開業を考えている方は必ず耳にしたことがある事業計画書。事業の内容や方針、売上予測などをまとめたものですが、実際に何が書かれているのか、どんなことを書くべきなのか、そもそも開業に必要なものなのか、多くの疑問があると思います。
今回の記事では事業計画書の概要、書き方、確認すべきポイントを中心に解説します。具体的な作成例も記載しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
- 事業計画書とは?目的は何?
- 事業計画書を作成するメリットとは?
- 事業計画書は個人事業主でも必要?
- 事業計画書とビジネスプランの違いは?
- 事業計画書の記載事項と書き方・作成例
- ①創業の動機
- ②経営者の略歴
- ③取扱商品・サービス
- ④取引先・取引関係等
- ⑤従業員
- ⑥借入の状況
- ⑦必要な資金と調達方法
- ⑧事業の見通し
- ⑨自由記述欄
- 事業計画書の書式テンプレート・フォーマット
- 【用途別】より質を高めるおすすめアレンジ法
- 融資を受けるなら
- 補助金や助成金を受けるなら
- ベンチャーキャピタルに申請するなら
- 事業計画書作成に関する注意点
- 事業計画書の枚数について
- 補足資料の作成ポイント
- 図やグラフを活用する
- 6W2Hのフレームワークを使う
- 事業計画書作成を手書きかパソコンか決める
- 事業計画書の作成に悩む方はcanaeruで無料相談!
- まとめ
事業計画書とは?目的は何?
事業計画書とは、新たな事業やプロジェクトを開始する際に方針や戦略をまとめた計画書です。会社設立や新規事業を開始するタイミングや、融資や出資が必要な際に準備します。
自己資金のみで開業する場合は必ずしも準備しなければならない書類ではありませんが、事業計画書を作成することで事業の方向性や目標を明確にし、経営陣や従業員は一貫したビジョンのもとで業務を遂行することができます。
事業計画書を作成するメリットとは?
事業計画書を作成するメリットは主に次の3つです。
・事業内容の整理
・事業計画を他者と共有できる
・融資の審査を有利にできる
1つ目は、事業内容を整理することです。事業の方向性や目標を明確にしておくことで、スムーズな運営のための有効な資料となります。
2つ目はビジネスパートナーと事業計画を共有できることです。事業計画書を用意しておくことで事業内容をスムーズに共有し、信頼を築きやすくなります。協力関係を構築するためには、事業計画書を活用して事業の透明性を高めることが効果的です。
そして3つ目は、融資の審査を有利に進められることです。事業計画書は事業のコンセプトから資金計画に至るまで、必要な基本情報を網羅するため、融資の審査担当者に事業の概要やビジョン、財務計画などが具体的に伝わり、融資の価値を判断してもらいやすくなります。
また、投資を受ける際にも、投資家が投資の妥当性を判断するために重要な情報源となるため、事前に作成しておきましょう。
事業計画書は個人事業主でも必要?
個人事業主として開業するにあたり、事業計画書は必須ではありません。しかし、事業計画書は具体的な売上予測の立案や実現可能性の検証、経営戦略の策定、採算分析などが記されており、事業が持続的に成長するための重要な道筋を示すものです。
開業後も経営の指標となるため、事前に事業計画書を作り込んでおくことは非常に重要と言えるでしょう。
事業計画書とビジネスプランの違いは?
事業計画書とビジネスプランは、事業を立ち上げる際に使用される文書ですが、それぞれ異なる目的や性質を持っています。
事業計画書は事業を始める際の提案書であり、事業のアイデアや目標、市場調査結果、製品やサービスの説明、販売計画、収益予測、資金調達方法などを含みます。主に金融機関や投資家などの資金提供者に対してビジネスの魅力を伝えるために使用されます。
一方で、ビジネスプランは事業のビジョン、ミッション、戦略、市場分析、競合分析、運営計画、財務計画、リスク管理などを整理したものです。社内での意思決定や経営計画策定のために使用されることが多い傾向にあります。
事業計画書は主に外部のステークホルダーに対してビジネスの魅力を伝えるための文書です。それに対し、ビジネスプランは内部の経営陣や従業員との共有、運営に活用されます。
事業計画書の記載事項と書き方・作成例
ここからは事業計画書の書き方を説明します。日本政策金融公庫のホームページでダウンロードできる事業計画書(創業計画書)を参考に、今回はカフェの開業を例にとって各項目で書くべきポイントを押さえていきましょう。
①創業の動機
まずは、カフェ開業の動機を具体的に述べます。コンセプトは昭和・平成レトロとし、動機とともにコンセプト設計の理由を説明します。この動機や理由説明は、事業のビジョンやミッションを明確にする重要なステップです。どのような狙いや思いでレトロカフェの開業を志したのかを自身の経歴や背景を踏まえながら説明できると説得力のある動機となるでしょう。
