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企業や店舗の経営を行う上で重要となるのが「経営戦略」です。先を見据えた綿密な経営戦略を策定することで、事業の安定性がより高まるでしょう。
しかし、経営を始めたばかりだと、経営戦略の必要性や策定方法がよくわからず、適切な経営戦略を立てられていない場合もあると思います。
この記事では、経営戦略の概要や関連用語との違い、経営戦略を策定する手順などについて詳しく解説します。経営戦略の立て方に悩む経営者や担当者の方は必見です。
目次
経営戦略とは企業や店舗の目標を達成するために必須の要素
経営戦略とは、企業や店舗の目標を実現させるためのシナリオや方向性のことを指します。
経営を行う上で、「〇〇のサービスを開発したい」、「社会を変えたい」など、実現したい目的があるはずです。その実現に向け、全体の方針や計画を示したものを経営戦略と呼びます。
各企業や店舗によって目指す方向性は違うため、それぞれ経営戦略も異なります。実現したい目的を達成するためには、自社や自店舗に合わせた経営戦略を練ることが大切です。
経営理念や経営計画とはどう違う?関連用語の概要を紹介
経営戦略と似た用語に、「経営理念」や「経営戦術」、「経営計画」があります。
これらの用語は経営戦略と混同されがちですが、それぞれ別の意味を持つ用語です。経営に関する情報を調べる際によく出てくる用語なので、意味を把握しておきましょう。
ここからは、各用語の概要をそれぞれ解説します。
●経営理念
経営理念とは、企業や店舗の価値観や存在意義を示したものです。多くの企業や店舗では、経営に対する考え方や目標などを経営理念として掲げています。
経営理念を作って社内外に発信することで、経営方針がブレることなく、企業や店舗の方向性が明確になります。
●経営戦術
経営戦術とは、経営戦略を実現させるための具体的な手段のことです。
経営戦略は「何をするか」を指す一方、経営戦術は「どういった手法で進めるか」を意味します。経営戦術によって目的を達成するためのプロセスが決まるため、事業を行う上では非常に重要な要素と言えるでしょう。
●経営計画
経営計画とは、事業の目標を達成させるまでの計画である「ロードマップ 」を指します。短期・中期・長期の3種類があり、それぞれの期間ごとに立てるのが一般的です。
経営計画をしっかり立てておけば、目標に到達するまでの道のりが明確になります。目標に向かう途中で、企業や店舗の方向性をブレさせないためにも大切な要素です。
経営戦略の必要性
企業や店舗の運営をする方の中には、「経済戦略にとらわれずに自由にやりたい」という方もいるでしょう。
しかし、社会の経済環境は日々変わっていくものなので、行き当たりばったりの経営で生き残るのは難しいのが現状です。安定して事業を継続させるためには、現在の経済環境に合わせた経営戦略を練る必要があります。
企業や店舗を存続させるためにも、経営戦略は非常に重要な要素です。まだ戦略を策定していない方は、自社や自店舗の強みを活かせる経営戦略をしっかりと練りましょう。
また、経営戦略を立てた時点で満足するのではなく、必要に応じて組織の改革なども行うことが望ましいです。
経営戦略は3種類に分類できる
経営戦略は、下記3種類のレベルに分類できます。
• 企業戦略
• 事業戦略
• 機能戦略
実際に経営戦略を練る際は、企業戦略、事業戦略、機能戦略の順に内容を落とし込み、具体的な戦略を決めることになります。それぞれの戦略について、詳しい内容を見ていきましょう。
●企業戦略
企業戦略とは、企業レベルでの経営戦略のことです。
企業戦略を策定する際は、経営ビジョンの策定や浸透、事業の基本構成と方向性の決定などを行います。ここで方向性や事業の構成を定め、その内容に沿って事業戦略、機能戦略と詳細な戦略を立てていくイメージです。
●事業戦略
事業戦略は、事業の目的を達成するための戦略です。
事業戦略のプロセスでは、事業の目標を立てて、その目標を達成するために最適な組織マネジメントなどを行います。
事業内容が少なければ、企業戦略に事業戦略を盛り込む場合もあるでしょう。しかし、規模の拡大などによって事業が多角化する場合には、各事業に合わせた事業戦略を練ることが重要です。
