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飲食店の値上げ成功の近道!料理に付加価値をつけるには?

飲食店の値上げ成功の近道!料理に付加価値をつけるには?

2022年から始まった食材費の高騰は、2023年も円安による物価高や物流コストの上昇でおさまる気配がありません。飲食店においてもメニューの値上げを余儀なくされる苦しい状況が続いています。

しかし、いざ値上げに踏み切ろうと思っても、どのように値上げを行えばよいのかわからず途方に暮れている…という方もおられるかもしれません。

この記事では、メニューを値上げする際のポイントと注意点を詳しく解説。値上げによる客離れを防ぐ、「付加価値のつけ方」についてもご紹介します。

参考記事:飲食店の値上げ|メニュー価格は「さりげなく」上げる!ポイント5点

怒涛の値上げラッシュが飲食店を直撃中

昨今、食品の値上げラッシュが続いており、一般消費者はもちろん、飲食店にとっても経営を圧迫する大きな課題となっています。2022年4月に帝国データバンクが発表した「特別企画︓「主要外食 100 社」価格改定動向調査」によると、外食産業の原価率が18年ぶりに急騰。飲食店の原価率平均が2020年度は36.3%だったのに対し、2021年度は37.5%まで上がり、主要外食100社のうち3割が1年以内に値上げを敢行。平均77円もアップしています。

飲食店が利益を確保するためにはメニューの値上げが必要ですが、安易な値上げは客数や売上減に直結するリスクがあります。とはいえ値上げを躊躇すると、食材費や人件費を削らざるを得なくなり、店の価値を下げてしまう可能性も。
客数や売上を減らさず、お客様に値上げを受け入れてもらうにはどうすればよいのでしょうか?

参照:「特別企画︓「主要外食 100 社」価格改定動向調査」|株式会社 帝国データバンク[TDB]

怒涛の値上げラッシュが飲食店を直撃中

飲食店のメニューを値上げする際のポイント

食材の価格高騰はたびたびニュースで取り上げられていることから、飲食店の値上げに関しても一定の理解は得られるでしょう。しかし、値上げの方法やタイミングを誤ると客離れにつながります。
飲食店で値上げを行う場合、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

現行メニューをただ値上げするのはNG

メニュー内容を変えずに単純に価格だけを上げたり、同じ価格で量を減らしたり質を落としたりするのは危険です。お客様は想像以上に価格に敏感であり、一方的に価格が上乗せされたという悪い印象を与えてしまいます。

多くのお客様は、昨今の事情により多少の値上げは仕方がないと理解されていますが、あまりに直接的な値上げを目の当たりにすると、気分を害してしまうものです。
どうしても価格だけを上げたいのなら、「経営が苦しいため値上げさせていただきます」と正直に事情を説明した方が、店の評判を下げずに済みます。

全てのメニューを一度に値上げするのもNG

全メニューを一度に値上げすると、客足が一気に遠のくリスクがあります。値上げは、特に原価が高騰しているメニューに限定したり、高単価商品を新たに追加するなど、現行メニューの値上げは段階的に行う工夫が必要です。
定番・売れ筋メニューを値上げした方が利益は上がりますが、同時にお客様へ与えるインパクトも大きくなります。定番・売れ筋メニューの価格は据え置きにし、季節限定メニューや新メニューのみ値上げするところから始めるのも一つの手です。

メニューの一新と値上げを同時に行う

客数と売上への影響を最小限に抑え、お客様に値上げをうまく受け入れてもらうために、メニューの一新と値上げを同時に行うのが好ましいです。

ポイントは、お客様になるべく値上げの印象を与えず、損を感じさせないこと。例えば、量を増やしたり、食材の質を上げたりして付加価値を高めたメニューにグレードアップさせる、レギュラーサイズとハーフサイズの2種類を設けて選択肢を増やすなど。

メニューの一新と値上げを同タイミングで実施し、以前のメニューと価格を比べにくくすることで、お客様に受け入れてもらいやすくなる効果もあります。

値上げによる客離れを防ぐ3つの戦略

値上げにより客離れが起きてしまうときは、お客様に損を感じさせているのが原因です。なるべく損をしていると思わせずに値上げを行うためには、以下の3つを意識するとよいでしょう。


