店舗の経営を目指す場合、行き当たりばったりで物事を進めては上手くいかなくなる可能性があるので、事前に計画を立てた上で実行に移すことが望まれます。
最近では、オンラインショップのように実店舗を持たずに事業を行うことも珍しくありませんが、実店舗を構えるのであれば、実店舗がある事業経営ならではの特徴を踏まえつつ準備を進めなくてはなりません。
また、店舗経営を軌道に乗せるためのコツを把握しておけば、店舗経営の成功率も高まることが期待できます。
この記事では、店舗を経営する前にしておくべきこと、店舗経営を成功に導くためのコツなどについて説明します。店舗経営を目標としている方は、ぜひ開業前の参考にしてください。
目次
店舗経営とは?
店舗経営とは、店舗を経営して収益を上げることを指します。
事業目的を達成して収益を上げるためには、継続的・計画的に意思決定を行い、商品開発や従業員育成などの施策を実行しなくてはなりません。
モノや人、サービスをどのように活用するかを俯瞰的な視点でとらえて判断することが、店舗経営を成功に導くためのポイントです。
●店舗経営と店舗運営の違い
経営と運営は似ているようでその中身はまったく異なり、経営の目的は上述したように「収益化」です。
一方運営とは、店舗としての機能を発揮させることができるように組織をまとめて動かしていくことであり、つまり運営の目的は「効率化」であると言えます。
どちらのほうがより重要ということではなく、店舗を長く続けていくためには「経営」と「運営」どちらの視点も持っておくことが大切です。
実店舗がある事業の特徴
実店舗がある事業には、オンラインショップのような実店舗を持たない事業にはない特徴があります。
実店舗がある事業の特徴として挙げられるのは、以下の通りです。
・ コミュニケーションがとれる
・ 多店舗展開ができる
・ 費用がかかる
・ 商圏が限定される
ここからは、それぞれの特徴について説明します。
●コミュニケーションがとれる
実店舗では、顧客と実際にコミュニケーションをとりながら関係性を築くことができます。
飲食店では食事に来た顧客に注文を聞くなどの接客を行い、アパレルショップでは服を買いに来た顧客に今シーズン流行りの服をおすすめするように、顧客とコミュニケーションを行うことは重要な業務のひとつです。
顧客とのコミュニケーションから得られることは多く、顧客と直接やり取りをする中で店舗の改善点に関するヒントを得られる場合もあります。
●多店舗展開ができる
店舗を持たないオンラインショップには「店舗数」という概念はありませんが、実店舗は店舗数を増やすことがそのまま売上の増加に繋がることもあります。
チェーン店かそうでないかに関わらず、飲食店やマッサージ店、サロンなどのように多店舗展開を行うお店は多いです。売上を伸ばすためには、状況に応じて多店舗展開を視野に入れた経営を行うことも大事だと言えるでしょう。
ただし、店舗数を増やすとその分当然かかる費用も増すので、多店舗展開を目指すのであれば資金面を中心に入念な計画を立てなくてはなりません。
●費用がかかる
実店舗を経営するためには、開業の準備に使う「開業資金」や、経営を続けるための家賃や人件費といった「運転資金」が必要となり、準備すべきトータルの費用が高額になるケースもあります。
開業するにあたって、たとえば飲食店では冷蔵庫や調理器具、エステサロンでは専用器具などを導入しなくてはならず、それらにかかる費用は開業前の大きな金銭的負担になるでしょう。
集客が見込める立地に出店したいのであれば、家賃もそれなりにかかることを覚悟しなければなりません。
ただし、すべての費用を自己資金でまかなうのではなく、一部は融資を受けるなどして調達する方法が一般的であり、その方法に関する詳細は後述します。
●商圏が限定される
オンラインショップは、インターネットに接続する環境がある方すべてが顧客になりえる一方、実店舗は実際にお店に足を運べる範囲の方が主な顧客となり、その商圏には大きな差があります。
さらに、売上をあげるためには、立地にマッチしたお店を出店することも重要です。たとえばビジネス街で飲食店を経営する場合、家族層がターゲットのファミリーレストランより、ビジネスマンが1人で来店できる立ち食いそば屋のほうが向いています。
どのような層を主なターゲットとして定めるかを踏まえた上で、出店場所を含めた店舗の計画を立てなくてはなりません。
店舗を経営する前にすべきこと
店舗の経営は事前準備の段階から大変なことが多くありますが、その分やりがいを感じられる仕事です。
店舗を経営する前にすべきこととして、主に以下のことが挙げられます。
・ 事業計画書を作成する
・ 店舗を取得する
・ 資金調達を行う
・ 資格を取得する
・ 価格やオペレーションを決定する
それぞれについて、内容を説明します。
●事業計画書を作成する
実際に店舗を経営する前に、開業後の事業展望や資金計画についての計画書である「事業計画書」を作成する必要があります。
今後行わなければならないことをハッキリさせるためにも、事業計画書は綿密に作成することが望ましいです。たとえば飲食店や美容院のような事業であれば、事業計画書を作成することによってお店のコンセプトや主なターゲット層を明確にできるでしょう。
また、開業にあたって金融機関から融資を受けることを検討する場合もありますが、事業計画書はその際にも重要な役割を果たします。
経営のビジョンを明確にするだけでなく、資金調達においても必要となる書類なので、必要に応じて税理士などの専門家からアドバイスを受けつつ作成してください。
●店舗を取得する
