需要があれば、ランチ営業にはメリットがあります。
コストと考えがちな、仕込み、メニューの用意、人件費なども、上手なオペレーションで利益転換できるのです。
ランチ営業のポイントを、3つにまとめました。
また、これらからの時代に合わせた「ランチタイムの新常識」もご紹介します。
目次
ランチ営業は儲かるのか?まずは需要の有無を確認
まずは、店舗があるエリアに、ランチの需要や市場があるのかを調査。「住宅地」「ビジネス街」のいずれかであることがマストです。その条件を満たしたうえで、以下の点をチェック。
ランチ営業のチェックポイント
1.ファストフード店がある
2.コンビニエンスストアがある
3.お弁当屋さんや定食屋さんがある
4.ランチ時に行列ができるほど混雑しているお店がある
これらの条件は一見、ライバル多数で避けたほうがいい気がしますが、実際は逆。競合店があるということはそれだけ市場がある、需要があるということです。特にランチ営業の場合は、周囲に競合店がない状態の方が危険でしょう。
なぜならそのエリアにはそもそもランチに訪れる人が少ない、つまり需要がない可能性があるからです。そんな場所でランチ営業をしても誰も訪れてはくれません。まずは需要があるかどうかジャッジすることから始めることが必要なのです。
ランチ営業のメリット-1- 食材を使いまわせる
夜のメニューで使っている食材のストックを使用できることは、ランチ営業の大きなメリットです。食材の回転を早めることができ、食材ロスを避けられます。特に、小さな店舗にとっては食材の無駄を減らし、無駄なコストを無くすことは非常に重要。例えば、ベジタブル料理を"売り"にしているお店だとしましょう。たくさんの野菜を仕入れていることを活かして、ランチメニューは野菜カレーにしたり、セットのサラダに活用できます。ランチに適したメニューとして提供することで、食材の回転率を高められるのです。これにより、いつでも新鮮な素材を使った料理を提供することが可能になるというわけです。
ランチ営業のメリット-2- 相乗効果で夜の売り上げアップ
お客様は、高級なお店であればあるほど、いきなり夜の時間帯に訪問するのは敷居が高いと考えているかもしれません。そんな時に使えるのがランチです。食べ歩きが好きで、いろいろなお店に行っている人ほど、初めてのお店に行く場合は、まずランチタイムからチャレンジするものです。夜に比べて価格帯が手ごろなランチタイムでお試しして、そのお店でどんな料理を食べられるのか、どんな雰囲気なのか、どのくらいの価格帯なのかを知ることで、再度夜に訪問するか否かを決めます。
例えば、オフィス街にあるお店であれば、ランチを気に入ってくれたお客様が仕事帰りに得意先の人を連れて夜の営業時間に来てくれるなどに発展するケースは多々あります。このように、ランチ営業をすることで、夜のお客様も増加するという相乗効果もあります。しかし、逆にランチタイムで評判を落としてしまうと、夜に来てくれるはずのお客様まで逃してしまうのでくれぐれも注意しましょう。
ランチ営業のメリット-3- メニューで利益率アップ
ランチ営業を始めようと検討している人のほとんどは、昼の時間帯に営業することで、売上増加を期待しています。ランチの顧客層はどうしても単価が低くなりがちなため、夜ほどの売上は見込めません。しかし、利益率はメニュー次第で改善することができます。まず、メニューを増やすほど、商品開発やオペレーションなどの手間がかかってしまうので、ある程度絞って提供すること。そして、夜も提供している料理で賄えるものを提供すること。ランチオリジナルのメニューを出したいなら、カレーライスやシチューなど、ひとつのお鍋で大量に作れるものがよいでしょう。限られた時間での食事となるランチタイムは、お客さまもあまり多くのメニューの種類を望んでいない、ということも覚えておきましょう。
ランチ営業をする際の注意点
ランチ営業は、需要が高ければ非常に大きな収益になりうる可能性を秘めています。ただし、上手くランチ営業を運営していかなくては、逆に赤字になってしまうことも・・。
ランチ営業をする際の注意点をまとめてみました。
ランチ営業の注意点-1- 客単価
