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エッグショックで飲食店は大ダメージ!値上げや代替卵で乗り切れるのか?

エッグショックで飲食店は大ダメージ!値上げや代替卵で乗り切れるのか?

「物価の優等生」と称され、60年ほど大きな価格の変動がなかった鶏卵(以下「卵」と称する)の価格が近ごろ高騰し、品薄になっています。この現象は「エッグショック」と呼ばれ、飲食店をはじめとする多くの食品関連企業や一般家庭に大きなダメージを与えています。

本記事では、エッグショックが起こった背景や、飲食店・家庭に与えた影響、企業の取り組みについて、イタリアンレストランのオーナーシェフを務める筆者が解説します。さらに最近話題の「代替卵」の活用事例も紹介。今後のメニュー開発に役立ててください。

エッグショックが起こった背景

エッグショックが起こった背景には、昨今の世界情勢の変化や鳥インフルエンザの蔓延があります。

新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻、自然災害などにより、エネルギーの需要と供給のバランスが崩れ、エネルギー価格が高騰。それに伴い、鶏の飼料となる穀類の価格や輸送費が上昇しました。

また、令和4年秋に国内で高病原性鳥インフルエンザが発生したのを皮切りに全国へ拡大。防疫措置として、令和4年から令和5年5月にかけて26道県で約1,771万羽が殺処分対象となっています。

これらの要因により卵の出荷数が激減し、以前は1パック200円前後の商品が多かった卵の価格が、現在は300円前後にまで上がってしまったというわけです。

東京の卵相場(単位円/ kg)

サイズ基準値
LL340円
L345円
M350円
S345円
SS290円

※2023年5月19日現在の相場
※卵1kgの目安(Lサイズ15個、Mサイズ16個)

参考:JA全農たまご東京M基準の価格変動グラフ(画像引用:JA全農たまご株式会社

エッグショックで飲食店は大ダメージ!値上げや代替卵で乗り切れるのか?_記事画像2

エッグショックが飲食店や家庭に与えた影響

卵は飲食店や家庭で使用されることが多い食材のため、エッグショックの煽りを受けたお店や消費者は少なくありません。ここでは飲食店と家庭に分けて、エッグショックの影響について解説します。

飲食店への影響

飲食店は業態により、受ける影響に大きく差があります。例えば、卵を多用するホテルや病院等の施設、オムライスや卵料理が主力の洋食店、だし巻き卵や親子丼などの提供が多い定食店・居酒屋などは大きなダメージを受けています。

とくに低価格を売りにしている店舗はエッグショックの影響を正面から受けたため、卵料理の提供をストップしたり、値上げを敢行したりするなど、対策に追われている状況です。

一方でフランス料理や懐石料理など、高価格帯の飲食店は卵の使用量が少ない店はそれほど影響を受けていないといった違いがあります。筆者はカジュアルなイタリア料理店を経営していますが、少し食材コストが上昇した程度で済んでいます。

家庭への影響

牛乳やバターなどの乳製品や食用油が軒並み値上げするなかにあっても、価格を保っていた卵の値上げは、日常的に卵を食している家庭に大きな衝撃を与えました。

これまでの価格に比べ1.5倍ほど値が上がったのですから、無理もありません。しかも販売店の一部には「1人1パック限り」と購入制限を設けているケースも散見されます。

日常的に卵料理を食べている家庭にとって、エッグショックによる卵価格の高騰は、生活を脅かすほどの事件と言えるでしょう。

大手の飲食チェーンや食品会社の取り組み

大手企業の多くは、卵を使用した対象商品を販売停止することでエッグショックを乗り切ろうとしているようです。卵の供給が追いついていないことが原因と推測できますが、値上げを避けているとも受け取れます。

ここでは、大手飲食チェーンや食品会社のエッグショックに対する取り組みを紹介します。

※執筆時の情報です。最新情報と異なる場合があります。各社のホームページ等で最新情報を必ず確認するようにしてください。

ガスト・バーミヤン・しゃぶ葉|株式会社すかいらーくホールディングス

大手飲食チェーンの株式会社すかいらーくホールディングスでは、原料不足に伴い、以下のように一部商品の販売停止や提供方法の変更を行っています。しゃぶ葉の「本格すき焼きだしの玉子」を無償から有料にしたことを除けば、一部商品を休止することで値上げを回避しているようです。

