敷居が高く、気軽に足を運びにくいという印象が色濃いフレンチですが、最近では立ち飲み風など、なじみやすいお店も増えているようです。ただし人々がフレンチに求めるクオリティは高く、高度な調理技術や知識を要する業態と言えるでしょう。フレンチ開業では、熟練の技とともに競合と差別化する経営方針がカギとなるようです。ここではフレンチ開業に向けての基本知識と経営戦略について解説します。
フレンチを開業するのに必要な準備として、以下の5点を解説していきます。
どのような方針でフレンチを提供するのかというコンセプトを構築していきましょう。このコンセプトは、内装デザイン、食器、ドリンクのセレクションやメニューに至るまで影響します。事業計画書への記載にも影響する経営の指針となりますので時間をかけ、熟考しましょう。
開業資金の調達は、自己資金をベースに金融機関からの融資などを活用するのが一般的です。開業に必要な物件取得費、内装工事費、運転資金など概算を割り出してみましょう。融資を受ける機関として、一般的に日本政策金融公庫などが知られています。融資では自己資金の有無も影響しますので、しっかりと計画をしておきましょう。
物件確保では、居抜き物件、スケルトン、あるいは自宅兼店舗などフレンチのタイプによっても異なるでしょう。またターゲットとなる客層が集まるエリア、駅近などの好アクセス地など物件選択で押さえておきたいポイントが多数あります。内装工事や周辺競合などの環境調査もし、適切な物件確保を目指しましょう。
フレンチレストランを営業するのに必要な資格として「食品衛生責任者」が挙げられます。保健所が実施する講習受講で取得が可能です。またレストランの規模や収容人数により「防火管理者」資格が必要なケースもありますので確認しましょう。さらにフレンチレストランの品格やクオリティ、差別化を図る優位資格も早めに準備し取得しておきましょう。
厨房機材の準備では、コスト削減のためにレンタルもしくは中古品も視野に入れましょう。また賃貸店舗が居抜きの場合、多くは既存の設備を利用することができる、あるいは造作譲渡契約で買い取ることが可能です。開業資金のバランスをみながら、上手な設備準備を進めていきましょう。
新業態の飲食店を生み出すポイントについてはこちらの記事で紹介しています。
フレンチを開業するにはどのような準備を進めていけばよいのでしょうか。フレンチを開業するまでの一般的なスケジュールは以下のように想定できます。
フレンチ開業までのスケジュール例
時期 | 項目 |
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1年~半年前 |
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3ヶ月~6ヶ月前 |
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3ヶ月前 |
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2ヶ月前 |
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1ヶ月前 |
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10日前 |
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当日 |
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開業するフレンチ店の規模やコンセプトに応じてスケジュールは前後します。ここでは一般的なフレンチの開業までの内容を、時系列に従って解説していきます。
飲食店開業に向けた準備の流れに関して、さらに詳しくはこちらの記事でイラスト付きで紹介しています。
物件取得費は、開業に必要な店の建物(不動産)にかかる費用のことです。通常賃貸契約の場合、保証料、礼金、仲介料、前家賃などを物件取得費として計上します。平均的な飲食店では、売り上げの10%程度に収めると理想と言われています。物件相場や立地、店舗規模にもよりますが、家賃の6ヶ月から12ヶ月分の費用が一般的なようです。
内装工事費は、物件の基礎や建物の構造によって異なります。居抜き物件の場合、既存の設備付きの契約が多く、コスト削減ができると言われています。スケルトンでは、トイレの設置、電気、ガス、水道などの工事にも費用がかかります。開業資金の中で内装工事費の占める確率は大きく、効率的でコスパの高い工事が実現できることが望ましいでしょう。
