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動画メディアの中でも絶大なシェアを誇るYouTube。その人気は、飲食店の集客導線にも変化をもたらしました。最近では、店舗を知ったきっかけが「好きなYouTuber(ユーチューバー)が動画内で紹介していたから」というケースも増えているようです。
YouTubeをはじめとするSNSで自店が紹介されれば、費用をかけずに宣伝効果をもたらしてくれることも。しかし、実際にはYouTuber側と店側、双方の理解が異なる場合があり、トラブルに発展することも少なくありません。
そこで本記事では、飲食店でYouTube撮影を受ける場合の対応方法や注意点について解説。あわせてYouTuber側の理解と現状もご紹介しますので、ぜひとも参考になさってください。目次
YouTube撮影に対する方針を決める
まずは「撮影行為やSNSへの掲載を承諾するかどうか」という方針を決定しておく必要があります。これは、「YouTubeでの拡散を望むか望まないか」という問題にも直結するので、店舗での現場判断ではなく、経営者が判断すべき問題といえるでしょう。
さまざまな要因で撮影、及びSNSでの拡散が望ましくないと判断するのであれば、「撮影不許可」の方針を全面的に打ち出すべきです。
その場合は、全スタッフがその決定を理解しておくと同時に、店頭やホームページ、SNSなどでしっかりと告知しておくことで、無用なトラブルを避けることができるでしょう。
この判断に悩む場合は、ぜひ次章からのYouTube撮影を許可するメリット・デメリットを参考にしてください。
YouTube撮影を許可するメリット
YouTubeの撮影を許可することは、多くのメリットを得られる場合があります。そのため、現在は積極的にYouTubeの撮影受け入れを公言する店舗もあるほどです。
飲食店の事例ではありませんが、パチスロ専門店「メガガーデン所沢スロット館」では「店内での動画撮影OK」を公にうたっています。同店では、いくつかのルールさえ守れば、スタッフに声をかけるだけで誰でも動画の撮影を行えます。それだけでなく、希望者には撮影補助機材を貸し出すなど積極的に動画撮影を誘致しているのです。
ここまでの形は取らずとも、飲食店でもYouTuberの撮影に協力的な店舗が増えています。それは、店側に次のようなメリットがあるからです。
無料で宣伝ができる
飲食店紹介サイトや雑誌などで、集客用広告を掲載するにはそれ相応の費用がかかります。しかし、メディアからの依頼で取材を受ける場合と同様、YouTuberの撮影を許可するだけであれば広告費などは一切かかりません。つまり、無料で店舗の宣伝ができるのです。
自店のメニューをおいしそうに飲食している様子が動画になれば、そのYouTuberが有名であるほど絶大な広告効果を持つでしょう。店側の負担なく宣伝ができるというのは、YouTube撮影を許可する最大のメリットです。インフルエンサーとのパイプができる
YouTubeは数あるSNSの中でも、拡散力に定評があるプラットフォームです。誰か1人が自店の動画をアップ(YouTubeに投稿・公開)すれば、同様の動画(ラーメンであればラーメン、寿司であれば寿司など)の再生後に「関連動画」として紹介される可能性があります。
つまり、誰か1人の動画で取り上げられるだけで、他のYouTuberやインフルエンサーの目にとまる可能性があるのです。これは、場合によっては一般視聴者の目にとまることより重要なことです。
店舗紹介や飲食店でのトークを撮影しているエンタメ系のYouTuberであれば、常に新しい店舗を探しています。誰か1人の動画で自店が「撮影可能なお店」として認知されれば、他のYouTuberやインフルエンサーが訪れ、さらなる宣伝効果につながる可能性も考えられるのです。タイアップで可能性が広がる
撮影に訪れた相手が有名YouTuberであった場合、彼らとタイアップをして、自店の良さを発信する動画を撮ってもらったり、コラボ商品を開発するなど新しいビジネス戦略の可能性が生まれます。
もちろん、そのような施策を無償で依頼することは難しいでしょう。しかし、拡散力のある集客・認知拡大施策として、現在多くの企業がYouTuberとのコラボやタイアップを積極的に行なっています。「おいしそうに食べているところ」や「企業のこだわり」をわかりやすく伝えられる動画は、飲食店の宣伝施策として今大注目の集客導線です。YouTube撮影を許可するデメリット