●機能戦略
機能戦略とは、事業を展開するために必要な機能レベルの戦略を意味します。
事業を展開するにはマーケティングや営業など、各事業に合わせた機能が必要です。たとえば、流通業なら仕入れや営業、メーカーなら人事や商品開発などの機能が必須となりますが、その各機能に関する戦略を機能戦略と呼びます。
このプロセスでは、機能領域ごとに目指す方向を明確にし、事業戦略の目標達成に繋がる戦略を各機能の領域で立てていきます。
経営戦略を策定する3ステップ
経営戦略を策定する際には、外部環境の分析、内部環境の分析、最後に経営戦略を立案する、という流れで行うのが一般的です。
ここでは、各ステップの内容を詳しく紹介するので、経営戦略を策定する際の参考にしてください。
●①外部環境の分析
外部環境とは、自社や自店舗の活動に影響を与える可能性がある外部の要素のことです。たとえば、市場規模や競合、人口や景気などが挙げられます。
外部環境は自分の力でコントロールができないため、現在の自社や自店舗を取り巻く環境に適した戦略を練らなければなりません。適切な戦略を練るためには、外部環境の把握が必須です。
そのため、経営戦略を策定する際には、まず外部環境の分析を行います。このプロセスでは、市場規模や競合、人口などの外部環境を分析し、事業の成功方法や脅威となる要素を見つけることが主な目的です。
●②内部環境の分析
内部環境とは、資金力や市場でのポジション、売上など、自社や自店舗の情報のことです。
自社や自店舗の内部環境を分析し、強みや弱みを明確にすることで、より具体的な戦略を練ることができます。
なお、内部環境は、多角的な視点から分析することをおすすめします。広い視点で分析すれば、今まで気が付かなかった隠れた強みや弱みが出てくることもあり、より有効な戦略を練ることができるでしょう。
●③経営戦略の立案
外部環境、内部環境の分析が終わったら、経営戦略を立案しましょう。
ここまでの分析を経て、自社・自店舗の強みや弱み、脅威となる要素や事業の成功方法を把握できていれば、より実用的な経営戦略を策定できます。
経営戦略の策定が難しいと感じる場合には、前のステップに戻って再度分析を行うのも選択肢のひとつです。焦らず、より確実に経営戦略を策定していきましょう。
経営戦略を立案する際に役立つフレームワーク
経営における「フレームワーク」とは、課題や方向性の分析などに活用できるツールのことです。
論理的思考や発想法などが体系的にまとまっているため、フレームワークをもとに思考することで円滑な分析が可能となります。より多角的な視点から分析できるので、経営戦略の策定に役立つでしょう。
ここでは、数ある種類の中から、経営戦略を立案する際に役立つ主なフレームワークを紹介します。
●SWOT分析
SWOT分析とは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)という4点の切り口から情報を整理する分析方法です 。それぞれの頭文字を取って、SWOT分析と呼ばれています。
経営戦略を策定する際は、まず外部環境である「機会と脅威」、次に内部環境の「強みと弱み」のカテゴリに、自社や自店舗の状況を当てはめて分析を行います。
最後に外部環境と内部環境を掛け合わせる「クロスSWOT分析」を行い、具体的な戦略を導き出していく方法が一般的です。
SWOT分析を行うことで、今後の課題や練るべき戦略を明確にでき、新たなビジネスの機会を導き出せます。また、外部環境と内部環境を掛け合わせるクロスSWOT分析を行うことで、より広い視点で戦略も立てられるでしょう。
●PEST分析
PEST分析は、外部環境が自社に与える影響を把握、予測するための分析方法です。 政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)という4つの視点から、外部環境を分析していきます。
自社や自店舗を取り巻く外部環境をそれぞれのカテゴリに当てはめることにより、社会的なニーズを見抜けるのはもちろん、将来に備えることもできます。
●5forces分析
5forces分析とは、外部環境の中でも「市場・業界の構造」など、事業環境について分析するフレームワークです。
経営戦略を練る際は、業界での競争要因を知ることが重要であり、その競争要因には、下記の5種類があるとされています。
