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飲食店は個人経営と法人どっちが正解?メリット・デメリットを解説

飲食店は個人経営と法人どっちが正解?メリット・デメリットを解説

飲食店の開業を検討する際、個人事業主と法人のどちらを選ぶべきか迷う人は多いでしょう。店舗の規模や将来の収益見込みによって、適した事業形態は大きく変わります。

事業形態の選択は、開業手続きだけでなく収入や税率、社会保険料の負担にも直結します。将来的に損をせず、スムーズに店舗経営を軌道に乗せるためには、事前の比較が不可欠です。

この記事では、個人経営と法人それぞれのメリットやデメリットについて詳しく解説します。法人化を検討すべきタイミングも紹介しているため、自分の状況に合った事業形態を判断できます。

飲食店を法人化するメリットとは?

法人と一口に言っても数多くの種類がありますが、法人化するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
まずは、法人化するメリットについて見ていきます。

節税対策

個人事業主ではなく、法人化する人の中で最も多い理由の1つとして挙げられるのが節税対策になるということです。
例えば、個人事業主として飲食店の経営を行っていた場合には、経費などを差し引いた利益に所得税が課されるため、最大で45%(住民税を加算すると55%)課税されることになります。
このように、所得税には所得が多くなるほど税率が上がるという「累進税率」が採用されています。
一方、法人税には法人の規模や課税所得に応じて2種類の税金が課せられる「比例税率」が採用されています。
法人税は、所得税のように細かく分類されておらず、上限が25.5%であるため、場合によっては大きな節税効果が期待できるでしょう。

有限責任にできる

個人事業主として事業を行う場合には、会社の経営が悪化した際の仕入れ先への未払金や金融機関などからの借入金などは個人の負債として背負うことになります。
そのため、もし経営が悪化した場合は、住居を売却したり車を売却したりして、これらの返済を行う必要があります。
一方、法人化していた場合には、事業で生じた損失はあくまでも法人の損失として扱われるのが一般的です。
そのため、個人として会社の保証人になっていない限り有限責任にできることが大きなメリットと言えるでしょう。

信用力が上がる

個人事業主として事業を始める場合には、複雑な手続きを必要としないため、誰でも簡単に始めることができます。
しかし、法人化する場合には、事業計画などを立てて、法人登記を行う必要があるため、手間が全く異なります。
逆に言うと、これらの法人化に必要な手続きが疎かになっていると法人登記を受け付けてもらうことができません。
そのため、「法人化できた=信用力がある」と判断されるため、金融機関などからの融資を受けやすくなるでしょう。

飲食店を開業するなら個人事業主と法人のどちらがよい?

飲食店を開業する際、個人事業主と法人のどちらを選ぶべきかは、想定する売上規模や今後の店舗展開の計画によって大きく変わります。それぞれの事業形態の違いや向いているケースについて詳しく解説します。

個人事業主と法人の違いを比較表で解説

小さく手堅く始めるなら個人事業主、将来的に大きく事業を展開するなら法人が適しています。それぞれの形態には設立費用や税金、社会保険などの面で明確な違いが存在します。

比較項目個人事業主法人
開業費用不要株式会社で約20万円から25万円
開業手続き税務署へ開業届を提出定款認証や法務局への登記が必要
税金所得税は累進課税法人税が適用される
社会保険従業員5人未満なら加入義務なし社長1人でも加入義務あり
信用力・資金調達法人に比べると不利になりやすい融資審査や契約で有利に働きやすい

個人事業主は設立費用が不要であり、税務署へ開業届を提出するだけでスムーズに事業を始められます。対して法人の場合は、株式会社を設立する際に約20万円から25万円程度の初期費用がかかります。

また、法人は定款の認証や法務局への登記といった手続きが求められるため、開業までに時間を要します。税金計算も異なり、個人事業主の所得税は利益が増えるほど税率が上がる累進課税です。

一方、法人には法人税が適用されるため、一定水準以上の利益が出た場合は税負担が軽減される仕組みとなっています。社会保険の扱いについても、個人事業主は従業員が5人未満なら加入義務がありません。

