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食の未来を救う「オルタナティブフード」とは?注目される理由や課題も解説

食の未来を救う「オルタナティブフード」とは?注目される理由や課題も解説

世界人口の増加や地球温暖化の影響によって、近い将来、地球上で食糧危機が起こるといわれています。その危機を救う存在の一つとして注目を集めているのが、オルタナティブフードです。近ごろ耳にする機会が増えてきたトレンドワードでもありますが、具体的に何なのかは知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は、オルタナティブフードとは何か?なぜ注目されているのか?具体例や現状の課題も交えながら、詳しく解説します。

オルタナティブフードとは?

オルタナティブフードとは、「代わりとなる、代替手段」を意味する「alternative」と「food」を掛け合わせた造語です。略してオルタナフード、オルタナ食材と呼ばれることもあります。

いま世界では、地球温暖化や食糧危機などさまざまな問題を抱えていますが、オルタナティブフードはそうした社会問題の解決に貢献できる食材を指します。例えば、私たちが日常的に食べている牛肉・豚肉・鶏肉に代わる、ダチョウやワニ、シカ、イノシシの肉などがその代表例です。

まだまだ馴染みのない方も多いかもしれませんが、未来世代の環境と健康を守るため、世界中でオルタナティブフードを積極的に取り入れようとする動きが活発化しています。

オルタナティブフードが注目を集める理由

食糧危機問題

いまや世界人口は80億人を突破し、2050年には約97億人、2080年代には約104億人でピークに達すると予測されています。人口が増えれば、それだけ生きていくための食糧が必要となりますが、そのためには森を切り開いて、新たな畑や牧場を作らなければなりません。
しかし、森林伐採は地球温暖化の加速につながり、気候変動が生じることで洪水や干ばつのリスクも高まります。人口が増加し続けるのに対して、洪水や干ばつによって世界の食糧生産量が減少すれば、世界的な食糧不足に陥る可能性は容易に予測できます。

私たちが日常的に食べている牛肉・豚肉・鶏肉は、生産過程で大量の穀物を必要とし、その穀物を育てるために大量の水と土地が必要となります。それゆえ、食糧不足の状況下で牛肉・豚肉・鶏肉を生産し続けることは、人々が口にする穀物を奪い、食糧危機問題をさらに悪化させることにつながります。だからこそ、牛肉・豚肉・鶏肉などの食肉に代わるオルタナティブフードが注目を集めているのです。

代替肉も実は環境負荷が大きい

牛肉・豚肉・鶏肉といった食肉に代わる存在として、主に大豆などの植物由来食材を使った代替肉の開発・普及が進んでいます。しかし、その代替肉も長期的には地球環境に悪影響を及ぼす可能性が示唆されているのです。

水やエネルギーの使用量、土地の使用面積、温室効果ガスの排出量の観点でみると、植物由来の代替肉は、牛肉・豚肉・鶏肉といった食肉に比べて環境負荷が少ないといわれています。
その一方、植物由来の代替肉が広く普及し需要が高まれば、それだけ大豆の生産量を増やさなければなりません。生産に必要な土地の使用面積が小さいとはいえ、農地を増やすための森林伐採を避けることは難しく、結果的に地球環境への負荷が増えてしまうのです。

オルタナティブフードの具体例

牛肉・豚肉・鶏肉といった従来の食肉や、植物由来の代替肉に代わる第3の選択肢として注目されているオルタナティブフード。その具体例として以下が挙げられます。

ダチョウ

日本ではまだまだ目新しい食材かもしれませんが、ダチョウの肉はヨーロッパやアメリカ、アフリカでは、スーパーでも手に入る身近な存在です。柔らかく臭みのない赤身で、牛豚鶏と比べても低カロリー・高タンパク・高ビタミンであるのが特徴です。「赤身肉の女王」と呼ばれ、ヘルシーでさっぱりとした赤身のおいしさ、旨みを感じられます。

1kgの食肉を生産するために、牛は約11kg、豚は約7kg、鶏は4kgの飼料が必要とされます。それに対して、ダチョウに必要な飼料は約3kg。牛豚鶏に比べて飼料に対しての成長率が高いことから、少ない飼料で大きく育てることができます。
なおかつ、ダチョウは草を主食とするため、牛豚鶏に比べて穀物の消費量を大幅に削減できます。それゆえ、穀物を人間と取り合うことがなく、ダチョウが食肉として広まることが食糧危機問題の解決方法の一つになると考えられます。

