知識や経験を活かして独立開業(起業)したいという夢を見ている人は少なくありません。
しかし、夢を形にするには様々なステップを踏む必要があります。
この記事では、個人事業主として開業し、店舗を構えることを志している方に向けて、開業の際に必要な準備とそれぞれの基礎知識について説明します。
そして、経済やビジネス手法が一気に変わった2020年…。
これからの「お店経営」に必要なものとは、どんなことなのでしょうか?
目次
開業までのステップバイステップ
業種や条件によって多少の変化はあるものの、開業の準備期間はおよそ1年程度と見積もるのが一般的と言われています。
ここでは準備期間中に踏むべきステップを大きく7つの項目に分けて紹介していきます。
(1)コンセプト作り
開業準備の最初の第一歩はコンセプト作りです。
コンセプトとは、言い換えれば「どのようなお店にしたいのか」を言語化したもの。
コンセプトを決めることでお店の売りと方向性が明確になり、ブレのない店舗づくりと経営方針の設計ができるようになります。
地に足の着いたコンセプトを考えるためには、まず目標を細分化することが重要です。
「誰に来店してもらうか・何を提供するか・どのように利用されるか」といった観点から考えていきましょう。
■誰に来店してもらうか
どのようなお客様にご来店いただきたいのかをイメージすることで、立地や価格帯といった店舗に求められる要件も整理できるでしょう。
極端な例ですが、「男子高校生が部活帰りに寄る飲食店」であれば、一等地の高級フレンチと学校付近の定食屋のどちらがよりニーズに適っているかは明白と言えます。
・年齢と性別
・職業
・収入
・家族構成
・来店する時間
こうした要素を定義することで、ターゲットを明確にしていきましょう。
■何を提供するか
あなたのお店はどのような商品やサービスを取り扱うのでしょうか。
開業を考えている方であれば業態は漠然とイメージできているかもしれませんが、実際に開業して店舗を運営していく際には、具体的にどういったものを提供するのかも考えなくてはなりません。
たとえばオーガニック食材にこだわったレストランや、何年もかけて開発したスープで勝負するラーメン屋など、「お客様に提供したいものの核」が明確になっていれば、仕入れやメニュー作成を考える助けになります。
■どのように利用されるか
「お客様はどういった体験を求めてお店を利用するのか」という観点も重要です。
仮にカフェを開くとしたら、あなたのカフェはお客様にとってどのような場所になるのかを考えてみましょう。
ゆっくりとくつろげるお店、仕事や勉強ができるお店、あるいはデートで訪れるおしゃれなお店など、お客様から見たお店の価値は何なのかをイメージすることで、内外装はもちろんサービスのオペレーションを作成したり、どういった従業員を雇うべきか考えたりする際の指針になるでしょう。
(2)事業計画書の作成
事業計画書は金融機関から融資を受ける際の説明資料として用いられる重要なものであるほか、自分の事業を客観的に見つめ直すシミュレーションとしての役割も併せ持っています。
事業計画書の書き方は人によって様々ですが、以下のような内容をまとめるのが一般的です。
・事業の内容や動機
・事業主の経歴
・収益の見込み
・開業資金と運転資金
・経営戦略
中でも特に重要なのは収益の見込みです。
上述したとおり、事業計画書は銀行などから融資を受ける際の審査にも影響するため、融資担当者に対して「開業から○年間でいくらの利益を上げ、遅滞なく返済できる見込みだ」と説明できるような具体的な損益の予測を立てる必要があります。
客単価や回転率といった指標を設けて売上予測を立て、仕入れ(売上原価)や運転資金といったコストを見積もることで、信憑性の高い損益予想を立てることができるでしょう。
(3)資金調達
開業に必要な資金を調達するには、自己資金(自分で用意可能なお金)の他に融資を受けるなどの方法があります。
その際、借入先として多くの方が利用しているのが日本政策金融公庫の創業融資制度です。
財務省所管の公的な金融機関である日本政策金融公庫は、一般金融機関よりも融資を受けやすかったり、自己資金が少額の場合でも融資を受けやすかったりといったメリットがあります。
また、事業内容によっては地方自治体から補助金や助成金という形で支援を受けられる場合もあります。
補助金や助成金は受給に際して条件があるものの、原則として返済の必要がないという特徴があるので、これから事業を開始するのであればぜひとも利用したい制度です。
2018年度に開業を行った人の統計を見ると、開業資金の平均値は1,062万円で、このうち自己資金(自分で用意可能な資金)は平均で292万円でした。これらの数値をひとつの目安として考えてみてください。
(4)物件探し
店舗型ビジネスであれば、物件探しは事業成功の明暗を分ける生命線と言えます。
しかし、物件の良し悪しというものは相対的な評価であり、どんなビジネスモデルにもぴったりとフィットするような完璧な物件などありません。
そこで、物件探しをする際には今一度コンセプトと事業計画に立ち返り、物件の条件を明確にしていく必要があります。
・そもそもどのようなお客様がターゲットなのか
・ターゲットはどういったエリアで集客できるのか
・賃料にかけられる費用はどのくらいか
こうした条件を明確にした上で、「広さ」「周辺の環境」「付近の同業店舗数」といった要件とすり合わせをしていきましょう。
すべてが希望通りとはいかなくとも、絶対に外せない要件や、逆に妥協ができるポイントもあるはずです。