フレンチレストランの主な厨房機器には、業務用冷蔵庫、食洗器、レンジ、オーブンなどや空調設備も含まれています。厨房機器設備は、エネルギー効率と深い関係があるため将来的なランニングコストを考慮に入れると新機種購入も優位となることがあります。また中古品、既存の設備を使用する場合は、オペレーション上支障をきたさないよう点検しておきましょう。
その他の開業資金には、広告の印刷、POP製作、看板製作費用などがあります。またスタッフのトレーニングの際に発生する費用、ユニフォーム費用なども諸経費として計上しておきましょう。
運転資金とは、開業後に必要となる固定費が主で、家賃、水道光熱費、材料費、人件費などが含まれます。日本政策金融公庫によると、飲食業が軌道に乗るまで約6ヶ月要するというデータもあるようです。赤字経営の補填として約6ヶ月分を目途に、運転資金を確保しておきましょう。
開業資金に関して補助金・助成金制度はこちらの記事で紹介しています。
フレンチの開業には、物件所得や内装工事など初期投資に費用がかかります。一般的な開業資金の調達方法とポイントについてご紹介します。
フレンチ開業では、初期投資に相当な費用がかかりますので、自己資金の確保は必須と言えます。定期積み立てなどで計画的に貯金したり、株や投資の整理をしたりと自己資金を収集してみましょう。融資の際にも自己資金の有無によって借り入れ金額にも影響しますので、計画的に準備を進めたいものです。
開業資金調達では、銀行などの金融機関や日本政策金融公庫の融資制度がよく知られています。ただし、いずれの融資でも借入金に対し、ある程度の自己資金の準備がないと貸し付けができないという条件もありますので確認が必要です。家族や親戚からの融資は、贈与契約書などをかわし、内容を明確にすることで自己資金として申請することも可能でしょう。
厚生労働省や各自治体が実施する補助金や助成金も活用することができます。返済が不要なこれらの補助金や助成金は、審査に時間がかかり開業後の融資となり、開業資金としては有意義ではありません。準備を進め、運転資金の補填などに活用するのが有利と言えるでしょう。
資金調達の日本政策金融公庫への融資制度に関しては、こちらの記事で紹介しています。
フレンチ店を開業するのに必要な資格を解説します。それぞれ申請するのに必要な条件が異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。
フレンチに限らず飲食店開業には「食品衛生責任者」の資格が必要です。調理師免許をすでに取得している場合は免除されます。また、各都道府県の保健所が主催する講習受講で取得できます。全国どこでも取得が可能で、事業者以外の調理師、関係者が所得していても認められる資格です。
消防法では、一定規模の防火対象物の管理権限者は、有資格者の中から防火管理者を選任して、防火管理業務を行わせなければならないとされています。この法令に基づき、店舗の面積、収容人数によって取得が必要な資格です。また防火対象物によって「甲種防火対象物」と「乙種防火対象物」の2種類がありますので、管轄の消防署に確認しましょう。
飲食店開業には調理師免許が不要!ではどんな資格が役に立つのかについて、こちらの記事で紹介しています。
フレンチを開業するには資格取得のほかにも届出を出す必要があります。申請から許可までは必須条件や時間がかかる場合もあり、早めの準備を心がけましょう。
国の衛生法で定められており、飲食店経営のために「飲食店営業許可書」が必須となります。「食品衛生責任者」を店舗に一人設置し、書類には住所、営業時間などを記載します。管轄の保健所から検査員が、厨房機器、空調など衛生上正しく設置されているかの点検が行われます。レストラン内装工事完了10日前を目途に申請書は提出しておきましょう。
深夜12時を超えてからアルコールを提供する場合に「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」の申請が必要です。管轄の警察署に、開業日の10日前までに提出を済ませておきましょう。
個人事業主は、「開業届出書」を開業から1ヶ月以内に税務署に申請しましょう。この届出は、最高300万円までの設備費用及び、親族への給与を控除するなど特典が得られますので、速やかに申請することをおすすめします。
開業に関する申請・手続きに関してはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。
フレンチは、敷居が高いイメージが強く、集客に困難をきたすこともあるようです。交通網に優れたエリアやパーキングが確保されているなどの条件は、レストランの好立地といえます。東京などの都市圏では特に、二等地でコスト削減を優先し広告活動で集客を目指すのも有効と考えられます。