しかし法人は、社長1人だけの経営であっても、健康保険や厚生年金などの社会保険への加入が義務付けられます。信用力や資金調達の面では、公的な登記がある法人の方が有利に働きます。

金融機関からの融資審査や取引先との契約において、法人は社会的信用を得やすくなります。結果として、多額の運転資金や設備資金のスムーズな調達が可能です。

まずは小規模な店舗で初期費用を抑えたいなら、個人事業主としてのスタートをおすすめします。将来的に多店舗展開を目指す場合は法人を選びます。事業規模に応じて適した形態を検討してください。

個人事業主が向いているケース

個人事業主での飲食店開業は、事業規模が小さく、コストや手間を抑えたい場合に向いています。具体的には以下の3つのケースに当てはまる方に適しています。

第一に、オーナーが1人で経営するケースです。個人の場合、法人のように複雑な会計処理が不要であり、日々の経理作業を比較的シンプルに進めることができます。さらに、利益が少ないうちは所得税の税率が低く抑えられるため、税制面での負担を軽減できる点が大きな魅力となります。社会保険料の負担が少ないことも見逃せないポイントです。

第二に、地域密着型の小規模店舗で開業するケースです。将来的に立地や業態を変更する可能性を視野に入れている場合、個人事業主のほうが撤退や移転を迅速に行えます。法人のように解散の登記や清算手続きが求められないため、テスト的に小規模な出店を行う際のリスクを低減することが可能です。

第三に、開業初期で各種手続きの手間を省きたいケースです。法人設立には定款の作成や登記手続きが必要となり、数万円から数十万円の設立費用が発生します。一方で、個人事業主なら税務署へ開業届などの必要書類を提出するだけで手続きが完了します。余計な時間と資金を使わずに、店舗のコンセプト作りやメニュー開発に集中できる環境が整います。

出店計画や想定する店舗規模に照らし合わせて、まずはリスクを抑えたスタートを切るか検討を進めてみてください。まずは開業届の作成など、身近な手続きから情報収集を始めることをおすすめします。

個人事業主が向いているケース理由
オーナー1人で経営する会計処理が比較的シンプルで、利益が少ないうちは税負担を抑えやすい
地域密着型の小規模店舗を開く撤退や移転を迅速に行いやすく、小規模出店のリスクを低減できる
開業初期の手間を省きたい税務署へ開業届などを提出するだけで手続きが完了する
初期費用を抑えたい法人設立のような数万円から数十万円の設立費用がかからない

法人が向いているケース

将来的な事業規模の拡大を見据えている場合は法人が向いています。具体的には、一定水準以上の利益が出ている状況や、事業展開の計画などが判断の目安になります。法人の設立が適している具体的な要素について解説します。

店舗の利益が600万円から800万円を超えている状態であれば、法人化のメリットが大きくなります。個人の所得税は累進課税をとっており、利益が増えるほど税率が高くなります。一方で法人税率は一定であり、所得税の最高税率よりも低く設定されています。この水準を超えると法人のほうが税負担を抑えやすくなります。

正社員などの従業員を継続的に雇用する場合も、法人化を検討するタイミングになります。法人は社会保険への加入が義務付けられるため、採用活動において求職者に安心感を与えられます。福利厚生が充実している状態は、優秀な人材を確保しやすくなるだけでなく、従業員の定着率向上にも直結します。

2店舗目以降の多店舗展開を視野に入れている場合も、法人が適しています。新しい店舗の出店には多額の初期費用が必要になります。法人は個人よりも社会的信用が高く、金融機関からの融資審査で有利になりやすい特徴があります。不動産契約でも法人格が求められる場面が多く、スムーズに事業を拡大できます。

法人が向いているケース理由
利益が600万円から800万円を超えている法人化によって税負担を抑えやすくなる
正社員などを継続的に雇用する社会保険の整備により、採用活動で安心感を与えやすい
2店舗目以降の展開を考えている金融機関からの融資審査や不動産契約で有利に働きやすい
多額の運転資金や設備資金が必要法人は社会的信用を得やすく、資金調達の選択肢が広がる

法人化するデメリットとは?

