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【比較】個人事業主と法人の違いとは?メリットやデメリットを解説!

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起業を志す人が最初に直面する問題は、個人事業主と法人のどちらを選ぶかです。多くの場合、開業時は個人事業主からのスタートを選択します。しかし、事業内容や想定売上によっては法人設立が最適なこともあるのです。

本記事では、個人事業主と法人の違いや、それぞれのメリット、デメリットを紹介しています。最適な形で事業をスタートしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

個人事業主とは

個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営む人の総称です。個人事業主になる手続きは所轄の税務署に「開業届」を提出するのみ。「開業届を提出していること」以外に明確な定義はないため、専業に限らず、副業で個人事業主になるケースもあります。

また、個人事業主は「自営業」や「フリーランス」と呼ばれることもありますが、呼称が異なるだけで実態に大きな違いはありません。一般的に、自営業とフリーランスの呼称は以下の個人事業主に対して用いられます。

自営業店舗を経営する個人事業主
フリーランス個人で仕事を請け負う個人事業主

「個人事業主」の区分に「自営業」や「フリーランス」のような働き方があると考えましょう。

個人事業主とは

法人とは

法人とは、自然人(個人)とは別に人格を認められた組織の総称です。組織自体に権利が与えられるため、法人名義であらゆる契約や取引を行うことができます。

代表的な法人の例は以下の通りです。

・公法人(国や自治体)
・私法人(会社や学校)
・一般社団法人(特定の目的で設立される非営利組織)

事業を営むうえで一般的な法人組織は「株式会社」や「合同会社」です。この2つは私法人に分類され、2022年現在、日本には400万社以上の会社が存在しています。

個人事業主と法人の違いは?

個人事業主法人(株式会社の場合)
設立に必要な手続き開業届の提出法人登記(定款の作成、資本金の準備など)
設立にかかる費用なし約25万円
納める税金の種類・所得税
・住民税
・消費税(課税事業者の場合)
・個人事業税
・法人税
・法人住民税
・消費税
・法人事業税
社会的信用度の違い低い(法人と比べて信用度は劣る)高い(個人事業主よりも取引や融資で有利に)
会計・申告制度の違い確定申告を提出法人決算書を提出
経費の違い事業に必要なものは経費として認められる個人事業主よりも経費として認められる幅が広い
赤字の扱い最大3年間繰り越し最大10年間繰り越し

個人事業主と法人は、手続き面や税金面、経費の範囲などでさまざまな違いがあります。もっとも差異が大きいとされるのは、以下の4点です。

・開業手続き・費用
・税金
・経費の範囲
・社会的信用度

それぞれの項目について詳しく解説していきます。

開業手続き・費用の違い

個人事業主法人(株式会社の場合)
主な提出書類・個人事業の開業・廃業等届出書
・青色申告承認申請書
・定款(ていかん)
・印鑑届出書
・設立登記書類
・登録免許税納付用台紙
・印鑑証明書
・登記事項をまとめたデータまたは書類
設立費用の内訳設立費用なし・定款認証:5万円
・収入印紙:4万円(電子認証の場合は不要)
・登録免許税:15万円~
開業までの期間即日1~2週間前後

表からわかるように、開業手続きは個人事業主のほうが簡単です。

個人事業主の開業手続きは「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出するだけで完了します。青色申告を希望する場合や、従業員に給与を支払う場合はほかの書類を提出するものの、それでも数枚程度。開業時に費用はかからず、書類を提出すれば即日開業できます。

反対に、法人設立には多くの提出書類が必要です。初めて法人を設立する方は、最短でも1~2週間程度の期間を見積もる必要があるでしょう。また、株式会社を設立する場合は20万円前後の費用がかかります。合同会社であれば10万円前後の設立費用に収まりますが、いずれにせよ初期投資ゼロで開業はできません。

参考:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続

税金の違い

個人事業主と法人の税金で大きな違いが生まれるのは「所得税」です。法人の場合は「法人税」の名称で課税されます。

個人事業主の所得税率は以下の通りです。

課税される所得金額税率 控除額
195万円以下5%0円
195万円超 330万円以下10%97,500円
330万円超 695万円以下20%427,500円
695万円超 900万円以下900万円超 1,800万円以下23%636,000円
900万円超 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超 4,000万円以下40%2,796,000円
4000万円超45%4,796,000円