費用0円で宣伝効果を得られるYouTube撮影の解禁は、店舗に多くのメリットをもたらします。しかしその反面、デメリットがあるのもまた事実です。それをしっかりと理解しておくことが、後々のトラブルを回避することにもつながります。
営業活動の邪魔になる
飲食店の業務は、来店客に商品とサービスを提供することです。YouTubeの撮影が、来店してくださっているお客様が気持ちよく過ごしている時間を邪魔するようでは、いかに宣伝のためといっても本末転倒になってしまいます。
●撮影機材で通路をふさぐ
●1人で食事しながらブツブツしゃべっている
●大人数で声高に食事している
など、一般客からみれば迷惑に思える行為も少なくなく、店側のコントロールが求められます。
他のお客様のプライバシー保護
動画に他の来店客が映り込み、それがそのままYouTube上にアップされてしまえば、プライバシーの侵害にあたります。場合によってはそれを制御できなかったとして、店側の責任を問われることもあるでしょう。
とある京都のラーメン店では、こうした問題を懸念してYouTuberの来店禁止を公言しました。過去に、店の許可なく他の来店客の顔がわかるような動画投稿がなされたことがあり、このような宣言に踏み切ったといいます。
こうした問題は一般常識ともいえるモラルの問題ですが、すべてのYouTuberが適切なモラルを持っているとは限りません。撮影を許可する場合は、プライバシーに関する注意を店側から説明しておくべきでしょう。店のブランド保護
●看板も出さず、外部には住所や電話番号も公表していない「隠れ家」店舗
●一見(いちげん)さんお断りや完全会員制の店舗
●「取材お断り」をかねてから公言している店舗
などのブランド戦略を行っている店舗では、YouTubeで拡散されること自体がデメリットとなりかねません。
また、撮影に訪れたYouTuberが、自店の味やサービスに満足がいかなかったり、好みに合わなかったりという場合もあるでしょう。それをそのまま動画内で発言されてしまうと、よくない評判だけが拡散されてしまう可能性もあります。
店舗撮影におけるYouTuber側の認識とは
よくも悪くも拡散力のあるYouTubeでの動画撮影。メリットとデメリットをしっかりと理解した上で、可否を判断する必要があります。
一方で、YouTuber側は動画撮影に対してどのような認識を持っているのでしょうか。もちろん、YouTuberによって見解は違いますが、ここではYouTuber向けに発信されている「店舗での撮影時の注意点」についてご紹介します。
YouTuberへの啓蒙活動
YouTubeの運営元は米国のGoogle社です。Google社では、公式に「店舗での撮影時の注意点」などの発信はしていません。YouTubeヘルプセンターの「YouTubeのポリシー」内に「名誉毀損」というページがもうけられているだけです。
しかし、YouTubeの公式アンバサダーやインターネットでのトラブルに強い弁護士たちが、自身のYouTubeチャンネルやブログ内で、YouTuber向けの啓蒙コンテンツを数多く公開しています。
その中では、飲食店で撮影をする場合は、必ず店側に事前許可を得ることが推奨されています。無断撮影の問題点
無許可での撮影は、法律上でも大きな問題となり得ます。特に、次のような問題点が指摘されています。
●プライバシー権侵害:プライバシー権とは「私生活上の情報をみだりに公開されない権利」です。名前や年齢、職業、住所などの情報を勝手に公開することはその権利の侵害にあたります。
●肖像権侵害:プライバシー権侵害と混同されやすいですが、肖像権は「人格権(人格的利益)」の1つにあたり、いわゆる「映り込み」問題が該当します。たまたま来店していた他の客だけでなく、許可なく従業員の顔を動画上に露出するのはやめましょう。
●著作権侵害:店舗内にある著作物が動画に映り込むと、場合によって著作権侵害にあたります。特にYouTubeの場合は、店舗で流しているBGMがそのまま動画内で流れてしまった場合に問題となるケースが多いようです。
●住居(建物)侵入罪・不退去罪:店側の許可なく撮影する行為は、不法侵入罪です。さらに店員に注意されたのに撮影を止めない場合は、不退去罪に該当する可能性もあります。
