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この1年、まさに“コロナに振り回された”外食業界。三たびの緊急事態宣言発出で経営環境は厳しくなる一方ですが、それでも前を向いて進んでいかなければなりません。コロナ禍の中で生き残ってきた店や企業には、これからも消費者に外食ならではの価値や楽しさを提供していく責任があると考えます。
そこで大切なのは、苦しい状況を乗り越える中で得てきた教訓を今後に生かすこと。うまくいったこと、いかなかったことを含めて、すべてが貴重な経験法則です。今回は、コロナ禍がはじまって以降に飲食店と外食企業が取り組んできたことの中から「成功と失敗」の実例を紹介していきます。
目次
- <成功事例>
- 店舗の規模感やニーズにマッチした業態転換で成功を収めた事例3選
- ①デリバリー需要に適した業態転換の実現
- ②ランチで1日3回転!肉バルから焼肉食べ放題への転換
- ③おひとり様でも利用しやすい大衆酒場で売上げを回復
- 新しい販売方法や販売促進でコロナ禍需要を捉えた事例4選
- ①キッチンカーによる居酒屋メニューの販売で月商80万円の売上げ
- ②エリアを絞ったDM戦略で6,000円超の高級弁当を販売
- ③店舗のコンセプトを伝えたクーポン付のポストカードでリピーター増に貢献
- ④人気YouTuberとのコラボで話題作りに成功
- <失敗事例>
- テイクアウト、デリバリー需要の誤算で起きた失敗事例4選
- ①価格設定の誤りでスタッフの士気が低下
- ②販売者と消費者の認識のズレから生じた失敗
- ③エリアにミスマッチなデリバリー業者の選択でコスト増しに
- ④店舗の強みを潰してしまうデリバリー業者の選択ミス
- 経営判断のミスや甘さで失敗した事例3選
- ①撤退に対する決断の遅れや見通しの甘さで負担が増加
- ②趣旨が伝わらずクラウドファンディングの支持が低迷
- ③スタッフへのケア不足で離職率増に
<成功事例>
店舗の規模感やニーズにマッチした業態転換で成功を収めた事例3選
外出自粛で人の動きが停滞・激変した結果、外食業界では既存の業態が苦境に追い込まれる例が続出。そうした中で起こったのが業態転換や、既存業態に代わる新しい業態を開発する動きでした。
①デリバリー需要に適した業態転換の実現
福岡で居酒屋業態などを展開するA社では、2020年4月にもつ鍋と焼肉店専門店でデリバリーを導入しましたが、思うように売上げが上がりませんでした。
そこで同店8月に肉丼を主力にしたゴーストレストランを新たに開発したところ、月商が15万円から40万円に急増。ポイントは店名に「肉と米」と冠したことです。
宅配は単身者の利用が多く、料理名で店を探す傾向が強いため、主力商品を明確にアピールしたことが奏功しました。
②ランチで1日3回転!肉バルから焼肉食べ放題への転換
兵庫でバルの繁盛店を展開するA社では、2021年1月に既存の肉バルを食べ放題の焼肉店に業態転換。ディナーはまだ本格稼働していませんが、ランチは22席が1日3回転する繁盛ぶり。
その要因は価格設定と売り方にありました。時間無制限で1人1,000円という格安の設定に加え、お客からストップがかかるまで肉を提供し続けるユニークなスタイルが人気の要因です。
③おひとり様でも利用しやすい大衆酒場で売上げを回復
徳島を本拠地とするS社は、鮮魚を主力にしたバルを2020年8月にイタリアンスタイルの大衆酒場に業態転換。12月には売上げが月商200万円から400万円に回復しました。魚バルの主力客層だったグループ客は、“密”を避ける流れから減少傾向にありました。そのため大衆酒場では、1~2人客が利用しやすいようフードメニューの中心価格を880円から380円に下げ、1,000円の飲み放題プランを導入。これがコロナ禍でのニーズに合致しました。
新しい販売方法や販売促進でコロナ禍需要を捉えた事例4選
消費者ニーズの変化を踏まえて、テイクアウトやデリバリーなど新しい販売方法に取り組む事例が次々に登場。また、外食控えの動きが広がる中で店の認知度の維持・向上を図るための取り組みも目立っています。
①キッチンカーによる居酒屋メニューの販売で月商80万円の売上げ
愛媛で居酒屋を展開するO社は、2020年4月にキッチンカーによるランチの移動販売をスタート。市内の公園やスーパーマーケットの駐車場などで販売し、月商80万円を売り上げました。注文後に調理する居酒屋メニューを提供することで他店のテイクアウト販売と差別化を図れたことが成功の要因となっています。
②エリアを絞ったDM戦略で6,000円超の高級弁当を販売
コロナ禍の巣籠り需要をうまく捉えたのが茨城で和食店を展開するO社。2020年5月から6,000円、8,000円、1万2,000円の弁当3種を発売したところ好調な売れ行きで、それ以前から販売している3,000~5,000円の弁当と合わせて現在でも各店平均で1ヵ月100万円を売り上げています。日本郵便の地理情報システムを使い、高所得世帯に絞ってDMを打ったことも売上げを押し上げました。
③店舗のコンセプトを伝えたクーポン付のポストカードでリピーター増に貢献