  • 食材を見直す

  • サービス品質を上げる

  • 顧客への魅せ方を変える


一つひとつ詳しく解説します。

食材を見直す

値上げをする際、ただ値段を上げるのではなく、メニューの内容を一新して値上げの印象を薄める方法があります。例えば、あえて食材の産地や品質にこだわり、よりお客様の満足度を高めるメニューを提供する、めずらしい食材を使用して他店との差別化を図るなど、料理に付加価値をつければ少し値段が上がっても食べてみたいと感じるお客様は多いものです。

例えば、単なる「お刺身盛り合わせ」よりも「北海道とれたて直送!お刺身盛り合わせ」、単なる「生ハムサラダ」よりも「24か月熟成のハモンセラーノ使用!切りたて生ハムと朝採れ野菜サラダ」の方がお客様には魅力的に映ります。

値上げによる客離れを防ぐためには、より魅力的なメニューに変えることが重要です。

サービス品質を上げる

顧客満足度を上げるのは、料理の内容だけではありません。スタッフのホスピタリティを高め、おもてなしの空間を作ることで、飲食する時間そのものに価値を見出してもらえます。サービスの品質を上げるには、スタッフ教育に力を入れることがマストです。教育係によって指導の内容に差が出ないよう配慮しながら、サービスの向上を目指していきましょう。

ほかにも、店の内装にこだわったり、写真撮影用の小道具を貸し出したり、“推し活”を後押しするサービスを提供するといった施策も有効です。お客様が店にどのようなサービスを求めているかを見極め、接客をブラッシュアップしていきましょう。

参考記事:今「推し活」がアツい!推し活層を取り込む店づくりのポイントとは?

顧客への魅せ方を変える

めずらしい調理方法の導入や、SNS映えを意識した盛り付け方も飲食店の値上げを乗り越える一手になります。

東京・神田にある海鮮居酒屋「とらえもん」は2015年4月にオープンし、2016年9月にマグロに特化した業態にリニューアル。そのリニューアルに合わせて開発した「トラエモンマウンテン」は店の名物となっています。

ネギトロ軍艦(5貫)の上に本マグロ中落ち、ウニ、イクラ、ミョウガ、カイワレを豪快に盛り合わせたメニューで、価格は2〜3人盛りで2,860円。決して安い値段ではありませんが、贅沢で豪華な内容と、見た目の美しさがSNSで話題になり大ヒット!特に女性客はこのトラエモンマウンテンを目当てに来店される方が多く、注文された方のほとんどが写真や動画を撮影しているといいます。

そのほかにも、いま話題の「デカ盛り」や「激辛料理」などを導入し、お客様の注目を集める手段もあります。他店にはないメニューを開発し、客離れを防ぎましょう。

値上げの事前告知も忘れずに

事前告知なしに値上げを行うと、お客様に不誠実な印象を与えてしまい、客離れにつながる可能性も。遅くとも価格改定日の1〜2週間前には、店内ポスターやチラシ、SNSなどで値上げの事前告知を行いましょう。

いつから・どのような理由で、どのメニューを何円値上げするのかを告知するのが一般的ですが、メニューの一新と値上げを同時に行う際は、付加価値の部分を発信することも重要です。新メニューの特徴やこだわりは何なのか?など、お客様の期待感を高める内容を盛り込んで告知することで、値上げのインパクトを抑える効果も期待できます。

以上のポイントを踏まえた値上げ告知文の例文は以下のとおりです。

【値上げ告知の例文】
いつも当店をご愛顧いただき、ありがとうございます。
この度当店では、昨今の原材料の価格高騰を受け、2023年〇月〇日(〇)をもちまして一部メニューの値段を改定させていただきます。

