蕎麦打ちにのめり込む人は意外と多くいるのをご存じでしょうか。趣味の蕎麦打ちが高じて、中には自分の蕎麦屋をはじめようと考えている方もいるのでは。蕎麦屋を開業するのには資金や資格の準備など計画が必要です。ここでは、蕎麦屋を開業するための、基本的な情報をご紹介します。
蕎麦屋開業をする際には主に以下の5点をまず準備する必要があります。
以下で、それぞれ1つずつ、詳しく内容を解説します。
蕎麦屋のコンセプトが定まったら、コンセプトにマッチしたメニューなどの構築を進めましょう。メニューは、味だけでなく注文時の手軽さなどお客のニーズも加味します。また蕎麦屋の雰囲気に合わせたデザイン計画、高級店、お手軽もしくは立ち食い形式など、コンセプトが生きる内装を目指しましょう。
開業のために投入する初期投資の借り入れでは、資金調達計画を綿密に立てていきます。その際、蕎麦屋運営が軌道に乗る前の運転資金として、赤字経営予算や経費、家賃なども組み込んで資産調達計画を明確にしましょう。
厨房機材の調達も必要な準備です。物件の形状や賃貸状況にもよりますが、レンタルもしくは購入など、導入計画を進めておきます。同時に、食器、テーブル、椅子などの備品に関しても準備をはじめましょう。
蕎麦を提供するために必要な資格取得にも、準備が必要です。基本となるのは「食品衛生責任者」資格で、飲食業経営には必須です。他にも、蕎麦屋開業用のライセンスや、営業時間や提供するメニューに合わせ、必要な免許や資格を取得しましょう。
賃貸物件もしくは購入などで蕎麦屋の物件確保の準備を進めていきます。賃貸契約では、保証金、礼金、仲介料など、物件の立地条件などにもよりますが、約1年分の家賃確保が必要と言われています。資金計画でも大きなウェイトを占めますので、蕎麦屋の好立地物件確保に努めたいものです。
新業態の飲食店を生み出すポイントについてはこちらの記事で紹介しています。
蕎麦屋の開業にあたって具体的に、どのように進めていけばいいのでしょうか。蕎麦屋開業までに想定されるスケジュールの一例を以下でご覧ください。
蕎麦屋開業までのスケジュール例
時期 | 項目 |
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1年~半年前 |
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3ヶ月~6ヶ月前 |
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3ヶ月前 |
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2ヶ月前 |
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1ヶ月前 |
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10日前 |
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当日 |
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開業する蕎麦屋の規模や目標に応じてスケジュールは前後しますが、ここでは一般的に想定できるスケジュールをベースに、蕎麦屋開業までスケジュール内容をご紹介いたします。
飲食店開業に向けた準備の流れに関して、さらに詳しくはこちらの記事でイラスト付きで紹介しています。
蕎麦屋を開業するには次の費用が必要です。
蕎麦屋開業に必要な資金は蕎麦屋の規模や立地条件など様々な要因によって変化します。ここでは一般的な蕎麦屋で、考えておきたい開業資金について解説していきます。
賃貸物件を借りるための初期投資費用のことを指します。内訳として保証金と言われる、約6ヶ月から10ヶ月の家賃と、礼金や仲介費などが含まれています。蕎麦屋の場合、立ち食いもしくは店舗によっても比率が大きく変わりますが、平均的な物件賃貸では、1年分の家賃確保が望ましいとされるようです。
内装工事費とは、店舗内装の設計費、材料費、家具、インテリア、などにかかる費用全体をさします。店舗形態にもよりますが、水道、ガスなどの特殊な工事が必要な場合もあるため、確認が必要です。居抜き物件で築年数が古い場合は、追加工事も予想されるため点検を行いましょう。
平均的な蕎麦屋の設備投資費は小型店舗の場合は300万円程度と言われています。製麺機や茹で麺機、食洗器、業務用冷蔵庫などが必要です。蕎麦屋の規模や形態によっても導入する設備等が異なり、金額も変化します。
食器類などの備品、求人広告費やPOPなどの準備費用、レジ導入費用、従業員のユニフォーム台など、諸経費として開業資金に組み込んでおきましょう。看板などは多くの場合製作を依頼することになりますので、多額の出費を想定しておきましょう。
蕎麦屋の経営が軌道に乗るまでの予備資金のことを運転資金と呼んでいます。この内訳には、家賃、仕入れ、厨房機器のレンタル料、人件費などが含まれています。赤字経営対策として半年間の運転資金があると安心と言われているようです。
