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個人事業主として事業を行うためには開業届を提出する必要がありますが、事業を行っている間に引越しを行うことも考えられます。
開業届には事業を開始した時点での住所を記載して提出しているため、引越したあとには記載されている内容と実態が食い違ってしまうこともあるでしょう。
このようなケースにおいて、「住所変更した開業届を改めて変更すべきなのか?」と迷っている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、引越しを行った際に開業届を再提出する必要があるのかについて、ケースごとに紹介します。開業届以外に提出が必要になる書類やそれらの提出方法についても説明するので、引越し予定がある個人事業主の方はぜひ参考にしてください。
※記事上の「開業届」とは、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、開業時に提出したものと同一の様式のものです。目次
個人事業主の引越し・住所変更・転居に必要な手続き
個人事業主の引越し・住所変更・転居に必要な手続きには、主に以下のようなものがあります。
①税務関連の手続き
●開業届の提出
●所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書(必要な場合)
②社会保険関連の手続き
●国民年金の住所変更
●健康保険、労働保険など各種保険の住所変更
③その他の手続き
●各種許認可申請書の所在地変更
●取引先への住所変更の連絡
●名刺や広告媒体等での住所変更
ただし、上記はあくまで一般的なケースです。必要な手続きは、どのような引越しや住所変更なのかによって少しずつ異なります。以下では引越しや住所変更をケースごとに分けて、それぞれで必要な手続きを解説していきます。個人事業主の納税地に異動又は変更があった場合の手続き
個人事業主の納税地に異動又は変更があった場合とは、具体的に以下のケースなどがあります。
●引越しなどで、納税地の住所地が異動になる場合
●納税地を住所地から居所地に変更する場合
●住所地とは別に事業所等を構えて、そこを納税地に変更する場合
●居所地もしくは事業所等から住所地に納税地を変更する場合
など
【手続き】
納税地の異動又は変更があった年分の確定申告書に異動又は変更後の納税地を記載します。
(令和5(2023)年1月1日以後に異動又は変更がある場合は「納税地の異動又は変更に関する届出書」の提出は不要となりました。)
送付物などを変更後の納税地に送付してもらう場合は「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」を税務署に提出することで、年の途中でも送付物先を異動又は変更後にすることができます。引続き振替納税を利用したい場合
納税地を異動又は変更した年分の確定申告書の第1表にある「振替継続希望」に○を付けると、引続き振替納税を利用することができます。
個人事業主の納税地について
納税地は以下のようなケースが挙げられます。
1.住所地である自宅を納税地とする
2.住所地以外の居所地を納税地とする
3.住所地や居所地があるが、他に事業所等がある場合に事業所等を納税地とする
個人事業主の納税地は、原則住民票のある住所地ですが、上記のように任意の所在地を納税地にすることが可能です。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書の提出は必要?
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出は、給与等の支払いを行う事務所等を移転(または廃止)した場合に、提出が必要な書類です。給与支払事務所等の所在地の所轄税務署に、事務所を移転してから1ヶ月以内に提出する必要があります。ただし、開業届に給与の支払い状況などを記載した場合は、提出する必要はありません。
個人事業主の住所変更の年金・保険に関する手続きについて
健康保険や厚生年金、労働保険といった社会保険についても、事務所等の所在地を移す場合には、手続きが必要です。各機関に定められた期間内に各届出書等の提出をしてください。
個人事業主が海外へ引越し・住所変更・転居する場合の税務手続き
海外に引越して、生活の拠点が海外となり、引越し後に日本に税金を払う必要がない場合については、次の手続きが必要になります。
●個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
●所得税の青色申告の取りやめ届出書
●出国をする年の1月1日から出国時までの期間について、確定申告の必要がある場合には、準確定申告書の提出
※詳細については、税務署等にお問い合わせ下さい。
提出場所はいずれも、納税地を所轄する税務署です。海外転居時の税務上の3大手続き
飲食店経営者が海外に転居する際に必要な税務上の主な手続きは以下の3つです。