ディナーは、メニューが豊富であるため全体的に価格設定が高くなります。アルコールが出る可能性が高くなるため、客単価も自然と上がります。しかし、ランチはディナーと比べると客単価が低くなります。長く滞在して美味しい食事を楽しむよりも、コストを抑えて手軽に食事をしたいという需要が高くなるためです。ランチ営業を開始する段階で高い価格設定をしてしまうと、お客さまのニーズにマッチしないことが多いのです。
ディナーとランチを同じくくりとして考えると、大きな失敗につながることもあります。客単価を考慮したランチ営業を行いましょう。
ランチ営業の注意点-2-労働時間
ランチ営業をする際、労働時間に気をつける必要があります。
共同経営をして一方がランチ担当、もう一方がディナー担当とする場合は問題ありませんが、一人でランチもディナーも担当するとなると長時間労働になります。
例えば、ディナーの場合は、会社が終わる17時頃から電車が無くなる23時や0時頃まで開いているお店が多いです。飲食店は、仕込みや開店準備・片付けなどを行う必要があるため、それらを踏まえると、10時間以上は店舗にいる必要があります。
ランチ営業が始まると、さらなる労働時間を強いられます。体調を崩してしまうリスクが高くなるのです。従業員を多く雇ったり、曜日限定でランチ営業するなど工夫した運営が重要です。
ランチ営業の注意点-3- 人件費や水道光熱費
ランチ営業を行うと、それに伴うコストが発生します。さらに人を雇うことによる人件費や水道光熱費などのランニングコストがかさむことが予想されるのです。
十分な運転資金がある場合や売り上げが伸びる見込みがあれば問題ありません。しかし、ランチ営業における競合他社は多く、価格競争も激しいため、ランチ営業で稼ぐのは容易ではありません。
ランチで大儲けすることを見込むよりも、ランチ営業を行うことによって知名度を上げたり、料理の質の高さをアピールするなどの効果を見込むほうが得策です。
こうしたコストを考慮のうえ、ランチ営業の仕方を検討しましょう。
シミュレーションを行う
ランチ営業で成功するかは、周辺でランチ営業を行っている飲食店の様子をチェックするなど、シミュレーションを行うことである程度の予想ができます。
例えば、ランチの価格を1人700円程度として、原価率を30%で計算すると、1人あたりの利益は490円です。人件費を抜いて、時給900円の1日4時間で2人ランチ営業のために雇ったとすると、1日の人件費は7,200円です。この人件費を賄うためには、15人の来客が最低でも必要になります。
そこからさらに自分の給与分や店の水道光熱費を考えて、1万円の上乗せを目指すとなると、20人追加の35人は来店する必要があります。
このように、ランチ営業におけるシミュレーションをしておくことは非常に重要です。無理のないプランでランチ営業スタートを検討しましょう。
ランチ営業の新常識「ソーシャルディスタンス」
ある企業が行ったアンケートによると、ランチタイムが「12:00~13:00」である、と答えた方が7割を占めたそうです。
しかし、これでは自然と「密」が生まれてしまうため、飲食店も知恵をしぼり、このピークタイムに密を作らない取り組みを行っています。
そのひとつの例として紹介したいのが、東京・千駄ヶ谷の定食店「お食事処asatte」です。
コロナ前は1,000円だった価格をピークタイムの12時1分から13時までを1,200円とし、その前後の時間帯は850~1,100円の幅で変更して営業をしているそうです。これによりお客様はピークタイム以外の時間帯で来店するようになったそうです。
詳しくは下記の記事をご確認ください。
「一蘭」「喫茶室ルノアール」等、コロナ禍を逆手にリピーターを作り出すアイデア事例11選!
この例に限らず、13:00以降はコーヒー一杯無料、○○サービスなど、ピークタイムから人の分散を促す様々な施策が、これからのランチの新常識になるかもしれません。
まとめ
ランチ営業は、もちろん、デメリットもあります。作業や準備の時間も増えることになり、スタッフも増員しなければいけない、オペレーションの煩雑化も想定できます。しかし、上手く活用すればお店にとって大きな利点となり、売上を伸ばすいいきっかけにもなります。運営コストをよく考慮したうえでランチには取り掛かりましょう。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