ワニ

牛豚鶏などの恒温動物は体温を維持するために多量の飼料を食べる必要がありますが、変温動物のワニは、牛豚鶏に比べて少ない飼料で済む生産効率が高い動物です。ワニはとても頑丈で、鶏や豚のように感染症になりにくい点からも畜産に向いているといわれます。
ワイルドな見た目とは裏腹に、臭みのない白身肉で、低カロリー・高タンパク・低脂肪であることが特徴です。味わいや食感は鶏肉に似ており、尻尾の肉は肉厚でジューシーで、腹、胸、肩周りの肉はさっぱりとしてクセがなく食べやすい部位です。

シカ・イノシシ

狩猟によって捕獲された野生の鳥獣を食肉としていただく「ジビエ」もオルタナティブフードの一つ。昨今、野生動物による農作物被害が大きな問題となっていますが、害獣として駆除されるシカやイノシシを食肉として食べることが、食糧危機の解決にも農家や自然を守ることにもつながります。

オルタナティブフードの課題

環境負荷を抑えつつ、持続可能な生産ができるオルタナティブフードですが、植物由来の代替肉と同様に発展途上であることから、現状では以下の課題があります。

コストの高さ

牛肉・豚肉・鶏肉といった食肉に比べて圧倒的に生産量が少なく、生産方法も十分に確立していない点から、どうしてもコストが高くなってしまいます。
例えば、ダチョウを食肉用に飼育している牧場は全国に10箇所程度、ダチョウ専用の屠畜場は全国に数箇所程度とされ、牛肉・豚肉・鶏肉に比べると割高なのが現状です。

認知度の低さ

シカやイノシシなどのジビエは日本でも徐々に浸透してきているものの、ダチョウ肉やワニ肉については、圧倒的に認知度が低く、消費者に受け入れられにくい状況です。オルタナティブフードが必要とされる理由を知らない消費者にとっては、昆虫食と同様にゲテモノ扱いをされてしまう可能性も。
他国とは違い、ダチョウやワニを食べる文化がなかった日本では、コスト面の克服だけでなく、認知度とその印象を高めることも求められます。

オルタナティブフードを提供する飲食店はじわじわ増加中

そんな課題を抱える中でも、オルタナティブフードを提供する飲食店はじわじわと増加中。例えば、ダチョウ肉を提供する飲食店は、東京都内だけでも居酒屋、イタリアン、肉バルなど100〜200店舗あるとされ、オルタナティブフードの専門店も登場しています。

オルタナティブフードをより多くの人に知って味わってもらおうとする試食イベントも活発に行われており、シェフや飲食店オーナー向けの調理実例も多く発信されています。ダチョウ肉・ワニ肉という言葉だけだと強い抵抗感を持たれがちですが、以下のような料理例を見れば、一度食べてみたい!という興味が湧くのではないでしょうか。

オルタナティブフードの料理例
・シカロースのグリル 赤ワインソース
・イノシシロースの低温ロースト
・ダチョウのモモ肉のタリアータ
・ダチョウの卵の冷製カルボナーラ
・ダチョウの卵のプリン
・テール肉をじっくり煮込んだワニカレー
・ワニバーガー 照り焼きソース

オルタナティブフードを取り入れて、食の未来を守ろう

牛肉・豚肉・鶏肉といった従来の食肉や、植物由来の代替肉に代わる第3の選択肢として注目を集めているオルタナティブフード。コストや印象面での課題はあるものの、より環境負荷を抑えつつ、持続可能な生産ができるオルタナティブフードの重要性はますます高まっていくと見込まれます。
飲食店がオルタナティブフードをメニューに取り入れることは、近い将来直面するとされる食糧危機の問題解決の第一歩につながります。ダチョウ肉やワニ肉の認知度はまだまだ低いものの、その目新しさは新たな集客要素としても有効です。まずは自身でオルタナティブフードを口にし、そのおいしさや魅力、必要性を知るところから始めてみてはいかがでしょうか。

ライター:上田はるか(フリーライター)

大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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