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体にも地球にも優しい食生活「プラントベース」とは?飲食店の提供事例も紹介

体にも地球にも優しい食生活「プラントベース」とは?飲食店の提供事例も紹介

近年、世界的に注目され、日本でも関心が高まりつつある「プラントベース」。プラント(Plant)という単語から、なんとなく菜食のイメージが思い浮かんでも、具体的にどんなものかをご存知の方は少ないかもしれません。
今回の記事では、プラントベースはヴィーガン・ベジタリアンとどう違うのか、どんなメリット・デメリットがあるのかを詳しく解説。実際にプラントベースフードを提供している飲食店事例や自店で取り入れる際の注意点についてもご紹介します。

プラントベースとは?

プラントベース(Plant Based)とは、植物性の原材料で作られた食品や、植物性食品を積極的に取り入れる食生活を指す言葉です。
プラントベースを取り入れる理由は人によってさまざまですが、生活習慣病の予防・改善といった健康面での理由のほか、ダイエットや美容目的で取り入れる方もおられます。

野菜、果物、全粒穀物、種実類(ナッツ)、豆類など、プラントベースに当てはまる食品は「プラントベースフード」と呼ばれ、大豆由来の豆腐、豆乳、納豆もプラントベースフードにあたります。
一方で、プラントベースフードは動物性食品の代替品を指す言葉として使われることも。動物性食品の代替品例としては、肉の代わりとなる大豆ミート、牛乳の代わりとなる豆乳やアーモンドミルクなどが挙げられます。

大豆ミートとは、油分を絞った大豆を繊維状にし、肉の食感・風味を再現した加工食品。ミンチやナゲットタイプなどさまざまな形状があり、お湯で戻すだけという手軽さも魅力です。近年、大豆ミートのような代替食品が続々と登場しており、プラントベースフードの幅が年々広がりつつあります。

ヴィーガンやベジタリアンとの違い

ヴィ―ガンとは
ベジタリアンの一種であるヴィーガンは、肉や魚介類、乳製品、卵などの動物性食品を一切食べない完全菜食主義者のことを指します。
また、食品以外の衣類や日用品に関しても、動物性由来の製品を一切使わずに生活します。徹底的に動物性由来の製品を避ける背景には、動物愛護や環境保護の観点、宗教上の理由などが関係していることが多いです。

ベジタリアンとは
ベジタリアンは、一般的に動物性食品を食べない菜食主義者のことを指します。
ベジタリアンはさまざまなタイプに分類され、最も厳格なのが、動物性食品を一切口にしないヴィーガン(ピュアベジタリアン)。そのほかに、植物性食品・卵を食べるオボベジタリアン、植物性食品・乳製品を食べるラクトベジタリアン、植物性食品・卵・乳製品・魚介類を食べるペスコ・ベジタリアンなどがあります。

上記の通り、ヴィーガンやベジタリアンでは、動物性食品を食べないことを基本とするのに対し、
プラントベースの食生活では動物性食品を食べることへの制限はありません
。プラントベースは植物性食品を積極的に取り入れるという意味合いが強く、完璧な菜食主義ではないため、必要に応じて動物性食品を摂取できます。

プラントベースを生活に取り入れるメリット・デメリット

【メリット】健康維持に役立つ

植物性食品は、動物性食品に比べてカロリーや脂質が低い傾向があり、さらにビタミン・ミネラル・食物繊維も豊富に含まれています。それゆえ、プラントベースを取り入れて植物性食品中心の生活に切り替えることで、健康やダイエットへの効果が期待できます。
プラントベースの実践者は、肉や魚といった動物性食品を日常的に食べる人と比べて肥満度や心臓病、糖尿病の発生率が低い傾向にあるとの海外の研究結果もあります。

【メリット】環境負荷が少ない

植物性食品は、動物性食品に比べて生産過程での温室効果ガス排出量が少なく、生産に必要な水や穀物、農地の広さも少なく済む傾向にあります。

温室効果ガス排出量
1kgの食材を生産する時に生じる温室効果ガス量は、牛肉が60kgなのに対し、大豆は6kg。牛肉の生産過程では、大豆の10倍もの温室効果ガスが排出されています。これは、牛などの家畜のゲップや排せつ物が大きな要因で、世界の温室効果ガスの総排出量のうち、畜産業だけで約14%を占めているといわれています。

生産に必要な水の量
1kgの食材を生産するのに必要となる水の量は、牛肉が20tなのに対し、大豆は2.5t。数年かけて飼育される牛は水の消費量が多く、牛が飲む水だけでなく、牛の飼料となる穀物を生産する際にも多くの水が必要とされるため、結果的に8倍もの差が生じます。

生産に必要な穀物量
1kgの食材を生産するために必要な穀物の量は、牛肉が11kgなのに対し、大豆は0kg。牛とは違い、大豆の生産に穀物は必要ありません。

生産に必要な農地の広さ
牛肉を生産する際に必要な農地面積は、大豆の18倍といわれています。必要な農地面積が小さいほど、森林を伐採して農地や牧草地に変える必要性が低くなります。