法人化することで、節税効果がある、信用力が上がる、有限責任にできるなどのメリットがありましたが、デメリットはあるのでしょうか?
法人化するデメリットについて見ていきましょう。

赤字の場合でも税金の支払いがある

個人事業主の場合は、赤字経営になっていると、課税対象である利益がない状態であるため、所得税や住民税などの課税が行われません。
しかし、法人に対して課される法人住民税は赤字であっても課されます。
そのため、赤字で経営が厳しい状態でも課税されてしまうことがデメリットと言えるでしょう。

社会保険の加入が必須になる

個人事業主の場合には、5名以上雇用していないのであれば、健康保険や厚生年金の加入は強制ではありません。
しかし、法人化すると、雇用人数の多い少ないに関係なく強制加入になるので注意が必要です。
社会保険に加入するということは、健康保険や厚生年金の保険料を会社と従業員で折半をします。
法人化によって社会保険加入による手厚いサポートを受けることができる一方で、人件費の負担が大きくなるため、経営が厳しい場合にはさらに大きな影響を受けることになるでしょう。

交際費を全額損金にできない

個人事業主の場合には、手掛けている事業と関連しているのであれば、交際費として全額を損金として経費に計上することが可能です。
しかし、法人の場合には、飲食代のみを50%まで損金として経費に計上できるといったように上限が設けられています。
法人化によって経費として計上できる項目が増える一方、個人事業で多額の交際費を使用していた場合や資本金が1億円超の個人事業主が法人化する場合には、損金に算入できる交際費が減少することがデメリットと言えるでしょう。
また、法人化することで、これらの経費などの会計処理が個人事業主よりも複雑になります。
これまでは、個人で確定申告を行って無駄な支出を抑えていた人でも、法人化した場合には税理士に確定申告を依頼することが多くなるため、会計処理にかかるコストが以前よりも多くなってしまうこともデメリットと言えるでしょう。

設立費用や維持費用が発生する

法人化を選択した場合、個人事業主とは異なり、設立時の初期費用と毎年の維持費用が確実に発生します。会社設立の手続きには、株式会社で約20万円から25万円、合同会社でも約6万円から10万円の法定費用がかかります。また、事業が赤字であっても、法人住民税の均等割として最低でも年間7万円の法人税の納付が必要です。個人事業主であれば赤字の年に所得税は発生しないため、この点は明確な維持費の増加といえます。

さらに、日々の業務における運用コストの増加も見逃せません。法人は社会保険への加入が義務付けられるため、従業員がいなくても代表者自身の保険料負担が発生します。決算手続きも複雑になることから、税理士や社会保険労務士などの専門家への報酬も高額になるのが一般的です。開業前に事業計画を立て、これらの負担に見合うだけの収益を確保できるか慎重に試算して事業形態を選びます。

会計や税務管理が複雑になる

飲食店を法人化すると、個人事業主のときよりも会計処理や税務管理が格段に複雑になる点がデメリットです。まず知っておきたいのは、法人で得た利益は個人のものとして自由に引き出すことができない点です。経営者自身への支払いは、役員報酬としてあらかじめ定めた一定額を毎月受け取る形になります。また、この役員報酬の金額は、原則として事業年度の途中で自由に変更できないという利益配分に関する制限が設けられています。

加えて、税務署や自治体などへの行政手続きが大幅に増える点にも注意が必要です。従業員を雇う場合はもちろん、社長一人だけの会社であっても社会保険への加入義務が発生し、保険料の計算や納付手続きの手間が増加します。さらに、法人の決算申告は個人事業主の確定申告よりも専門的で高度な知識が求められます。そのため、正確な処理を行うために税理士へ依頼するケースが多くなり、税理士報酬などの維持費用が毎年発生します。

飲食店はいつ法人化するべき?