メニューA 〇〇〇円 → 〇〇〇円
メニューB 〇〇〇円 → 〇〇〇円

価格改定に伴い、メニューAでは使用する生ハムをイベリコ産のものに変更し、良質で濃厚な肉のうまみとコクのある味わいをご提供します。また、メニューBでは〇〇沖で水揚げされた魚を使い、新鮮な魚介類のおいしさをご堪能いただけます。

価格の改定は大変心苦しくはありますが、今後もお客様にご満足いただけるメニューを提供してまいります。何卒ご理解いただき、今後ともご愛顧賜りますようよろしくお願いいたします。

値上げは不本意であること、今後も経営努力を続けていくことを明記し、お客様に理解をお願いする内容にまとめることが大切です。

実際に値上げした飲食店の事例を紹介

主要外食100社のうち3割が1年以内に値上げを敢行したという調査結果の通り、多くの外食チェーンが値上げを余儀なくされています。ここでは、実際に値上げに踏み切った事例を紹介。どのような方法で、お客様に値上げへの理解を求めたのかを見ていきましょう。

鳥貴族

全国で600店舗以上を展開している居酒屋チェーン「鳥貴族」は、2023年5月1日より「全品350円均一」から「全品360円均一」への値上げを行いました。1985年に創業した鳥貴族は、89年より打ち出した「全品280円均一」というリーズナブルな価格設定で一躍人気に。以来、2017年に「全品298円均一」へと値上げを行うまで、2本一皿の焼き鳥メニューから定番の居酒屋メニュー、デザートなどを割安な価格で提供してきました。

しかし、原材料価格やエネルギー価格の高騰を受け、ここ数年で値上げが相次ぎ、ついに当初の価格設定より80円もアップ。想定を超えたコスト上昇を自社で吸収することが困難となったため、価格改定に踏み切ったようです。

鳥貴族といえば、リーズナブルながらも国産の食材にこだわり、一本一本丁寧に下準備した焼き鳥がウリで、希少部位も均一価格で楽しめるところに評価を得てきました。しかし、値段が底上げしたことによって、ありふれた居酒屋メニューと希少部位の価格が同一であることに少なからず物議も起こっています。同業の焼き鳥チェーン「やきとり大吉」を完全子会社化することで、ますます国内のシェアを高める鳥貴族が、今後どのような取り組みやメニュー開発を行うかに注目が集まっています。

スターバックス

飲食店の値上げは、大手カフェチェーンにも及んでいます。 スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社は、調達コストやエネルギーコストの上昇を踏まえ、スターバックス体験のさらなる向上・商品の安定供給を図るため2023年4月より値上げを行いました。

定番のドリンクを5円~32円(税抜)、フードを5円~21円(税抜)値上げしたものの、ドリップコーヒーの2杯目を特別価格で提供する「One More Coffee」については据え置きとなっています。

スターバックスといえば、短いスパンで入れ替わる新作メニューが常にSNSで話題をさらっています。イチゴやメロンなどの季節のフルーツをふんだんに使ったフラペチーノや、斬新な組み合わせで新たなドリンク体験を提供するメニューなど、価格改定と並行してリッチなメニューが次々にデビュー。顧客満足度の高い商品も提供することで、値上げへの不満を薄めることに成功しています。

また、コロナ禍において一時サービスを休止していた「タンブラー割引」も復活。ドリンク購入時にタンブラーやマグカップを持ち込むと22円の値引きになり、価格改定をカバーするような施策は値上げを検討中のお店にとって参考になるでしょう。

料理に付加価値をつけ、値上げしても愛されるお店を目指そう!

昨今の食材費の高騰による飲食店の値上げは、消費者側にも一定の理解があるものの、経営努力が試される場面ともなっています。値上げをしても変わらず愛される店づくりのためには、値上げへの理解を求めると同時に、料理に付加価値をつけたり、新たな価値提供を行うなどの取り組みも大切です。

「canaeru」では、コスト上昇や値上げに対する取り組みや、客単価アップの術などを無料のセミナーにて発信しています。値上げに踏み切りたいものの、お客様への伝え方がわからない、付加価値の付け方がわからないと悩んでいる方はぜひ「canaeru」の多彩なセミナーを一度受講してみてください。

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この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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