●軽犯罪法違反:仮に撮影自体は許可されていたとしても、無断で厨房に立ち入るなど、立ち入りが禁止されている場所に無断で立ち入ることは軽犯罪法に該当する可能性があります。
●業務妨害罪:撮影に伴う機材の設置や、撮影そのものが他の来店客や店員の作業を邪魔するような場合、業務妨害罪が適用されます。
●損害賠償請求:無断撮影や、動画内に余計なものが映ってしまった場合でも、犯罪とは認められない場合があります。しかし、店側、あるいは動画内に映り込んでしまった他者などから、不法行為として民事訴訟で損害買収請求をされる可能性は否めません。
無断撮影だけでなく、仮に許可を取っていた場合でも、公開した動画内容によっては問題となることも考えられます。
YouTuberや来店客と諍いが起きると、相当な負担がかかります。これを避けるためには、店側としてもしっかりとした規定を設け、YouTuberを含めたユーザーに店側のルールを告知しましょう。
YouTube撮影を許可する場合の注意点
店舗とYouTuberの双方が気持ちよく撮影に臨むために必要なのは、お互いの信頼関係を元に「決め事」を互いに理解していることです。
そのために、YouTube撮影を許可する場合の注意点について解説します。
撮影許可の申請方法を告知する
店側とYouTuber側が互いにメリットを得るためには、許可取りや詳細の確認を曖昧にしないことが一番です。撮影許可の申請をフォーマット化し、店頭やホームページで告知するようにしましょう。
例えば株式会社一蘭が展開するラーメンチェーン「一蘭」では、自社のホームページに動画撮影に関するページを設置。そこには来店から動画公開までの流れとともに、撮影に関する注意事項などが事細かく記されています。
こうした事例も参考としながら、自店として許可申請方法を決定・告知するようにしましょう。
【許可申請の流れ一例】
1.事前に電話、またはホームページ上の申請フォームで申し込み
2.飛び込みの場合は直接スタッフに声をかけてもらうよう店頭に告知
3.YouTuberが来店したらスタッフがQRコードを提示、遷移先のフォームに必要事項を記載
・撮影内容
・チャンネル名、アカウント名
・代表者氏名
・連絡先
・来店人数
・使用機材(カメラや照明の台数など)
4.フォームを送信完了後、自動返信メールをスタッフに提示
5.席に案内され撮影開始
6.撮影・編集完成後本社まで連絡をもらい、動画ファイルをチェック
7.動画内容をチェック後、公開の可否を回答(内容により修正や公開禁止の相談)注意事項をしっかり伝える
注意事項はしっかりと明示しておくことが重要です。「言った言わない」で揉めたりしないよう、次のように複数の方法で告知することが望ましいでしょう。
●店舗ホームページ
●店頭や席でのPOP表示
●応募フォームへの自動返信メール
●来店時に手渡す注意書き
特に、撮影に関する禁止事項に関しては、口頭ではなく書面で伝えることが重要です。特に以下の点などは、店の方針をあらかじめ決めておき、可否の線引きをYouTuber側に伝えるようにしましょう。
●声はどの程度出してよいか
●マスク会食の程度
●持ち込みの可否
●他の来店客への配慮(特に映り込み)
●従業員の顔や名前の映り込みの可否
●厨房内の撮影可否
●LIVE配信、生配信の可否
LIVE配信や生配信に関しては、有名YouTuberの場合は多数のファンが店に押し寄せ、思わぬパニックになる可能性があります。店側がしっかりと判断し、その可否をYouTuber側に伝えましょう。
BGMに配慮する
店側として配慮したいのが店内BGMです。YouTubeでは動画内で著作権のあるBGMが流れてしまうと、動画に収益がつかなくなったり、面倒な手続きや音源使用料の支払いが必要になったりすることも。
最悪の場合、動画公開そのものが取り消されてしまうこともあり、既成曲のBGMの使用はYouTuberにとって重大な懸念事項なのです。
そこで、YouTube撮影が入っている間はBGMをオフにしたり、著作権フリーのBGMに切り替えるなどして協力しましょう。YouTuber側にもBGMに著作権上の問題がないことを伝えれば、撮影に協力的な店舗として友好な評価がもらえるはずです。
多くの飲食店で店舗BGMとして使用されているUSENの音楽配信サービスでは、著作権フリーのBGMチャンネルを用意しているので、臨機応変な対応が可能です。