開業資金に関して補助金・助成金制度はこちらの記事で紹介しています。
蕎麦屋を開業するにあたり、初期投資のための資金が必要となります。自己資金を確保できるのが理想的かもしれませんが、融資で資金調達することも有効です。蕎麦屋開業のための、資金調達方法についてご紹介します。
自己資金の確保は返済の心配もなく確実なリソースです。時間はかかりますが、定期積立などで計画的に貯金するのが理想と言えるでしょう。また投資や債券などを保持している場合は、自己資金の整理を試みるのも得策です。
開業資金を銀行などの金融機関から融資を受けて調達するという方法もあります。一般的な銀行では、融資金額の3分の1もしくは2分の1の自己資金を投入することを条件とするところもあります。また、家族や親せきに相談し、融資してもらうことができれば、同意条件によっては利息や返済も融通が利くため、負担が少なく済むと言えそうです。
厚生労働省の規定に沿った条件次第で、国からの助成金を手にすることも可能です。同様に、市区町村など自治体の提案による補助金でも開業にメリットとなるでしょう。一般的に、これらの助成金や補助金は返済の義務がないことが多い反面、審査が厳しいことや融資が開業後になるなどのデメリットも考えられます。赤字補填用の予備資金として申請も検討しましょう。
開業資金調達において、融資額をアップさせる方法はこちらの記事から紹介しています。
蕎麦屋を開業するにはいくつか必要な資格があります。蕎麦屋開業では、主に次の2つの資格を押さえておきましょう。以下で、詳しく解説します。
「食品衛生責任者」は、飲食店を経営するための必須資格です。各都道府県の食品衛生協会が主催する講習を受講して取得します。店舗の営業許可を得る際に、この資格保持が条件となるため、早めに取得しておきます。受講料は、管轄によっても異なりますが1万円前後がおおよその相場のようです。全国どこでも受講は可能です。
蕎麦屋の収容人数が30人を超える場合はこの「防火管理者」資格取得が必要です。日本防火・防災協会の主催する講座を受講して取得します。管轄によって異なりますが、一般的に受講料は6,500円から7,500円が一般的です。また蕎麦屋の延べ面積300平方メートル以上、それ以下によって受講時間と項目が変わるので、あらかじめ確認しましょう。
飲食店開業には調理師免許が不要!ではどんな資格が役に立つのかについて、こちらの記事で紹介しています。
蕎麦屋を開業するにはいくつか届け出をする必要があります。申請場所や申請時期が異なるので確認の上、なるべく早めに行っておきましょう。
国の衛生法で定められており、飲食店経営のために保健所に申請します。「飲食店営業許可」申請後、保健所の検査が入るのが規定です。検査では、厨房内の配置、客室との仕切り、空調など衛生上の営業規定をクリアする必要があります。内装工事完了の2週間前を目安に申請を済ませておきましょう。
蕎麦を提供する店に製麺施設が隣接している場合で、同一施設と見なし得ない場合に必要となります。また製造した麺を包装して店頭販売する場合にもこの許可証が必要です。麺の製造、調理、提供を一箇所で行う場合は「飲食店営業許可証」のみの申請となります。
蕎麦の出汁に井戸水や湧き水を使用する場合に必要となる検査証です。品質保持のために、許可後も年一回以上の検査を受け、成績書の保管を義務付けられています。
深夜12時以降にアルコールを提供する場合に必要となる許可書です。開業日の10日前までに管轄の警察署に届け出を済ませましょう。
個人事業主として蕎麦屋を開業する場合、管轄の税務署への申請が必要となります。蕎麦屋オープンから1ヶ月以内が申請期限です。この申請では、確定申告の際に「青色申告特別控除」で10万から65万の控除が受けられることや、最高300万円までの設備経費や赤字税金控除、親族への給与枠の開放など特典を活用できます。
開業に関する申請・手続きに関してはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。
蕎麦屋を開業するにあたり、経営スタイルも運営に大きく影響を及ぼします。代表的な2つの蕎麦屋経営について、ポイントをまとめました。
フランチャイズ化された蕎麦屋経営に乗り出すという開業方法があります。大手蕎麦屋のチェーンに参入することで、すでに構築されたブランドイメージやノウハウを継承することができます。一方で、チェーンへの加盟金、売り上げのロイヤリティ払出などで契約の縛りがあるというデメリットもあります。
個人開業では、自由な経営方針を実装することができます。大手チェーンが持つ知名度やブランドイメージを活用して優位に運営することができませんが、独自性を強調することが可能です。経営方針の自由さを優先するのか、定着したブランドイメージを継承するかは、将来的な目標も視野に入れ、じっくり検討してみましょう。
フランチャイズビジネスについて、おさらいや最近の事例についてはこちらの記事で紹介しています。
蕎麦屋を開業して成功するために、押さえておきたいいくつかのポイントがあります。順調な経営をリードするための、注意しておきたい項目についてまとめました。
