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サステナブル・シーフードとは? 飲食店なら知っておきたい海産物の実情

サステナブル・シーフードとは?

新鮮で安全な食材は飲食店にとって欠かせないものです。魚もその一つですが、現在、日本の水産資源は減少傾向にあり、漁業そのものも衰退しつつあります。飲食店としては「いずれ魚が食べられなくなってしまうかもしれない」という問題を看過するわけにはいきません。これに対処するためにどんな取り組みが行われているか、ご紹介しましょう。

注目される「サステナブル・シーフード」

ここ数年、環境問題を語るなかで「サステナブル」(持続可能な)という言葉が市民権を得てきました。そんななかで注目されているのが「サステナブル・シーフード」です。水産資源や環境に配慮し、適切に管理された漁業で獲られた水産物や、環境や社会への影響を最小限に抑えた養殖場で育てられた水産物のことを指します。これを推奨し、食材として積極的に取り入れることで、海の資源を守ろうという考えが広まりつつあります。

現在抱えている漁業の課題

サステナブル・シーフードを語る前に、まずは今、日本の漁業がどのような問題を抱えているかをおさらいしてみましょう。

漁獲量の枯渇

適切な量を獲っているのであれば、魚介類は自然に繁殖、成長するため、全体の個体数が急激に減ることはありません。しかし近年では、過剰漁業や商業目的の違法漁業といった「乱獲」が横行。国連食糧農業機関の「世界漁業・養殖業白書 2020年」には、世界全体で34.2%の魚介類が余分に獲られているという報告がなされています。また、技術の向上により、幼魚や目当ての種以外の魚が意図せず捕獲されてしまう「混獲」による被害も多発しています。その結果、1970年から魚類全体の個体数が49%減少していることが明らかになっています。

食品ロス

規格外のためにハネられしまうのは野菜だけではありません。海産物も同様で、味は遜色ないのに、市場に出せないものが多数発生します。また、魚の種類も実際はさまざまなものが水揚げされているのですが、私たちが食べる魚は30~40種程度しかなく、知名度がないものは出荷されません。こうした魚は養殖魚のエサや肥料などにされますが、需要がなくて廃棄されてしまうことも少なくありません。

輸入への依存

「令和元年度水産省の水産白書」によると、日本の国民一人当たりにおける魚の消費量は、世界3位にランクインしています。かつて1位だったときと比べて数字は落ちているものの、依然高いものがあります。しかし、水産物の自給率は59%。つまり約半分を海外からの輸入に頼っているのです。漁業従事者もここ20年で半減しているので、日本ではいずれ魚が食べられなってしまうのではないかという懸念が起きています。

SDGsとサステナブル・シーフードとの関係性

こうした状況から、サステナブル・シーフードの重要性が叫ばれるようになってきましたが、食卓に出された魚がどのようなバックグランドをもっているかは、外見を見ただけではわかりません。そこで導入されているのが、以下の2つの認証制度です。この制度は、国連が掲げた「持続可能な開発目標(SDGs)」の17の項目のうち、14番目の「海の豊かさを守ろう」を達成するための有効な手段としても注目されています。

MSC認証

水産物の国際認証の普及に取り組む非営利団体、MSC(海洋管理協議会)が認証する「海のエコラベル」。青いマークで、持続可能な漁業で獲られた「天然」の水産物につけられます。MSC漁業認証を取得した漁業数は、申請漁業ごとの魚種数で数えています。MSCの日本事務所であるMSCジャパンによると、現在、日本国内でMSC漁業認証を取得したのは以下の12件です。

・北海道 ホタテガイ漁業
・明豊漁業(宮城・塩釜) カツオ、ビンナガマグロ一本釣り漁業
・石原水産(静岡・焼津) カツオ、ビンナガマグロ一本釣り漁業
・マルト水産(兵庫・相生) カキ漁業
・臼福本店(宮城・気仙沼)  タイセイヨウクロマグロはえ縄漁業
・尾鷲物産(三重・尾鷲) ビンナガマグロ、キハダマグロ、メバチマグロはえ縄漁業
・近海かつお一本釣り漁業国際認証取得準備協議会(高知・宮崎) カツオ、ビンナガマグロ一本釣り漁業