• 新規参入者の脅威
• 売り手の交渉力
• 買い手の交渉力
• 代替品・代替サービスの脅威
• 同業者間との競争
これらの競争要因を自社や自店舗に当てはめて思考するのが、5forces分析です。
競争要因を分析すると、現在の業界における収益性の構図が把握できるようになります。5forces分析は、競争に勝つための経営戦略を策定する際に役立つでしょう。
●3C分析
3C分析とは、自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)の3つの視点から外部環境・内部環境を分析する方法です。
外部環境として「顧客・競合」、内部環境として「自社」をそれぞれ分析し、各分析結果から成功要因を導き出すことが主な目的とされます。
3C分析を行う際は、「顧客」、「競合」、最後に「自社」という順番で分析を進める方法が一般的です。顧客と競合の分析を行なった上で自社の分析をすることにより、より成功要因を見つけやすくなります。
また、自社や自店舗と外部環境の分析結果を照らし合わせることで、具体的な強みと弱みも把握できるでしょう。強みと弱みが明確になれば経営の方向性が見えてくるため、経営戦略も練りやすくなると考えられます。
●VRIO分析
VRIO分析は、経済的価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Imitability)、組織(Organization)の4つの視点から自社・自店舗の経営資源を評価し、競合との競争で優位に立てるかどうかを思考するフレームワークです。
これらの視点から経営資源を評価すると、自社や自店舗のどのような部分に競争優位性があるのか、どんな弱みを克服しなければならないのかが明白になります。
なお、VRIO分析をする際は、経済的価値、希少性、模倣困難性、組織という順番に進めていく方法が一般的です。それぞれの要素に対してレベル分けをして、自社や自店舗の強みと弱みを明確にしていきます。
経営戦略を成功させるためのポイント
より実用的な経営戦略を策定し実行するためには、下記4点を押さえておくことが重要です。
• 将来像を明確にする
• 人材育成を怠らない
• ITに投資して業務の効率化を図る
• フレームワークに頼りすぎない
これから経営戦略を本格的に策定する方であれば、ぜひ把握しておきたい大切な要素です。それぞれのポイントについて、詳しい内容を紹介します。
●将来像を明確にする
経営戦略をスムーズに策定するためにも、まずは自社や自店舗の将来像を明確にしましょう。
企業や店舗の将来像が曖昧なままでは、向かう方向がなかなか定まりません。方向性が定まっていなければ、事業の方針がブレてしまい、経営戦略も練りにくくなります。
実用的な経営戦略を策定するには、具体的な将来像が必要です。「何年後にはこうなっていたい」という中長期的な目標を立てて、その目標に向けた経営戦略を策定しましょう。
●人材育成を怠らない
いくら実用的な経営戦略を策定したとしても、それだけで事業が必ず上手くいくとは限りません。なぜならば、経営戦略を実践するのは「人」だからです。
優秀な人材が経営戦略を実践するのであれば、よい結果が期待できるかもしれません。しかし、人材育成を怠っていれば、事業の理解度やスキルが不足している人材が経営戦略を実践することとなり、思うように経営が進まない可能性もあるでしょう。
経営戦略の実行に向けた組織を作り上げるには、適した人材の確保と育成を行うことが重要です。企業や店舗の運営を安定させるためにも、人材育成は怠らないように意識してください。
●ITに投資して業務の効率化を図る
経営戦略を実行する際には、現在の業務に集中することが大切です。集中を切らさないためにも、不要なタスクはできる限り排除しましょう。
なお、不要なタスクを排除する方法はさまざまありますが、中でも効率化に繋がる方法が「ITへの投資」です。
ITの技術を取り入れて一部のタスクを自動化できれば、業務を効率化できます。日々のタスクが減る分、目標に向かってより円滑に進めるでしょう。
●フレームワークに頼りすぎない
フレームワークは分析や経営戦略を練る上で便利なツールですが、なるべく頼りすぎないよう心がけましょう。
