居酒屋やバルなどの夜営業をメインとする飲食店が、ランチ営業を始めるケースをよく見かけます。ランチ営業はディナーに比べて単価が低く、仕込みの時間や手間が増える割には利益を出しにくいと考えられていますが、実際のところ儲かるのでしょうか?
ランチ営業を行う目的は、収益のほかにも集客増やPRなどが挙げられますが、いずれにせよやるからには利益を出さなくてはなりません。そこで本記事では、これからランチ営業を始めたいと考えている方に向けてメリット・デメリットや注意すべきポイント、成功への心得などについて解説します。
ランチ営業は儲かるのか?まずは需要の有無を確認
まずは、店舗があるエリアに、ランチの需要や市場があるのかを調査しましょう。店舗が「住宅地」「ビジネス街」のいずれかにあることがマストです。その条件を満たしたうえで、以下の点をチェックします。
- ファストフード店がある
- コンビニエンスストアがある
- お弁当屋さんや定食屋さんがある
- ランチ時に行列ができるほど混雑しているお店がある
これらの条件は一見、競合店が多数あるように見えるため避けたほうがよいと思われるかもしれませんが、実際は逆。競合店があるということはそれだけランチの市場がある、需要があるということです。特にランチ営業の場合は、周囲に競合店がない方が危険です。
競合店がないエリアは、そもそもランチに訪れる人が少ない、つまり需要がない可能性があります。そんな場所でランチ営業をしても誰も訪れてはくれません。まずは需要があるかどうかジャッジすることから始めましょう。
ランチ営業を行う3つのメリット
店舗があるエリアにランチ需要や市場があるとわかれば、ランチ営業を成功させるチャンスは十分にあると言えます。そもそも、ランチ営業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的なメリットを3つ解説します。
食材を使いまわせる
飲食店にとって食材ロスは利益に直結する重要な問題です。夜営業で余った食材をランチ営業で活用すれば、廃棄するはずだった食材を利益に還元できるため、店舗にとっては大きなメリットになります。
例えば、焼き鳥が人気の居酒屋だと多くの鶏肉を仕入れるため、余った鶏肉は翌日のランチ営業で親子丼や唐揚げにして提供することができます。ロスになる食材が毎日変わる場合は、メニューを日替わりにしてもよいでしょう。食材の回転を早めることで、いつでも新鮮な食材で料理を提供できるので、顧客満足度の向上にもつながるはずです。
相乗効果で夜営業の売上アップ
もし高価格帯の飲食店を経営している場合、お客様は高級なお店であればあるほど、いきなりディナータイムに訪問するのは敷居が高いと考えているかもしれません。まずは価格帯が手ごろなランチタイムに利用してもらい、ディナーでも訪れたいと感じてもらうことで、夜営業へのPRになるでしょう。
実際に、ランチを気に入ったお客様が仕事帰りに同僚や得意先の人を連れて夜営業に来てくれるケースは多々あり、相乗効果で売上アップが期待できます。ただし、ランチタイムで評判を落としてしまうと逆効果になるため、注意が必要です。
メニューを絞って利益率アップ
ランチはどうしても単価を抑えるため、夜ほどの売上は見込めません。しかし、利益率はメニュー次第で改善することができます。
利益率を上げるポイントは、メニュー数を増やし過ぎないこと。メニューの数が多ければ使う食材が増え、オペレーションなどの手間もかかるため、効率的ではありません。
もう一つのポイントは、夜営業を優先したメニューにすること。余りそうな食材や仕込みの手間が少ないメニューを開発し、効率を重視した営業を心がけましょう。
ランチ営業を行う2つのデメリット
ランチ営業には食材ロスの削減や夜営業への相乗効果といったメリットがありますが、方法を誤ると経営を圧迫する要因にもなりかねません。ここでは、ランチ営業のデメリットとして、以下の2つを紹介します。
赤字を出しやすい
実は、ランチ営業を始める飲食店が多い中、開始後1年以内にやめてしまう飲食店も多いのが現状です。その要因のほとんどは、難しいコスト管理にあります。
ランチ営業と夜営業の大きな違いは客単価です。ランチ営業は手ごろな価格のメニューを販売する分、集客数で売上をカバーしなければなりません。単価の違いから夜営業と同じような売上を見込めないことは明らかですが、赤字を出してしまっては元も子もないのです。
しかし、いざランチ営業を始めてみたものの思うように集客できず、仕入れや人件費、光熱費といった経費だけがかかり、最終的に赤字を出してしまうケースが多く見られます。徹底したコスト管理ができなければ、ランチ営業は店舗にとって負担になってしまう可能性があるのです。
スタッフのシフト組みが大変
ランチ営業を始めると必然的に営業時間が長くなるため、その分シフトに入るスタッフの人数を増やす必要があります。飲食店経営者なら、シフト組みの大変さは周知のとおりでしょう。また、昼と夜の通し勤務でスタッフに過重労働をさせることになっては、店内の士気を下げてしまうことにもなりかねません。
ランチ営業を始める際は、ランチタイム専用のスタッフを新しく雇用する、通し勤務の休憩時間をこまめに確保するといった工夫が必要です。
ランチ営業を成功させるための心得
