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【2021年】最低賃金が過去最高の引き上げ幅に! 店舗経営への影響と対策は?

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厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会は、2021年度の最低賃金を全都道府県で1時間あたり28円を目安に引き上げるよう厚労相に答申しました。結果、最低賃金は全国平均で930円(時間給)に上昇しますが、28円の引き上げ幅は過去最大。

経営者にも大きな影響を与えること必須の今回の決定ですが、この機会に店舗経営を見直すことは決して無駄ではないでしょう。この記事では、今回の最低賃金引き上げ内容の整理と方策をご紹介します。

2021年度の「最低賃金」の引き上げが、過去最高額に

最低賃金の基準が日給から時間給に変わった2002年度の最低賃金は全国平均で663円。
以降、2008年度に700円、2016年度に800円を突破し、2020年度の902円から2021年度には930円となります。
28円の引き上げ幅は時間給表示となった2002年度以降で最大で、コロナ禍における雇用状況の悪化により引き上げ額が全国平均でわずか1円にしかならなかった2020年度に比べると、大幅な上昇率となりました。

この引き上げの背景にあるのは、2017年の3月に政府が決定した「働き方改革実行計画」です。
そこで「最低賃金を年率3%を目途に引き上げて、全国平均が1,000円になることを目指す」という方針が示され、実際2016年度から2019年度までは4年連続で3%を超える引き上げが行われました。

加えて、コロナ禍の影響で賃金格差が広がっていることも社会問題となり、今年の6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針2021)には、早期の経済回復を図るため「最低賃金の全国平均を早期に1,000円とすることを目指し、本年の引き上げに取り組む」という提言も。
2021年度の3.1%という過去最大の引き上げ率は、その流れに沿ったものと言えます。

そもそも最低賃金って?

厚生労働省のホームページには、最低賃金について「使用者が労働者に支払わなければならない、賃金の最低額を定めた制度」と記されています。
この制度が最低賃金法であり、すべての雇用主は最低賃金を上回る金額を労働者に支払わなければなりません。

最低賃金は毎年見直しが行われ、その年の10月より新しい最低賃金が順次適用されていきます。

最低賃金の種類

最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類が存在します。
雇用主は、このどちらか高い方を支払わねばなりません。

地域別最低賃金は都道府県ごとに定められているもので、今回、話題になっているのはこちら。
2021年度の引き上げにより最高額は東京都の1,041円となり、続いて神奈川県の1,040円、大阪府の992円、最低額の高知県と沖縄県でも820円に。
すべての都道府県で最低賃金が初めて800円を超えることになります。

特定(産業別)最低賃金は、地域別最低賃金よりも高い水準で最低賃金を定めることが必要と認められた産業に対して設定されています。
2021年の1月末現在、全国で227件の最低賃金が定められています。

適用となる対象者は?

地域別最低賃金が適用されるのは、各都道府県で働くすべての雇用主と労働者です。
厚生労働省のホームページにも「最低賃金は、雇用形態に関係なくすべての労働者に適用されます」と明記されており、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの形態や呼称も問いません。
もちろん外国人労働者にも適用されます。
また、派遣社員で派遣元と派遣先の都道府県が異なる場合は、派遣先の最低賃金が適用されることになっています。

ただし、以下5つのいずれかに該当する場合は、雇用主が都道府県労働局長の許可を受けることで、最低賃金を減額することが認められています。

1. 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
2. 試用期間中の方
3. 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
4. 軽易な業務に従事する方
5. 断続的労働に従事する方

特定(産業別)最低賃金は、設定された特定産業の基幹的労働者と、その雇用主に対して適用されます。
ただし、18歳未満又は65歳以上、雇い入れ後一定期間未満の技能習得中、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する場合は適用されません。

最低賃金の計算方法

最低賃金は時間額で決められているため、日給や月給の場合は時間給に換算する必要があります。
(ただし、一部の特定(産業別)最低賃金は日額と時間額の両方で定められています)

時間給の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)

日給の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

ただし日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合は、
日給≧最低賃金額(日額)

月給の場合
月給÷1カ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

最低賃金の引き上げを怠ったらどうなる?