京都で居酒屋を展開するA社は2020年4月に、調理担当者の顔写真を印刷したポストカードを添えた弁当のテイクアウト販売をスタート。弁当自体の売れ行きはいまひとつでしたが、ポストカードの裏面に印刷した割引クーポンは6月~10月に各店で1日平均3~4枚を回収。スタッフの顔を見せて「居酒屋は楽しい」というコンセプトを伝えたことが、回収率の向上につながりました。
④人気YouTuberとのコラボで話題作りに成功
馬肉料理専門店を展開するB社は、コロナ禍を受けてEC販売に取り組んでいました。その販促活動で効果的だったのが2020年5月に開催した人気YouTuberとのコラボレーション企画でした。馬肉キット1万5,000円の購入を参加条件とし、期間中に2,000セットを販売。YouTuberの知名度に加え、運動不足解消とボディメイクが話題になっていたことが追い風になりました。
<失敗事例>
テイクアウト、デリバリー需要の誤算で起きた失敗事例4選
多くの店や企業が取り組んだテイクアウトやデリバリーですが、思うような結果が出なかったという例も少なくはありません。売上げが上がらないだけでなく、コストや労力に見合わないというケースもあったようです。
①価格設定の誤りでスタッフの士気が低下
山梨で居酒屋を展開するI社は2020年4月より、総菜と500円のワンコイン弁当をテイクアウトで販売を開始。しかし売上げが振るわないことに加え、スタッフのモチベーション低下に悩まされました。お客様が目の前で楽しむ姿を目にできないことに加え、長時間仕込んでつくった弁当が安価であることにスタッフがギャップを感じたという事例です。
②販売者と消費者の認識のズレから生じた失敗
大阪でラム肉レストランなどを展開するS社は、2020年7月に調理済みのラム肉をテイクアウト販売。スパイスでマリネした生のラム肉を真空パックしたもので、300gで1,200円と安価に設定しましたが、まったく売れませんでした。家飲みのアテとしてのニーズを想定し、自宅でもつくりたての味が楽しめるという提案をしたつもりでしたが、お客様からは「手間がかかる」と受けとめられてしまったようです。
③エリアにミスマッチなデリバリー業者の選択でコスト増しに
首都圏でラーメン店など16店を展開するA社はコロナ禍でいち早くデリバリーに乗り出し、配達可能エリアに応じて複数のデリバリーアプリを導入していますが、店の立地によってアプリとの相性が大きく異なる点が悩みとなっています。たとえばUberEatsは配達員の多い都内の港区エリアでの売上げは好調ですが、都下の南町田エリアは不調です。この相性の良し悪しを見極めずに導入したことで無駄なコストがかかっているとのことです。
④店舗の強みを潰してしまうデリバリー業者の選択ミス
ピッツァが500円均一というコンセプトを打ち出して人気のI社は、2020年6月以降に直営15店で順次UberEatsに加盟、しかしどの店も軌道に乗っていません。配達コストなどを考慮すると価格を1枚980円に設定せざるを得ません。ロープライスを売りにする業態がデリバリーを行うことで強みを発揮できないと感じているという声もあります。
経営判断のミスや甘さで失敗した事例3選
①撤退に対する決断の遅れや見通しの甘さで負担が増加
飲食店で難しいのは撤退の決断ですが、コロナ禍でもそれは同様です。都内でエスニック料理店を展開するS社は、18年にオープンし売上げ不振だった店の閉店をコロナ禍前に決断できなかったことが悔やまれると言っています。20年7月に閉店しましたが、その間に財務的な負担が増すことになりました。また、福岡の居酒屋企業B社も、コロナ禍は早期に収束し20年7月以降は不採算店の売上げも上向くという予測が外れ、見通しの甘さを痛感。その店は結局、21年4月に閉店を決断しました。
②趣旨が伝わらずクラウドファンディングの支持が低迷
鮮魚が売りの居酒屋を展開するM社は、コロナ禍でダメージを受けた生産者の支援を目的に漁師を救うプロジェクトを企画。クラウドファンディングで出資を募りましたが、目標額500万円に対して100万円強に留まってしまったようです。リターンの反響が弱かったことが大きな要因で、漁師とのコラボ商品には支援が集まりましたが、店でスイーツが無料になるなど漁師とは無関係なリターンは不評でした。主旨が明確に伝わらなかったことが失敗の要因となったようです。
③スタッフへのケア不足で離職率増に
首都圏を主力に居酒屋業態を展開するM社は、コロナ禍でも社員の給与を100%保証してきましたが、それでも2020年4月~12月に社歴の浅い社員を中心に30人が離職してしまいました。20年に企画していた社内行事をすべて中止したことが要因のひとつと見ています。リアル対面のコミュニケーションが減ったことで、スタッフが抱えた不安や悩みに対して適切にフォローできなかったことを反省しているようです。
外食業界にとどまらず、すべての産業にとって未曾有の事態となった今回のコロナウィルス禍。これまでの成功体験は通用せず、あらゆる取り組みを手探りで進めるしかない状況ですが、その結果には必ず未来に繋がるヒントが秘められているはずです。ここで紹介した事例を、withコロナ時代の新しい成長戦略を実現するための参考になればと思います。
この記事の監修
株式会社柴田書店/株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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