法人化を検討するタイミング確認するポイント法人化する理由
利益が600万円から800万円を超えたとき事業利益が安定しているか税負担を抑えやすくなる
売上収入が1,000万円を超えたとき消費税の納税義務が発生する見込みか免税期間を設けられる可能性がある
従業員を雇用し始めたとき社会保険の加入が必要か採用力や定着率の向上につながる
2店舗目の出店を検討しているとき多店舗展開に向けた資金調達が必要か信用力が高まり、融資を受けやすくなる

利益が600万〜800万円を超えたとき

飲食店を法人化するタイミングは、収益状況から総合的に判断します。利益が600万円から800万円を安定して超えた段階で、税負担の最適化を見据えて検討を始めます。現在の店舗が法人化に適した状態かを見極めるため、以下の4項目で状況を点検していきます。

事業利益が600万円から800万円を超えているかを確認します。この水準に達すると、所得税の累進課税よりも法人税の税率の方が有利になる場合が多くなります。年間売上が1,000万円を超過しているかも重要な指標です。売上が1,000万円を超えると消費税の納税義務が生じますが、新設法人なら免税期間を設ける手立てがあります。

正社員の雇用を増やしているかも判断材料になります。法人は社会保険の加入が必須ですが、労働環境が整うことで優秀な人材の確保に直結します。2店舗目の出店を予定している場合は、法人格を取得して信用力を高めることで、多店舗展開に向けた資金調達の選択肢が広がります。

売上収入が1,000万円を超えたとき

飲食店の売上が年間1,000万円を超えた時期は、法人化を検討する重要な区切りとなります。個人事業主は売上が1,000万円を超えると、2年後から消費税の納税義務が発生するためです。ここで法人を設立すれば、最大でさらに2年間、消費税の納税が免除される可能性があります。

ただし、手元に残る金額や事業計画も踏まえてタイミングを判断します。年間の利益が500万円から800万円を継続して超えているかを確認します。年間の売上が1,000万円を超え、消費税の納税義務が発生する見込みかも重要です。社会保険の加入が必要となる従業員を新しく雇用し始める予定があるかも考慮します。

2店舗目の出店など、多店舗展開に向けた資金調達を検討しているかも判断基準になります。利益が少ない段階で法人化すると、社会保険料や法人住民税などの固定費が経営を圧迫します。これらの要素を照らし合わせ、自身の店舗状況に合わせた事業形態を選びます。

従業員を雇用し始めたとき

従業員の雇用を開始した段階は、法人化を検討する重要な目安です。法人化して社会保険を完備すると求職者からの信頼が高まり、優秀な人材を採用しやすくなります。従業員の定着率を上げるためにも有効な選択です。法人化のタイミングを総合的に判断する基準として、以下の項目を確認します。

年間利益が600万円から800万円を超えているかを確認します。この水準に達すると、所得税よりも法人税の税率が低くなる可能性が高まります。年間売上が1,000万円を超えているかも重要です。個人事業主としての消費税免税要件から外れる際に法人化すれば、再び免税期間を得られる場合があります。

従業員を雇用し始めているかも判断材料になります。社会保険の加入義務は生じますが、福利厚生の充実は長期的な人材確保に直結します。多店舗展開を検討している場合は、2店舗目以降の出店において、金融機関からの資金調達がしやすい法人格が有利に働きます。

2店舗目の出店を検討しているとき

2店舗目の出店を検討する時期は、事業規模が拡大するターニングポイントです。多店舗展開には多額の資金調達が必要になります。法人化によって社会的信用が高まると、金融機関からの融資を受けやすくなります。法人化を判断する観点として、以下の項目を確認して進めます。

1つ目の観点は利益です。年間利益が600万円から800万円を超えているかを確認します。この水準では法人税率の適用が有利になります。2つ目の観点は売上です。年間売上高が1,000万円を超えているかを確認します。消費税の納税義務が発生する段階での法人成りは、一定の節税効果が見込めます。

3つ目の観点は従業員数です。複数の従業員を雇用し、店舗を任せる体制ができているかを判断軸とします。社会保険の整備など、採用面の強化にもつながります。4つ目の観点は店舗展開です。今後3店舗以上の出店を視野に入れているかを見極めます。複数の要件を満たす場合、法人への移行を検討します。