このように、植物性食品は動物性食品に比べて環境への負荷が少なく、プラントベースを生活に取り入れることで、地球温暖化や森林破壊の防止に寄与できます。

参考文献大豆ミートと環境

【デメリット】栄養バランスが偏る可能性がある

その一方で、植物性食品だけしか摂らない食生活を続けると、栄養バランスが偏ってしまう可能性もあります。例えば、ビタミンB12は血液の生成に欠かせない栄養素ですが、植物性食品にはほとんど含まれていません。サプリメントで補うか、動物性食品も適度に摂取するのが好ましいです。
また、動物性食品に豊富に含まれるタンパク質も、植物性食品では意識的に摂取しないと不足しがちになる可能性も。ヴィーガンやベジタリアンでない限り、動物性食品もバランスよく摂取することをおすすめします。

プラントベースフードを提供している飲食店事例

近年のプラントベースへの注目の高まりを受けて、プラントベースフードを提供する飲食店が急増しています。今回は大手飲食チェーン店を中心に事例をご紹介します。

IKEA

スウェーデン発祥の家具・雑貨チェーン、IKEA(イケア)では、多種多様なプラントベースフードを販売しています。
IKEAの象徴ともいえるミートボールを植物性食品で再現した「プラントボール」は、見た目も味も肉にそっくりです。原材料にエンドウ豆由来のタンパク質、オーツ麦、じゃがいも、玉ねぎ、りんごを使用。マッシュルームやトマト、ローストした野菜などの旨みを加えることで肉のような味わいを作り出しており、ジューシーな歯ごたえは肉のミートボールと変わりません。
また、植物由来のベジソーセージをパンに挟んだ「ベジドッグ」や、ストロベリーやキウイなどの果汁から作られた100%植物由来のソフトクリーム「プラントベースソフト」も人気商品です。

モスバーガー

大手ハンバーガーチェーン店のモスバーガーでは、主要原材料に動物性食材を使用せず、野菜と穀物を主原料にしたハンバーガーを提供しています。
ベジタブルバンズ、大豆由来のパティ、野菜を合わせた「グリーンバーガー<テリヤキ>」や、魚のような味わいが楽しめる「ソイシーバーガー〜ソイのおさかな風フライ〜」などを提供。テリヤキソースやタルタルソースも動物性食材不使用です。

カレーハウスCoCo壱番屋

大手カレーライス専門チェーン店のカレーハウスCoCo壱番屋では、動物性食材を使っていない「ココイチベジカレー」を販売しています。トッピングメニューとして「大豆ミートのメンチカツ」も提供されており、見た目も味も肉のメンチカツそっくりだと人気です。

焼肉ライク

ひとり焼肉チェーン店の焼肉ライクでは、植物性タンパク質(大豆)を原料に、肉の食感・風味を再現した焼肉用代替肉を提供しています。
2020年10月より代替肉「NEXTカルビ」の販売をスタート。2022年1月からは肉の食感・風味により近づけた「NEXTカルビ2.0」を販売しています。タンパク質含有量を増やすことで肉の噛みごたえを追求し、味付けを改良することで大豆臭が消え、さらに肉らしい味に仕上がったといいます。
焼肉タレも植物性で、公式サイトには、一般的な焼肉(牛カルビ)と比べると脂質が8分の1近く、タンパク質が2倍以上摂取できると記載されています。

プラントベースフードを取り入れる際の注意点

前述の通り、プラントベースは植物性食品を積極的に取り入れるという意味合いが強く、完璧な菜食主義ではありません。それゆえ、商品パッケージにプラントベースと表記されていても、実際には動物性由来の成分が含まれている場合があります。

例えば、ベジタブルスープに動物性の出汁が使われている、大豆ミートを使ったハンバーグのつなぎに卵が使われているといったことが挙げられます。そのため、飲食店としてプラントベースフードをアレルギーをお持ちの方やヴィ―ガンの方に提供する際には十分注意してください。

特に宗教的な理由で特定の動物性食品を避ける外国人は多いため、どの食材・メニューに動物性由来の成分が含まれているかを把握し、しっかりと説明できるように準備しておきましょう。

需要を見据えて今こそプラントベースを取り入れよう

肉を食べてはいけないといった明確なルールがなく、厳格なベジタリアンやヴィーガンと比べると、誰でも気軽に取り入れやすいプラントベース。植物性食品を積極的に摂っていこうという前向きなスタンスで、私たちの体にも地球環境にも優しいことから、今後ますます需要が高まっていくと予想されます。
飲食店においては、世の中に十分浸透してからではなく、多くの消費者が興味を持ち始めている今の段階から、需要を見据えて取り入れることが重要です。既にプラントベースフードを提供している飲食店事例も参考にしながら、まずは一品、自店のメニューに取り入れることから始めてみてはいかがでしょうか。

ライター:上田はるか(フリーライター)

大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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