①事業に関する手続き
✔開業・廃業等届出書の提出:
海外転居に伴い、日本で事業を継続するのか、一時的に休業するのか、それとも完全に廃業するのかによって、必要な手続きが異なります。事業を継続する場合でも、事業所の所在地が変われば届出が必要になります。
✔納税地の異動:
事業所得の発生源である事業所の所在地が変更になるため、納税地も変更となります。納税地の変更に伴い、税務署への届け出が必要になります。
✔青色申告の取りやめ:
青色申告を行っている場合は、海外転居に伴い青色申告を取りやめる手続きが必要となる場合があります。
② 所得税の確定申告
✔年の途中で海外に移住する場合:
出国する年の所得については、確定申告が必要となります。
✔非居住者としての確定申告:
海外に移住後も日本国内から所得を得る場合は、非居住者として確定申告が必要になることがあります。
✔納税管理人の選任:
海外に移住した場合、日本国内の所得に関する事務を処理する納税管理人を選任する必要があります。
③その他
✔消費税の申告:
消費税の納税義務がある場合は、海外転居後も消費税の申告が必要となる場合があります。
✔源泉所得税の支払:
従業員がいる場合は、給与の支払いに伴う源泉所得税の支払手続きが必要です。
また、国内居住者と非居住者の税務上の違いは以下の表のようになります。
区分 国内居住者 非居住者 注意点 課税対象 全世界所得に課税 国内源泉所得のみに課税 非居住者は国内で得た所得のみが課税対象となるため、海外収入は非課税 所得税率 累進課税制度 原則一律20%の源泉分離課税 非居住者は累進課税の適用外で、一律の税率が適用される 確定申告 年末調整や確定申告が必要 国内源泉所得のみ確定申告 申告方法や必要書類が異なるため、専門家に相談が必要 社会保険 国民健康保険・年金に加入 原則として加入対象外 海外での医療保険や年金制度への加入を別途検討する必要あり 消費税 全ての取引に課税 国内取引のみ課税 輸出取引や国際取引における消費税の取り扱いに注意 資産課税 国内外の資産に課税 国内資産のみ課税 海外資産の取り扱いや申告方法に特に注意が必要 源泉徴収 給与所得等で源泉徴収 国内収入に対して源泉徴収 源泉徴収税率が異なるため、正確な理解が重要
非居住者への税務変更は複雑で、誤解すると重大な税務リスクを伴います。国内源泉所得の正確な理解、二重課税防止条約の適用、最新の税法改正への注意が不可欠です。一人で行うことはせず、専門家への相談を強く推奨します。《事業状況別》必要な手続き一覧
この項目では、主な手続きについて、ケースに分けて紹介します。
1:自宅(住所地)を納税地としている場合
✔自宅を引越しなどで異動した場合は『開業届』を提出
2:事業所等を納税地としている場合
✔事業所の移転などで異動した場合は『開業届』を提出
✔事業所の住所は変わらず、自宅のみの引越の場合は一般的な転出入届のみ行う
以下は1と2のケースを踏まえての具体例です。
例①)事業所等が移転するが住所地は変わらない場合
●住所地を納税地としている場合は手続き不要
●事業所等を納税地としている場合は『開業届』を提出
例②)住所地は移転するが事業所等は変わらない場合
●住所地を納税地としている場合は『開業届』を提出
●事業所等を納税地としている場合は手続き不要
3:振替納税を利用している場合
✔引続き振替納税を利用したい場合は、変更等のあった年分の確定申告書の第1表の「振替継続希望」に○を付けて提出
✔口座の変更等をする場合は、改めて「預金口座振替依頼書」を提出4:海外に引越し日本で納税しない場合
✔『個人事業の開業・廃業等届出書』を提出
✔『所得税の青色申告の取りやめ届出書』の提出
✔出国をする年の1月1日から出国時までの期間について、確定申告の必要がある場合には、納税地の所轄の税務署に準確定申告書の提出
✔そのほか、状況に応じて『事業廃止届出書』などを提出。健康保険・厚生年金保険などの資格喪失手続きも必要住所変更手続きのオンライン vs 郵送:効率的な方法の選び方
住所変更手続きは、オンラインか郵送を選ぶことができます。それぞれのメリットとデメリットを以下の表で確認しておきましょう。
項目 オンライン手続き 郵送手続き メリット ・24時間いつでも手続き可能
・移動や待ち時間不要
・電子署名や本人確認がスムーズ・インターネット環境がない人でも可能
・高齢者に馴染みやすい
・セキュリティに不安がある人に適しているデメリット ・インターネット接続と機器が必要
・セキュリティリスクへの懸念
・システムトラブルの可能性・申請に時間がかかる
・郵送費用がかかる
・書類の記入や準備に手間がかかる
・紛失のリスクがある
オンラインで手続きを行う場合は、e-Taxを利用しましょう。e-Taxでの手続きは以下の手順で行います。
1. e-Taxの利用者登録
1-1. マイナンバーカードの準備: マイナンバーカードとカードリーダーが必要です。
1-2. e-Taxのホームページにアクセス: 国税庁のe-Taxのホームページにアクセスし、利用者登録の手続きを行います。
