複数の経営者に、「企業や店舗の経営とは何か?」と聞いたとき、おそらく返ってくる答えはさまざまでしょう。
それは、経営者ごとに「経営」に対する考え方や意識が異なるからであり、経営を安定して継続させている経営者ほど、経営に対する定義づけをしっかり行っているケースが多いです。
経営者自身が「経営」という言葉の意味を自分なりに解釈することは大事で、深く考えないまま企業や店舗の経営を行ってしまうと、倒産や経営破綻という結果に繋がるかもしれません。
この記事では、「経営」の意味について改めて確認した上で、経営破綻に陥ってしまう原因や経営を成功に導くポイントなどを解説します。
目次
経営とは何か?意味を改めて確認しよう
経営の意味について、人によって捉え方が異なる場合がありますが、一般的には「会社や店舗を発展させて利益を生み続け、永続的に繁栄させていくこと」を指します。
経営を始めたならば、会社や店舗が倒産に追い込まれないよう、浮き沈みがある状況においても成長させて継続していかなくてはなりません。
顧客との関わりを通じて価値を創造する、経営者の想いを実現するといったことが、経営を通じての目的とされることが多いです。
●経営者は「経営」について定義づけすべき
「経営」の概念は明確に定義づけされているものではなく、経営についての考え方は経営者によってさまざまです。
どのような意味合いで捉えても構いませんが、自分の中で言葉の意味をきちんと解釈して、自分なりの考え方や見解を持っておくことが重要です。
経営に対する考え方や見解は、実際に会社や店舗を運営する際の軸になります。「人に言われたから」「教えられたから」といって、表面上だけ理解したつもりの経営をしていては、会社や店舗の行動指針は定まりません。
経営者が「経営」を自分なりに定義していなければ、会社の方向性にぶれが生じて、結果として経営の失敗に繋がってしまう可能性も考えられます。
毎年どのくらい倒産している?
すでに会社や店舗を経営している方、もしくは今後起業して経営者になろうと考えている方は、会社や店舗の倒産状況について知っておくことが大事です。
東京商工リサーチが行った調査の結果より、過去5年と2021年上半期の倒産件数を紹介します。
● 2016年:8,446件
● 2017年:8,405件
● 2018年:8,235件
● 2019年:8,383件
● 2020年:7,773件
● 2021年:3,044件(上半期のみ)
過去の傾向を踏まえると、毎年平均して8,000件前後の企業が倒産しています。そのペースから考えると、2021年上半期の倒産件数は少なめであると言えるでしょう。
2020年から2021年にかけて、新型コロナウイルスが流行したことが関係し、倒産件数は増加すると予測を立てた方もいるかもしれません。しかし、コロナ禍における政府の金融支援が功を奏した形で、倒産件数は低水準にとどまっています。
ただし、コロナ関連の倒産件数は、2021年上半期で762件と全体の25%近くを占めており、コロナ禍を乗り切れなかった企業や店舗も一定数存在することがわかります。
なお、コロナ禍の影響が大きく懸念される飲食店事業者においては、帝国データバンクの集計によると、2020年の1年間で780件の倒産が発生し、過去最多の件数となりました。
経営破綻するときはどのような状況に陥っているか
経営破綻してしまう企業や店舗は、黒字から赤字に転落して経営がギリギリの状態になってしまっていることが多いです。
経営が破綻する前のわかりやすい兆候として、既存の事業が上手くいかない、世間の流行にのって新規事業に挑戦する、多くの人材が辞めていく、といったことが挙げられます。
また、経営資金を借り入れで補っている場合は、表面上は上手くいっているように見えても、実際は注意すべき状況に陥っているケースもあります。
さらに、売上に占める売掛金の割合が多くなっていると、帳簿上は黒字でも売上金が回収できずに、支払いに回す資金がなくなって経営破綻に陥ってしまうことも考えられるでしょう。
経営が破綻してしまう主な原因
経営が破綻してしまう主な原因としては、販売不振に陥ることや課題解決のノウハウが蓄積されていないことなどが挙げられます。
中小企業庁が経営破綻について調査してわかった原因のうち、上位に該当するものについて説明します。
●販売不振
経営破綻の原因として圧倒的に多いのは、販売不振によって会社や店舗の利益が出なくなることです。商品の販売やサービスの提供が思ったようにいかず売上が伸びなければ、経営が苦しくなるのは明白でしょう。
販売不振の背景には、自社や自店舗における問題はもちろん、競合・市場・社会情勢などさまざまな要因が関係しているため、販売不振に対する万能な対処方法はありません。
販売不振が続き売上が伸び悩んでいるのであれば、どういった理由で販売不振に陥っているのかを早急に把握し、適切な対策を行うことが重要です。
●既往のしわよせ
販売不振が急激なものでなければ、すぐに経営破綻に陥ってしまうわけではありません。しかし、緩やかな販売不振であっても、長く続くと経営破綻にいきつくことも十分考えられます。