②経営者の略歴
この項目では、経営者の経歴を簡潔に紹介しますが、経歴をただ列挙するのではなく、カフェ業界に関連する経験を強調することができればなお良いでしょう。創業の動機やそれに至る経緯と略歴との関連性を明確に示すことで、経営者のカフェ事業への情熱が伝わりやすくなります。
③取扱商品・サービス
商品やサービスの詳細な説明を通じて、当カフェの独自性やコンセプト、そしてその背後にある経営戦略をアピールします。一杯のコーヒーの価格から豆の厳選に至るまで、細部にわたる情報を丁寧に記載。さらに、コンセプトとなる昭和・平成レトロカフェのメインのターゲットとなる客層にも焦点を当て、目指したい店舗作りをより具体的にしていきます。
④取引先・取引関係等
販売先と仕入先を住所まで詳細に記入します。カフェを運営する場合、販売先は一般の顧客であり、仕入先はコーヒー豆の卸売業者やフードメニューの食材を提供する卸売業者です。金融機関からの融資を受ける際には、契約書や注文書を事業計画書に添付して提出することが重要です。(※日本政策金融公庫の場合、契約前予定業者でも構わない場合もあります)
これにより、販売および仕入条件の明確化が図られ、取引の透明性が高まります。
⑤従業員
雇用する従業員の人数を記入します。従業員の内訳には、家族従業員やパート・アルバイトも含めて記入してください。
⑥借入の状況
各金融機関からの借入額を明示する項目です。下記の『事業の見通し』で仮計算した利益をもとに年間返済の計画を立てましょう。借入がなければ記載は不要です。
⑦必要な資金と調達方法
この項目では開業に必要な資金とその調達方法について詳細に説明します。必要な資金には、店舗の工事費、厨房設備や什器の導入費、物件取得費などが含まれます。さらに、運転資金としての仕入れ費やその他の経費も考慮しなければなりません。資金の調達方法については、自己資金額や各金融機関からの借入額を明示します。
⑧事業の見通し
この項目では開業当初と1年後(または数年後)の売上高、経費、および利益を詳細に記載します。さらに、これらの数字の算出方法や計算式を示すことで、予測の根拠を明確にします。
⑨自由記述欄
最後は自由記述欄です。記載する内容に悩む方も少なくありませんが、創業計画書の中で最もアピールできるのがこの項目です。以上の項目で記述できなかったアピールポイントや、商圏内での人口や競合の調査結果を記せば、より良い資料となります。
内容に困ったら、創業計画書のまとめを記述するとよいでしょう。
事業計画書の書式テンプレート・フォーマット
今回は日本政策金融公庫が提供している創業計画書をもとに書き方を説明しましたが、事業計画書に決まったフォーマットはなく、書き方は基本的に自由です。重要なのは事業内容がわかりやすく、しっかりと相手に伝わるかどうか。
初めて事業計画書を作成する方にとっては何を書けばいいかわからないという方が多いと思います。その際には、各金融機関や開業支援企業などが提供しているテンプレートを活用しましょう。特に日本政策金融公庫から融資を受けたい方は、本記事で事業計画書作成の例に挙げた創業計画書を利用するとよいでしょう。
ただし、テンプレートはあくまで参考です。必要に応じて項目を増やしたり、削ったり、売上予測を考えたり、自分の売りたい商品をもう一度調査したり、さまざまな角度から検討しましょう。資金繰りのための事業計画書かもしれませんが、この書類が後々の経営の指針になったりもします。今回の記事を参考に、事業や実情に合わせたオリジナルの事業計画書を作成してみるのもいいかもしれません。
ダウンロードはこちらから
日本政策金融公庫 | 創業計画書
【用途別】より質を高めるおすすめアレンジ法
事業計画書の活用場面はさまざまであり、活用場面や用途によってアピールすべきポイントを変えることが大切です。誰に内容を伝えるのかを理解して事業計画書を書けると、事業内容が伝わりやすく、協力が得やすくなります。
融資を受けるなら
融資担当者は事業計画書から「事業に将来性があるか」「返済が滞りなくなされるか」を読み取ろうとします。そのため利息を含めて借入金を全額返せる事業プランが書かれているかがポイントです。書かれている数字は希望的観測ではなく、しっかりとした根拠に基づいて算出されたものを心がけましょう。
融資は窓口の担当者だけではなく、組織で最終的な可否を決めます。記入している内容に抜け漏れがないことはもちろん、誰が読んでも明瞭な事業計画書であることが求められます。書類を提出する前には、周りの人に読んでもらい、自分が売りたい商品をしっかりと伝え、売上が上げられる構造になっているかどうかなど、わかりやすく書けているか客観的に判断してもらうと良いでしょう。
補助金や助成金を受けるなら
実施機関によって要件が異なるので、まず実施機関の要件を確認しましょう。その上で、要件に沿った計画書を作成します。補助金や助成金制度の目的を踏まえて作成することも大切です。事業に取り組む目的やもたらす影響が機関の目的と繋がるような内容にしましょう。
