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コロナウィルス禍で外食業界がもっとも恐れるべきことは、これを機に「外食離れ」が進んでしまうことだ。
外出自粛でそれまで頻度高く利用していた店に行かなくなる。再来店のきっかけがなく時間が過ぎていくうちに、その店の存在がいつしかお客の頭から消えてしまう。そうなればもうお客が店に足を運ぶことはない。
これが一番怖いのである。
このことは平時であっても共通である。集客とはつまり、お客に「衝動買い」と「習慣化」をさせることにある。
いかに初めての来店動機をつくれるか、そして繰り返し利用したくなる価値と利便性を提供できるか。この2つを足し算することが集客のメカニズムであり、それが有効に機能するかどうかが客数という結果になって表れるのである。
平時においても、競合店が多く存在するなかで衝動買いと習慣化をいかに実現するかが競争に勝ち残る重要なポイントとなる。
ましてやいまはコロナウィルス禍で外食ニーズがかつてなく萎んでいる。この集客メカニズムをいかに機能させるかが、失った外食機会を取り戻し店が存続するために不可欠といえるだろう。そこで今回は、来店動機をつくるためのさまざまな販促手法を紹介する。
昔ながらの手法から、新たなコミュニケーションツールを活用した取り組みまで。集客力アップのためにお役立ていただきたい。
目次
特典付きのボトルキープ(酒場ゴロー 神田駅前店)
東京・神田の居酒屋「酒場ゴロー 神田駅前店」は、20坪61席で月商900万円を売り上げる繁盛居酒屋。
20~50代の男性を主客層に、客単価2,500円、アルコール売上げ比率は55%を確保する。同店では、ボトルキープのキンミヤ焼酎一升瓶3,500円を10本飲み切ったお客に、1万2,000円相当のマグナムボトルをプレゼントしている。一升瓶を飲み切るまでの平均来店回数は4回で、そこから次のリピートにつなげるためにこの特典が効果を発揮する。
ボトルキープのオーダー率は50%で、そのうち8割が一升瓶をキープしており、マグナムボトルの1ヵ月当たりの平均プレゼント数は3本となっている。
オリジナルラベル焼酎のサービス(ろばた焼き 絶好調てっぺん)
東京・新宿の「ろばた焼き 絶好調てっぺん」は、飲み放題を注文した予約客にオリジナルラベルの焼酎ボトルをプレゼントするサービスを実施している。
ラベルは顔写真や会社のロゴなどお客によってデザインを変え、スタッフからお客に手渡す。ボトル焼酎は原価が低いうえに、お客が自ら飲み物を調製してくれるためスタッフの作業負荷も軽減できる。そういう商品自体が持つメリットを生かしながら、再来店の販促メニューに転用したアイデアが秀逸だ。
また、お客が写真を撮ってSNSに投稿することを見越して、ラベルには写真に写り込む位置に店名を記載。宣伝効果にもつなげている。
お子様ラーメン(無料)の年齢制限拡大(一蘭)
18都道府県に78店を展開する豚骨ラーメン「一蘭」では、2018年10月に無料サービスの「お子様ラーメン」を全店導入。
当初はアプリに会員登録した大人1人につき小学生未満5人までが対象だったが、政府の一斉休校要請が出た後の20年3月から小学生以下にまで対象を拡大した。これがファミリー客の吸引につながり、お子様ラーメンの出数は3月に対前年同月比650%をマーク。
アプリの会員登録数も順調に伸びており、この販促手法がリピーターづくりにもつながっている。
価格変動制で集客力アップ(お食事処asatte)
東京・千駄ヶ谷の定食店「お食事処asatte」は、5.5坪12席でコロナ禍前は1日平均110人を集客する繁盛店だった。
同店も外出自粛の影響は大きかったが、これを受けて大胆な手を打った。6月1日から、来店時間によって価格を変更する営業スタイルに切り替えたのである。
同店は日替り定食1品のみを提供するが、コロナ前は1,000円だった価格をピークタイムの12時1分から13時までを1,200円とし、その前後の時間帯は850~1,100円の幅で変更している。
店内の3密を避けつつ、かつ効率よく集客するための策であるが、来店客数の割合は11時30分~12時が20%、12時1分~13時が30%、13時1分~13時30分が30%、13時31分以降が20%となっている。
コロナの影響で客数はそれまでの6割に低下したが、この取り組みを知ったお客がピークタイム以外の時間に来店するようになったという。
4段階の多角的アプローチ(コンマティー)