店舗を経営するためには店舗を取得することが大前提ですが、店舗を取得してもすぐに開業できるわけではなく、工事や改装が必要となることが多いです。
さらに、希望している条件に近い物件がすぐ見つかるとも限らないため、店舗となる物件探しはなるべく早めから行いましょう。
●資金調達を行う
開業するために必要な資金を自己資金でまかなえない場合には、資金調達を行わなければなりません。
資金調達の方法は金融機関からの融資が一般的ですが、補助金や助成金、クラウドファンディングなどを利用する方法も考えられます。
金融機関からの融資は、審査に通過することで受けることができ、比較的低金利で資金を調達できます。融資である以上必ず返済しなくてはならないので、返済計画をきちんと立てることが大切です。
補助金や助成金は、それぞれ設けられている条件をクリアして審査に通過しなければ受けることはできませんが、融資ではないので返済の必要がありません。条件を満たしている場合には積極的に活用したい方法です。
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の人から出資による資金調達を行う方法で、こちらも資金を返済する必要はありませんが、出資者に魅力を感じてもらえる内容でなければ資金を集めることは難しいと言えます。
それぞれの資金調達方法のメリット・デメリットを踏まえた上で、どの方法で資金調達を行うかを判断しましょう。
●資格を取得する
開業するお店の業種によっては、資格が必要な場合や行政の許認可を得なければならない場合があります。
開業する業種および、必要になる資格や許認可の具体例をいくつか挙げると、以下の通りです。
・ 飲食業:食品衛生責任者、防火管理者、食品営業許可申請など
・ 美容院:美容師免許、美容所開設届など
・ マッサージ店:あん摩マッサージ指圧師、施術所開設届など
資格によっては取得するための勉強などに時間がかかるものもあるので、資格取得に向けた準備にはなるべく早めに取りかかったほうがよいでしょう。
●価格やオペレーションを決定する
実際に店舗をオープンする前には、商品の販売価格やサービスの提供価格を決めておかなければなりません。
また、店舗での接客をスムーズに行えるように、従業員のオペレーションを決めておくことも重要です。
フランチャイズで開業する場合は、価格やオペレーションがあらかじめ決められているため、この点に関して心配が少ないのは大きな魅力と言えます。
店舗経営を成功に導くコツ
店舗を継続的に経営するためには、押さえておくべきポイントがあります。
ここからは、店舗経営を成功に導くためのコツについて説明します。
●利益をアップさせる
店舗経営が店舗を経営して収益を上げることが目的である以上、利益をあげることは大前提です。
その上で利益をアップさせるためには、客単価のアップ、回転率をあげる、仕入れ費を抑えるなどの方法が考えられます。
ただし、いずれの方法もやりすぎると逆に顧客が離れていく可能性があるため、加減の見極めやバランスが重要です。
●顧客の管理を行う
店舗の経営では、主なターゲット層をきちんと定めておく必要があります。ターゲット層が異なれば、商品開発や広告において効果的な方法も異なるからです。
たとえば若年層がメインターゲットとなる場合、SNSを活用した宣伝広告が効果的である一方、高齢者がメインターゲットとなる場合には、チラシを使った宣伝広告のほうが向いているでしょう。
ターゲットとなる顧客をきちんと把握し、その層に刺さることを意識することで、効果的な経営が可能になります。
●従業員を育成する
従業員の質は店舗を経営する上で重要な要素のひとつなので、育成マニュアルを作成して従業員の育成を行いましょう。
また、育成した従業員がお店に定着しなければ意味がないため、従業員が心地よく働ける環境づくりも大切です。
●集客を行う
店舗をオープンするためにどれだけの時間や費用をかけたとしても、集客が上手く行えなければ店舗の経営は軌道に乗りません。
集客方法は口コミやSNSなどさまざまですが、幅広い層にリーチしたいのか、店舗近隣の住民に情報提供をしたいのかなどによって、効果的な方法は異なります。
オープン前、オープン直後、オープンしてしばらく経った後といったように、時期によって集客方法を変えることも重要です。
店舗の経営にはさまざまなノウハウが求められる
実店舗の経営においては、顧客と直接コミュニケーションをとれる、多店舗展開を行えるなど、オンラインショップにはないメリットが複数あります。
ただし、オンラインショップとは異なり商圏も限定されることから、SNSやタウン誌への投稿、利用客による口コミなどを活用して集客を行わなければ、継続的に店舗を経営することは難しくなるかもしれません。
店舗の経営にはさまざまなノウハウが求められますが、開業準備の段階からきちんと計画を立てられていれば、店舗経営を順調に進めやすくなるでしょう。
開業に向けての準備に不安がある場合は、開業準備を支援してくれる「canaeru(カナエル)」のようなサービスを利用するのもひとつの方法です。
canaeruでは、開業に役立つさまざまな情報収集ができる上に、無料の開業相談も受け付けているので、開業に向けてのサポートを受けたい方は、ぜひcanaeruの利用を検討してください。
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参考記事:飲食店経営が難しい理由って?必要な考え方や成功に欠かせないポイントもご紹介
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