ガスト2023年2月16日〜販売休止:チョコバナナとマスカルポーネのパンケーキ、ガパオライスプレート、まぐろユッケ、ほうれん草と温泉卵のミニビーフシチュー、トッピング(目玉焼き・温泉卵)、
温玉ドリア、パンケーキ各種(モーニング)、パンケーキ&ポテトフライ(テイクアウト宅配)
バーミヤン2023年2月16日〜販売休止:天津チャーハン、天津飯
しゃぶ葉2023年2月13日〜提供方法変更:本格すき焼きだしの玉子無料サービス休止、1個50円(税込55円)で提供
※2023年5月19日現在

コメダ珈琲店|株式会社コメダホールディングス

愛知県を拠点として全国に展開する「コメダ珈琲店」では、卵が不足していることから一部商品を「提供できない場合がある」と発表しています。
販売休止ではありませんが、すべての店舗で安定して提供するのが困難なため、このように表現しているようです。

以下が該当商品の一部です。
ミックスサンド/ミックストースト
エッグサンド/エッグトースト
たっぷりたまごのピザトースト
手作りたまごドッグ
モーニング 定番ゆで玉子
モーニング 手作りたまごペースト
サラダバゲット
など

ポムの樹|株式会社ポムフード

オムライス専門店の「ポムの樹」では深刻な卵不足を受け、2023年3月1日にオムライスのLサイズの販売休止を発表しました。

ポムの樹名物とも言える、ボリューム満点の巨大オムライスが食べられなくなるのを残念に感じるファンも多いようです。販売休止期間は未定ですが、しばらくは続くものと予想されます。

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン

コンビニエンスストアの最大手「セブン-イレブン」では、卵の供給が滞っていることから、2023年1月31日よりサラダやサンドイッチなど、一部商品の規格の見直しや販売の休止を実施しています。

規格見直しの一例

商品名・価格規格の見直し内容
「ハムとたまごのサンド」300円(税込324円)ゆで卵を減量し、ハムを増量
「ツナと玉子のサラダ」220円(税込237.60円)ゆで卵を減量し、野菜などを増量
販売休止商品
「セブンプレミアム 半熟煮たまご」など、約15アイテム

白い恋人|石屋製菓株式会社

北海道土産の定番菓子「白い恋人」は、卵不足のため販売を休止しています。また主力商品の「白い恋人」だけでなく、「恋人広場」や「コイビトセレクション」など人気の詰め合わせセットも販売休止状態です。

製造元である石屋製菓株式会社の懸命な努力も報われておらず、現在も再開の目処は立っていません。「白い恋人」シリーズは国内外から人気があるだけでなく、全国で開催されている催事やネット通販などのリピーター需要もあり、再開を切望する声が多く寄せられています。

なか卯|株式会社ゼンショーホールディングス

多くの企業が販売休止や値上げなどを行っているなかで、株式会社ゼンショーホールディングスが展開する「なか卯」は値下げを行い、注目を集めています

値上げの対象は看板メニューの「親子丼」で、2023年4月6日11時より新価格での提供が開始されました。卵不足の現状において、値下げができた要因はいくつか考えられますが、「ピンチはチャンス」の思想に基づき、親子丼の覇権を握りにいったのではないかと推測できます。こういった取り組みは、2021年に起きた「ポテトショック」中にフライドポテトの増量キャンペーンを打ち出した「フレッシュネスバーガー」の前例もあります。

独自の仕入れルートがあること、注文数の増加による収益の拡大を狙っているほか、企業全体のイメージアップを図るための、費用対効果の高い広告と捉えている可能性もあるでしょう。

親子丼の価格改訂内容

サイズ価格(税込)
ごはん小盛り450円→410円
並盛り490円→450円
ごはん大盛り560円→520円

エッグショックにより注目を集める「代替卵」とは?