1都1府3県で直営14店を展開するティースタンド「コンマティー」では、6月の1ヵ月で4つのキャンペーンを段階的に実施。
継続的な集客を狙って日程をずらし、かつ希少性を高めるためそれぞれを3日~1週間という短期間限定とした。
第1弾は「ドリンク半額チケット」というインパクトあるもので、第2弾は「公式ツィッターアカウントフォローで10%引き」、第3弾は「オリジナルマスキングテーププレゼント」と続く。
さらに、第1弾~3弾の期間中に実施した人気投票で1位となった商品を100円引き販売するというのが第4弾キャンペーンだ。
この仕掛けで期間中の再来店を喚起し、平時と比べて売上げ20%増を達成している。
モーニング無料クーポン(喫茶室ルノアール)
喫茶チェーン「喫茶室ルノアール」では、6月に2段階に分けてモーニング無料キャンペーンを実施している。
6月1日~14日はドリンク料金プラス60円のモーニングAを無料とし、6月15日~28日は同60~200円のモーニングセットの無料クーポンを配布した。
朝はもともとリピート客の比率が高い時間帯であるが、クーポンの有効期限を7月末までとしてモーニング利用の再習慣化を図っていた。
年2回のクーポン付き餃子福袋(丸源ラーメン)
(株)物語コーポレーションが展開する「丸源ラーメン」では、中食ニーズが高まる年始とゴールデンウィーク(GW)にテイクアウト商品「丸源餃子福袋」1,000円を投入してきた。
4回目の販売となる20年のGWは販売が6月にずれ込んだが、それでも14日間で4万5,000セットを売り上げている。25個入りの冷凍餃子580円2袋と500円の割引クーポン2枚がワンセットという内容で、これまでの4回の実施でクーポン回収率は50%を超えている。コロナ禍での実施となった今回も、再来店の大きな動機づけになった。
4業態合同企画「肉だらけの感謝祭」(牛カツ京都勝牛)
牛カツ専門店「牛カツ京都勝牛」などを展開する㈱ゴリップでは、LINE公式アカウントの新規登録者に一部メニューを最大56.7%割引する「肉だらけの感謝祭」と銘打った販促を実施した。
対象店は主力4業態で、期間は6月22日から約1ヵ月。LINEは利用店ごとに登録する形にして会員数を競わせている。中でも大きな成果をあげたのが牛カツ京都勝牛で、期間中に約4万人の新規会員を獲得したという。
系列店の名物オールスター(39 saku)
東京・新宿の西口エリアに6店を集中出店する㈱絶好調。
そのドミナント出店の利点を生かした販促メニューが「39 saku」のお通し500円だ。
39 sakuは同社が展開するグループ店の常連客が集まる会員制居酒屋だが、常連客の来店動機を喚起する仕掛けとしてグループ店の名物商品5品を盛り合わせたお通しを投入した。これをきっかけにスタッフが系列店の話題を振って常連客の来店を促し、集客につなげている。
オリジナルプリペイド式電子マネー(茶割 代官山)
東京・代官山の居酒屋「茶割 代官山」では、販促の一環として電子マネーアプリ「ポケペイ」を導入している。
ポケペイは店独自のプリペイド式電子マネーがつくれるサービス。お客が専用のアプリをダウンロードして一定金額をチャージし、そこから食事代を支払う仕組みだ。同店の電子マネー「チャッシュ」は系列店3店でしか使えないため、これが再来店につながった。さらにチャッシュで支払うと割引クーポンを発行するなどの特典を付け、来店の動機づけとしている。
6タイプのサブスクメニュー(ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座)
(株)ひらまつが経営する東京・銀座のフランス料理店「ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座」では、6月20日にサブスクリプションサービス(サブスク)をスタートした。
6タイプあるサブスクメニューの中で、年間500人の会員獲得をめざしているのが「ご飲食代金10%割引会員」。
割引率20%の「ランチ×3回平日回数券」など、お値打ち度がより高いサブスクメニューを用意し、そこからご飲食代金10%割引会員につなげることを狙っている。
※各店舗が実施している割引サービス等は取材時のものです。
この記事の監修
株式会社柴田書店/株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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