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横浜・関内にある「ステーキライスの店 センタービーフ 横浜関内本店」。
ステーキライスの美味しさに加え、繁盛店としても雑誌で取り上げられるほど、今注目を集めているお店です。
そこで「ステーキライスの店 センタービーフ 横浜関内本店」の開業前から繁盛店になるまでのストーリーをオーナーの鹿野和敏さんにお聞きしました。
鹿野さんが実際に行った行動とともに、繁盛店になるまでの道のりを全3回にわけて紹介していきます。
ここでは開業準備編と題し、コンセプトや事業計画書作成、仕入れ先決定までのお話をお送りします。
目次
開業3年~半年前までに主に行ったこと
・コンセプト、業種業態の設定
・アメリカ視察、全国繁盛店視察
・看板商品の開発
・物件選び
・canaeruに相談
・補助金、助成金の知識習得
・事業計画書作成
ポイント
・商品から考えるプロダクトアウト発想の店づくりは立地に合わないリスクがあるので慎重に
・自分の熱い想いが入った事業計画書は実は問題点だらけ。ひとりで作らない
・物件探しには時間がかかるので注意自分の経験が活かせる範囲は、開業当初はホント “狭い”もの
――鹿野さんが独立開業を目指したのはオープン日から逆算するといつぐらいになりますか?
独立の意思決定をしたのは開業の3年前くらいでしょうか。
その後、開業にあたり、業種・業態を検討し、全部で12案を整理しました。
そこから最終的にはスタートに相応しいコンセプトを3つに絞り込んだ段階で、アメリカの繁盛店を視察しながら、それぞれのコンセプトの具体的なオペレーションやメニュー、サービスを設計しました。
アメリカは日本よりも少なくとも2年は先に進んでいますから。
――業態ありき、の開業ではなかったのですね?
立地特性や物件のスペックによって、やるべき業種・業態の判断は変わってくると思います。
――そうなると、例えば、すし職人の方がこれまでの経験を活かし、独立してお寿司屋を開業したいと思ったとします。このような判断は鹿野さんとしては、あまりおすすめできないと…?
そのご経験はいつか必ず武器になると思います。
しかし、その経験を活かせる時期というのは少し先で、独立開業時はせいぜい半分の50%までと思っておいた方が良いかも知れませんね。
なぜなら『商売』や『経営』と言う、これまでに経験したことのない未知の要素がもう半分の50%を締めますから。
すし職人の方がその仕事を愛し、ずっと長くやっていきたいという事でしたら、お寿司屋さんに就職するという選択が多くの方にとっての正解ではないでしょうか。
独立して自分でやりたいというのであれば、経営者として、人やお金のマネジメントをしていくという前提で、今の自分に何が必要かを考え、知見を磨いていくという視点が大事だと思います。
そういう前提の上に、商売がスムーズにスタートする事ができれば、ご経験が役立つタイミングというのも意外に早まるかも知れませんね。
――なるほど。では、ここ、ステーキライスの店 センタービーフ 横浜関内本店も場所が違えば、ステーキライスの店ではなかったと?
そうですね。1階路面ですが8坪という狭さでしたので、販路の広いセンタービーフにしましたが、違う立地や物件であれば、違うコンセプトでやった可能性は大きいと思います。他にも選択肢はいくつかありましたから。成功するコンセプトづくり、失敗するコンセプトづくり
――鹿野さんがコンセプト作りでポイントにしていたことは何ですか?