多くのメリットを期待していざランチ営業を始めてみても、実際にはリスクもあり、成功するかどうか不安に感じる部分は多いでしょう。ランチ営業を成功させるためには、事前準備が重要です。以下の2点を参考に、ランチ営業の準備を始めてみましょう。
目的をハッキリさせておく
食材ロスの削減を目的にランチ営業を始めたものの、お客様からの要望で新しいメニューを増やして結局食材が余ってしまった…なんてことになっては本末転倒です。ランチ営業を始めるにあたっては、目標を明確にし、その目標に沿った営業方法を検討する必要があります。
ランチ営業の目的として多いのは、売上、認知拡大、食材ロスの削減の3つ。売上アップが目的なら、単価や集客人数、回転率などをクリアするために綿密な戦略を練ること。夜営業の認知拡大を目的にするなら、薄利あるいは多少の赤字でも続けられる資金力が重要です。また、食材ロスの削減を目指すなら、余った食材でもバリエーションを出せるメニュー開発を行いましょう。
事前にシミュレーションを行う
ランチ営業が成功するかどうかの判断に迷った場合は、シミュレーションを行い、収支の予想を立ててみましょう。以下は、1食700円のランチを提供する場合のシミュレーションです。
原価(原価率30%) 210円 人件費(1日4時間×2人@時給900円) 7,200円 店の水道光熱費、他 10,000円
1食700円のランチの原価が210円とすると、1食分の利益は490円です。ランチ営業のために2人雇ったとすると、ランチ営業にかかる人件費は7,200円。この人件費を賄うためには、最低でも15人の来客が必要になります。そこからさらに自分の給与分や店の水道光熱費を考えて、1万円の利益の上乗せを目指すとなると、35人以上の来店を目指す必要があります。
「本当にこれだけの集客が可能かどうか」営業時間や回転率を踏まえて検討することが大切です。
先輩開業者から学ぶランチ営業
「canaeru」では開業サポートを行った飲食店開業者の方へインタビューを行っています。今回はその中から、ランチ営業を始めた先輩開業者の話を2つ紹介します。ランチ営業を始めたきっかけや良かった点・苦労した点などから、成功の秘訣を探っていきましょう。
bar SLIGHT 様
JR神田駅から徒歩3分、たくさんのお酒と300枚ほどのレコードに囲まれた音楽にこだわったバー「Bar SLIGHT」は、コロナの影響で先延ばしになりながらも、2020年4月にオープン。緊急事態宣言中だったため夜営業ができず、お酒の提供時間も制限され、開業当初から厳しい状況が続いていました。
しかし、そのような状況下で近隣の飲食店の閉店が相次ぎ、ランチ難民が出ていた噂を聞きつけランチ営業を開始。提供していたのは軽食メニューでしたが、近隣の会社員が来店してくれるようになりました。「ランチをきっかけにお店を知り、バー営業に来てもらえるケースも増えたため、やってよかった」と開業者の笹木さんは言います。
エリアのランチ需要をいち早く読み取り、実行に移したことが成功につながった好例です。
関連記事:20代でバーを開業、コロナ禍での苦肉の策として出したランチ営業が認知拡大に繋がる
揚げたて天ぷら ささき 様
2020年3月、大阪府吹田市の活気ある住宅街にオープンした「揚げたて天ぷら ささき」。開業当初からランチ営業を行っていましたが、夜営業に比べて集客が少ないことが課題でした。
コロナ禍に入り緊急事態宣言が発令されたことをきっかけに、テイクアウトを開始。メニューは500円・700円の天丼と800円の天ぷら盛り合わせの3つに絞り、チラシをポスティング。すると、コロナ禍にもかかわらず売上が右肩上がりに。その後、テイクアウトをきっかけにリピーターが増えたことから、ランチ・ディナーともに集客が安定したと言います。
成功の秘訣については「天ぷら専門店は一見、敷居が高いようにも見えるのですが、500円という低価格のメニューが功を奏したのかもしれない」と開業者の佐々木さんは言います。天ぷら専門店という特徴柄、ランチ・ディナーともに使用する食材は変わらないため、リスクが少なかった点も成功の秘訣でしょう。
関連記事:開業直後にコロナ直面! ワンコインランチの開始、チラシのポスティング…集客課題を乗り越える「揚げたて天ぷら ささき」のコロナ禍での経営実態
まとめ
多くの飲食店が行っているランチ営業。目的と戦略を明確にすれば夜営業との相乗効果で売上増加が期待できるでしょう。しかし、実際には作業や準備の時間が増えることに加えてコスト管理が難しく、失敗に終わってしまう飲食店が多いのも事実です。
参考記事:飲食店を開業するには?必要な準備の4ステップをわかりやすく解説
ランチ営業を成功させたいなら、まずは専門家に相談することも一案です。「canaeru」では不動産、資金計画、販促など幅広い分野で経験豊富なコンサルタントが在籍し、飲食店をサポートしています。ランチ営業が成功するか不安な方やどのように進めるべきかお悩みの方は、ぜひ一度無料相談をご利用ください。
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この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