適切な経営指標(会社の経営状態を示す指標)を用いて業績を追わず、会社や店舗のお金の流れを把握していなければ、気付いたときにはもう手遅れになってしまうこともあるでしょう。
経営者が代替わりしたタイミングなどで、既存の問題を洗い出して対応することが効果的な回避方法です。
●放漫経営
経営者の能力の欠如、会社や店舗の私物化などにより、出入りするお金を適切に管理できずに経営破綻に陥るケースも考えられます。とくに中小企業において多く見られ、同族会社やワンマン経営者のもとで起こりやすい問題とも言えるでしょう。
経営が放漫なことと事業の好調・不調は関係ないため、業績がよいときや店舗の売上が順調なときには、問題点が顕在化しないことが多いのも特徴です。
周囲の方々が経営の意思決定を監視することで、経営者の能力をカバーする、経営者の独りよがりの暴走を制御することが大切と言えます。
●連鎖倒産
特定の企業や仕入れ先に取引を依存している場合、その取引先が経営不振に陥ると、自社や自店舗にもしわ寄せが来る可能性があります。取引の構造的に、建設業や製造業で比較的多く見られる経営破綻の原因です。
取引のボリュームを特定の企業や仕入れ先に集中させることなく、できる限り分散させることで、連鎖倒産による経営破綻を回避しやすくなるでしょう。
●過小資本
「最低資本金制度」とは、株式会社を設立するときに最低1,000万円の資本金を用意することを求めた制度ですが、これが平成18年に撤廃されてからは、少ない資本金で設立される企業が増えています。
しかし、企業を継続させるためには資本金は必要不可欠です。少ない資本金で設立すると、事業が上手くいかない期間が少し続くだけで、途端にピンチに陥りやすい傾向があります。
事業で上げた利益は、設備への投資や人員の拡充に利用するだけでなく、会社の内部に蓄えて「内部留保」とすることも検討しましょう。
経営を成功に導く4つのポイント
経営破綻を避けるためには、経営破綻に陥る原因を把握した上で、経営を成功に導くためのポイントを押さえながら経営を行うことが重要です。
経営を成功に導くポイントについて、詳しい内容を説明します。
●理念を明確にして戦略を立てる
経営者が自分なりに解釈した「経営」の定義をもとに「理念」を策定することで、会社や店舗にとっての「芯」ができることとなります。
自ら定めた理念に則って戦略を立てることで、戦略が一本筋の通ったものになり説得力も増すでしょう。
理念は、従業員や消費者が会社・店舗を選ぶときの軸になるだけでなく、経営者自身が会社や店舗の経営に迷ったときの道しるべになり得るものです。
戦略を立てる際には、自分だけで考えるのではなく信頼のおける仲間とともに行うことで、主観に捉われず客観的で合理的なものになると考えられます。
●資金繰りを考える
事業を継続的に行っていくためにはお金が必要不可欠なので、手元の資金が不足することのないように、資金繰りには細心の注意を払う必要があります。
とくに、売上における売掛金の管理が重要です。売掛金が多くなってしまえば、「売上は多いはずなのに手元のキャッシュが少ない」という状況に陥り、支払いに苦労してしまうかもしれません。
●事業や経営に関する知識を身に付ける
最初から経営を100%理解している人はいないため、自分に合う方法で経営に関する知識を身に付けることが大事です。
日常生活での経験から得られる知識をインプットするだけでも、経営に繋がる知識になり得ます。また、書籍やセミナーを活用して勉強する、経営者仲間とのやり取りの中で情報を吸収するなど、さまざまな方法で知識を身に付けましょう。
いくつもの方法を活用することで、さまざまな角度からの知識が得られるため、事業や経営に関する捉え方に幅や深みが出るかもしれません。
●人材を育成する
経営が軌道に乗るためには、現場の人材の能力と頑張りも大きく影響するので、人材育成は経営を成功させるために必須と言える要素です。
人材を育成する具体的な方法は、研修制度の充実、将来を見据えたキャリアパスの設定、理念に共感する人材の採用などが挙げられます。
人材育成は、経営者と従業員との関係性を向上させるためにも効果的で、従業員が「しっかり育成してもらっている」と感じることで、双方のやる気アップに繋がってより良い関係性が築けるでしょう。
経営を成功に導くポイントをきちんと押さえることが重要
「経営とは何か?」が明確に定義づけされているものではない以上、それぞれの経営者によって言葉の捉え方や考え方は異なります。
経営者であるからには、「経営」という言葉を自分なりに解釈して定義づけを行って、企業や店舗の確固たる理念を形成することが大事です。
経営は簡単なものではなく、毎年数多くの会社や店舗が倒産しています。
自分たちが同じ末路をたどってしまわないためにも、会社や店舗が経営破綻に陥る原因を把握しておくようにしましょう。経営が失敗するケースを理解しておくことで、自社や自店舗がそのような状況に陥ることを回避できるかもしれません。
理念をもとにした戦略を打ち立て、常に勉強する姿勢を忘れずに、経営を成功に導く努力を続けてください。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