私は結構大ざっぱに見られる質なのですが、店づくりに関しては結構細かく考えるタイプです(笑)。
ですからポイントと聞かれると色々出てきてしまうのですが、順番でいうと、一番最初に考えるのは『その商売に現時点でどれくらいのマーケットが存在するか』という事でしょうね。
今日の時点でその土地で食べる習慣がないものはやらないということです。
例えば、焼肉、寿司、ラーメンと言うのは外食のど真ん中ですよね。
これらはマーケットの規模が大きく、日本全国どこでも食べられています。
反対にタピオカはどうかというと、その当時ブームで爆発的に売れていたのですが、元々我々日本人にはタピオカを食べるという習慣がない、つまり、マーケットの規模が小さすぎるのです。
こういう商売は、商売の寿命そのものを極端に短く見積もらねばなりませんから、資金力も人財力も乏しい私のような独立開業者には向かないと、そう考えていました。
『マーケットが小さければ競合も少なく、商売としてのチャンスがある』という考え方もあると思うのですが、狭いストライクゾーンに自ら飛び込むというのは、少なくとも当時の私には大きなリスクだと思っていましたし、今もそう考えています。
逆に、大きな市場性を持つマーケットの中で、将来の多店舗化を見据えながら、差別化を図ることや、地域の方に喜んでいただくということであれば、これまでたくさんの繁盛店を見てきた自分の知見や経験を活かして、成功確率の高い攻め方ができると思いました。
自分が市場の先駆者となって、その商売をどうしてもやりたいという事であれば、みなとみらいや原宿、表参道など、新しい価値感を積極的に肯定してくれる方が多く行きかう街でチャンスを狙うという選択肢もあるかも知れませんが、物件開発の難易度や固定費の高さを考えると、そもそも独立開業の目的に合致するのかどうか。
これからご自分のお店のコンセプトを考えるという方には、そのあたりを慎重に考えていただくのが良いのかなと思いますね。通る事業計画書、通らない事業計画書
――この頃にはcanaeruにもご相談いただいています。相談してよかったと思われますか?
もちろんです。私はこの時点では大手飲食チェーンのFC本部部門で仕事をしていましたから、クライアントは基本的には経営者や企業幹部のみなさまです。
そんな方々に『来期以降の事業戦略はどうなっていますか?』『社長!御社のここが後々問題になると思っています!』『若い社員さんが伸びていますね、来期は新規の出店をやりましょう。金融機関さんに融資の内諾取っておいてください!』なんて生意気なことを言っていたわけですが、いざ自分が独立となったら、事業計画や資金調達のことなんて、まったくチンプンカンプン。
そんな中で初めて事業計画書を作りました。
とは言っても、私だってまったく自信がないというわけでもないわけですよ。
でもcanaeruのプランナーさんからは、赤ペン先生のごとく、ものすごい数の赤が入って戻ってきたんです。
もう落ち込んじゃうくらい(笑)。
私の中では3年先に行うリニューアル費用やその後の売上成長をも計算した、想い入れのたっぷり詰まった完璧な事業計画書なのに(笑)。
しかし「これは審査を通過することが重要であって、熱い思いは置いておきましょう」と言われてハッとしました。
要するに「熱い想いは事業計画書においてはどうでもいい」ってことなんですが、“このどうでもいい”ってことをハッキリ言ってくれる人がいないんですよ。
経営もそうですが、『何が大事で、何が大事でないか』はとても重要なことです。
こういう気づきをたくさんいただいて、最終的にどのような事業計画書に仕上げるか、融資希望額はいくらにするかなどを一つ一つ決めていきました。
結果は一発OKでしたよ。
私ひとりで作っていたら、一体どんなものが出来上がったのか…。
果たして無事に資金調達できたのかどうか…と、今考えるととても怖いですね(笑)。開業6ヵ月~3ヵ月前に主に行ったこと
・主力食材のルート探し
・店舗イメージづくり(外観・内観・厨房機器・全体のレイアウトイメージ)
・営業戦略策定(販路づくり・販売促進など)
・資金計画最良の食材を探し続ける
――メインとなる食材はどのように仕入れ先を決めたのでしょうか?