検討するには、まずは会社形態ごとの違いを知ることから

会社には4つの形態がありますが、実際には、ほとんど株式会社か合同会社の形態が選択されています。
合名会社や合資会社は、その知名度が低いだけでなく、無限責任社員の責任が重く、ほとんど個人事業主の集まりと変わらないためです。
これら4種類の会社の違いを比較してみます。

株式会社

株式会社は資本金を株式の形で集めて経営資金として運用する形態を持つ会社のことです。出資者はすべて有限責任となります。
ちなみに株式会社における出資者のことを株主といいます。
また、出資者とは別で会社の運営をする「取締役」が選任されますが、株主総会にて株主の議決権を行使することで、会社の経営に大きな影響力を持ちます。

まとめ
■出資:金銭その他財産
■出資者:1人以上
■会社の代表者:代表取締役
■定款の認証:必要

合同会社

合同会社では株式会社と同様に出資者が出資した額を限度として責任を負います。
最低限の設立費用に株式会社が約20万円必要なのに対し、合同会社だと約6万円と安く、株主総会や決算公告の必要がないことや、役員に任期がないことなど、事務作業や手続きのコストが株式会社に比べ軽くなります。
また出資者全員で会社の重要事項を決定しますが、定款にて別の定めをすればこの限りではありません。

まとめ
■出資:金銭その他財産
■出資者:1人以上
■会社の代表者:原則は各出資者
■定款の認証:不要

合資会社

合資会社とは出資した額を限度として責任を負う有限責任者と、出資した額に関係なく無限に責任を負う無限責任者の2種類の出資者から構成される会社です。
株式・合同会社の社員は有限責任のみを負うため、責任の重さに関して大きな違いがあります。
また合資会社の出資者は会社の運営と代表権を有します。
※定款にて別の定めをすればこの限りではありません。

まとめ
■出資:(有限責任社員)金銭その他財産
(無限責任社員)金銭その他財産・労務信用も可能
■出資者:有限及び無限責任者を各1名以上
■会社の代表者:原則は各出資者
■定款の認証:不要

合名会社

合名会社とは無限責任の社員だけで構成され、原則として社員全員が会社の代表者となります。いわば個人事業者の集まりのようなもの。万一のときは会社の借金すべてに社員全員が連帯責任を負います。よって家族や親しい知人など、関係の深い少人数で始める事業に適した会社です。

まとめ
■出資:金銭その他財産、労務信用
■出資者:1人以上
■会社の代表者:原則は各出資者
■定款の認証:不要

飲食店オーナーの年収・利益率の目安

飲食店を開業するにあたり、将来的に見込める収入事情は、業態や店舗の規模によって大きく変動します。具体的な目安として、飲食店オーナーの平均年収の相場と、健全な経営の指標となる利益率を順番に解説します。

個人経営飲食店の平均年収

個人経営における飲食店の平均年収は、店舗の規模や業態によって数百万円から数千万円にわたります。経営者の手腕や立地条件で売上は大きく変動するため、一律の金額を提示するのは困難なのが実情です。小規模なカフェや定食屋であれば年収300万円から500万円程度に落ち着くことが多い一方、多店舗展開や客単価の高い業態を成功させれば年収1,000万円を超えるケースも珍しくありません。

年収を算出するうえで重要な指標となるのが利益率です。飲食店の利益率は一般的に10パーセントから15パーセント程度が目安とされます。たとえば月商300万円の店舗を運営している場合、利益率を10パーセントと仮定すると月の利益は30万円となり、年間の利益は360万円です。食材費や人件費などの経費をどれだけ抑え、効率的に利益を残せるかが経営者の収入に直結します。

事業が軌道に乗り利益が増えてきた段階で、法人化の検討が必要になります。個人の所得税は累進課税制度であるため、利益が大きくなるほど税負担が増加する仕組みです。具体的には、年間の利益が600万円から800万円を超えたタイミングが法人化ラインの目安となります。この水準に達した時点で法人税の税率と比較し、税負担を軽減できる事業形態へ切り替える準備を進めます。