好立地に焦点を置くならば、ビジネスでは商業地区や繁華街などが一等地と呼ばれるエリアとなります。人通りが頻繁なだけでなく、商業施設が集中することで集客の相乗効果が得られるのが利点です。その反面で相場が高く家賃が高い傾向があるのは言うまでもありません。二等地では宣伝や広告次第でターゲットとなる客層を集客することができ、家賃を安くあげることも可能となるでしょう。
あえて競合のいる地域で勝負という事業者もあるようです。競合店が全くない場合は、そもそも需要がないことも考えられます。また競合があることで、サービスの切磋琢磨ができ、ハイクオリティをキープできるだけでなく顧客の信頼を獲得しやすくなるでしょう。
駅・バス停留所付近や人通りの多いメイン道路周辺は、アクセスしやすい場所と言えます。商圏地域にかかわらず、駅から徒歩圏やパーキングがあるなどアクセスが容易なことは、フレンチ開業では非常にメリットです。
飲食店開業の立地に関する詳しい特集はこちらからご確認いただけます。
フレンチ経営には、集客と資金を効率的に集めるための工夫が必要と言えるでしょう。以下で3つのコツについて解説します。
フレンチはコースで提供することも多く、夜間だけ営業するところもあるようです。通常ランチタイムの客層と夜間ではターゲットも異なる傾向があります。ランチコースを準備することで、夜間だけでは網羅できていない客層を獲得することができます。お店の認知を広げるために、ランチメニューの構築も得策と言えるでしょう。
フランス料理はもともと高級なイメージがあります。フレンチだけにこだわりすぎず、固定観念を払拭するためにもオリジナリティを発信できる料理作りに取り組みましょう。お店の独自性が表現できるレストランは他店との差別化により、経営がより安定します。
経営の安定を図るためには、やはり支出と収入のバランスに優れていなければなりません。飲食業では欠かせない材料費(Food)とサービスに必須の人件費(Labor)を合わせてFLコストと呼ばれる数値があります。通常このFL数値を売り上げで割ったものが50%程度のバランスだと良好とされているようです。
飲食店経営の失敗に関する詳しい内容はこちらの記事でも詳しくご紹介しています。
最後に、独自調査で得たフレンチ開業の繁盛店データを参考に開業計画に役立ててみましょう。概算された数値は、店舗規模や開業エリア、立地条件などによって異なるため、あくまでも参考としてご覧ください。
開業するために最低限必要とする費用を開業資金と呼びます。開業資金には、「物件取得」「内装工事費」「人件費」など詳細が含まれます。独自調査の結果、フレンチの場合は、約1,600~2,300万円と推定されるようです。しかし店舗の規模や地域によっても数値は異なります。参考データとしてご覧ください。
月商は1か月の売り上げを含む総収支を示す数字です。独自調査では、フレンチの場合約750万円~800万円というデータがあります。(客単価(目標)× 席数 × 回転率(目標))× 営業日数 = 月商の計算式で求めることができます。融資額の目安や事務所の規模判断のために使われることもある重要な数値です。あくまで参考データなので、店舗規模や地域によって数値は変動します。
客単価は、一度に一人の客が支払った金額の平均を指す数字です。独自調査の結果、フレンチでは5,000~15,000円と推定されます。客単価が高いほど売り上げにつながると予測されますが、回転数や席数によってもこの数値は異なります。店舗規模や地域でも変わりますが、参考数値としてご覧ください。
回転数は、1日の利用客÷座席数で割り出される数値です。独自調査では、フレンチは約1.0~1.8回と推測されています。どれだけの回転数をピーク時に上げられるかが利益に大きく影響します。コース料理中心のフレンチでは飲食業の中でもこの数値は小さくなる傾向があります。
座席数はフレンチレストランの収容人数を指しています。フレンチでは、独自調査の結果14~32席程度が平均と推定されるようです。この数値は、カウンター席やテーブル席の有無によっても変化するので、あくまで参考程度にご覧ください。
1日の売り上げを座席数で割った金額を示しています。フレンチでは、約9,000円~20,400円と独自調査では推定されているようです。この数値では、曜日や日ごとに売上がどのように変化するのかの指標になり、月間予定計画の参考にすることができます。
フレンチへの高級なイメージは多くの人が持っているものです。正統派のクオリティを重視する、あるいはオリジナリティを加えた構想で攻めるなど、明確なコンセプトを掲げてお店作りを目指していきましょう。そのためには十分な資金が必須です。事業資金計画を入念に進め、無駄のない資金投資と効率的なコストマネージメントに努めましょう。フレンチ開業を成功させるには集客のための広告や機会作りも大切です。グルメ媒体やSNSなどを活用し広くお店の情報を発信していきましょう。
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