引用:所得税の税率|国税庁
所得税は、収入から経費を引いた所得に対してかかる税金です。所得税には、所得額に応じて税率が上がる「累進課税」が採用されています。注意したいのが、課税金額によって上がる税率は「段階的」であるということ。累進課税が適用されるのは、あくまで超過した金額に対してです。3,299,000円までは10%、それ以降の所得には20%のように計算されます。つまり、335万円の課税所得があった場合、330万円×10%+5万円×20%=34万円が所得税になります。

対して、株式会社などの普通法人にかかる法人税率は以下の通りです。
資本金税率
1億円以下・15~19%(所得800万円以下)
・23.2%(所得800万円以上)
1億円以上一律23.2%

参照:法人税の税率|国税庁
資本金が少ない中小企業では、法人税率が20%以下に収まります。累進課税の仕組みを考慮すると、年間900~1,000万円の所得が発生する場合は、所得税よりも法人税を支払うほうがお得になるでしょう。

また、法人は「会社」と「個人(役員報酬)」に所得を分散できます。税額をコントロールしやすくなるため、売上が大きくなる場合は法人を設立するのが得策です。

経費の範囲の違い

前提として、事業に関する支出は、個人事業主・法人問わず経費として認められます。
しかし、一部法人のみ計上できる経費も存在します。代表的なものは、以下の通りです。

個人事業主法人
代表者の給与経費にならない「役員報酬」として計上できる
生命保険経費にならない(控除のみ)経費になる(受取人が会社の場合)
退職金経費にならない適正額であれば経費になる

そのほかの経費範囲に大きな違いはありません。そもそも業種によって経費として認められる範囲が異なるため、一概にどちらが良いとは比較できないのです。「少しでも節税範囲を広げたい」という方は、法人設立を視野に入れてみましょう。

社会的信用度の違い

フリーランスが増加している昨今、取引するうえで、「個人事業主だから信用できない」と判断されることは少なくなっています。しかし、法人と比較した場合、個人事業主の社会的信用度が劣るのは事実です。大きな取引を行う際は、法人のほうがスムーズに契約を進められるでしょう。

資金調達時においては法人に大きく軍配が上がります。個人事業主でも、銀行や日本政策金融公庫から融資を受けることは可能ですが、多額の資金調達をする場合、金融機関は事業とプライベートのお金が混同している個人事業主を慎重に審査する必要があります。その点、代表者と会社のお金がハッキリ分かれている法人は、資金調達の審査が円滑に進められるでしょう。

個人事業主と法人のメリット・デメリットを比較

ここからは、個人事業主と法人のメリット、デメリットを比較していきます。両者の違いを踏まえて、より具体的な利点を把握していきましょう。

個人事業主になるメリット・デメリット

メリットデメリット
・すぐに動き出せる
・開業費用がかからない
・税務処理が法人よりも簡単
・所得が大きいと税負担が大きくなる
・多額の資金調達が難しい
・取引を断られる可能性がある


個人事業主になるもっとも大きいメリットは、動き出しが早くなることです。提出書類や手続きが少なく、思い立ったタイミングですぐ行動に移すことができます。また、複雑な税務処理は必要ないため、小規模のビジネスには個人事業主が向いているでしょう。

一方で、デメリットは累進課税による税負担や、社会的な信用力です。法人と比べて節税範囲が狭い個人事業主は、所得が大きくなると税制面で不利になります。信用力が求められる職種では、法人と比べて取引先の選択肢が狭まる点にも注意が必要です。

総合的に見ると「まずは事業をスタートさせたい!」と考えている方には、個人事業主が向いているでしょう。

法人を設立するメリット・デメリット

メリットデメリット
・取引先の信頼を得やすい
・節税の範囲が広い
・資金調達がしやすい
・赤字でも税金が発生する
・社会保険料の負担が大きくなる
・設立費用がかかる