飲食店の利益率の目安

飲食店の営業利益率は、10パーセントから15パーセント程度を目安に設定するのが理想的です。個人経営から法人化を検討するラインは、年間利益が600万円から800万円に達したタイミングがひとつの基準になります。

売上から原価や人件費、家賃などを差し引いて手元に残る利益が、この10パーセントから15パーセントの範囲に収まるかをまずは確認します。例えば、月の売上が300万円であれば、30万円から45万円の利益が残る計算です。利益率がこれを下回る場合は、食材ロスを見直したり、経費の無駄がないかを点検したりする必要があります。

利益が600万円から800万円の法人化ラインに到達するには、ある程度の売上規模が求められます。利益率を15パーセントと仮定した場合、年間で4,000万円から5,300万円程度の売上が必要です。この規模に達すると、個人事業主のままでは税負担が重くなることが多くなります。手元に残る利益額が増えてきた段階で、法人化のシミュレーションを進めます。

事業計画を立てる際は、適切な利益率を維持できているかを定期的にチェックしましょう。利益が順調に伸びて600万円を超えそうな時点で、法人化による節税効果を比較します。ご自身の店舗規模や収益状況と照らし合わせながら、事業形態の切り替えを見極めていくことができます。

飲食店を法人化する流れと注意点

ここでは、飲食店を法人化する具体的な流れと押さえておくべき注意点について解説します。定款の作成や登記申請など、設立には法務局や年金事務所での手続きが伴います。全体のスケジュールを事前に把握して計画的に進めます。

法人化する際に必要な手続き

飲食店の法人化に必要な手続きは、大きく5つのステップで完了します。具体的な流れは、基本事項の決定から始まり、定款の作成、資本金の準備、登記申請、各種届出という手順です。

手順内容具体的に行うこと
STEP1基本事項の決定商号、事業目的、本店所在地、資本金の額などを決める
STEP2定款の作成と認証会社の基本ルールを記載し、株式会社では公証役場で認証を受ける
STEP3資本金の払い込み発起人の個人口座に資本金を振り込み、入金履歴を証明する書類を準備する
STEP4設立登記申請定款や払込証明書などを揃え、管轄の法務局へ提出する
STEP5各機関への届出税務署や年金事務所へ届出を行い、飲食店営業許可も取り直す

1つ目のステップは、基本事項の決定です。会社名となる商号や事業目的、本店所在地、資本金の額などをあらかじめ決めておきます。この段階で会社用の実印も作成しておくと、以降の手続きがスムーズになります。

2つ目は、定款の作成と認証です。定款には会社の基本的な事業目的やルールを記載します。株式会社を設立する場合は、作成した定款に対して公証役場で認証を受けます。

3つ目は、資本金の払い込みです。発起人の個人口座を用意し、資本金として設定した金額を振り込みます。通帳のコピーなど、入金履歴を証明できる書類を登記申請に向けて準備します。

4つ目は、法務局への設立登記申請です。定款や資本金の払込証明書など、必要な書類を揃えて管轄の法務局へ提出します。登記申請を行った日が会社の設立日として扱われます。

5つ目は、設立後に行う各機関への届出です。管轄の税務署へ法人設立届出書や青色申告承認申請書を提出します。また、年金事務所で社会保険の新規適用届を提出するなど、労務関連の手続きも必要です。飲食店ならではの注意点として、営業許可の切り替えが挙げられます。個人事業主時代に取得した保健所の飲食店営業許可は、法人へ引き継げないため、新たに許可を取り直す手続きを進めます。

法人化する際の注意点

飲食店を法人化する際の注意点は、一時的な設立費用のほか、継続してかかる維持コストや事務作業の増加をあらかじめ把握しておくことです。事業形態を変更した後に資金繰りで苦労しないよう、具体的には以下の点に留意して検討を進めます。

株式会社の設立には約25万円、合同会社でも約10万円の実費がかかります。さらに、赤字決算の年度であっても毎年約7万円の法人住民税均等割を納める義務が生じるため、手元資金の管理が求められます。法人化すると、社長1人だけの会社であっても社会保険への加入が必須となります。健康保険と厚生年金保険の保険料は会社と個人で折半するため、会社側の法定福利費という新たな支出が増加します。