エッグショックによる卵不足の影響もあり、注目を集めているのがプラントベースフードの卵です。プラントベースフードとは、動物性原材料ではなく植物由来の原料を使い、食感や味なども含めて、肉類や魚介類などの食材を再現したものを指します。

もともとはベジタリアンやヴィーガン、食物アレルギーなど、動物性原材料の摂取に制限のある方向けの食材でしたが、近ごろはなんらかの影響で調達が困難になった食材の代替品として使用する例が増えてきました。

ここでは現在発売されている代表的な卵の代替品「代替卵」を3つ紹介します。

関連記事:体にも地球にも優しい食生活「プラントベース」とは?飲食店の提供事例も紹介

HOBOTAMA 加熱用液卵風|キユーピー株式会社

卵加工商品のパイオニアであるキユーピー株式会社が、代替卵「HOBOTAMA 加熱用液卵風」と「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」の2品を一般家庭向けに発売しました。

「HOBOTAMA 加熱用液卵風」はオムレツやプリンなど、卵の代わりとして使用可能です。
また「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」は、本格的なスクランブルエッグの味わいを再現しています。

SNSでは、「本物の卵そっくり」「卵アレルギーの子どもが大喜び」「もっと早く作って欲しかった」など、高い評価を得ているようです。

Ever Egg(エバーエッグ)|株式会社TWO &カゴメ株式会社

プラントベースブランド「2foods」とカゴメ株式会社がタッグを組み、新たな独自技術「野菜半熟化製法」(国内特許出願中)により、作り上げられたのが代替卵「Ever Egg(エバーエッグ)」です。

大豆などの従来の原料では実現が難しかった卵の「ふわとろ食感」を、人参や白インゲン豆を原料とすることで再現しました。

圧倒的なふわとろ食感と卵のような優しい風味が特徴で、カルボナーラや親子丼など幅広く使用できる代替卵です。

UMAMI EGG |UMAMI UNITED JAPAN 株式会社

UMAMI UNITED JAPAN 株式会社が発売する「UMAMI EGG」には、業務用の「UMAMI EGG FLAVOR」と業務・家庭兼用の「UMAMI EGG パウダー」がラインナップしています。

先ほど紹介した「HOBOTAMA」や「Ever Egg(エバーエッグ)」は液体や半熟卵風でしたが、こちらはどちらの商品もパウダー状です。

「UMAMI EGG FLAVOR」は、ヴィーガン料理などに卵の風味を加えたい場合にそのままかけて使用します。一方「UMAMI EGG パウダー」は、豆乳と混ぜた状態を液卵に見立てて調理することで、スクランブルエッグやオムレツなど卵料理の代替品として使用できるほか、焼き菓子などの製菓材料としても使用可能です。

代替卵の活用事例

上記で紹介した「代替卵」のなかから、Ever Egg(エバーエッグ)の活用事例を紹介します。

絶品プラントベースオムライス|2foods

Ever Egg(エバーエッグ)を開発した2foodsでは、「プラントベースチキンライス」「プラントベースデミグラスソース」を組み合わせた、「エバーエッグオムライス」を販売しています。

販売場所は、2foods都内6店舗(渋谷ロフト店・銀座ロフト店・麻布十番店・八重洲地下街店・ラボキッチン(人形町))です。

餡かけ天津飯|PLANT BASED TOKYO

プラントベースフードを提供する植物性専門レストランPLANT BASED TOKYOでは、2023年4月から期間限定でEver Egg(エバーエッグ)を使用した、「ふわとろエバーエッグの餡かけ天津飯風」を販売しています。

Ever Egg(エバーエッグ)のウリである「ふわとろ食感」を生かし、肉を再現したかのような大豆ミートと具沢山の野菜を使用した食べ応えのある逸品です。 

今後一年は続くエッグショックに飲食店はどう対処すべきなのか

エッグショックによる影響が落ち着くのは、2024年の春頃と言われています。鳥インフルエンザに感染した鶏舎を消毒することから始め、ひな鳥が成長し採卵鶏となり卵を安定して産めるようになるまでに約1年はかかるためです。

しかし卵の生産量が戻ったとしても、餌の原材料や燃料・輸送の費用が上がっていることから、以前の価格には戻らない可能性もあります。

このような状況において卵を多用する飲食店が生き残るためには、エッグショックの終息を楽観視することなく、時勢を考慮し、適宜対応する体制を整えておくことが重要です。

また、乳製品や油脂類など、卵のほかにも多くの食材が値上がりしています。この機会に食材コストを見直し、メニューの刷新や、利益をしっかりと確保できる価格への値上げや代替メニューを検討してみてはいかがでしょうか。

ライター・飲食店経営:大杉元則
調理師学校卒業後、大手老舗ホテルの西洋料理部門に勤務。フレンチレストランやベーカリー、給食会社を経て2010年、無農薬野菜にこだわったイタリアンを開業。現在は店舗のオーナーシェフを務めながら飲食関連を中心としたライターとして活動中。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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