商品開発はこの時点で色々と進んでいるんですけども、ステーキライスに関して言えば、肉と米とタレというシンプルな料理ですから、もっと良い肉を調達できないかというのは常に考えていますし、人に会えば、「〇〇の誰々を紹介してくれないか。」と常にアンテナを飛ばしている状態ですよね。
その中でちょうどこの時期に出会ったのが成長ホルモン剤を一切排除して大切に育てられたナチュラルビーフでした。
前職の上司、私の師匠みたいな存在の方から「ちょっと会ってみるか?」と、社長さんをご紹介して下さって、その後ここに決める流れになりました。
――前職はチェーン店の本部にお勤めでしたよね。
はい。前職時代も素敵な上司や同僚に囲まれて、楽しく充実した時間を過ごしていました。
アメリカの外食を知ったのも、当時仕事の一環で社内表彰を受けた若い店長たちをアメリカ研修に連れていくという業務があったのがきっかけでした。
とても楽しく働かせていただきながら成長させてもらった思い出深い会社です。
ただ、開業に向けて動き出そうとした時期というのが、実は先ほど申し上げた尊敬する上司から『社長がどうやら次の組織編制で君を上げるみたいだ』と昇進の耳打ちのあったタイミングと重なってしまいまして、私のために色々な配慮や根回しをしてくださっている上司の姿が想像できましたし、でも心の中では私はやっぱり独立に向けて動き出したいと考えているという…。
そんな独立への想いが強まっていく一方で、これまで私のことをずっと大事にしてくれて、これからさらに期待しようとしてくれている上司や大事にしている同僚・先輩をガッカリさせてしまうのは嫌だなと…それにその当時の仕事だって日々やりがいがあって楽しい…。
とても悩みましたが、ここで独立を先延ばしにして、次のフォールドをいただいたら、この先10年は独立を諦める覚悟が必要だと思いました。
そんな自分勝手はしちゃいけない。
最終的にはやはりこのタイミングで独立して、自分でやってみたいと、正直に上司に伝えまして…その後、何度も話あって、最後の最後は「わかった。絶対成功しろ」と背中を押してくれたんです。
その時に言われた言葉を今も忘れません。
「子どもは小さいし、奥さんだって不安だろう。間違っても、いついつで辞めます、それで辞めてから物件を探します、みたいなカッコイイことは言うなよ。そんな格好つけなくていいんだ。物件決まってから、辞めるでいいじゃないか。それでいいんだ、それまでは堂々と仕事をして、堂々と給料をもらって、みんなと楽しくやればいいんだよ」と。
後日、社長に独立の意思があることを報告した際も、その社長までも同じことを仰ってくれて、本当に人に優しい人たちだなと、こういう方々の下で楽しく仕事させてもらって、自分は本当に幸せだったなと。
最後は会社の経営会議でも退職の挨拶と独立宣言をさせていただくという機会までいただきました。
会議後、専務に呼ばれて『一部の人だけに話して、コソコソと辞めたりしないで、こうしてみんなの前で堂々と自分は独立するんだって言ってくれたから、みんなで堂々と応援できるぞ、ありがとうな!』ってそんな言葉までもらったりして、開店日前後には上司をはじめ、お忙しい社長や専務、そしてお世話になった先輩や同僚達までもたくさん来てくれて…。
すごく良くしてもらって、だからこそ独立という自分の気持ちをお伝えするのは本当にとても辛かったのですが、ちゃんと話せたことはすごく良かったなって思いますね。〇お話を聞いた方
ステーキライスの店 センタービーフ 横浜関内本店 鹿野和敏(株式会社リングベル 代表取締役)
”我が子にも食べさせられる牛肉”にこだわり、成長ホルモン剤等を一切排除して育てた厳選牛を使用したステーキライス専門店を運営する株式会社リングベルの創業経営者。
外食歴20年以上、これまで個人店~大手チェーンの店長・SVを経験。その後FC業界においても活躍し、独立後の現在は店舗経営の傍ら、FC開発、人財開発、人財教育等のコンサルティング事業も幅広く展開中。JFA公認フランチャイズ経営士。この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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