1-3. 利用者識別番号の取得: 登録完了後、利用者識別番号が発行されます。この番号は、e-Taxを利用する際に必要となります。
2. e-Taxにログイン
2-1. マイナンバーカードとカードリーダーを用いてログイン: e-Taxのホームページにアクセスし、マイナンバーカードとカードリーダーを使ってログインします。
2-2. 利用者識別番号を入力: 発行された利用者識別番号を入力します。
3. 「開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」へ
メニューから選択: e-Taxのメニューから、「開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」を選択します。
4. 変更届出書の作成
4-1. 届出の種類を選択: 住所変更の場合、「変更」を選択します。
4-2. 変更内容を入力: 住所変更の内容(変更前の住所、変更後の住所など)を正確に入力します。
4-3. 本人確認書類のアップロード: 必要に応じて、本人確認書類(運転免許証など)の画像ファイルをアップロードします。
5. 送信
5-1. 内容確認: 入力内容に間違いがないか確認します。
5-2. 送信: 入力内容を確認後、「送信」ボタンをクリックします。
6. 受付確認
6-1. 受付番号の発行: 送信が完了すると、受付番号が発行されます。
6-2. 受付確認: 発行された受付番号で、送信状況を確認することができます。
マイナンバーカードの読み込みは、対応可能なスマートフォンやICカードリーダライタを利用します。申請の際は、安定した通信環境の下で行うようにしましょう。
個人事業主の引越し代と経費について
業者に依頼して引越しを行う際には引越し代がかかりますが、この引越し代を経費にできるかについては、個人事業主が納税を考える上での大きな問題です。
事業所のみの引っ越し
事務所の引っ越しであれば、かかった費用を全額経費として計上できます。引越し業者への支払いは雑費、不動産仲介手数料は支払手数料として処理するのが一般的です。事業専用の事務所であることが明確な場合に適用されます。
住居兼事務所からの引っ越し
事業部分と私用部分を按分して経費計上する必要があります。全額を経費として計上することはできず、事業に使用する面積や時間などを考慮して、適切な割合で按分を行わなければなりません。
個人事業主が開業後に開業届を提出する場合の注意点
個人事業主が開業後に開業届を提出する必要がある場合はどのようなケースでしょうか。
●納税地の異動又は変更の場合
●事業所等の新設・増設・移転・廃止があった場合
●所得の種類(不動産所得、事業所得など)に変更があった場合
●事業を廃業した場合
など
一方で、以下のような場合は開業届の提出は不要です。
●個人の氏名変更(結婚・離婚など)
●開業時に記載した所得の種類(事業所得、不動産所得など)内での新規事業を始める場合
例)事業所得である建設業を営んでいたが、新規事業として飲食業であるカフェをはじめた場合
など
個人の住所変更のみや新規事業の開始では、開業届の提出は不要となります。
このように、事業活動に影響のある変更があった場合にのみ、開業届の提出が必要になるのが一般的です。個人事業主が引越しを行う際、事業所等がある場合は、納税地を自宅(住所地)にするか事業所等にするかは、事業上都合の良い場所を選択し、適切な手続きをするようにしましょう。
開業届の再提出期限を過ぎても提出できる?
開業届の提出の期限は、異動又は変更から1ヶ月以内と定められていますが、期限を過ぎたからといって罰則はなく、提出はいつでも可能です。 提出を忘れていた場合は、速やかに所轄の税務署に提出をしましょう。
起業のお悩み相談はcanaeruへ
個人事業主の住所変更に伴う必要な手続きについて解説してきましたが、手続きのタイミングや手順を把握するのは簡単ではありません。
必要な手続きを忘れてしまうと、その後の経営にも影響を与える可能性があるため、手続き面に不安がある方は、開業支援サービスを利用してみるのはいかがでしょうか。
無料で開業や経営に関する相談を行える『canaeru(カナエル)』では、開業時や住所変更時に必要な手続きなどに関するサポートを受けることもできます。
開業に向けて心強いサポートをお求めの方は、ぜひcanaeruの利用を検討してみてください。
無料開業相談まとめ
個人事業主が引越しや住所変更をする場合、状況に応じて開業届など必要な書類を所轄の税務署に提出する必要があります。移転などの際には事業のことばかりに目が向いてしまい、書類などの届出を怠ってしまうことも珍しくありません。
しかし、必要な手続きをしないままでいると、確定申告が正しく行えない可能性があるほか、従業員にも悪影響を及ぼしかねません。
店舗や事業所の住所が変わる際には、余裕を持って必要な届出を準備し、ゆとりをもって手続きを行うことを心がけましょう。
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