.電子帳簿保存
所得税や住民税が安くなるといったメリットもあるため、個人事業主になる場合は青色申告特別控除を利用しましょう。
4. 赤字の繰り越しが可能になる
赤字の繰り越しとは、事業で赤字(損失)が出た場合、翌年以降最長3年間赤字を繰り越すことができる制度です。赤字が出た翌年以降、黒字化して所得が発生したときに、赤字になった金額を差し引けます。もし、副業で損失や赤字が発生した場合は、確定申告の際に青色申告を利用すれば繰り越しが可能です。
あくまでも赤字の繰り越しができるのは、青色申告で確定申告をした場合に限られます。白色申告では一部の赤字しか繰り越せないので、開業する前に把握しておきましょう。
5. 利益が少ないうちは税負担が抑えられる
個人事業主は所得税を納める必要がありますが、所得が少ない場合は法人よりも税負担を抑えられます。利益があがり、事業が軌道に乗ってきたら法人化するという手段もおすすめです。
6. 副業の所得と本業の所得を損益通算できる
損益通算とは、事業所得と給与所得の利益と損失を相殺できることを指します。サラリーマンのまま個人事業主として開業した場合、会社からの給料と副業の所得を損益通算できます。
もし、副業で経費が多くかかり、赤字が発生した場合でも給与所得で相殺が可能です。青色申告であれば3年間の赤字を繰り越せるので、赤字が発生した場合は損益通算してみるとよいでしょう。
個人事業主として開業するデメリット
個人事業主として開業するデメリットは、以下の3つが挙げられます。
1.失業手当を受け取れない
2.青色申告は手間がかかる
3.利益が多いと税負担が重くなる
メリットだけではなく、デメリットも理解しておきましょう。
1. 失業手当を受け取れない
サラリーマンが個人事業主として開業している場合、本業の仕事を失っても失業手当を受け取れません。個人事業主として働いているとみなされ、失業の状態ではなくなってしまうからです。
もし、退職して失業手当を受け取りたい場合は、失業手当を受け取る前に開業届を税務署に提出しないように心がけましょう。退職後、すぐに個人事業主として開業したい場合は、失業手当は諦めて、事業に注力することをおすすめします。
2. 青色申告は手間がかかる
確定申告をする際、青色申告は白色申告よりも複雑なので手間がかかります。節税効果は高くなりますが、「複式簿記での記帳」「貸借対照表と損益計算書の添付」が求められるため、書類の作成に時間がかかってしまうでしょう。また、最大65万円の控除を受けるためにはe-taxによる申告か、電子帳簿保存が必要になるため、社会のデジタル化に不慣れな方は苦手意識を持ってしまうはずです。
しかし、最近は多くの企業が、青色申告に対応した確定申告ソフトを発売しています。青色申告の手間を減らしたい場合は、確定申告ソフトを活用したり、税理士に依頼するとよいでしょう。
3. 利益が多いと税負担が重くなる
個人事業主として軌道に乗り、利益が増えてくるとあらゆる税負担が重くなります。特に「所得税」は所得が増えれば増えるほど税率が高くなる「累進課税」が採用されています。
参考:国税庁「所得税の税率」
また、年間の所得が290万円を超えると「個人事業税」が、課税売上高が1,000万円を超えると「消費税」も課されます。所得金額が高くなると「住民税」も上がるほか、所得制限がかかり「児童手当」などの給付が受け取れないことも。利益が増えると嬉しい反面、税負担の面で悩みが出てくることも理解しておきましょう。
サラリーマンの開業は会社にばれる?
サラリーマンが開業して収入が増えると、住民税も上がります。住民税は本業の給与と、他所の給与や事業所得が合算されるため、会社にばれる可能性は高いといえるでしょう。
会社にばれないようにするためには、確定申告時に「主給与以外の所得を普通徴収で支払う」にチェックし、副業分の住民税を別途支払う方法に切り替えるのがおすすめです。ただし、自治体によっては、住民税を普通徴収に切り替えられない場合があります。
もし、会社にバレたくない場合は、自分が住んでいる地域の自治体のルールを確認してから開業を検討しましょう。
確定申告が必要な場合とは
サラリーマンで確定申告が必要となるケースは以下の2つです。
・給与の収入金額が2,000万円を超える
・給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える
引用:国税庁
会社からの給与が2,000万円を超えている場合や、複数の会社から給与の支払いがあったり、給与以外の収入が20万円以上ある場合は確定申告が必要です。サラリーマンをしながら副業をしていても、収入が20万円に満たない場合は雑所得として扱えるため、確定申告をする必要はありません。
しかし、確定申告を青色申告で手続きすることで赤字を繰り越せたり、最大65万円の特別控除を受けられたりとさまざまなメリットがあります。上記の条件に当てはまらない方でも、確定申告を検討してみるとよいでしょう。
サラリーマンが開業する場合、確定申告は青色申告がおすすめ!
サラリーマンが開業する場合、同時に青色申告の申請も済ませておきましょう。青色申告の申請は、専用の書類を管轄の税務署に提出するだけで済みます。
青色申告であれば、確定申告時に以下のメリットがあります。
・最大65万円の特別控除を受けられる
・赤字を最長で3年間繰り越せる
・家族への給与を経費にできる
・貸倒引当金を計上できる
・取得価額が30万円未満の減価償却資産を一度に計上できる
このように、白色申告にはないメリットが多数用意されています。有利になる場面も多いので、サラリーマンで開業するときは青色申告を検討しましょう。
社会保険や税金のポイント
サラリーマンが開業する場合、社会保険や税金でいくつか気を付けるべきポイントがあります。
まず、保険や年金に関しては、会社の健康保険・厚生年金に加入している場合は、特別な手続きは必要ありません。扶養家族がいる場合も同様です。しかし、退職をして健康保険・厚生年金の資格を喪失した場合は、国民健康保険・国民年金に加入する義務があります。
退職をしても、会社で加入していた健康保険を2年間任意継続できることもあるので、該当するか確認するとよいでしょう。国民健康保険より保険料が安くなる可能性があります。
また、税金に関しては本業と副業の収入を合算したうえで、所得税と住民税が発生します。副業で赤字が発生した場合は、最大3年間まで繰り越しが可能になるので覚えておきましょう。
サラリーマンが開業する場合は確定申告や税金に関する注意点を押さえておきましょう
サラリーマンが開業すると、メリットだけではなくデメリットも多く存在します。それぞれのポイントを押さえておくことで、開業する際に動きやすくなるでしょう。
ただ、自分の力のみで開業する自信がない方は、canaeruの無料開業相談を受けるのがおすすめです。
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この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