法人の決算申告は、個人事業主の確定申告と比較して高度な専門知識を要します。自力での処理が難しく税理士に依頼するケースが多いため、年間数十万円規模の税理士報酬が固定費として追加されます。個人の時とは異なり、事業の売上を生活費として自由に引き出すことはできなくなります。役員報酬として毎月定額を受け取るルールとなり、事業年度の途中で金額を変更できない点にも注意が必要です。

登記手続きへ進む前に、これらのランニングコストや制約に見合うだけの十分な売上と利益が見込めるかを、事前のシミュレーションを通じて確かめるステップを踏んでください。

飲食店の個人経営に関するよくある質問

飲食店の事業形態を選ぶにあたり、多くの方が直面する疑問や不安があります。社会保険の加入義務やインボイス制度の影響など、飲食店の個人経営に関するよくある質問とその回答を順番に解説します。

法人化すると自分1人でも社会保険に加入しなければならない?

Q:法人化すると自分1人だけでも社会保険に加入しなければならないのでしょうか?

A:原則として加入義務があります。法人の場合、社長1人だけであっても強制適用事業所となり、健康保険と厚生年金保険への加入が求められます。
個人事業主であれば従業員が5人未満なら任意加入ですが、法人化により要件が変わります。ただし、役員報酬がゼロの場合は加入対象外となるケースもあります。事業計画と役員報酬の金額を踏まえて、管轄の年金事務所へ手続きを相談します。

夫婦2人で経営する飲食店は法人化すると得になる?

Q:夫婦2人で経営する飲食店は、法人化すると得になりますか?

A:一定の所得を超えている場合は、法人化によって税金面で得になる可能性が高いです。個人事業主の所得税は利益に応じて税率が上がる累進課税ですが、法人は一定の割合に抑えられます。

具体的には、利益が800万円を超えるタイミングで法人化を選ぶケースが一般的です。夫婦それぞれに役員報酬を支払うことで所得を分散させ、世帯全体の税負担を軽減する効果が見込めます。

アルバイト中心の飲食店でも、法人化すると労務管理に変更がありますか

Q:アルバイト中心の飲食店でも、法人化すると労務管理に変更は生じますか?

A:法人化に伴い労務管理の体制整備がより一層重要になります。個人経営とは異なり、法人は社会保険の強制適用事業所となるからです。労働時間や出勤日数の加入条件を満たすアルバイト従業員がいれば、全員の手続きを進めます。

加えて、労働時間の正確な把握や給与計算の厳密化、労働者名簿や賃金台帳といった法定帳簿の作成業務も求められます。事務負担が大きく増加するため、法人設立前に専門家への相談や労務管理システムの導入を検討しておきます。

インボイス制度と法人化は関係ある?

Q:インボイス制度を機に法人化する飲食店も増えています。インボイス制度に合わせて法人化した場合、どのような準備が必要ですか?

A:法人として適格請求書発行事業者の新規登録申請が必要です。個人事業主時代に取得した登録番号は法人に引き継げません。そのため、法人設立後に改めて税務署へ申請を行います。

また、レジシステムや領収書のフォーマット変更も速やかに進めます。新しい法人名と取得した登録番号を正確に印字できるよう、機器の改修や設定の見直しを行います。

まとめ|飲食店経営は自分に合った形態を選ぶことが成功への第一歩

飲食店を開業する際は、店舗の規模や今後の利益見込みに合わせて慎重に事業形態を選びます。目安として、利益が600万円から800万円を超えるタイミングが、法人化を検討する基準になります。

どちらの形態が適しているかは、今後の店舗展開や従業員の雇用計画によっても大きく変わります。事業計画に迷いが生じた場合は、税理士や専門機関の開業サポートを活用して早めに相談を進めます。

専門的な視点を取り入れることで、税金や社会保険の不安を解消し、安定した経営基盤を作ることが可能です。まずは無料の個別相談や資料請求を通じて、店舗立ち上げに向けた具体的な準備を始めましょう。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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