ベンチャーキャピタルに申請するなら
高い成長性・収益性を有している事業であることを証明することが求められます。ベンチャーキャピタルは投資先の株式公開や事業売却によって投資した資金を回収するビジネスモデルです。そのため、上場ができるだけの成長性、事業を売却できるような高い収益性があることを示す必要があります。
事業計画書作成に関する注意点
事業計画書の書き方は自由ですが、気をつけておくとよいポイントがあります。事業計画書作成で気をつけたいのは次の2つです。
事業計画書の枚数について
事業計画書の枚数については規定はありませんが、1枚で完結させることが理想的です。作成時の大事な点は何よりも「わかりやすく、しっかりと相手に伝わるかどうか」です。
一般的には創業補助金やベンチャーキャピタルなどの投資を目的としている場合、ページ数は多くなる傾向にあります。一方で金融機関から融資を受ける場合は、少ない分量の方が担当者に喜ばれる場合があります。
記載したい情報が多く、どうしても分量が多くなってしまう場合は、結論を一枚にまとめた要約(サマリー)を用意しましょう。
補足資料の作成ポイント
事業計画書のサンプル通りに作っても融資審査が通らないことは珍しくありません。例えば日本政策公庫の創業計画書には記入例がついていますが、例の通りの文字数で書いてしまうと、内容によっては説明不足とされ審査が通らないことがあります。その場合は事業計画書を補完する「補足資料」を用意する必要があります。
補足資料は事業計画書の各項目に別紙を1ページ作成するイメージです。補足資料は事業計画書同様、「計画本文」「数値計画」の2つを組み合わせて作成します。事業計画書は要約として、補足資料の方で詳しく解説するつもりで作成すると良いでしょう。
図やグラフを活用する
情報は文章だけで伝えるよりも、図やグラフを用いて視覚的に示す方がより具体性が出てわかりやすくなります。特に、市場のトレンドや売上の予測、財務データなどの情報は、グラフや図表で示さなければ読み手に伝わりにくいものです。
図やグラフを用いて、必要な情報をシンプルかつ明確に伝える工夫が事業計画書には求められます。
6W2Hのフレームワークを使う
事業計画書を作成する際は、6W2Hのフレームワークを活用しましょう。
【6W2Hとは】
・When(いつ):実行するタイミング
・Where(どこで):どの市場でサービスを展開するのか
・Who(誰が):誰が事業を展開するのか
・Whom(誰に):どういった顧客を狙うのか
・What(何を):どんなサービスを展開するのか
・Why(なぜ):事業を行う理由
・How(どのように):どのように事業を展開するのか
・How much(いくらかかるか):事業を始める際にどのくらいの資金を必要とするのか
6W2Hに沿って項目をまとめると、事業計画書に明記すべき内容が浮かび上がってきます。細かな数値や資料は後付けするとして、まずは草案のつもりで書き出してみましょう。
事業計画書作成を手書きかパソコンか決める
事業計画書の作成は手書きでもパソコンでも構いません。記載する内容が多く、書きながら修正することもあるので、基本的にはパソコンでの作成、もしくは下書きをすることをおすすめします。
手書きの場合、テンプレート用紙をダウンロードするためのパソコンと、テンプレートの閲覧に必要なPDFリーダーソフトが必要です。一方、パソコン上で作成する場合は、ExcelやWord、PowerPointなどの編集ソフトが必要です。
事業計画書の作成に悩む方はcanaeruで無料相談!
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まとめ
事業計画書は新たな事業を始める際に、事業の戦略や方針をまとめたものです。金融機関や投資家への説明資料として必要なのはもちろんのこと、事業を継続していけるような売上予測が立てられているのかを客観的に見直す材料にもなります。
事業計画書は書く内容が多く、書き方が自由であるがゆえに作成が難しいと感じる方もいるかもしれません。その場合はテンプレートを活用すると迷わず事業計画書の作成を進められるでしょう。
ただし、テンプレートはあくまでも参考です。必要に応じて項目を増やす、削る、図や資料を添付する、市場や商圏調査をするなどしてブラッシュアップしましょう。
この記事の監修
USEN開業プランナー
松村俊治
株式会社USEN 開業サポートチームに所属。飲食店経営歴8年。その経験を活かし、開業に関するあらゆる支援を行う。開業に必要なサービスや設備、業者などの紹介のほか、店舗のコンセプト設計、事業計画書の作成サポートにも精通。
【主なサポート内容】
・開業手続きの支援
・開業に必要なサービス、設備、業者を紹介
・創業計画書の作成サポート
・事業計画書の作成サポート
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