物件探しは考慮すべき材料が多く、開業準備のなかでも非常に時間のかかる工程です。
しかし、焦らず一つずつ条件を固めていくことで理想と現実の乖離を防ぐことができるでしょう。
(5)店舗の内外装工事(店舗づくり)
内外装をデザインするということは、言い換えると「店舗のコンセプトを具現化する」ということです。
お客様から見て、そのお店から得られる体験がひと目でイメージできるようなものが望ましいと言えます。
・ターゲットにあなたのお店をどう見せたいか
・あなたのお店はターゲットにとってどのような価値があるか
・事業内容との整合性が取れているか
こうした軸を持って内外装のデザインに臨むことで、一貫性のあるお店づくりが可能になります。
施工業者に工事を依頼する際には、実在するお店などを参考にし、雑誌や写真などを通じてイメージを共有することも大切です。
また、これらと並行して店舗の設備や備品も揃えていく必要があります。
事業によって必要なものは様々ですが、たとえば飲食店であれば客席用のテーブルや椅子、食器、厨房機器が必要になるでしょうし、お客様が利用する傘立てなど細かいものまで、抜け漏れがないようリストを作成し、事業のスタートに備えましょう。
(6)提供商品と仕入先を決める
お店で実際に提供(販売)する商品を決め、それらの仕入先を決めていきます。
仕入は提供するサービスの質を左右する要素であり、なおかつ利益を上げるためには原価率を考慮に入れる必要もあるため、決してないがしろにはできない重要な要素です。
さらに、一口に仕入先と言った場合でも、メーカーから直接仕入れたり、卸売業者(問屋)から仕入れたり、あるいはネットショップで仕入れたりと選択肢は様々です。
あなたの店舗に合った仕入先を見つけるためには、以下のような場所に足を運んでみるのも良いでしょう。
・ギフトショー
・見本市
・問屋街(名前の通り問屋の多く立ち並んだ街)
・業界専門誌
ギフトショーや見本市、問屋街では、自分の目で直接商材を確認したり、仕入業者と交渉ができたりするのもポイントです。
仕入先はいわばビジネスパートナー。
しっかりと信頼関係を築ける相手を探しましょう。
(7)営業準備・採用
お店と商品を用意したなら、いよいよ営業開始に備えます。
具体的な店舗のオペレーションを決めたり、販売促進活動を行ったり、従業員の募集をかけたりと、すべきことは多岐にわたります。
■オープンの告知
オープン前から店舗の情報を発信し、客様から認知してもらうことで、実際にオープンした際の集客につなげることができます。
自作したチラシを配布したり、SNSで告知を行ったりといった0円集客から、お金をかけて地方紙やフリーペーパーに広告出稿するなど様々なアプローチがあります。オープンまでのスケジュールや費用と相談しつつ、ターゲットに訴求する方法を考えていきましょう。
■従業員の採用
従業員を採用する場合にも、求人情報誌や求人情報サイトへの求人の掲載、ハローワークなどで募集を行うことになります。
ただ単に人を雇えばいいというものでもないので、「どんな人に働いてほしいのか」という採用基準を作成する必要があるでしょう。
また、採用したらそれで終わりというものではありません。
シフトの管理も必要になりますし、給与計算の方法も整備しなくてはならないので、採用スケジュールには余裕を持ちたいところです。
■各種マニュアルの作成
接客、会計、清掃、備品の管理など、店舗運営の具体的なルールを決めます。行き当たりばったりの運営をしてしまうと、思わぬトラブルが発生した際に混乱してしまいます。
お店を開いてから閉めるまでの業務を洗い出し、抜け漏れがないように入念にイメージしましょう。
ゴールを明確にすることが大事!
手順について解説しましたが、実際に具体的な準備をはじめる前に、「何をゴールにするのか?」を明確にしておく必要があります。
趣味の延長で飲食店などのお店を開業する人もいますが、多くの人は「ビジネス」のはずです。
「いつか自分のお店を持ちたい」というずっと想っていて、お店開業が「夢」だったという人でも、実際に開業に向けて準備をはじめれば、そこには現実が待っています。
「夢」というファンタジー感だけで進められるほど簡単な作業ではないですし、実際、お店を開業したらそこには「ビジネス」が待っています。
つまり、「夢をかなえること」がゴールなのではなく、その先のビジネスで得られるものを決めておく必要があるのです。
ゴールを最初に決めておくことで、コンセプト作りや事業計画が変わってくるので、具体的な準備に入る前に、じっくり考えておくことをお勧めします。
2020年、コロナ後の開業に必要なもの…
開業、ゴール、ビジネス視点・・・と解説しましたが、2020年、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言、自粛要請、その解除後の世界では、ここまで説明してきた「開業手順」と「商売の前提」だけでは、もはや商売を成り立たせていくのは難しいと言えるでしょう。
商売は、「買ってくれる人」がいるから成り立ちます。
新型コロナウイルス感染抑止による自粛要請は、消費者 = 買ってくれる人 の心理を大きく変えました。
これから飲食店を開業しようと考えている貴方自身も、「消費者である自分」の意識はこの時期で変わったのではないでしょうか。
コロナ後の開業に必要なものを、記事にまとめました。
消費者の意識と行動について、是非参考にしてください。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