ASC認証

養殖による水産物にも、MSCと同様に認証する仕組みが養殖版の「ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)」の認証制度です。ASCは、WWF(世界自然保護基金)とIDH(オランダの持続可能な貿易を推進する団体)の支援のもと、2010年に設立された国際的な非営利団体で、ASC認証として使用されているのは水色のマーク。環境や社会への影響を最小限にして育てられた「養殖」の水産物の証しです。どういった飼料を使って育てられているか、適切な魚病の管理がされているかなどが、重要なチェックポイントになっています。

2021年6月現在、対象となっているのはサケ、ブリ・スギ類、淡水マス、シーバス・タイ・オオニベ類、ヒラメ、熱帯魚類、ティラピア、パンガシウス、二枚貝(カキ、ホタテ、アサリ、ムール貝)、アワビ、 エビ、海藻の12魚種。以下12件の生産企業・漁協による67の養殖場が認証を取得しています。

・宮城県志津川漁協戸倉
・黒瀬水産(日本水産)
・グローバルオーシャンワーク(鹿児島)
・宮城県漁業協同組合 石巻地区支所・石巻湾支所・石巻市東部支所
・アクアファーム(マルハニチロ)
・ユーグレナ(沖縄)
・鹿児島県東町漁協
・奄美養魚(マルハニチロ)
・ジャパンサーモンファーム(青森)
・FRDジャパン(千葉)
・マルキン(宮城)
・ダイニチ(愛媛)

スーパーマーケットや漁業で行われている取り組み

「水産資源に関する意識調査」(2021年、MSCジャパン)によると、サステナブルな生活をしたい人は約6割となった一方、実践できている人は4割未満。また、MSCの「海のエコラベル」を知らない人は8割以上います、ラベルの意味を知った場合、選びたいと答えた人は約8割に上りました。2021年5月末時点で、日本国内でMSCが認証している製品は932品目に上っています。実際に商品を提供してる側はどのような取り組みを行っているのか、見ていきましょう。

スーパーマーケットでの取り組み

認証商品の取り扱いで業界をリードしているのが、流通大手のイオン。2006年から販売を開始し、2017年にはMSC認証を受けた同社のノルウェー産のサバ商品が、年間500万パックの大ヒットを記録しました。売り場にはMSCやASCの認証商品だけを集めたコーナーが設置され、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」が購入できるネットスーパーのサイトでは、「MSC」「ASC」とキーワードを入れるだけで、商品の一覧がヒットするようになっています。また、2021年5月には、日本生協連が「コープ商品の2030年目標」として認証品の供給額構成比を50%以上にすることを発表しました。2020年度の進捗率は12.2%ということで、今後の展開に期待が寄せられています。

漁業での取り組み

持続可能な漁業を実現するため、2020年12月、約70年ぶりに漁業法の大幅な改正が行われました。許可制度の見直しや密漁の罰則強化のほか、なかでも注目されたのが新たな資源管理システムの導入です。これまでサバやアジなどの一部の魚だけだった漁獲量管理の対象を広げ、資源評価に基づいて「漁獲可能量」を割り出し、それを船舶ごとに割り当てる方式を採用。計画的な漁を行う仕組みが構築されています。

飲食店が考えるべきサステナブル・シーフード

水産資源を取り巻く環境改善のため、飲食業界のなかにも積極的に取り組んでいこうとする動きが見られます。具体的に行動したいのなら、「CoC認証」(CoCはChain of Custody の略で「加工・流通過程の管理」を意味する)を取得するのも一案です。この認証では「MSC」「ASC」の認証製品をメニューに取り入れ、使用していることを公にすることができるので、エコに関心のある顧客の取り込みや、店舗のイメージアップにつなげることができます。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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