繁盛店によくみられるスタイルは、お店独自のこだわりです。麺の原産地、打ち方、出汁の原料やとり方に至るまで、細部にまでこだわりを取り入れてみましょう。おいしいという味覚だけでなく、蕎麦に対する情熱を感じることでお客の印象に残りやすくなります。話題性を広げるためにもお店のこだわりは重要なポイントとなるでしょう。
来店するお客の客層を明確に決めておきましょう。ファミリー層なら子供向けメニューも、若年層ならボリュームのあるメニューで、年配層では健康志向や熟練の技などターゲットを定めることで店のコンセプトを絞りやすくなります。また営業日や時間、ひいては内装や雰囲気も客層によって変化するため、絞り込みをしてみましょう。
蕎麦屋開業では、コンセプト次第で経営が大きく異なります。ファストフード感覚で気軽に立ち寄る店、や立ち食い系なら低料金に焦点を当てた薄利多売を。また高級志向なら食材や原料へのこだわりでプレミア感のあるメニューで勝負することとなります。個人経営ではチェーン店に対抗するのは難しいため、単価率を向上でさせる工夫が必要です。また高級店を目指す場合、回転率が低くなりがちですが常連客の集まる店づくりなど、経営方針にも注力しましょう。
蕎麦は軽食というイメージがあり、ランチタイムがメインになるようです。売り上げを伸ばすためには、ディナータイムで酒肴メニューを出すなど客単価を上げる工夫が必要でしょう。また、ランチとディナー以外の無作業時間を効率的に利用する方法も考えなくてはなりません。ターゲットとする客層によっては、営業日などにも特徴を持たせる必要がありそうです。
合わせて考えておきたい…蕎麦屋なら注意しておくべきアレルギー表示に関してはこちらの記事で紹介しています。
蕎麦屋を開業するにあたって物件選びと立地はその後の経営状況に大きく影響します。蕎麦屋の経営を軌道に乗せるためにも物件選びは慎重におこないましょう。蕎麦屋を開業するにあたっておすすめの物件条件をご紹介します。
居抜き物件は、前テナントの厨房や空調設備が残っていれば設備投資費を抑えることができる利点があります。ただし、前店舗が異業種の場合は、内装工事に多額の費用がかかってしまうケースもあるようです。和食や蕎麦屋がテナントとして入っていた居抜き物件が開業に理想と言えます。
一般的に好立地と言われるのは、駅や交通機関からのアクセスがよく、路面店であることが挙げられます。人通りだけでなく、車通りの多いメイン道路などでは、店舗前に駐車場がある、あるいは近隣に駐車場が確保できるなどもよい条件です。
近隣に、競合店のない立地が好ましいといえます。あるいは競合に対抗できるよう、全く違うコンセプトの蕎麦屋を目指すという方法もあります。できるだけ、同業種の店舗がないエリアを選択するのが良いでしょう。
不利な立地でも潰れない店についてこちらの特集で紹介しています。
最後に、蕎麦屋を成功させるために蕎麦屋の経営状況や利益に関して参考データをチェックしておきましょう。あくまで独自調査のため、店舗規模や時期によっても数値は異なります。参考データとしてご活用ください。
開業するために最低限必要とする資金のことを開業資金と言います。蕎麦屋の開業資金に含まれるものは「物件」「内装工事」「厨房機器」「食器・備品」「運転資金」などがあります。蕎麦屋開業資金は平均で約2,800~3,000万円と想定されているようです。
月商は、「(客単価(目標)× 席数 × 回転率(目標))× 営業日数」が計算式です。月の売上の総体を指します。蕎麦屋の月商は平均で約200~600万円と一般的に想定されているようです。
客単価は一度に1人の客が支払った金額の平均です。小規模の蕎麦屋では約700円から3,500円位の平均というデータがあるようです。客単価と回転数は多ければ売り上げ向上につながり、メニュー構築や競合との価格戦略に役立つ数字として参考にできます。
回転数は、1日の利用客÷座席数で割り出すことができます。蕎麦屋の平均的回転数は、1.0回から6.6回という参考データがあります。店舗の規模や座席数によっても回転数はことなります。
座席数は蕎麦屋の収容人数を示しています。このデータでは、18から24席が平均と想定できるようです。ただし、カウンターのみ、テーブル席のみなどお店の形態によって、席の回転数が異なるため、客単価予測などと合わせて座席数を計画しましょう。
1日の売り上げを座席数で割った金額を示しています。一般的な蕎麦屋では、1席平均4,200円から5,800円がターゲット価格となるようです。この数字は同店舗の繁盛日、繁盛曜日などの予測に役立つ数字と言えます。
蕎麦屋は原価率が低く、利益率が高いと言われる業態です。飲食店を未経験ではじめる方にはおすすめです。ただし、参入ハードルが低い分、競争率が高く、生き残り競争を余儀なくされる場合もあります。蕎麦屋で成功するためには、お客が何度も通いたくなるこだわりと店の雰囲気づくりが大切です。開業のための入念な準備と下調べをし、コンセプトと独自のアイデアを活かした店作りを進めてみましょう。
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