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東京・押上にある人気のスパイス料理店「スパイスカフェ」のオーナーシェフ・伊藤一城さんは、世界48カ国を旅し、さまざまな食文化と飲食店運営の知識を得て、帰国後に修行したのち、ご自身のスパイス料理店を開業しました。
世界を旅したことで培った人間力も豊かな伊藤さん。料理やメニュー作りのヒント、長く経営していく知恵など、これから飲食店を開業する人へのヒントを伺いました。ここ数年でスパイスを生かしたインド料理店をオープンする日本人の方が増えて雑誌等でも注目されています。15年前からインド料理をベースとしたスパイス料理店を続けてこられた伊藤さんから見ていかがですか?
自分で店を始めた当時、インド料理店といえばインド人がやっている北インドのカレーを出す店がほとんどで、私が修業をしたガネーシュのような日本人が厨房に立つ南インド料理店は1、2軒しかありませんでした。それを思うと、注目されて店舗が増えるということはいいことだなと思います。
作る人が増え、食べる人も増えれば、必然的に一般の方々のスパイスに対する認識も変わってくると思います。それはイタリア料理が日本で広まった流れをたどれば、よくわかります。昔は茹でたものをケチャップと炒めて食べるスパゲッティが主だったのが、茹で上げパスタが当たり前になり、それまで家庭にはなかったオリーブオイルが日常的に使われるようになった。でも、カレーをスパイスから作っている家はそう多くはないと思います。「ルーから始まった悲劇」とよく言いますが、家庭で最初に出会うスパイスはすでにルー状になっている。全国で料理教室を行っていると、クミンとコリアンダーの違いがわからない人がほとんどという現状ですから、これを機にスパイス料理がもっと家庭に浸透していくといいと思います。近年、日本でオープンしたインド料理店には、現地の味をより忠実に再現しようとする店など、いろいろなタイプのインド料理店がありますね。
今ではイタリア料理といっても、ミラノ料理やベネチア料理などジャンルが細分化している一方で、日本人のオリジナルなイタリア料理を出す店もできている。インド料理も全く同じ流れで、実際にゴア地方料理やケララ地方料理の店が何軒かできていますし、日本人がオーナーシェフでより完璧に現地のインド料理を再現しようとする店、私のような本場とは違う日本人にしか作れないスパイス料理を作る店など、さまざまなタイプのお店がこれからできると思います。
全国で開いている料理教室というのはどういったものでしょうか。
コーディネートしてくださる方によって規模も参加者も異なるので、毎回ゼロから内容を考えています。スパイス使いの基本を教えることもあれば、地元の食材を使ったスパイス料理を教えることもある。ただ、料理教室というのは大して儲からないものなので、金銭的な部分では私の経費を出していただくくらいです。でも、その代わりに、地元の生産者さんを紹介してもらえるようお願いしています。1日目は料理教室をやって、翌日は近くの畑をまわるというような。地元の方にとっては自慢の存在ですから、一生懸命紹介してくださいますし、生産者の方も東京の料理人が来たと喜んで、さまざまなことを教えてくださいます。沖縄から北海道まで全国をまわるようになってしばらく経ちますが、今でも知らなかった食材に出合えますし、それを実際に仕入れて店の料理に使っています。
料理教室を通じて、新たな人のつながりが生まれ、win-winの関係として成り立っているんですね。お店をやりながら、そこまでできる原動力は何でしょうか。
意識しかありません。今お付き合いのあるフランス料理人は料理に対してとても意識が高く、私には到底太刀打ちできません。休みの度に生産者に会いに行ったり、勉強会やコラボディナーをやったりしながら、世界に出ていこうとしている。カレー業界は意識が低いのか、そういったことをする人がいるとはあまり聞かないのでとても刺激されます。フランスやイタリアでその国の料理を提供してミシュランの星を取る日本人はいますが、インドで店を持っている日本人は誰もいないと思いますし、世界で有名になっている人もいません。ですから、自分が動くことでこの業界を少しでもよくしていきたい、牽引していきたいという思いがあります。
コラボディナーでは、具体的にどのようなことをやっているのでしょうか。
月1回、ジャンルを問わない料理人と厨房に立ち、全ての皿にスパイスを使う、インド料理にとらわれないという条件でやっています。これまで、野菜レストランのシェフ、パティシエ、和食の料理人と実施しました。特に常連さんに限定しているわけではなく、インターネットで情報を出しているので、誰でも来ていただけます。以前は店休日に他店へ研修に行っていて、それはそれで楽しかったですが、コラボディナーはそれよりはるかにおもしろい。例えば、和食の料理人と一緒に厨房に入ると、魚の調理方法ひとつとっても、私が全く知らない方法で料理するところが見られるので、学ぶ手段としてはとても手っ取り早い。お客さんの予約もすぐに埋まりますし、反応を見ていても手応えを感じます。
お客さんも新しい世界を楽しんでいるんですね。今後の展望を聞かせてください。
spice cafeを始めた当初から、日本で食べる、日本人のための、日本人が作るスパイス料理を出すという軸はブレていません。本場のインドで勉強をして、それが料理のベースにはなっていますが、そのコピーは出さないし、自分のフィルターを通して料理を作っています。現在夜に出しているコース料理は、日本の季節の食材を使った、インド料理ではないスパイステイスティングコースで、これを世界に発信していきたい。取材を受ける、外国人が殺到する、ミシュランの星を取るなど手段はなんでもいいんです。スパイス料理っておもしろい、そう思ってくれる人を増やしていきたいし、そうすることでこの業界を引っ張っていきたいと思っています。
「spice cafe」伊藤一城さんのインタビューを見る!
>> 食をテーマに3年半で48カ国を旅した料理人。開業したのは究極のスパイス料理の店
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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