雇い主にとって最低賃金引き上げは頭の痛い問題ですが、従わない場合のデメリットも見過ごせません。

罰則を受ける可能性がある

労働者に対して最低賃金を支払わない場合、法律による罰則が雇用主に科せられる可能性があります。
地域別最低賃金を下回る賃金しか支払わない場合、最低賃金法により50万円以下の罰金が。
特定(産業別)最低賃金を下回る賃金しか支払わない場合は、労働基準法により30万円以下の罰金が定められています。

従業員の維持・確保が難しくなる

最低賃金の引き上げは、労働者の生活を守るために雇用主が果たすべき義務です。
そのため大多数の店舗や事業者が定められた金額まで一律に給与を上げることが見込まれ、賃金の引き上げ無しでは従業員を確保することが難しくなることは想像に難くありません。
また、既に従事している従業員のモチベーションが下がり、退職を申し出られる可能性も高くなります。

最低賃金を引き上げたあとの対策

賃金引き上げは悪いことばかりではありません。この機を逃さず、前向きに業務の改善を図って、デメリットをメリットに変えていきましょう。

従業員の労働時間を調整(+スキル向上)

賃金の引き上げにより人件費が膨らむようであれば、従業員の労働時間を短縮する必要も出てくるでしょう。
本当に現在の従業員数と労働時間が必要なのか?
勤務実態を見直すことも大切です。
また、従業員のスキルを向上させることで生産効率を高め、従来よりも短い時間で、より多くの利益をあげる手段を探るのも有効ではないでしょうか。
従業員を研修やセミナー等に参加させるのも一計ですし、そこで活用できる支援制度もあります。
賃金引き上げにより、従業員のモチベーションが向上している今こそ、スキルアップを図る大きなチャンスと言えるでしょう。

設備投資やコストの見直し

人件費が増大するぶん、それ以外のコストを見直すのも重要です。
設備投資やDX(デジタルトランスフォーメーション)により、業務効率を上げることができれば、従業員の労働時間や人数を減らすことも可能でしょう。
設備投資と言っても大げさに考える必要はありません。
リースやレンタルを上手く使えば必要機器も大きな負担なく導入できますし、助成金も活用できます。

その他、普段は日々の実務に追われて見過ごしがちだった分野のコストカットや節税など、この機会に視野を広げて隅々まで改めて点検し、新たな仕組み作りの契機とすることが、安定性の高い経営につながるでしょう。

補助金・助成金や支援制度を利用しよう

雇用主、特に中小企業の不安を取り除くべく、政府はさまざまな補助金や助成金、支援制度を打ち出しています。
例えば「業務改善助成金」は従業員の賃金引き上げや支払い、設備投資や人材育成などの要件を満たした事業者を対象にしたもので、助成額は最大600万円。

他にも、景気の変動や経済上の理由で事業を縮小する事業者が従業員の雇用を継続するための「雇用調整助成金」、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進する取り組みに支払われる「キャリアアップ助成金」、労働環境の向上等を図る事業者等を助成する「人材確保等支援助成金」などがあるので、積極的に活用しましょう。

さらに、コロナ禍で新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編といった事業再構築に意欲を持つ中小企業等を支援する「事業再構築補助金」には、従業員の賃金が最低賃金に近い企業向けに、通常よりも補助金の上乗せがされる「最低賃金枠」も新設されました。

また、各都道府県に開設されている「働き方改革推進支援センター」では、補助金・助成金の活用を含めた経営相談や専門家のアドバイスを、すべての事業者が無料で受けることができます。
働き方改革や労務管理等のセミナーも開催されているので、最寄りのセンターを確認することをお勧めします。

今こそ最低賃金の見直しを

デメリットばかりが目につきやすい最低賃金引き上げですが、人件費の増大に向き合わざるを得ない今こそ業務の効率化を果たすチャンスであり、適切に対応すれば業績アップも夢ではありません。
そもそも日本の生産年齢人口は年々減り続けており、安価な賃金で労働者を抱えて人力に頼るビジネスモデルは、遅かれ早かれ崩壊することが予想されます。

現在のコロナ禍がいつまで続くかわからないことを考えても、生産性の向上は業務継続のために避けられないハードルです。
目先の事ばかりを考えるのではなく、ITを活用しての顧客・生産・労務管理システム等の導入や設備投資など、長期的視野に立った戦略で生き残りを図りましょう。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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