撮影時間を制限する
ランチタイムや夕食時などは混み合うため、YouTuber側がどれだけ撮影に配慮しても一般客に迷惑がかかる可能性があります。当然、映り込みのリスクも増えるでしょう。こうしたトラブルを避けるためには、撮影可能時間を制限するのもよいでしょう。
ピークタイムは撮影不可とし、それ以外の時間でのみ受け付けるようにすれば、YouTuber側としてもスケジュール調整がしやすく、互いにメリットがあります。
また、営業前や終了後、あるいは休憩時間や定休日に撮影協力するのも1つの考え方です。労力はかかりますが、一般客への迷惑はかかりません。
撮影場所(席)を指定する
店内のどこでも撮影可とするのではなく、撮影可能の席を決めてしまうのもよい案です。
個室のみ撮影をOKしたり、背後に他の席がない角席のみ開放したりと、店側指定の席のみで撮影を許可すれば、一般客との無用なトラブルも抑えられます。
また、演者・スタッフともに複数人いて、カメラや照明などの機材も多い大掛かりな撮影の場合は、時間外の貸し切りとして対応したほうがよいケースもあります。
トラブルへの対応を決めておく
無用なトラブルを避けるためには、詳細な注意事項を決め、それをYouTuber側にも伝えることが重要です。しかし、それでも予期せぬトラブルが起こってしまうことはあり得ます。
そんな時のために、万が一トラブルが起きた際の対応を決めておくことも重要です。
●店内備品を破損してしまった場合
●一般客と揉めた場合
●動画チェック時に不都合が発見された場合
など、できるかぎり具体的な状況を想定しておくことが、トラブルを大げさにせず円満解決へ向かう助けとなります。また、撮影時のオーダー品や、特別注文などの対応の仕方や金額もあらかじめ決めておきたい項目です。過度な接待は控える
YouTube撮影は、原則「コラボ」や「タイアップ」といった企業案件形式での撮影でない限り、店側が何らかの費用を負担することはありません。それは、撮影時に注文された商品代金も同様です。
「できるだけよい形で宣伝してもらいたい」という思いから、つい「お代は結構です」といいたい場合もあるでしょう。しかし、それは互いにとってあまりよい結果は生みません。
YouTuber側は対価を支払って店で撮影する。店側は商品代金等の対価を受け取って撮影に協力する。それだけで十分です。飲食代を無料にする必要はありませんし、それ以外に必要な経費がかかれば請求して問題ありません。
過度な接待は店側の負い目にもなりかねず、YouTuber側としても忖度(そんたく)のない発信をするというスタンスを傷つける可能性が生じます。互いに対等な関係でいるほうが、視聴者の目には好意的に映るでしょう。
ルールを全従業員で共有する
こうしたルールを事細かに決定したら、全従業員で共有しておくことが重要です。チェーン店の場合も、本部が決めたルールを店長のみならず、アルバイトスタッフ1人ひとりが理解していなければなりません。
そうすることで、仮にアルバイトスタッフがYouTuberの無断撮影を見つけた場合も適切な声がけができたり、店長に報告することができるでしょう。
YouTuber側も「他のスタッフはいいって言ってた」という曖昧な状態を回避できますので、ルールを全従業員で共有することは、通常の接客ルールと同様に重要なのです。互いに気持ちよく撮影し、Youtubeの拡散力を利用しよう
近年増えている飲食店でのYouTube撮影について、YouTuber側の理解と店側の注意点をあわせて解説しました。
YouTubeで自店が紹介されることは、やり方さえ間違わなければ非常に強力な広報活動となります。それには互いの理解とリスペクトが重要で、そこさえ間違えなければ双方ともに大きなメリットが得られるはずです。
そのためにはくどいほどの注意事項をあらかじめ決めておき、YouTuber側にしっかりと伝える。さらに店側も、スタッフ全員がその決まりを理解しておくことが重要です。あまりにも非常識な撮影に関しては、店長判断で丁重に、しかし断固としてお断りすることも必要でしょう。
YouTuberと互いによい関係を築き上げ、YouTubeという莫大な集客力を持つメディアを有効活用してください。- NEW最新記事
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