法人を設立する主なメリットは、社会的な信頼度が高まること、節税範囲が広がることの2点です。特に売上規模が大きい取引でメリットを体感しやすく、事業展開に好影響を及ぼします。

一方で、運営に関する費用負担は個人事業主よりも大きくなります。法人の場合は赤字でも「法人住民税」を支払う必要があるほか、毎月の社会保険料も高額です。設立時も10〜25万円ほどの費用が発生するため、十分な利益を見込める状態で行動に移す必要があります。

設立、運営費用を支払ってもメリットを活かせると感じたら、法人設立を視野に入れてみましょう。

個人事業主か法人か、検討する際のポイント

個人事業主か法人か判断できない、と感じた方のために、検討する際のポイントを紹介していきます。

個人事業主か法人か、検討する際のポイント

事業の内容で決める

個人事業主と法人、どちらでスタートするか迷った際は、事業内容で判断するとスムーズです。事業内容は、主に以下の2種類へ分類されます。


BtoB(企業向けビジネス)企業向けコンサルタントや製造業、建築業の下請けなど
BtoC(個人消費者向けビジネス)サービス業や飲食業など

個人消費者が相手のビジネス(BtoC)を行う場合は、個人事業主としてスタートしても問題ないでしょう。BtoCのビジネスで重視されるのは、製品やサービスの品質です。組織の規模や信頼度が問われる場面は少なく、個人事業主でも比較的スムーズに事業を始められます。

逆に、企業が相手のビジネス(BtoB)を行う場合は、法人として取引するのがおすすめです。法人取引では、サービス内容以前に信用力が重視されます。

取り組みたいビジネスの性質を考慮して、開業形態を検討してみるとよいでしょう。

取引先の規模で決める

すでに見込み客が決まっていれば、取引先の規模で開業形態を判断するのもよいでしょう。取引先に小規模法人が多い場合は、個人事業主でも契約の与信に大きな影響はありません。しかし、取引先が大企業の場合は、法人組織でなければ契約そのものができないこともあります。

取引に信用力が求められるとわかっているのであれば、早い段階で法人を設立するのがおすすめです。

事業展開の方針で決める

スピード感を持って事業を展開したいと考えている場合は、法人設立がおすすめです。事業規模の拡大において、資金調達は必要不可欠。早い段階から法人の決算情報を積み上げることで、将来の資金調達が円滑になります。

反対に、資金調達せず利益の余剰金で事業拡大を考えている場合は、個人事業主として開業するとよいでしょう。スピード感を重視しなければ、必要に応じて法人化しても遅くありません。

個人事業主から法人化する際の注意点

個人事業主から法人化する際は、毎月のランニングコストが増える点に注意しましょう。

特に、従業員を雇用する際は、社会保険料の負担額が大きくなります。仮に月給20万円の社員を雇用した場合、社会保険料の会社負担額は約28,000円。5人雇用しただけで毎月10万円を超える社会保険料が発生します。

毎月の運用コストが増える点は十分に理解したうえで、法人化に踏み切りましょう。

(参考:令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表)

個人事業主と法人は掛け持ちで経営できる?

個人事業主と法人は同時に経営しても問題ありません。ただし、事業内容が被る掛け持ちはNGです。同一の事業内容は経費や売上を簡単に調整できてしまうため、租税回避とみなされます。

個人事業主と法人を同時に経営するとそれぞれの節税メリットが活かせるので、異なる事業を展開している場合は検討してみるとよいでしょう。また、各事業に十分な売上が見込める場合は、法人を分けて経営する選択肢もあります。

まとめ|メリットが大きい形態で開業しましょう

個人事業主と法人には、それぞれ異なるメリット、デメリットがあります。リスクを抑えて小規模に事業展開したい方は、個人事業主からスタートするのがおすすめです。反対に、初めから大きな取引が予想される場合は、法人設立を視野に入れるとよいでしょう。

canaeruでは無料の開業相談を実施しているので、「どちらで起業するのが適切か判断できない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。経験豊富な専門家が、全力でアドバイスいたします。

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この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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