フレームワークに頼りすぎると、アイデアが戦略ありきのものに偏ってしまい、思考の幅が狭まりやすくなります。情報を整理する際には役立ちますが、革新的な発想からは遠ざかってしまうかもしれません。
偏った内容の戦略にしないためには、客観的な視点で考えることも重要です。ときには周囲の声に耳を傾け、広い視点で戦略を練りましょう。
経営戦略を練る上で知っておきたい用語集
経営戦略に関する調べ物をしていると、意味がわからない用語が出てくることもあるでしょう。その都度、用語の意味を調べるよりも、最初から把握しておくことでスムーズに情報収集ができます。
ここからは、経営戦略を練る上で知っておくと役立つ主な用語を紹介します。
●マーケティング
マーケティングとは、商品やサービスが売れる仕組みづくりのことです。市場調査や広告宣伝活動など、さまざまな種類があります。
活動する領域によって「Webマーケティング」「コンテンツマーケティング」のように、名称が変わるところも特徴です。
●コアコンピタンス
コアコンピタンスとは、「中核となる強み」のことであり、具体的には、「顧客に対して、自社や自店舗ならではの価値を提供する中核的な力」と定義されています。
一般的には、「〇〇のコアコンピタンスはブランド力にある」などのように、自社や自店舗の強みを示す際に使用されます。
●イノベーション
イノベーションとは、これまでにない革新的な考え方や仕組みを取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすことです。
イノベーションには、新しい生産方式を導入する「プロセスイノベーション」、新しい販路を開拓する「マーケットイノベーション」など、複数のタイプがあります。
「〇〇イノベーション」という用語を見かけた際は、〇〇の意味さえ把握しておけば情報の概要を理解しやすくなるでしょう。
●インテグリティ
インテグリティとは、「誠実」、「真摯」などの概念を意味する言葉です。
ビジネスシーンでは、リーダーやマネジメント層に求められる「誠実さ」を示す際の表現として使われています。
●サステナビリティ
サステナビリティとは、「持続可能性」または「持続することができる」という意味を持つ言葉です。
ビジネスにおいては、主に「企業が利益を上げ、顧客に商品を供給し続けられる可能性を持っていること」を指します。利益や商品の供給だけでなく、環境保護や社会貢献などの面もサステナビリティとして表現されるものです。
●アントレプレナーシップ
アントレプレナーシップとは、「起業家精神」を意味する言葉です。
幅広い解釈がある言葉ですが、一般的には「新しい事業を創造し、リスクに挑戦する姿勢」を指す言葉として用いられています。
●日本的経営
日本的経営とは、1970〜1980年代に経済成長を続けた日本企業の源泉力とされる経営システムです。企業別組合、終身雇用、年功制の3点は、日本的経営の三種の神器と呼ばれています。
一般的には、「戦後の日本は日本的経営により〜」などのように、過去の日本の経済発展を表現する際に使われています。
●企業遺伝子
企業遺伝子とは、企業の魅力や信念などの「企業らしさ」が受け継がれることを指す言葉です。
企業遺伝子が根付くことで持続した競争優位性を生み出せるため、多くの企業や店舗の経営者が企業遺伝子の浸透を目指しています。
事業を成功させるためにも経営戦略は綿密に練ろう!
事業を成功させるには、企業や店舗に見合った実用的な経営戦略を練らなくてはなりません。難しいと感じる内容の事業であっても、しっかりとした経営戦略が策定されていれば、将来的な成功に繋がることが期待できます。
企業や店舗の経営戦略を練る際には、フレームワークの活用が有効です。これから経営戦略を策定する方は、この記事で紹介したフレームワークを活用しつつ、実用的な戦略を立ててみてください。
安定した経営を継続していくためにも、譲れない部分を明確にする、実現したい具体的な目的を掲げるなど、経営戦略の策定に繋がる行動に取り組みましょう。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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